carebase(ケアベース)コラム

2025.12.18 教育・人材育成

執筆者:柴田崇晴

介護記録の正しい書き方とポイント─運営指導で指摘されない記録技術と職員研修法【専門家監修】

介護記録の正しい書き方とポイント─運営指導で指摘されない記録技術と職員研修法【専門家監修】のイメージ

監修者プロフィール

  • 監修者名:柴田崇晴
  • 経験年数:25年の相談支援業務
  • 保有資格
    • 社会福祉士
    • 主任介護支援専門員
  • 専門分野:介護施設運営・職員教育等
  • 経歴概要
    福祉大学を卒業後、高齢者福祉の分野で25年従事。高齢者施設の管理者をしながら都道府県・市町村の職能団体役員として活動中

介護記録の質が“事業所の評価”を左右する

介護記録は利用者の状態を正確に残すだけでなく、事業所の信頼性を支える重要な根拠資料です。運営指導でも必ずチェックされる領域であり、記録の質が介護の質、ひいては事業所の評価につながるといっても過言ではありません。

介護記録の目的と重要性

介護記録が求められる理由は大きく3つに分けることが出来ます。

目的 理由
利用者の安全確保とケアの質向上 ご利用者の日々の様子や些細な変化、ケアの内容や対応を客観的に把握することが出来ます
職員間・多職種の連携 シフトで働くスタッフ間の情報共有や多職種でケアをおこなうには、日々の様々な記録が欠かせません
法令順守とリスク管理 事故が起こったときの状況や施設の対応、再発防止の記録は、時に施設やスタッフを守る役割となります

ただ単に出来事や対応を書くだけではメモと同じです。
これらの目的をしっかり理解しておくことが介護記録の本来の目的を果たし、自分たちを守ることにもつながるのです。

迷わず書ける記録の基本5項目

分かりやすい記録には書く際にコツがあります。つまり正確で共有しやすい記録にするためには、押さえるべきポイントを明確にし、根拠あるケアにつながる情報を整理して書くことが重要です。まずは、どの場面でも共通して押さえるべき“基本の5項目”を整理しておきましょう。

迷わず書ける記録の基本5項目の画像

1.客観的事実を書く

記録は、だれが読んでも状況が分かることが大切です。ですから「だと思う」「かもしれない」という抽象的で主観的な記録ではなく「見た・聞いた・測った」事実のみを記録しましょう。ポイントは、時間や数値などを意識して、具体的に状況を書くことがポイントです。

2.利用者の状態変化をつたえる

普段との違いや気になる変化を明確に記録します。体調、行動、食事量、睡眠、表情などの変化は異変のサインとなるため、早期対応につながる重要な情報となります。小さな変化も見逃さず具体的に「いつもとどう違うのか」という観察結果を書き留めることがポイントです。

3.対応した内容を書く

その日に行った支援を、手順や工夫を含めて具体的に記録します。誰が・何を・どのように行ったかを残すことで、再現性のあるケアが可能になり、支援の質の確認や改善にも役立ちます。ただし、一つ一つ細かく記録する必要はなく、状態変化があった時、ヒヤリハットや事故があったときなど、記録する場面を施設内で決めておく方がよいでしょう。

4.利用者の反応や言動を記録する

支援に対して利用者がどう感じ、どのように反応したかを記録します。表情、言葉、行動などを具体的に書くことで、ケアが適切だったか評価でき、今後の関わり方の改善にもつながります。また、この場合も記録者の主観が入らないように、話した内容をそのまま記録する逐語禄形式(「わたしこれ大好きなの」「あっち行ってちょうだい!」など)で記載することがポイントです。

5.職員の判断・対応

その場での職員の判断や、必要に応じて行った対応を整理して記録します。
この記録は、施設内の情報共有に役立つだけでなくケア内容の変更や受診を提案した根拠になるので、家族からの誤解を防ぎ、施設対応への信頼にもつながる要素となります。

伝わる記録に共通する5つの条件

読み手が状況を正しく理解できる記録には、いくつかの共通した特徴があります。誰が読んでもその時の対応や様子がイメージできるよう、例文を参考にしながら5つのポイントをしっかり押さえておきましょう。

伝わる記録に共通する5つの条件-5w1hの画像

5W1Hの明確化

いつ、だれが、どこで、なにを、どのようにという情報の根幹となる部分です。

✖「昼食時に様子が悪かったので対応した。」
〇「1月1日12:30、食堂にて。Aさんが昼食中に咳込み、顔面紅潮。むせ込みが続いたため、職員Bが水分を提供してAさんの状態を確認した。」

