carebase(ケアベース)コラム

2026.5.26

執筆者:柴田崇晴

【専門家監修】介護施設のBCP研修・災害対応教育の進め方|実施記録まで管理する方法

監修者プロフィール

  • 監修者名:柴田崇晴
  • 経験年数:25年の相談支援業務
  • 保有資格
    • 社会福祉士
    • 主任介護支援専門員
  • 専門分野:介護施設運営・職員教育等
  • 経歴概要
    福祉大学を卒業後、高齢者福祉の分野で25年従事。高齢者施設の管理者をしながら都道府県・市町村の職能団体役員として活動中

はじめに|介護施設におけるBCP研修が「実施だけでは不十分」とされる理由

介護施設におけるBCP(業務継続計画)は、制度対応として策定するだけでなく、実際に「機能する状態」にしておくことが強く求められています。その中でも重要なのが、BCP研修の実施と、その内容を適切に記録・共有・改善していく運用体制です。

しかし現場では、研修は実施しているものの記録が分散していたり、職員への周知が徹底されていなかったりと、「運用の仕組み化」が課題となっているケースが少なくありません。結果として、いざという時にBCPが十分に機能しないリスクも生じます。

本記事では、介護施設の管理者向けに、BCP研修の基本的な進め方から、実施記録の管理方法、さらに現場で定着させるための運用ポイントまでを体系的に解説します。

介護施設におけるBCP研修の位置づけとは

介護施設で策定と訓練の実施が義務付けられているBCPには、「自然災害」と「感染症」の2種類があります。どちらも、緊急時に介護サービスを継続することを目的としていますが、想定される状況や必要な対応、実施すべき研修内容はそれぞれ異なります。

そのためBCP研修では、実際に災害や感染症が発生した際に、施設機能を維持しながら利用者の生命と生活を守れるよう、職員一人ひとりが適切に行動できる状態まで落とし込むことが重要となります。

自然災害対策BCP研修の基本視点

自然災害の中で特に甚大な被害を招くのは地震です。風水害とは異なり地震は規模によっては一瞬で深刻なダメージを受ける恐れがあります。自然災害対策BCPの研修では、災害によって事業継続が途絶えないよう、日頃の備えや最低限の人員や設備で何ができるのか、検討することが基本です。

感染症対策BCP研修の基本視点

感染症対策BCPは、施設内で感染症が発生した際に集団感染を防ぐため、日常の業務や利用者の生活範囲を縮小していく視点が基本です。食堂での食事や家族の面会、レクリエーションや行事など感染リスクを減らすための対策を考えておくことが基本です。

BCP研修でよくある3つの課題

令和6年の介護報酬改定により全ての介護事業所では、BCPの策定・訓練が義務化されました。とはいえ、事業所としてはとりあえず作成したことにひと安心して、内容の検証や更新が進んでいないところもあるのではないでしょうか。

とくに「形骸化」「記録の分散」「周知不足」は多くの施設の課題となっており、BCPの実効性を下げる要因となっています。
本章では、現場で起こりやすい3つの課題を整理し、その対策を紹介します。

①研修が形骸化してしまう

「義務化されているので、とりあえず研修はやっておこう」という考えでは、研修の質も上がりません。
せっかく忙しい合間をぬって研修をするからには、BCPの実効性が上がり、参加者の満足度が高まる研修にしたいものです。
以下に紹介するのは、様々な訓練や研修の方法とそのポイントです。座学による講義研修から住民との合同研修まで、研修の主旨やポイントが異なるので、色々組み合わせることで形骸化を防ぎましょう。

研修・訓練方法 内容 ポイント
基礎研修講座 災害用語や自然災害の種類、備蓄など備えに関する基礎知識を講義で学ぶ。 外部講師やeラーニングも活用できる。動画で個人研修も可能
グループ演習 施設の平面図を広げ、災害時のダメージリスク、避難場所、経路などを確認。 見える化し危険箇所の把握、安全場所の確認がおこなえる
地域との合同研修 災害発生からフェーズごとの対応・課題を地域マップで確認する。 地域ケア会議として開催することも可。様々な機関とおこなうことがネットワークの基礎となる

<参考:「災害対応マニュアル第5版」|日本介護支援専門員会、2020年をアレンジ>

②記録が分散している

研修はおこなったものの、そのあと研修資料の整理や報告書の保管など記録がまとまっていないことがみられます。
また、特定の職員だけに管理を任せておくと、異動や退職でいなくなった際に書類が行方不明になるリスクがあるので、事業所として対策を取っておくことが重要です。

<対策>

  • 記録の保管場所を決める(ファイル保管棚、データフォルダ、様式などを統一する)
  • BCP委員会を設置し、チームで作成、研修、記録をおこなう

③BCPの内容が周知されていない

せっかく作成したBCPが、災害などの際に効果を発揮できないのは、まさに「絵に描いた餅」状態です。事業所の中で災害や感染症が発生したとき、スタッフがBCPを素早く実践するコツは次のような方法があります。

