carebase(ケアベース)コラム

2026.6.29

執筆者:柴田崇晴

【専門家監修】介護施設の運営指導・実地指導対策完全ガイド|指摘されやすい記録の問題点と事前準備のポイント

介護現場でのスタッフ間のコミュニケーションイメージ

監修者プロフィール

  • 監修者名:柴田崇晴
  • 経験年数:25年の相談支援業務
  • 保有資格
    • 社会福祉士
    • 主任介護支援専門員
  • 専門分野:介護施設運営・職員教育等
  • 経歴概要
    福祉大学を卒業後、高齢者福祉の分野で25年従事。高齢者施設の管理者をしながら都道府県・市町村の職能団体役員として活動中

運営指導が近づくたびに準備に追われていませんか?

「介護記録に抜け漏れはないだろうか」
「研修履歴や委員会の議事録をすぐに提出できるだろうか」
「前回の指導で指摘された事項に、きちんと対応できているだろうか」

介護施設の運営指導(旧:実地指導)が近づくと、このような不安やプレッシャーを感じる管理者の方は少なくありません。

運営指導では、日々のサービス内容だけでなく、「適切に運営されていることを、客観的な『記録』で証明できるか」が厳しく確認されます。介護記録の書き漏らしや計画書との整合性、そして職員研修の実施履歴などは、実際に多くの施設が指摘を受けやすいポイントです。

運営指導対策で重要なのは、直前に慌てて書類をかき集めることではありません。日頃から記録を整理し、求められた情報をその場ですぐに提示できる状態を作っておくことです。

この記事では、運営指導で特に指摘されやすい確認事項や事前準備のチェックリストを実務従事者の視点から分かりやすく整理しました。さらに、介護記録や研修管理を電子化することで、日々の業務負担を減らしながら無理なく運営指導に対応するコツを解説します。

そもそも介護施設の「運営指導」とは?

運営指導という言葉を聞くと、「何かアラ探しをされるのではないか」「最悪の場合、事業が続けられなくなるのでは」と、ネガティブなイメージを持つ管理者の方もいるでしょう。特に運営指導を経験したことがない方にとっては、強い不安や緊張感を抱くのも無理はありません。

まずは、運営指導の本来の目的と、具体的にどのような内容が確認されるのかをおさえておきましょう。
運営指導の目的とは
運営指導とは、介護事業所が法令や運営基準に沿って適切なサービスを提供しているかを自治体が確認し、必要に応じて助言や指導をおこなうものです。
確認される内容は、人員配置、運営体制、介護報酬の請求状況、利用者へのサービス提供状況など多岐にわたります。もし基準を満たしていない事項や改善点が見つかった場合は、事業所に対して改善を求める指導が行われます。

とはいえ、運営指導の真の目的は事業所を処分することではありません。高齢者の尊厳を守り、介護サービスの質を確保・向上させることにあります。
<参考:介護保険施設等運営指導マニュアルについて(通知) |厚生労働省通知

実地指導から運営指導への変化

現在の運営指導は、以前は「実地指導」という名称で呼ばれていましたが、令和4年度の制度改正に伴い現在の名称へと変更されました。

筆者も管理者として、これまで複数回の指導を現場で経験してきました。正直なところ、実地指導と呼ばれていた頃は「行政による一方的な監査・チェック」という色彩が強く、当日は緊迫した空気が流れていたことを覚えています。

一方、現在の運営指導では、法令遵守の確認にとどまらず、「より良いサービスを提供するための助言・支援」という側面が強くなったと感じます。また、運営指導マニュアルの整備により、担当者ごとに指摘内容や解釈が異なったり、地域ごとのローカルルールで判断されたりする場面が少なくなった実感もあります。名称の変更には、こうした行政側のスタンスの変化も反映されていると言えるでしょう。
<参考:介護保険施設等 運営指導マニュアル|厚生労働省通知

運営指導で確認される主な項目

運営指導での確認項目とポイントは次の3つに分けることができます。

内容 主な確認事項
介護サービスの実施状況
  • ケアプラン(施設サービス計画)に沿ってサービスが提供されているか
  • 介護記録やモニタリング記録が適切に作成されているか
  • 身体拘束の廃止や虐待防止など、利用者の尊厳が守られているか
最低基準等の運営体制
  • 人員配置や勤務体制が法令の基準を満たしているか
  • 各種研修や委員会が適切な頻度で実施されているか
  • 運営規程や重要事項説明書などが最新の状態で整備されているか
報酬請求の適正化
  • 介護報酬や各種加算の算定要件を確実に満たしているか
  • 請求の根拠となる記録やエビデンス(書類)が整備されているか
  • 請求データと実際のサービス提供記録に齟齬がないか

運営指導でよく指摘される介護記録の不備とは?