客観的表現(主観を排除)

自分の感想ではなく、ありのままの事実を記載しましょう。

✖「Aさんが嬉しそうに笑った」
〇「Aさんが、今日の昼食がおいしかったと笑った」

具体性(抽象的表現の回避)

誰が読んでもイメージできるような記録が大事です。

✖「水分をたくさん飲んだ」
〇「牛乳を200ml飲んだ」

簡潔性(冗長表現の削除)

「重要な事実」を簡潔にまとめましょう。長い文章は要点がぼやけます。

✖「Aさんが就寝前にしんどいと話す。となりのBさんも心配して話しかけるが、Aさんは返答せず職員に訴えを続ける。顔も赤く「しんどい」を繰り返すので、事務所に戻り新しい電池に交換した体温計をもってAさんの所に戻る。なおBさんはいなかった。」
〇「就寝前Aさんからしんどいと訴えがあったため検温すると37.8度の発熱あり」

適時性(記録タイミング)

あとで記録しようとしても思い出せなかったり事実が抜けることがあります。IT機器などを携帯していればその場で入力できます。

サービスの質を高める記録(実践編)

記録に慣れるほど、主観が入り込んだり具体的な情報が抜けたりすることがあります。また、家族が記録の閲覧を希望した際に、専門用語が多い文章では実際の様子が正確に伝わらず誤解の原因にもなります。

介護記録がうまく書けないと思っている人は、利用者の状態やケア内容を正確に共有するための技術が不足しているのかもしれません。この章では、日々の介護現場で役立つよう、誰が見ても分かりやすく、再現性のある記録を残すための実践的なポイントを紹介します。

場面別におさえるべき記録のポイント

同じ出来事でも、書き方ひとつで伝わり方は大きく変わります。食事・排泄・入浴など、場面ごとにおさえておくべき記録のポイントは次のとおりです。

場面 記載するポイント 記入例
食事
  • 摂取量(具体的な量)
  • 介助の有無
  • 咀嚼・嚥下の様子
  • むせ・咳込みの有無
  • 本人の発言や嗜好の有無
  • 「主食は完食、副食は5割残す」
  • 「10分ほどしてから姿勢が前かがみになり、むせあり。ポジショニングし直すと咳込みなくなる」
排泄
  • 排便/排尿の有無と量
  • 便性状(硬さ・色など)
  • トイレ誘導の可否
  • 失禁の状況(場所・量)
  • 痛みや違和感の訴え
  • 「1週間排便確認できていないため、看護師に連絡」
  • 「就寝前にトイレを誘導すると毎回パッド内に排尿がある」
入浴
  • 入浴形態(一般・機械)
  • 入浴の可否(拒否の理由)
  • 咀嚼・嚥下の様子
  • 洗身・洗髪の実施状況
  • 皮膚状態(発赤・傷・打撲)
  • 「声掛けに入らないと拒否がある。順番を最後にしてもう一度声掛けすると入浴する」
  • 「臀部に掻き傷があり。看護師に処置を依頼」
移動・歩行
  • 歩行の安定性
  • ふらつき
  • 車椅子の使用状況
  • 介助量(自立・見守り・一部・全介助)
  • 転倒リスクの兆候
  • 「つかまる所があれば10m歩ける」
  • 「歩行時に足が上がっていないので、つまずくことが増えた」
認知症
  • 表情・言動・睡眠状況
  • 他者とのかかわり
  • 拒否の理由
  • 「夕方になると子供を探すために歩き回る
  • 「目を見てゆっくりとスタッフが話しかけると興奮が治まる」

運営指導で必ず確認される事故対応記録

運営指導では、日々の記録がどれだけ適切に残されているかが細かく確認されます。なかでも事故発生時の対応は、「サービスの質」だけでなく「利用者の尊厳」にも深く関わるため、記録によって対応が確認できない場合は重大な問題となり、極端に言えば指定取り消しにつながるといっても過言ではありません。

だからこそ、事故の状況や対応を正確に残すことは、事業所を守るうえでも重要です。
ここでは、運営指導で確認される事故対応記録の記載ポイントについて紹介します。

施設がおこなう事故防止・発生時対応の基本ルールのイメージ

<施設がおこなう事故防止・発生時対応の基本ルール(4点)>

1.事故防止の仕組みが整備されているか
2.ヒヤリハットが機能しているか
3.事故発生時の対応ルールが明確か
4.ルールが現場で適切に運用されているか

▶︎<参考:介護保険施設等運営指導マニュアルについて、p50|厚生労働省>

以上のことを踏まえると、事故に関する記録には次のような項目をそろえておく必要があります。

  • 発生日時・場所
  • 状況(事実のみ)
  • 怪我の有無・部位
  • 対応(処置・連絡)
  • 再発防止策(可能な範囲)
  • 委員会での検討・共有事項

