carebase(ケアベース)コラム

2026.7.8

介護の申し送りテンプレート|記載項目・例文・チェックリスト集

介護施設で利用者を支える介護士(申し送り・情報共有のイメージ)

介護の申し送りは、記載項目・シーン別例文・チェックリストの3点をテンプレートとしてそろえると、伝え漏れと職員ごとの質のばらつきを減らせます。そのまま使える記載項目(統一フォーマット)と例文、無料Excelテンプレート、漏れを防ぐ仕組みまでを実務目線で整理します。

介護の申し送りとは?テンプレートで標準化するメリット

申し送り漏れが招くケアの質低下・職員の負担増・情報の混乱の3影響と、申し送り・引き継ぎ・介護記録の役割の違いを整理した図解

左=申し送り漏れが現場に与える3つの影響、右=混同されやすい3つの言葉の役割の違いを整理(出所: 申し送り・引き継ぎ・介護記録の役割の整理に基づき編集部作成)

申し送りとは、勤務交代の際に利用者の状態・ケア内容・注意点を次の担当者へ正確に引き継ぐ業務で、テンプレート化すると伝え漏れと、担当者次第になる質のばらつきを抑えられます。

介護は24時間体制で続くため、シフトをまたいだ情報共有がケアの土台になります。申し送りが不十分だと、体調の小さな変化が見逃され、対応の遅れや事故につながることがあります。だからこそ、申し送りは「報告作業」ではなく、利用者の安全とケアの質を守る情報共有のプロセスとして設計する価値があります。

うまく伝えるためのコツは、量より質です。すべてを並べると重要な情報が埋もれてしまうため、次の担当者にとって必要な情報を、変化を中心に選んで伝えることが軸になります。「いつも通り」より「いつもと違う点」を優先し、事実だけでなく「どう対応してほしいか」まで添えると、受け取った側がすぐ動けます。

申し送りの負担は、現場全体の人手不足とも切り離せません。介護労働安定センターの令和6年度「介護労働実態調査」では、介護労働者が抱える労働条件・仕事の負担の悩みは「人手が足りない」が49.1%で最も高く、不足と感じる事業所も65.2%にのぼります(介護労働安定センター、令和6年度調査・2026年6月時点)。忙しい現場ほど申し送りは簡略化されやすく、だからこそ「型」で品質を一定に保つテンプレートが効きます。

テンプレートを使うと、記載すべき項目が統一され、経験の差に関わらず同じ形で記録・伝達できます。新人でも一定の質で申し送りができ、現場全体の情報共有の精度が上がります。次の章から、実際にテンプレートへ入れる記載項目を具体的に見ていきます。

申し送り漏れが現場に与える3つの影響

申し送り漏れは「ちょっとした伝達ミス」に見えても、現場全体に影響が広がります。とくに次の3点で課題になりやすいところです。

1つ目はケアの質の低下です。前日の体調変化や服薬状況、注意が必要な行動が正確に伝わらないと、必要なケアが後手に回ります。軽微な体調変化が共有されないことで対応が遅れ、健康トラブルにつながることもあります。

2つ目は職員の負担増です。漏れがあると、過去の記録を何度も見返したり、ほかの職員に口頭で確認したり、不確かなまま対応せざるを得なくなったりします。その分だけ本来のケアに使える時間が削られ、疲労やストレスの蓄積につながります。

3つ目は情報の重複や混乱です。紙のノート・口頭・記録システムと管理方法がバラバラだと、「同じ内容を何度も入力している」「どの情報が最新か分からない」といった状態が起こります。重要な情報が見落とされ、誤った判断につながるリスクが高まります。

これらが積み重なると、申し送りは「利用者の安心・安全を守る仕組み」ではなく、現場の負担作業になってしまいます。だからこそ、個人の注意力に頼るのではなく、テンプレートと記録の一元管理で仕組み化することが効いてきます。

申し送り・引き継ぎ・介護記録の違い

申し送りと混同されやすい言葉に「引き継ぎ」と「介護記録」があります。整理すると役割が見えてきます。申し送りは、勤務交代の場面で、その時点で必要な情報を口頭や記録で次の担当者へ渡す行為です。引き継ぎは、担当者の交代や退職などに伴い業務全体を広く受け渡すことを指す場合が多く、申し送りより範囲が広くなります。介護記録は、利用者に行ったケアやその反応、心身の状態を時系列で残す公式の記録で、申し送りの土台になる情報源です。

