carebase(ケアベース)コラム

2026.4.24

執筆者:柴田崇晴

【専門家監修】介護施設のBCP(事業継続計画)策定完全ガイド|義務化対応・作り方・テンプレートまで

監修者プロフィール

  • 監修者名:柴田崇晴
  • 経験年数:25年の相談支援業務
  • 保有資格
    • 社会福祉士
    • 主任介護支援専門員
  • 専門分野:介護施設運営・職員教育等
  • 経歴概要
    福祉大学を卒業後、高齢者福祉の分野で25年従事。高齢者施設の管理者をしながら都道府県・市町村の職能団体役員として活動中

2024年度改定で義務化された介護施設のBCPとは?まず何から始めるべきか

2024年度の介護報酬改定により、介護施設ではBCP(Business Continuity Plan(事業継続計画))の策定・研修・訓練の実施が義務化されました。感染症や自然災害が発生しても、利用者の安全を守りながらサービスを継続する体制づくりが求められています。

一方で、「何から手をつければよいのかわからない」「テンプレートはあるが自施設に落とし込めない」といった悩みも多く、形だけのBCPになってしまうケースも少なくありません。BCPは“作ること”が目的ではなく、“現場で機能すること”が重要です。

本記事では、感染症BCPと自然災害BCPの違い、具体的な作成手順、テンプレートの活用方法をわかりやすく解説します。あわせて、研修・訓練の進め方や、デジタル活用による効率的な運用方法も紹介します。

介護施設におけるBCP(事業継続計画)とは?義務化のポイント

介護施設におけるBCPは、緊急時でも利用者の安全を確保しながらサービスを継続するための基盤となる計画です。まずは基本的な考え方と、2024年度の義務化で求められる要件を正しく押さえることが、実効性のあるBCP作成の第一歩となります。

義務化された主な内容

義務化されたのはBCPの策定だけではありません。策定から研修・訓練までのPDCAサイクルという仕組みそのものが義務化されたといえます。
運営基準で定められたBCPの内容は次のとおりです。

【作成の義務化】

項目 詳細要件
BCPの作成 感染症と自然災害の両方のBCP
【研修・訓練(シミュレーション)の義務化】

サービス区分 研修頻度 訓練頻度
入所系 年2回以上 年2回以上
通所・訪問系 年1回以上 年1回以上

取り組まないとどうなる?

BCPの策定や研修などに取り組んでいないことが明らかになった場合、減算の対象となります。とくに施設等の入所系サービスでは、減算率は所定単位数の3%と定められており、その位置づけの重さがうかがえます。
これは言い換えれば、BCPが利用者の生命に直結する重要な取り組みであることを、制度として明確に示しているものといえるでしょう。


<出典:令和6年度介護報酬改定の主な事項について|厚生労働省

障害サービスでも未作成の減算が開始となる

障害福祉サービスでも、BCPが未策定の場合は減算の対象となります。
介護サービス同様、令和6年度の報酬改定で制度化され、感染症と自然災害の両方のBCP整備が求められています。
減算率はサービス種別で異なり、施設・居住系は3%、訪問・通所系は1%で、このルールは介護保険サービスと同じです。なお適用は原則として令和7年4月からで、介護サービスより1年遅れての実施となっています。

<参考:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1 (令和6年3月29日)

感染症BCPと自然災害BCPの違いをわかりやすく解説

「感染症BCP」と「自然災害BCP」は、それぞれ単独で策定することが重要です。というのも、両者では対応方法や備えるべき内容が大きく異なるためです。この違いを正しく理解しておくことで、実際の現場でも機能する、実効性の高い計画づくりにつながります。

例えば、通常の業務レベルを100とした場合、感染症が発生したときは、感染拡大を防ぐために業務レベルを意図的に下げて対応します。患者の隔離や動線の分離、接触機会の削減などにより、安全を優先した運営へ切り替えます。

一方、地震などの自然災害では、被災の状況によって業務レベルが一気に0に近づく可能性があります。そのため、事前のリスク回避策や備蓄、代替手段の確保に加え、早期に業務を再開するための復旧計画をあらかじめ整えておくことが重要になります。
本章ではそれぞれの「違い」に焦点を当て、双方を表形式で比較することで、BCP策定のポイントを整理します。

発生の特徴の違い

発生の段階で、感染症と災害は明確に特徴が異なります。

区分 発生の特徴
感染症 感染症は人から人へと広がり、時間をかけて徐々に拡大するため、初期対応の遅れが被害拡大につながる
自然災害 自然災害は地震や台風などにより突発的に発生し、瞬時に大きな被害をもたらすため、発生直後の迅速な初動対応が求められる

業務継続の考え方の違い

業務を継続するうえで抑えておくべきポイントです。

区分 業務継続の視点
感染症 感染拡大を防ぎながら業務レベルを調整し、必要最低限のサービスを維持する「縮小継続」が基本となる
自然災害 被害を最小限におさえつつ、いかに早く復旧・再開するかが重要となる