▶︎<参考:介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン>

運営指導で確認されるその他の記録や書面

事故に関する記録以外にも運営指導では以下の書類が確認されます。これらの書類はサービスが適切な職員配置でおこなわれているか、利用者の同意や適切な計画書のもと必要なサービスが提供されているかを確認するためのものです。不備があれば改善命令や減算適用となりますので、注意しましょう。

  • サービス計画書および個別支援計画
  • 契約書や重要事項説明書、個人情報提供同意書などの利用契約関連書類
  • 職員の勤務実績表や人員配置記録など、体制管理に関する記録
  • 加算・減算の根拠となる書類

記録研修を効果的に進めるための工夫

チームとして記録を効果的に活用し、サービスの質を高めるためには記録研修が不可欠です。実際の業務場面をイメージできるよう具体例やよくある記録の失敗例を示しながら、「なぜ記録が重要なのか」という目的を共有すると、記録への取り組む姿勢が変わります。

記録研修を効果的に進めるための工夫のイメージ

スタッフ教育で押さえるべき記録研修の組み立て方

記録研修は、新人の基礎指導からOJTでの実践サポートまで、経験やスキルに応じて内容を調整する必要があります。しかし、研修の土台となる考え方は共通しており、次の3つの流れを押さえることで、現場に無理なく定着させることができます。

まず①記録の目的と意義を伝えることで理解を深め、②良い記録と悪い記録の理由を比較しながら基準を共有します。
最後に③実際の場面を想定した演習を小グループで行い、互いに学び合いながら適切な記録を考えることが効果的です。

記録のばらつきを防ぐチェック体制づくり

複数のスタッフが関わる以上、記録の書き方にはどうしてもばらつきが生まれます。それを最小限にするには、チェック体制を整え、組織としての基準をつくることが重要です。

筆者の施設でも、記録が得意な人もいれば、苦手な人もいます。極端な例ですが、私宛ての電話があった際、残してくれるメモを見るだけでも、その人の記録スキルが分かります。いつ、誰から、どのような内容の電話だったのか、そして私がどう対応すればよいのか、これを的確に伝えることは、簡単なようでいて実は経験を重ねて身につく力です。

だからこそ、日頃からスタッフ同士で記録について意見交換をしたり、報告書や会議録を「練習の場」として活用することが大切だと感じています。数をこなし、周囲からの意見を受けて修正する。この積み重ねこそが、最も確実な記録スキルの上達につながります。

ICT活用で広がる記録の効率化と品質向上

ICTを活用した記録は、手書きに比べて情報の共有や検索が迅速で、誤読や記載漏れが減るため安全性が高まります。また写真やバイタル入力など多様なデータを記録として統合でき、グラフによる分析や統計による振り返りにも活用しやすい点がメリットです。
さらに利用者の状態変化や事故、ケア内容の変更など入力してすぐチーム内で情報共有できるため、業務効率が向上し、サービスの質も維持することができます。

現場で使えて負担を減らせる介護記録・介護特化マニュアルシステム「carebase(ケアベース)」の画像

carebase(ケアベース)が現場の記録を支える理由

carebase(ケアベース)は、記録の「書きやすさ」と「正確さ」を同時に高める仕組みを備えています。場面別テンプレートや定型文により、誰が書いても内容が揃い、記録のバラつきを防止できます。必須項目の抜けチェックや自動反映などの入力補助機能で、誤記や漏れを最小限にしながら業務負担を軽減します。また、操作方法をすぐに確認できる動画マニュアルを搭載しており、新人教育やOJTでもそのまま活用可能。現場の“書く負担”を減らしながら、記録の質を安定して向上させることができます。

まとめ:記録は訓練で磨かれる“技術”である

介護記録はセンスではなく、誰でも身につけられる技術です。学び続ける姿勢と日々の実践を積み重ねることで精度は確実に高まります。質の高い記録は、利用者へのケアの質を高めるだけでなく、施設内の情報共有を円滑にし、現場全体の働きやすさにも貢献します。

執筆者:柴田崇晴

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