この3つは別物ですが、密接につながっています。介護記録は本来、利用者の変化を早期に把握して適切なケアにつなげるための情報源です。ところが記録と申し送りがうまく連動していないと、せっかく記録した重要な情報が埋もれ、現場で活かされません。記録に書いた内容がそのまま申し送りに使える形になっているかが、漏れの少ない情報共有を左右します。だからこそ、記載項目をテンプレートでそろえ、記録と申し送りを同じ様式でつなぐことに意味があります。土台となる介護記録の書き方そのものを整えたい場合は、介護記録の書き方完全ガイド(5W1Hと文例で記録漏れを防ぐ)で記録の質を底上げする手順を確認できます。

申し送りテンプレートに入れる記載項目(統一フォーマット)

利用者名・バイタル・服薬など基本10項目と、担当者明記・睡眠・行動精神面・面会外出予定の差別化4項目からなる申し送り14項目の統一フォーマット図解

基本10項目+抜けやすい差別化4項目(★印)で構成した申し送り14項目の統一フォーマット(出所: 介護現場で用いられる申し送り記載項目の整理に基づき編集部作成)

申し送りテンプレートには、利用者名・日時・担当者・バイタル・食事/水分・排泄・服薬・特記事項・次シフトへの申し送りなど、14項目前後を入れると漏れが起きにくくなります。

記載項目がバラバラだと、職員ごとに書く内容が変わり、必要な情報が抜けたり重要度が伝わらなかったりします。そこで、現場で使われている記載項目を横断的に整理し、「何を・どこまで書くか」を一つのフォーマットに統一したのが下表です。各項目に「記入のポイント」と「漏れると起きること」を添えているので、なぜその項目が必要かを確認しながら使えます。

記載項目 記入のポイント 漏れると起きること
利用者名 誰の情報か明確に 別の利用者と取り違える
日時・時間帯 いつの状態か 古い情報を最新と誤認する
担当者・記録者 誰が確認したか明記 責任の所在が不明・後から確認できない
バイタル(体温・血圧・脈拍・SpO2) 数値で・平常との差を示す 体調急変を見逃す
体調変化 「いつもと違う点」を中心に 異変の発見が遅れる
食事・水分摂取量 割合や量で具体的に 低栄養・脱水を見逃す
排泄状況 回数・性状・失禁の有無 便秘や感染の兆候を見逃す
睡眠状況 夜間の入眠・覚醒の様子 夜間の異変・転倒リスクを見逃す
服薬状況 実施・拒否・変更を明記 二重投与や未投与の事故につながる
医療的ケア・処置 実施済みかどうか 処置漏れ・重複が起きる
事故・ヒヤリハット 小さな変化も共有 次シフトで事故が再発する
行動・精神面の変化 不安・落ち着きのなさ・徘徊 認知症の行動・心理症状への対応が遅れる
面会・外出予定 家族対応・予定変更 家族対応の漏れ・トラブルになる
次シフトへの申し送り事項 依頼・要観察を明示 申し送りの目的が伝わらない

記載項目の統一フォーマット。太字は一般的なテンプレで抜けやすい差別化項目(出所: 介護現場で用いられる申し送り記載項目の整理に基づき編集部作成)。

まず押さえる基本の記載項目

最低限おさえたいのは、バイタル・体調変化、食事・水分・排泄、服薬・医療的ケア、事故・ヒヤリハット、家族対応・特記事項です。たとえば「微熱がある」「咳が増えている」といった体調のサインや、「食事は半分残した」「排便なし」といった日常ケアの変化は、体調不良の早期サインになります。服薬拒否や処置の実施状況など、医療に関わる情報は伝え漏れが直接リスクになるため、確実に共有します。

具体的には、次のような書き方が目安になります。バイタルなら「体温37.5℃、血圧やや高め(普段より上が10ほど高い)」のように平常との差を添える。食事・水分なら「朝食5割、水分はコップ3杯」と量で示す。排泄なら「排便1回(普通便)、夜間失禁あり」と回数と性状を残す。「いつもと違う点」を数字や具体的な事実で書くのが、伝わる記載の基本です。逆に「少し食べた」「だいぶ出た」といった曖昧な表現は、受け手によって解釈が変わるため避けます。

抜けやすい差別化項目

上の表で太字にした項目は、現場で書き漏らされやすいところです。担当者・記録者の明記は、後から「誰が確認した情報か」を追える点で重要で、責任の所在をはっきりさせます。睡眠状況は夜間の異変や日中の傾眠につながり、行動・精神面の変化は認知症ケアの判断材料になります。面会・外出予定は家族対応の漏れを防ぎます。これらを定型に組み込んでおくと、忙しい日でも抜けにくくなります。