<対策>

  • IT化を進めてBCPをデジタル化する
  • BCPの修正、追加などブラッシュアップは管理者だけでおこなわない

効果的なBCP研修の実施ステップ

介護施設では、以前から消防法に基づき、年2回以上の避難訓練が義務付けられています。これらは主に建物火災を想定した訓練で、消火対応や安全に誘導するための避難訓練などを定期的におこなうものです。

一方BCPは、消防訓練とは別に、BCPに関する研修や訓練を実施しなければなりません。介護施設では原則として年2回以上、在宅サービスでは年1回以上の実施が求められています。

<参考:指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十九号)第24条

研修計画を立てる際のポイント

BCP研修を計画的におこなうために、まずは災害・感染症などそれぞれテーマを設定します。さらに災害といっても、地震や風水害など季節や立地によってその種類は様々です。災害設定をする時におすすめするのが、ハザードマップの活用です。国土地理院では、指定した地域のハザードマップが確認できるポータルサイトを開設しています。事業所周辺のマップを確認して、最も災害リスクの高い自然災害を想定して研修を組み立てましょう。

<参考:ハザードマップポータルサイト|国土地理院

実践型研修へつなげる工夫

新人職員とベテラン職員とでは、災害や感染症対応に対する視点や判断力に違いがあります。例えば、特養のユニットで認知症の利用者が感染症に罹患した場合でも、ベテラン職員であれば経験を踏まえながら落ち着いて対応を進められる場面があります。

研修では、ベテラン職員が持つ経験や工夫を「実践知」として共有し、誰でも同じ水準で対応できる体制づくりが重要になります。資格や経験の有無に左右されない標準的な対応を浸透させるためにも、実践型研修が効果的です。

BCP研修の記録管理が重要な理由

BCP研修は実施するだけでは不十分で、「どのように実施されたか」を記録として残すことも重要です。記録を通じて全員が同じ行動をとれるかどうかは、記録の残し方がポイントになります。

本章では、BCP研修における記録管理の役割とその重要性を解説します。

運営指導への対応のため

運営指導とは、事業所が法令に沿って運営されているかや、介護報酬が正しく請求されているかを行政が確認するものです。そして、サービスの質を保ち、介護保険制度が適正に運用されることを目的として実施されています。

BCPの策定や研修の実施も確認の対象となっています。とくにBCPは「あるか、ないか」ではなく、「あることが前提」で、内容が深く確認されると覚えておきましょう。その際重要なのは研修の実施記録です。
なお、運営基準においてBCP研修が未実施の場合減算対象となるので、計画的な実施が重要です。

業務継続能力の向上のため

研修の実施記録は、いつ、どのような内容でおこなったかを記載することが基本です。24時間シフトで働いているスタッフには、参加したくてもできない人がいます。
資料や記録から内容を理解することも重要ですし、全スタッフがBCPの内容を理解しておく必要があるため、研修記録は必要不可欠といえます。

BCP研修記録の正しい残し方

「記録を正しく残す」ということは、必要な情報がすぐに確認できる状態になっているという事を指します。
しかし実際には、「研修資料だけで研修の様子が分からない」「研修内容が部署ごとにバラバラ」といったケースもみられます。この状態では、運営指導や外部評価の際に、BCPに取り組んでいることを十分に示せません。また、過去の研修内容や訓練で得た気づきが蓄積されず、次回の改善にも活かされにくくなってしまいます。

本章では、現場で実際に役立つ記録項目や抑えておきたいポイントについて、例をもとに整理していきます。

記録に残すべき基本項目

下の表は、BCPの研修を実施した際に記録しておくべき内容を例とあわせて紹介します。

記録項目 ポイント
日時・場所 BCP研修は年度で回数が定められています。年度まできっちり記載しておきましょう。 令和〇年●月◎日(△)
特養〇〇園 食堂
参加者 講師、参加者、所属、その他役割を記載しておくと次回開催時の参考にもなります。 講師:A主任、司会:B副主任、参加者:C,D,E 記録:C
研修想定 いつ、何時ごろ、どのような自然災害が起きたか、具体的に想定します。とくに時間によってマンパワーが異なりますので、設定が重要です。 令和〇年△月△日15時に、震度4の地震が発生。
内容 研修で具体的に何をおこなったか、使用したツールを記載し、当日写真等も、有効。 出勤者の初動対応、避難場所を平面図で確認。BCPと照らし合わせ効果を検証する。あれば研修風景など写真に撮っておく
評価・課題 研修はPDCAサイクルをもとに評価します。 評価シートの活用や参加者アンケートの実施

保管方法と運用ルール

研修記録や日ごろの会議議事録など、施設では様々な記録が保管されています。紙で印刷したものを書棚などで管理している場合や、パソコンやサーバーでデータ保管している場合などが、主なケースです。
それぞれの保管方法にはメリット、デメリットがありますので、それぞれの特徴を理解しておくとともに、災害時・感染症発生時にはどの方法が有効か運用ルールを決めておくことがポイントです。