対応・備えの違い

事前に施設で準備しておくことが重要です。

区分 業務継続の視点
感染症 隔離対応やゾーニング、職員・利用者の動線管理などによる感染防止が中心で、日常的な予防と早期発見が鍵となる
自然災害 避難行動の確保や電気・水・食料などライフラインの維持が重要であり、事前の備蓄や訓練の有無が実効性を左右する

介護施設のBCP作り方|初心者でもできる3ステップ

BCPの作成は難しそうに感じますが、ポイントを押さえて段階的に進めれば決して複雑ではありません。
本章では、初心者でも取り組みやすい3つのステップに分けて、具体的な作り方を解説します。

STEP
1

国のひな形を参考にする

BCPの書き方が分からないという方は、国が用意しているひな形を参考に作成するといいでしょう。「何を書いていいのか分からない」「どのような項目や対策が必要か」といった作成経験がない人でも、ひな形に沿って項目を埋めると、基本的なBCPを作成することができます。

<参考:介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修|厚生労働省

STEP
2

自然災害はハザードマップで確認する

自然災害といっても、介護施設ごとに想定されるリスクは一様ではありません。地震に限らず、土砂崩れや津波、洪水など、地域や立地条件、周囲の環境によって被災の可能性は大きく異なります。だからこそ、ご自身の施設に即した具体的な災害を想定し、それぞれに応じた対策を講じておくことが重要です。

その際、まず取り組むべきなのが「ご自身の施設にはどのような災害リスクがあるのか」を正しく把握することです。その有効な手段の一つがハザードマップの活用です。ハザードマップとは、地震・洪水・土砂災害などの自然災害が発生した場合に、被害が想定される区域や避難場所、避難経路などを地図上に示したものです。

まだ確認したことがない場合は、一度目を通し、ご自身の施設がどのようなリスク区域に該当するのかを把握しておきましょう。

<参考:ハザードマップポータルサイト|国土地理院

STEP
3

多職種の意見を取り入れる

BCPは担当者が一人で作成するものではありません。介護職や看護師、リハビリスタッフなど多職種の視点で検討することが必要不可欠です。それぞれの職種が日常業務の中で担っている役割や気づきを持ち寄ることで、非常時に起こり得る課題や優先すべき対応がより具体的に見えてきます。

例えば、介護職は利用者の生活支援や居住環境、看護師は医療的ケアの継続、リハビリスタッフは身体機能の維持や安全な移動方法など、専門性に応じた視点がBCPの実効性を高めます。

すぐ使える!介護施設BCPテンプレートと作成のコツ

厚生労働省のページでは、感染症や自然災害それぞれに対応したBCPテンプレートが公開されています。さらに、作成のポイントを解説した動画も用意されており、研修を受講する感覚で実践的なノウハウを学べる仕組みになっています。

ここでは、テンプレートを活用する際のメリットと注意点を整理します。

テンプレートを使うメリット

テンプレートを活用することで、BCP作成のハードルを大きく下げることができます。
例えば

  • 何から手をつければよいか分からない場合でも、必要な項目が整理されているため全体像を把握しやすい
  • 記載例があることで、具体的な書き方やレベル感をイメージできる
  • 一から作成するよりも時間や労力を大幅に削減できる
  • 国の指針に沿った内容であるため、基本的な抜け漏れを防ぐことができる

このように、テンプレートは「たたき台」として活用することで、効率的かつ一定水準のBCPを作成する助けになります。初めて取り組む場合や、複数の事業所を整備することが求められる場合には活用することをおすすめします。

テンプレートを使うデメリット

一方で、テンプレートに頼りすぎると、実効性の低いBCPになってしまうリスクがあります。
例えば

  • 職員の役割分担や連絡体制が現場とかけ離れたものになる
  • 「作ること」が目的になり、実際の運用や訓練につながらない
  • 職員が内容を理解しておらず、緊急時に活用できない

このような状態では、いざという時にBCPが機能せず、かえって混乱を招く可能性があります。

介護記録有料アプリのメリット・デメリットのイメージ

BCPの作成で「これだけはやってはいけない」こと

BCP作成やテンプレート活用をする際に注意したいのが、「他の施設のBCPをそのままコピペする」ことです。ほかの施設の内容を参考にするのは効率的に思えますが、そのまま流用するのは危険といっても過言ではありません。

なぜなら、想定される災害の種類や立地環境、建物の構造、職員体制、利用者の状況は施設ごとに大きく異なるためです。他施設で有効だった対策や取り組みが、そのままご自身の施設でも機能するとは限りません。

筆者の法人が運営する複数事業所でも、サービス種別ごとにBCPの内容は全く異なります。施設周囲の地域性や資源を確認しながら、スタッフ自身で業務継続を検討するプロセスこそが実効性を高めることにつながります。

