carebase(ケアベース)コラム

2025.10.29 介護ICT導入・業務効率化

執筆者:川﨑翔太

介護記録・申し送りのデジタル化が進む今、介護施設が知るべきICT改革ロードマップ【専門家監修】

監修者プロフィール

  • 監修者名:川﨑翔太
  • 現職:介護支援専門員
  • 経験年数:介護業界17年(現場7年・介護支援専門員10年)
  • 保有資格
    • 介護福祉士
    • 介護支援専門員
    • 福祉住環境コーディネーター2級
    • 福祉用具専門相談員
  • 専門分野
    現役のケアマネジャーとして在宅高齢者のケアマネジメント業務に従事。3年前より介護・健康ジャンルを中心にWEBライターとして活動開始。これまでに介護施設の選び方・介護ICT・介護職員の働き方など多数の記事の執筆を経験。
  • 経歴概要
    介護福祉士として医療機関・介護付き有料老人ホームでの介護現場に従事。ケアマネ資格取得後、地域密着型特養のケアマネジャーを経験し、現在は居宅介護支援事業所ケアマネジャーとして在宅で生活する要介護高齢者のケアマネジメントに携わる。

導入:記録・申し送りの「ムダ」を減らす第一歩

介護現場では、記録や申し送りに多くの時間が費やされています。

手書きやオフィス系ソフトでの記録管理が中心の介護現場では、記録業務に大きな負担がかかり、情報共有の遅れ・記録漏れが起こりやすいです。

このような「ムダ」を減らすための第一歩が、ICTの導入による業務効率化です。

今回は、介護現場へのICT導入のステップや、導入を後押しする補助金・助成金の活用方法をわかりやすく解説します。

介護ソフトの導入を検討している経営者や管理者の方は、ぜひご覧ください。

介護ICT改革の全体像|3段階で考える導入ステップ

ICT導入を成功させるには、いきなり導入するのではなく、段階的に以下のステップを踏み、介護現場内で浸透させる必要があります。

1.現状分析
2.計画・申請
3.導入・定着

一つずつ解説します。

① 現状分析

介護現場のICT導入を成功させるには、現状分析が必要です。

介護現場における課題を把握せずICTを導入すると、費用だけがかかり、期待する効果が得られず失敗するリスクがあります。

まずは、24時間シートや工程表で各業務の時間・手間・人員配置を細かく洗い出すと、ICT導入で効率化すべき業務を明らかにできます。

このように分析することで、具体的な目標・改善策・導入すべきICTツールの方向性につながるため、職員の声を集め、課題を可視化することから始めましょう。

② 計画・申請

ICT導入を成功させるには、計画・申請などの準備も欠かせません。

無計画にICTを導入すると、現場職員の負担が増え、かえって混乱を招くリスクがあります。

まずは、事業所の規模や業務内容を整理し、導入プロセスを明らかにしましょう。

大規模な法人の場合、モデルとなる事業所を設定し、導入計画を策定した上で、段階的に進めることが効果的です。

また、職員向けの研修や操作マニュアルの整備も同時に行うことで、スムーズに定着できます。

さらに、助成金・補助金を活用すると、コストを抑えながら効率的にICT化を進めることができます。

導入計画の策定と並行して、助成金・補助金の申請も進めておきましょう。

③ 導入・定着

導入したICTツールを現場で定着させるには、計画的な研修と体制の整備も不可欠です。

まず、職員向けの研修会を行い、導入の目的や活用シーン、操作方法を丁寧に説明します。

併せて、操作マニュアルを整備し、現場内ですぐに確認できるよう環境の整備も必要です。

また、導入したICTツールに合わせて業務フローや役割分担を見直し、関係職員への共有を徹底することで、混乱を防ぐことにもつながります。

導入後は定期的に効果を検証し、改善点を反映させるPDCAサイクルを回すことによって、よりICT化の効果を高めることができます。

専門家監修コメント

介護現場にICTツールを導入する際、課題の整理が不十分なまま導入しないよう気をつけましょう。

ツールを導入するだけでは、現場は変わりません。

各業務内容を可視化し、どの業務を効率化したいか明確にすることが重要です。

また、職員が使いこなせるよう研修やフォロー体制を整えることも欠かせません。

段階的に少しずつ現場に根づくことができるよう工夫しましょう。

助成金・補助金を活用した導入支援

ICT導入の際、助成金・補助金を活用することで、導入にかかるコストを抑えることが可能です。

さまざまな助成金・補助金制度がありますが、厚生労働省が実施する「介護テクノロジー導入支援事業」の活用も効果的です。

こちらの制度では、介護記録ソフトやタブレット導入などが補助対象となり、施設規模や内容によっては導入費用の1/2〜2/3が補助される場合もあります。

令和7年度からは、介護ロボットの重点分野に該当する機器や、第三者による業務改善支援の受講が要件として追加されました。

補助を受けるには、都道府県の窓口やIT導入支援事業者を通じて申請し、契約・導入後に事業実績報告を提出する流れとなります。

こうした助成金・補助金制度を活用すると、コスト面の負担を軽減し、業務効率化や職員の負担軽減、介護の質の向上を実現できます。

助成金活用の流れ(簡易フロー)

各種助成金・補助金活用の流れは制度ごとに違いがありますが、先ほどご紹介した「介護テクノロジー導入支援事業」の基本的な流れは、以下の通りです。

公募要領を確認する
業務改善計画・ICT導入計画を策定する
申請に必要な書類を提出する
審査・交付決定の通知を受ける
ICTツールを導入し、運用を開始する
導入効果や実績報告を提出する