運営指導では、現場で行われている介護そのものと同じくらい、「それが適切に記録として残されているか」が重視されます。日々のケアをどれだけ丁寧におこなっていても、記録が抜けていたり保管方法に不備があったりすれば、行政側からは「サービスを提供していない(根拠がない)」と判断されてしまうケースも少なくありません。

極端に言えば、「記録がなければ、ケアをおこなっていないのと同じ」といっても過言ではありません。

ここでは、介護記録において特に指摘されやすいNG事例と、意識すべきポイントを実例とともに紹介します。

よくあるサービス提供記録の記載漏れ

指摘内容 ポイント
実施内容が不明確 「排泄介助をおこなった」だけでは、具体的な介助方法や排泄量が分からず、適切なケアの根拠になりません。
時間記録の不備 「居室で転倒していた」という事実だけでなく、発見した時間、場所、当時の状況を5W1Hで残す必要があります。これらは再発防止策を検討するための必須材料です。
署名・確認もれ 契約書や重要事項説明書への署名は、利用者の同意の証拠です。説明をおこなった日時の記録と合わせ、交付書類の控えをセットで保管することが重要です。
加算要件にあたる記録の不足 加算要件を満たす対応記録がない場合、加算の取得が認められないだけでなく、過去に遡って報酬の返還(過誤請求)を求められるリスクがあります。自施設が取得している加算の要件を定期的に見直しましょう。

ケアプランとの整合性不足

指摘内容 対策
計画と実施内容不一致 利用者へのケアは、原則としてケアプランに沿ったものでなければなりません。「目標に沿ったケアが実際に提供されているか」は、運営指導で必ず確認されるポイントです。
モニタリング不足 定期的に計画の進捗や新たな課題を確認し、サービスの質向上に努めましょう。カンファレンスや会議をおこなった際は、必ず議事録をセットで残してください。
評価記録の欠落 ケアプランは一定の期間を設定して策定されます。計画期間の満了時に目標の達成度を評価し、見直しをおこなったという一連の評価記録が欠落しないことが注意点です。

介護施設向け|運営指導前に確認したいチェックリスト

運営指導の通知が届いてから慌てて準備を始めると、必要書類の紛失や確認漏れを起こしやすくなります。大切なのは、日頃から以下のポイントを整理しておくことです。入所施設をベースとしたチェックリストを用意しましたので、セルフチェックにご活用ください。

書類・記録関係の確認

必要書類 チェック項目
契約書・重要事項説明書 利用者・家族の同意署名や捺印が漏れなくあるか
施設サービス計画書 アセスメント、計画書、モニタリング、会議録が一連の流れで揃っているか
サービス提供記録 利用者名、日時、具体的な介護内容や日頃の様子が正しく記録されているか
事故・苦情記録 発生時の状況、対応の経過、再発防止策までが明確に分かる内容になっているか
身体拘束・虐待等の記録 発生状況、緊急やむを得ない場合の検討内容、手続き、結果が残っているか

研修・委員会関係の確認

委員会等名称 運営基準での実施ルール(入所施設版)
虐待防止委員会 定期的な委員会開催、指針の策定、年2回以上の職員研修記録があるか
身体拘束適正化委員会 3ヶ月に1回以上の委員会開催、指針の整備、年2回の研修記録があるか
感染症対策委員会 定期的な委員会議事録の作成、年2回以上の研修・訓練記録があるか
BCP研修・訓練 自然災害・感染症の各BCP策定、職員への研修や訓練の実施記録があるか
事故防止研修 年2回以上の研修実施、および対策マニュアルが最新状態に更新されているか

人員配置・勤務体制の確認

確認項目 確認内容
勤務表、勤務実績 事業所ごとに毎日の勤務体制が適切に管理・記録されているか
資格証の管理 配置基準に必要な資格保持者の資格証のコピー等が正しく保管されているか
研修計画、受講状況 法定研修の実施に加え、外部研修への参加機会などが確保されているか
常勤換算表 運営基準や各種加算の算定要件に必要な人員数が確実に配置されているか
carebase(ケアベース)のデジタル化のデメリットイメージ