記載のポイント:事実と所感を分ける

記入時は、感じたこと(所感)と実際にあったこと(事実)を分けて書くと、受け手の解釈のズレが減ります。「元気がなさそう」だけで終えず、「食事3割・発語が少ない」という事実を添える。数字や具体的な事実で書くことが、誤解を防ぐ近道です。意見や推測を伝えたいときは、客観的な事実を先に述べてから「ここからは推測ですが」と前置きすると、受け手が情報の確からしさを判断できます。

優先順位の付け方:「全部言う」はしない

記載項目をそろえても、すべてを同じ重さで伝えると重要な情報が埋もれます。伝える順番は、次の3段階で考えると整理しやすくなります。

  1. 緊急性(命・安全に関わるか):発熱や呼吸の苦しさ、転倒リスクなど、利用者の命や安全に直結する情報を最初に伝えます。
  2. 重要性(次のケアに影響するか):食事量の低下や入浴を控えたほうがよい状態など、次のシフトの対応に関わる情報を続けます。
  3. 変化(いつもと違う点):普段は元気だが今日は無口、というような変化のサインを共有します。

優先順位をつけずに並べると、本当に必要な対応が後回しになり、事故につながることもあります。申し送りは「情報を並べる場」ではなく「必要な情報を選んで伝える場」だと捉えると、緊急性の高いものから整理する習慣がつきます。

要点: 記載項目は「基本(バイタル・食事/水分・排泄・服薬・特記)+抜けやすい4項目(担当者明記・睡眠・行動精神面・面会外出予定)」をテンプレートに固定し、緊急性→重要性→変化の順で伝えると、忙しい日でも漏れにくい申し送りになります。

申し送りテンプレートの基本構成と無料Excelダウンロード

結論→具体的な事実→次の対応・注意点の3ステップで申し送りを書く基本フォーマットの流れを示した図解

「結論→事実→次の対応」の3ステップに当てはめると要点がぼやけず受け手がすぐ動ける(出所: 申し送りの伝え方(結論優先の構成)の整理に基づき編集部作成)

申し送りは「結論 → 具体的な事実 → 次の対応・注意点」の順に書く基本フォーマットが使いやすく、無料のExcelテンプレートも活用できます。

迷ったときは、次の基本テンプレートに当てはめるだけで簡潔に整います。

「◯◯様、本日【結論】です。【具体的な事実】がありました。【次の対応・注意点】をお願いします。」

この「結論 → 事実 → 次の対応」の流れを意識すると、要点がぼやけず、受け手がすぐに動ける申し送りになります。話し言葉でも書き言葉でも同じ構造が使えるため、口頭の申し送りとノート・記録の両方に応用できます。

Excelの申し送りテンプレートを無料でダウンロード

記載項目を整理したExcelの申し送りテンプレートを、無料で配布しています。まず運用を整えたい現場では、ゼロから様式を作るより、配布テンプレートを下地にして自施設の項目を足し引きするほうが早く始められます。申し送り記録テンプレート(Excel)から取得できます。チェック項目が並んだ様式なので、印刷して紙運用にも、そのままデータ入力にも使えます。

テンプレートを定着させるコツは、いきなり完璧を目指さないことです。最初は基本の記載項目だけに絞って運用し、現場で「これも必要」という項目が出てきたら少しずつ足していきます。チェックボックス形式や箇条書きで視覚的に確認しやすいレイアウトにしておくと、記入漏れも一目で把握できます。

自施設向けにテンプレートを整える手順

配布テンプレートをそのまま使うだけでなく、自施設の運用に合わせて整えると定着しやすくなります。次の手順で進めると、現場が混乱しにくくなります。

まず、現在使っている申し送りノートや記録様式を見比べ、施設で日頃確認している項目を洗い出します。次に、本記事の統一フォーマットと突き合わせ、抜けている項目(睡眠状況や記録者の明記など)を補い、自施設で不要な項目は外します。続いて、記入ルールを1〜2行で決めます。たとえば「バイタルは数値で書く」「食事は割合で書く」といった具合に、書き方の粒度をそろえると職員ごとのばらつきが減ります。最後に、1〜2週間試運用してから、現場の声をもとに項目を微調整します。最初から完成形を目指さず、運用しながら育てるほうが、結果的に長く使えるテンプレートになります。

シーン別 申し送り例文集(良い例・悪い例)