BCPは作って終わりじゃない|研修・訓練の進め方

BCPは策定しただけでは意味がなく、職員全員が理解し実践できる状態にすることが重要です。そのために欠かせないのが、定期的な研修と実践的な訓練です。
本章では自然災害BCPを例にして効果的な研修・訓練について解説します。
研修・訓練とは?
BCPが完成しても、「この後、研修や訓練をどう進めればいいのか分からない」と戸惑う担当者は少なくありません。
とはいえBCPは、実際に機能させるための研修や訓練(シミュレーション)の実施までが義務化されているため、作って終わりというわけにはいきません。

具体的には、入所系サービスでは年2回以上、通所・訪問系サービスでは年1回以上の実施が必要とされています。計画を「使えるもの」にするためにも、定期的な研修・訓練を通じて職員全体で理解を深めていくことが大切です。

<参考:介護施設・事業所における自然災害時の業務継続ガイドライン|厚生労働省

具体的な研修方法

BCP研修の実施は義務化されましたが、具体的な研修方法などは明記されていません。ですから、事業所の規模や人員体制などに応じて最適な研修方法を選びましょう。

いくつかの具体的な研修方法や特徴などを表でまとめました。

名称
BCP研修
災害想定机上訓練
情報伝達訓練
形態 自施設での講義研修 5人前後のグループ演習 全スタッフ参加によるIT利用による伝達訓練
目的 災害時にどのような行動をとるべきか、優先すべき業務はなにか、というBCPの基本的かつ重要な知識の習得 実際の災害を想定した行動や平面図を用いた演習。BCPの効果や具体性を視覚的に確認 災害時に迅速に被災情報、参集行動などを指示できるよう、あらかじめ情報伝達方法を確立する
ポイント ・管理者等がBCPを講義形式で全職員に周知
・BCPの発動条件や優先業務を共有する
・平面図や周辺地図を使い、避難時の危険箇所を確認する
・ハザードマップで災害時の状況を具体的にイメージする
・受信確認のみのため、定期訓練を行いやすい
・平時から連絡網として活用し、災害時にも使えるようにする
・ツールを使えない職員への対応を検討する

BCP運用を効率化するならcarebase(ケアベース)

BCPは「作成」よりも「運用」のほうが難しいと言われます。実際には、更新・共有・研修・記録管理まで継続的に行う必要があり、紙やExcelでの管理では限界を感じる施設も少なくありません。こうした課題を解決し、BCPを“現場で機能する形”にするためには、デジタルツールの活用が有効です。

carebase(ケアベース)でできること

carebase(ケアベース)を活用すれば、BCPに関するマニュアルをクラウド上で一元管理でき、常に最新の情報を全職員に共有することが可能です。更新内容はリアルタイムで反映されるため、「知らないうちに古い情報を使っていた」といったリスクを防げます。さらに、動画やテキストを組み合わせた研修コンテンツを作成・配信できるため、BCPに関する教育も効率的に行えます。

また、スマートフォンやタブレットからも簡単にアクセスできるため、現場で必要なときにすぐ確認できる点も大きな特徴です。また災害時は、建物や機器が損壊したり、停電になってIT機器が使用できないことも予想されます。クラウドなら、危険を冒してまで事業所へ駆けつける必要もなく、安全な場所でBCPの確認や情報収集をすることが可能です。

このように、carebase(ケアベース)を活用することで、BCPの「浸透・運用・改善」までをスムーズに回せるようになります。結果として、現場の負担を抑えながら、より実効性の高いBCP体制を構築することが可能です。

まとめ|BCPは“現場で使える形”で整備することが重要

BCPは義務対応として整備するだけでなく、実際の現場で機能する形に落とし込むことが重要です。
本記事のポイントを振り返りながら、今すぐ取り組むべきアクションを整理していきましょう。

  • 感染症BCPと自然災害BCPは分けて考える
  • テンプレートは活用しつつ、自施設に合わせてカスタマイズする
  • 多職種で検討し、現場視点を反映させる
  • 作成後は研修・訓練を通じて“使える状態”にする

こうした取り組みを継続することで、BCPは「形だけの計画」から「現場を守る仕組み」へと変わります。

BCPの運用・定着にお悩みならcarebase(ケアベース)へ

BCPは作成して終わりではなく、継続的な更新・共有・研修の仕組みづくりが欠かせません。
しかし実際の現場では、「情報が分散している」「研修が形骸化している」「職員に浸透しない」といった課題も多く見られます。

carebase(ケアベース)なら、
BCPマニュアルの一元管理から、研修コンテンツの配信、職員への情報共有までをクラウド上で効率化できます。

  • マニュアル・BCPの一元管理とリアルタイム更新
  • 動画・テキストを活用した研修の効率化
  • スマートフォンで現場からすぐに確認
  • 災害時でも安全な場所からアクセス可能

「BCPを作ったものの運用に課題がある」
「研修や訓練まで手が回らない」

そんな場合は、ぜひ一度carebase(ケアベース)をご活用ください。
現場に根づくBCP運用の仕組みづくりをサポートします。

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執筆者:柴田崇晴

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