介護テクノロジー導入支援事業は各自治体ごとに公募要領が定められており、申請時期や提出する書類の内容に違いがあるため、事前に確認が必要です。

まず、現場の業務負担を分析し、明らかになった現場の課題から、導入計画・業務改善計画を策定します。

さらに、導入予定のICTツールの見積書から補助対象経費を確認し、必要書類を準備した上で申請を行います。

交付決定後、ICTツールの導入や職員研修などの運用を進め、導入効果を検証して報告書を提出すると助成金が交付されます。

なお、自治体によっては交付申請前にヒアリングが実施される場合や、導入後2年間の効果報告が義務付けられる場合もあるため注意が必要です。

▶︎参考:厚生労働省|介護テクノロジー導入支援事業(PDF)

専門家監修コメント

助成金・補助金を活用する際、申請条件や提出書類を事前に確認せず導入を進めると、補助金が受けられず費用面の負担が増すリスクがあります。

必ず現場の業務負担を把握し、計画的にICTツールの導入と申請を同時に進めましょう。

ICT導入で変わる現場業務

ICT導入によって、以下の4つの効果によって介護現場が大きく変わります。

・記録業務の負担を軽減できる
・申し送りなどの情報共有の精度が高まる
・効率的に人材を育成できる
・ペーパーレスによるコスト削減を実現できる

詳しく解説します。

1.記録業務の負担を軽減できる

介護ICTの一つである介護ソフトを導入すると、記録業務の負担を大幅に軽減できます。

手書きの場合、清書や転記に多くの時間と手間がかかりますが、タブレットの入力に切り替えることで効率的に記録作業を行うことが可能です。

実際にケアベースを導入した介護施設では、記録時間を最大約80%削減した実績もあります。

さらに、入力内容が他の書類へ自動転記されるため、手作業での重複入力が不要になり、記録漏れも防止できます。

そのため、記録業務に費やす時間・手間を減らし、利用者のケアに集中できる環境を整えることにつながります。

2.申し送りなどの情報共有の精度が高まる

介護ソフトを導入すると、申し送りなどの情報共有の精度を高めることが可能です。

紙やノートでの申し送りの場合、情報漏れや解釈の違いによる誤解が生じやすいですが、デジタル化に切り替えると内容をリアルタイムで共有できます。

実際にケアベースを導入し、音声入力やクラウド共有を活用することで情報漏れ・伝達ミスを40%減少したケースもあります。

こうした機能によって、夜勤・日勤間のコミュニケーションがスムーズになり、ケアの質を高めることにつながるでしょう。

3.効率的に人材を育成できる

多くの介護現場では、指導者によって教え方が異なり、教育内容にばらつきが生じやすいという課題がありました。

しかし、介護ソフトの教育サポートを活用することで、ばらつきを抑えた人材育成が実現できます。

例えばケアベースの動画マニュアルなどのサポート機能を活用することで、教育にかかる時間を30%減少したケースがあります。

さらに、研修管理機能によって、職員の習熟度や苦手分野を可視化できるため、効率的な人材育成につながるでしょう。

4.ペーパーレスによるコスト削減を実現できる

介護ソフトの導入によって、ペーパーレス化による大幅なコスト削減が実現できます。

紙の記録管理は、用紙代・インク代などの経費が積み重なり、保管スペースも必要となるため長期的には大きな負担になります。

しかし、介護ソフトを活用することで、印刷・保管のコストが不要になり、有効的なスペースの活用も可能です。

導入時にある程度の費用はかかりますが、経費削減と収益改善の両立ができるでしょう。

ケアベースで実現する「つながる介護」

ケアベースを導入すると、以下の特徴によって介護現場における「情報の分断」を解消し、職員間の連携を強めることが可能です。

・いつでも記録・閲覧ができる
・シンプルなデザインで直感的に操作できる
・動画マニュアル・研修管理で効率的に人材を育成できる

ケアベースはクラウド型ソフトであるため、タブレットやPCからいつでも記録や閲覧が可能です。

シンプルなデザインで直感的に操作が可能であるため、ICTツールの扱いが苦手な方でも使いやすいです。

「いつ・誰が・何を記録したか」が色分けで表示され、記録途中から申し送りやマニュアル、ケアプランへのリンクもスムーズにできます。

記録内容は自動転記されるため、二重入力や抜け漏れを防止し、職員の負担を軽減します。

また、動画・画像付きマニュアルと研修管理機能が連携し、法定研修や新人教育の進捗を可視化し、育成の効率を高めることが可能です。

このような機能によって、現場で職員間の連携を強め「つながる介護」を実現できるでしょう。

専門家監修コメント

ICT導入の本質は、単に業務を効率化することではなく、介護現場で働く職員を支える仕組みを作ることです。

記録や情報共有、人材育成のICT化は手段に過ぎず、最終的には職員が働きやすい環境を整え、利用者に質の高いケアを提供することが目的です。

安易な導入は効果を得られず無駄な投資となるため、目的と手段を明確にして適切なツールを選びましょう。

まとめ|ICT化は「現場を守る」投資

介護現場の人手不足が続く中、ICT導入は職員の負担を軽減し、利用者へのケアの質を高める重要な手段です。

助成金制度を活用しつつ、現場の課題を明らかにした上で段階的に導入することで、無理なく効果を実感できます。

まずは、最適なICT導入計画を検討し、現場で働く職員を支える仕組みづくりから始めましょう。

今回ご紹介した介護ソフト「ケアベース」が気になる方は、以下のリンクから資料請求の申し込みが出来ます。

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