体調変化・転倒リスク・食事低下など、場面別に「良い例文」と「悪い例文」を比べると、簡潔で伝わる書き方が身につきます。

例文は、先ほどの「結論 → 事実 → 次の対応」の型に当てはめると作りやすくなります。下表は、よくある場面ごとに、伝わる例文と、なぜ伝わりにくいのかが分かる悪い例を並べたものです。

場面 良い例(結論→事実→次の対応) 悪い例とその理由
体調変化 「◯◯様、本日37.8℃の発熱があります。午後からだるさを訴え、食事は3割程度の摂取です。夜間も体温の経過観察をお願いします」 「◯◯様、なんだか元気がなかったです」→ 数値も次の対応もなく、受け手が動けない
転倒リスク 「◯◯様、本日歩行時にふらつきが見られました。立ち上がりを5回ほど繰り返しています。移動時は見守りの強化をお願いします」 「◯◯様、転びそうでした」→ 頻度や依頼が曖昧で対応につながらない
食事・水分低下 「◯◯様、本日食事量が半分以下に低下しています。食欲がなく、間食も摂取していません。次回の食事時も様子観察をお願いします」 「あまり食べていませんでした」→ 割合が不明で、何を頼みたいか伝わらない

良い例/悪い例の対比(出所: 申し送り例文(結論→事実→次の対応)の整理に基づき編集部作成。数値は記載例の目安)。

服薬・医療的ケアの例文

服薬や処置の場面では、実施状況と次の対応をセットにします。良い例は「◯◯様、本日朝の内服に拒否がありました。看護師へ報告済みで、昼の服薬時に再度声かけをお願いします」のように、起きた事実・すでに取った対応・次にしてほしいことが明確です。悪い例は「お薬、飲んでくれませんでした」だけで終わり、報告の有無や次の対応が分かりません。医療に関わる情報は伝え漏れが大きなリスクになるため、「誰に報告したか」「次に何をするか」まで添えると安全です。

家族対応・特記事項の例文

家族からの要望やいつもと違う出来事も、立派な申し送り情報です。良い例は「◯◯様、本日ご家族より食事形態の相談がありました。次回面会時に相談員へつなぐ予定です。対応状況を共有しておきます」のように、要望の内容と今後の段取りが分かります。悪い例は「ご家族から何か言われました」だけで、内容も対応も伝わりません。家族対応は信頼関係に直結するため、事実と予定をセットで残すことがトラブル防止につながります。

倦怠感・要観察のケースの書き方

体調変化が軽度なケースでは、次のように書きます。「本日◯◯様は午前中より軽度の倦怠感あり。バイタルは平熱範囲内ですが、食事摂取量は約50%に低下。水分摂取は促しにより確保できています。今後も様子観察を継続し、食欲低下が続く場合は看護師へ報告をお願いします」。「平熱範囲内だが食事は50%」のように、正常な点と気になる点を両方書くと、受け手が状態を正しく把握できます。

伝え漏れを防ぐ申し送りチェックリスト(夜勤帯・日勤帯)

申し送り前に、バイタル・食事/水分・排泄・服薬・事故/ヒヤリハット・家族対応などをチェックリストで一つずつ確認すると、言い忘れを防げます。

記載項目をそろえても、確認の手順がなければ抜けは起きます。下のチェックリストは、申し送り直前にそのまま使える形にしています。一つずつ確認するだけで、伝え漏れを大きく減らせます。

申し送り前の共通チェックリスト

  • 体調・バイタルに変化はあったか(発熱・血圧・脈拍・咳・だるさ など)
  • 食事量・水分摂取量はどうだったか(◯割摂取・ほぼ全量・ほとんど摂取なし など)
  • 排泄の有無・状態に変化はあったか(排便あり/なし・下痢・便秘・回数 など)
  • 服薬・処置は問題なく実施できたか(飲み忘れ・拒否・処置内容 など)
  • 行動や精神面に変化はあったか(不安・落ち着きがない・眠れていない など)
  • 事故・ヒヤリハットはなかったか(転倒しかけた・ふらつき・危険行動 など)
  • 注意すべき点・申し送り事項はあるか(転倒リスク・見守り強化 など)
  • 家族対応や特記事項はあったか(要望・連絡事項・予定変更 など)

申し送りを話す直前には、次の3点も確認します。「いつもと違うこと」は伝えたか。次の人が困らない情報になっているか。優先順位の高い内容から話す準備ができているか。この最終チェックを習慣にすると、「何を伝えればいいか分からない」状態から抜け出せます。