運営指導対応が大変になる施設の共通点

毎回、運営指導の通知が届くたびに過度なプレッシャーを感じてしまう施設には、共通の背景があります。
それは、情報が特定の担当者に依存(属人化)しているか、あるいは紙やファイリングによって記録が「点在」してしまっている点です。

原因①:記録や報告書の管理がバラバラ

運営指導では、サービス提供の記録だけでなく、事故発生からその後の対応経過まで一連の流れを確認されます。しかし、記録の様式や保管場所がバラバラだと、必要な書類をすぐに提示できません。

実際に筆者が管理者を務めていた施設での話です。ある運営指導の際、転倒により負傷された利用者様について、事故発生時の対応記録、事故報告書、再発防止の検討記録、さらには自治体への報告記録まで、一連の資料をすべて出すよう求められました。
当施設ではこれらをデータで一元管理していたため、パソコンの画面一つですべてのプロセスを証明でき、行政担当者からも「迅速かつ適切な対応がなされている」とスムーズに評価いただけました。

原因②:書類管理が紙中心

手書きの記録や紙のファイルで書類を管理している事業所も多くあります。紙ベースの管理であれば、もしも運営指導で書類の提示を求められた場合、ファイルをひっくり返して書類を探さなければならず、行政側に「管理体制に不備があるのではないか」という不必要な疑念を抱かせる原因になるかもしれません。

国が介護業界の人材不足対策としてICT活用を推進しているのも、単なるペーパーレス化が目的ではありません。こうした情報の連動性を高めて、根拠のある健全な運営をデータで証明できるようにするためなのです。
まずは取り組みやすい研修記録のデータ化などから進め、職員の業務負担軽減へと繋げていきましょう。

原因③:日頃から内部点検をしていない

運営基準では、定期的に事業所の法令遵守状況をチェックすることが求められています。その最も有効な方法が「自主点検」です。
自主点検とは、事業所自らが運営状況や記録の整備状況、研修の実施有無などを定期的に確認し、不備を見つけて自発的に是正する取り組みです。多くの自治体がホームページで「自主点検表(自己点検票)」を公開していますので、まずはそれをダウンロードして定期的にチェックする習慣をつけましょう。
<参考:指導検査実施要綱・実施方針・検査基準・自己点検票等|東京都福祉局

運営指導対策に「介護記録の電子化」が有効な理由

近年、介護記録や研修履歴、各種報告書を電子化する事業所が増えています。
電子化の最大のメリットは、必要な記録をキーワードや日付で瞬時に検索・確認できる点にあります。これにより、運営指導時の資料準備にかかる時間は劇的に削減されます。また、システムの入力必須機能を活用すれば、記録の漏れや記載内容のばらつきをシステム側で自動的に防ぐことができ、スタッフ間の情報連携もスムーズになります。

厚生労働省の調査によると、ICT導入支援事業を活用して介護記録の電子化をおこなった施設へのアンケートでは、以下のような具体的な効果が報告されています。

記録の電子化により得られた効果 全体の割合
情報共有がしやすくなった 90.3%
事業所内の情報共有が円滑になった(話し合い時間の増等) 88.0%
入力済みの情報を他の文書でも利用できるようになった 84.8%
文書作成の時間が短くなった 81.9%
支援の質の向上に活かせるようになった 75.6%
過去の文書(データ)の検索性が向上した 72.4%
根拠に基づいて議論ができるようになった 60.9%

<参考:ICT導入支援事業 令和3年度 導入効果報告取りまとめ|厚生労働省

現場で使えて負担を減らせる介護記録・介護特化マニュアルシステム「carebase(ケアベース)」の画像

運営指導対応の効率化ならcarebase(ケアベース)

運営指導では、介護記録だけでなく、研修履歴や委員会記録、各種マニュアルなど、「必要な情報をすぐ提示できる状態」が求められます。しかし実際には、「必要な記録が見つからない」「担当者しか保管場所がわからない」「直前に資料集めで追われる」といった課題を抱える施設も少なくありません。
こうした負担を軽減する方法の一つが、記録管理のデジタル化・一元化です。

介護記録・研修・運営情報を一元管理

carebase(ケアベース)では、介護記録に加えて、職員研修の履歴や運営に必要な情報を一元管理できます。記録が施設内で分散しにくくなるため、必要な情報を探す時間の削減につながります。