保管方法 メリット デメリット
紙ファイルで保管する場合
  • 停電時でも確認できる
  • パソコン操作が苦手な職員でも扱いやすい
  • 運営指導時に提示しやすい
  • 最新版への差し替え漏れが起こりやすい
  • 水害・火災など物理的災害に弱い
  • 保管場所が分からないと見られない
パソコンで保管する場合
  • 更新や修正が簡単
  • 職員間で共有しやすい
  • 検索機能で必要情報を探しやすい
  • 停電時やネットワーク障害時に閲覧できない
  • 誤削除や上書きのリスクがある
  • パソコン操作に不慣れな職員には使いづらい

BCP研修の実効性を高めるポイント

BCP研修は実施するだけで終わらせず、現場業務と結びつけることで初めて実効性が高まります。とくに研修でロールプレイをおこなったり、終了後に振り返り検証をすることで、職員の判断力と対応力が強化されます。
本章では、研修の質を高めるための具体的な工夫を解説します。

職員参加率を高める工夫

研修への参加率を高めることと、満足度を高めることは深く関係しています。つまり、今回参加したスタッフが「また参加したい」と思えることが、次回の参加率を高めるモチベーションとなるのです。義務化された研修とはいえ、せっかくスタッフで集まる機会なら、チームワーク醸成や他職種連携などたくさんの成果物にもこだわりたいところです。

短時間開催や動画の活用

「人手不足で現場から人が出しにくい」「家庭の事情で残業ができない」といった個々の事情で参加できないスタッフには配慮が必要です。事前に資料を配布しておき講義時間を短くしたり、講義動画をいつでも視聴できるように録画しておく等の工夫で、少しでも参加しやすい環境づくりをしましょう。

現場事例を取り入れて当事者意識を高める

ロールプレイを行う際は、架空の場所や利用者を設定するよりも、自施設のユニットフロアや実際に入居している利用者を想定した内容にするほうが、現場に即した訓練になります。たとえば、災害時にどのような困りごとが起こるのか、感染症が発生した場合に利用者ごとにどのような対応が必要になるのかを具体的に考えることで、職員一人ひとりの当事者意識も高まります。
さらに、研修終了後に「実際に対応できそうか」「どのような課題が残ったか」を参加者同士で振り返ることで、現場で活かせる改善点が明確になり、BCPの精度向上にもつながります。

BCP研修と記録管理を一元化する方法

近年では介護報酬改定のたびに、DXやクラウド活用による業務のデジタル化がキーワードになってきています。筆者の施設においても、BCPや情報共有、生産性向上を継続的に実現できる体制づくりを強化するためデジタル化を推進しています。

とくにBCP管理においては、「BCP原本・研修計画・研修データ・研修記録・報告」を全てクラウドで一元化しており、職員がいつ、どこにいても確認できるようにしています。

運営指導の際には、こういった運用について適切に管理・保管されているという評価を受けています。
本章では、研修と記録を一体で管理する必要性とその考え方を整理します。

デジタル化による管理効率化

今後の介護業界では、記録や連絡、研修や委員会資料などをクラウドでまとめて管理する時代に入ってくるでしょう。これまでのように紙による管理では、必要な情報を探すだけでも時間がかかったり、最新情報に更新できなかったりします。
現場でデジタル化を進めることで、事務作業の負担軽減や生産性向上につながり、職員が利用者支援に向き合える時間も確保しやすくなるでしょう。

継続運用しやすい体制づくり

継続運用するためのポイントは、特定の職員だけに頼らず、誰でも情報を確認・共有できる仕組みを整えることです。
紙や個人管理に依存していると、担当者の異動や退職時に業務が止まりやすくなります。DXやクラウド活用によって、BCPや研修記録、業務手順を一元管理することで、必要な情報をすぐ確認でき、継続的に運用しやすい体制づくりにつながります。

まとめ|BCP研修は「実施+記録+共有」で初めて機能する

介護施設におけるBCP研修や災害対応教育は、計画を策定して終わりではなく、そこから継続的に見直し・改善を重ねていくことが重要です。実際の訓練や研修を通じて課題を把握し、PDCAサイクルを回しながら現場に合った運用へつなげていく必要があります。

また、研修記録や実施記録を残しておくことは、職員全体で共有できる体制を整え、災害時にも動ける現場づくりを進めるために必要不可欠です。
「理解はしているが何からしていいか分からない」「紙ファイル以外の方法を知らない」という施設では、まずはBCP対策から徐々にデジタル化を進めてはいかがでしょう。

BCP研修・記録管理・情報共有を効率化するならcarebase(ケアベース)

BCP研修は、実施して終わりではなく、「記録し、共有し、継続的に改善すること」が重要です。しかし現場では、研修資料や実施記録が分散し、必要な情報がすぐ確認できないケースも少なくありません。

carebase(ケアベース)なら、BCPマニュアルや研修資料、実施記録、周知事項をクラウド上で一元管理できます。職員がいつでも確認できる環境を整えることで、災害時や感染症発生時にも動ける体制づくりを支援します。

「BCP研修の管理を効率化したい」「紙中心の運用を見直したい」という介護施設の方は、ぜひ一度carebase(ケアベース)へお問い合わせください。

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