夜勤帯のチェックポイント

夜勤帯は、日中とは見るべき点が変わります。

  • 夜間の睡眠状況(入眠・中途覚醒・不眠)
  • 排泄回数・失禁の有無
  • 急変・ナースコール対応の履歴
  • 翌朝への注意事項の整理

夜勤から日勤への引き継ぎは、前日の体調変化や対応の注意点が伝わりにくく、申し送り漏れによるヒヤリハットが起きやすい時間帯です。夜勤帯専用のチェック項目を用意し、翌朝の担当が困らない形に整理しておくことが大切です。

日勤帯のチェックポイント

  • 朝食の摂取状況
  • バイタル測定の結果
  • 日中の活動予定への影響
  • 夜勤への引き継ぎ事項の整理

夜勤の記録・申し送りをさらに詳しく整理したい場合は、介護夜勤の記録・申し送りを完璧にこなす方法もあわせて確認すると、見落とし防止チェックリストと交代前の確認事項まで具体的に押さえられます。

申し送り漏れが起きる原因と防ぐ仕組み

申し送り漏れは、口頭依存・記録漏れ・フォーマット未統一・時間不足・ITスキル差の5つが主な原因で、個人の注意力ではなく仕組みで防ぎます。

申し送りミスは、担当者の不注意よりも「現場の仕組み」によって起きるケースがほとんどです。原因を分けて整理し、それぞれに対策を当てはめると、再発を防ぎやすくなります。

漏れの原因 何が起きるか テンプレートでできる対策
口頭伝達に依存している 聞き漏れ・認識のズレ。記録に残らず後から確認できない 記入式テンプレートで記録に残し、口頭は要点の補足にする
記録漏れ・記入ミス 「後で書こう」で抜ける 必須項目を固定し、その場で記入する運用にする
フォーマットが統一されていない 必要な情報が書かれない・解釈が人によって変わる 統一フォーマットで誰でも同じ粒度に揃える
時間不足による簡略化 重要情報の省略・優先順位が曖昧 チェックリストで最低限の項目を担保する
ITスキルの差による運用のばらつき 入力漏れ・誤操作・紙とデジタルの二重管理 入力が簡単な様式に統一し、記録と申し送りを連携させる

漏れの原因と対策の対応表(出所: 申し送り漏れの原因(口頭依存・記録漏れ等)の整理に基づき編集部作成)。

これらの原因は単独ではなく、複合して重なることでミスを引き起こします。とくに時間不足は、人手不足という構造的な背景と直結します。先述のとおり、介護労働者の悩みで最も多いのは「人手が足りない」(49.1%)であり(介護労働安定センター、令和6年度調査・2026年6月時点)、余裕のない現場ほど申し送りが簡略化されやすくなります。だからこそ、個人の頑張りに頼るのではなく、テンプレートとチェックリストで「最低限ここは守る」という仕組みを先に用意することが、漏れを減らす現実的な近道です。

申し送り漏れを防ぐ3つの工夫

仕組み化の具体策は、大きく3つに整理できます。1つ目はテンプレート活用で情報を整理することです。記録すべき項目を統一すると、経験やスキルの差に関わらず同じ形式で記録でき、現場全体の情報共有が安定します。2つ目は重複入力をなくして効率化することです。同じ情報を紙とシステムの両方に書く手間は、負担と入力ミスの温床になります。3つ目は記録連携で二度手間を防ぐことです。日中のケア記録(食事量・排泄回数・体調変化など)が、そのまま申し送りに反映される仕組みにすれば、再入力の手間と転記ミスを同時に減らせます。

実際の現場では、次のような作業フローに落とし込むと運用しやすくなります。

  • 日勤スタッフはテンプレートに沿って利用者の状態を記録する
  • 夜勤スタッフは前日の記録をテンプレートで確認する
  • 未記入や注意点をチェックし、申し送り内容を整理する
  • チーム内で共有・確認し、翌日のケアに反映する

このフローを軸にすると、誰が記録しても同じ内容が共有され、申し送り漏れのリスクを下げながら業務効率も上げられます。

管理者が整える運用ルール

担当者次第になる状態を防ぐには、現場任せにせず管理者がルールを設計することも欠かせません。たとえば、次のような運用ルールが有効です。

  • 申し送りはテンプレート形式での記載を基本にする
  • 重要事項はチェック欄で確認する
  • 申し送り完了後にダブルチェックを行う
  • 口頭のみの申し送りは避け、記録を必須化する