また、日々の記録を蓄積していくことで、「運営指導が近いから慌てて準備する」のではなく、日常業務の延長で指導対応しやすい体制づくりを目指せます。

運営指導時の“探す時間”を減らしやすい

紙やExcel管理では、過去記録や研修履歴を探すだけで時間がかかることがあります。

一方、記録を電子化しておくことで、必要な情報を検索しやすくなり、過去の介護記録や研修実施履歴なども確認しやすくなります。複数施設を運営している法人では、本部側での確認負担の軽減にもつながるでしょう。

“直前対策”ではなく“日頃の運営改善”へ

運営指導対策で重要なのは、直前に資料を集めることではなく、日々の記録を適切に残し、必要な時にすぐ提示できる状態を整えておくことです。

「運営指導のたびに準備負担が大きい」「介護記録や研修管理をもっと効率化したい」と感じている場合は、記録管理の仕組みそのものを見直すことも一つの選択肢です。

運営指導対策に向けて、記録管理や研修管理の効率化を検討している方は、carebase(ケアベース)の資料請求・お問い合わせもぜひご活用ください。

介護施設の運営指導でよくある質問(FAQ)

Q. 自主点検は管理者がおこなうのですか?
A. 年に1回は、管理者だけでなく現場の職員も巻き込んで一緒におこなうことを強くおすすめします。
なぜなら、自主点検の項目を一つずつ確認していくプロセス自体が、「なぜこの人員配置が必要なのか」「なぜこの研修をやらなければならないのか」といった、介護保険制度の背景や運営基準の本質を学ぶ絶好の機会になるからです。
筆者の施設でも、あえて新人や中堅職員を交えて自主点検を実施し、内部研修の場として活用しています。
一見すると時間や手間がかかるように思えますが、スタッフ全員が「自分たちの仕事と運営基準のつながり」を理解することで、日頃の記録の質が劇的に向上します。結果として運営指導への最大の備えになるため、まさに一石二鳥の取り組みです。
Q. 運営指導で指摘されたら減算になりますか?
A. 必ずしもすぐに減算や処分になるわけではありません。
運営指導で何らかの指摘事項があった場合でも、その多くは口頭による指導や、改善に向けた「改善報告書」の提出を求められることで完結します。ただし、人員基準が不足していることを認識しながら意図的に報酬を請求していた場合や、不正請求、組織的な隠蔽といった「悪質」と判断されるケースでは、運営指導から即座に「監査」へと切り替わります。その場合は、過去に遡っての報酬返還や、最悪のケースとして指定取り消し処分に発展することもあります。
日頃から嘘偽りのない、透明性の高い記録を残しておくことが何よりの防衛策です。

<参考:介護保険施設等 運営指導マニュアル|厚生労働省老健局総務課介護保険指導室

Q. 運営指導は何年に1回あるの?
A. 原則として、指定の有効期間内(6年に1回)に少なくとも1回以上とされていますが、居住系・施設系サービスについては「3年に1回以上」の頻度が望ましいとされています。
厚生労働省のマニュアルでは、以下のように示されています。運営指導は、原則として指定又は許可の有効期間内に少なくとも1回以上(中略)行います。なお、居宅サービスのうちの居住系サービス、地域密着型サービス(居住系サービス又は施設系サービスに限る。)、施設サービスについては、これらが利用者の生活の場であること等を重視し、3年に1回以上の頻度でおこなうことが望ましいものと考えます。
<3年に1回以上の実施が望ましい施設種別>
居住系サービス:特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護など
施設系サービス:介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院など

<参考:介護保険施設等 運営指導マニュアル p17.

まとめ|運営指導対策は“日頃の記録管理”が重要

運営指導対策をおこなうことは、同時に業務の見直しや書類整理を進める機会にもなります。そうであれば、単に指摘を受けないための準備に終始するのではなく、業務の効率化やサービスの質の向上につなげたいものです。
運営指導は必要な書類をそろえるだけで乗り切れるものではなく、日頃からの記録管理や委員会・研修の実施など、適切な運営体制を継続的に整えていくことが重要になります。

計画的な事業運営を積み重ねることが、運営指導への最も確実な備えであり、利用者により良いサービスを提供し続けるための基盤となるのです。

【関連記事】

介護ソフトの導入や見直しをご検討中の方は、まずは情報収集から始めてみませんか。
carebase(ケアベース)では、現場に定着する介護記録システムとして、多くの事業所でご活用いただいています。
費用や機能、導入事例について詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。

carebase

carebase(ケアベース)の無料体験、
資料請求、お問い合わせはこちら

お問い合わせ

コラム一覧へ

おすすめ記事