あわせて、管理者の役割としては、フォーマット統一の徹底、記録漏れの定期チェック、職員への運用教育、デジタル化推進の主導が挙げられます。ルールを「決めて・守れているか確認する」ところまでをセットにすると、申し送りの精度が現場全体で安定します。決めただけで運用が現場任せになると、いつの間にか元の口頭中心に戻ってしまうため、定期的な振り返りで形だけのルールにならないよう保つことも大切です。

要点: 申し送り漏れの5原因は、いずれも「仕組み」で対処できます。記載項目の統一・記録への一本化・記録と申し送りの連携、そして管理者による運用ルールの3層で、担当者ごとのばらつきと抜けを同時に減らせます。

申し送りを早く・正確に伝えるコツ

結論から話し、事実と所感を分け、数字で具体的に伝えると、短い時間でも正確な申し送りになります。

テンプレートで「何を書くか」を固めたら、次は「どう伝えるか」です。話し方にも型があります。

  • 結論から話す:最初に結論を伝えると、相手が内容を理解しやすくなります。
  • 数字や事実で具体的に:あいまいな表現は誤解のもとです。「食事3割」「37.8℃」のように具体化します。
  • 主観と客観を分ける:感じたこと(主観)と実際の事実(客観)をセットで伝えます。
  • 一文を短くする:長い説明は要点がぼやけます。1つの内容は短く区切ります。

これらは「センス」ではなく「型」です。まずは「結論から話す」を意識するだけでも、伝わりやすさは大きく変わります。慣れてくると、テンプレートを見なくても自然と整理して話せるようになります。

申し送りの伝え方やミス防止の進め方をさらに体系的に磨きたい場合は、介護の申し送りのコツと進め方|ミスを防ぐ5つの実践ステップで、統一フォーマットの導入や二重確認・リアルタイム共有といった実践手順を具体的に確認できます。テンプレート(この記事)で「何を書くか」をそろえ、コツ記事で「どう運用するか」を補うと、申し送りの質を両面から底上げできます。

デジタル化で申し送りを効率化する(申し送りDX)

介護記録と申し送りを連携できるデジタルツールを使うと、転記の手間と伝達ミスを減らせます。記録・情報共有の効率化は、国が進める介護現場の生産性向上の柱でもあります。

紙やExcelのテンプレートでも申し送りの整理はできますが、転記の手間や確認作業の多さ、情報の分散といった課題は残りがちです。記録のデジタル化はすでに現場に広がっており、令和6年度の調査では「ケア記録・ケアプラン等の入力・保存・転記の機能」を日常的に利用する事業所が75.4%にのぼります(介護労働安定センター、令和6年度調査・2026年6月時点)。記録のICT化は、特別な取り組みではなく標準的な選択肢になっています。

国の側でも、記録や情報共有の効率化は業務改善の重点に位置づけられています。厚生労働省は介護現場の生産性向上を推進し、業務改善の手順や業務時間の見える化ツールなどをポータルサイトで無料提供しています(厚生労働省 介護分野における生産性向上について、2026年6月時点)。申し送りの効率化は「便利だから」という現場都合にとどまらず、政策的にも後押しされている領域です。

ただし、デジタル化は万能ではありません。同調査では、ICT機器・介護ロボットの導入効果について「効果がある」「やや効果がある」の合計が、昼間の業務負担の軽減で49.4%、夜間で44.6%と、いずれも約半数にとどまります(介護労働安定センター、令和6年度調査・2026年6月時点)。ツールを入れれば自動的に解決するわけではなく、まず記載項目を統一し、運用ルールを整えたうえで導入してこそ効果が出やすくなります。

紙・Excel・デジタルツールの使い分け

申し送りの管理方法には、紙のノート・Excel・デジタルツールがあり、それぞれに向き不向きがあります。同じ評価軸(記入のしやすさ・共有のしやすさ・転記の手間・振り返りのしやすさ)で並べると、自施設に合う方法が見えてきます。

紙のノートは、導入コストがほぼかからず、誰でもすぐ書ける手軽さが利点です。一方で、その場にいないと確認できず、リアルタイムの共有や過去の振り返りには向きません。Excelテンプレートは、項目を統一でき、印刷も配布もしやすい中間的な選択肢です。ただし、ファイルの版管理や入力場所が限られる点、記録と申し送りが別ファイルになりやすい点に注意が必要です。デジタルツールは、記録と申し送りの連携・リアルタイム共有・過去データの振り返りに強い一方、導入の検討やスタッフの習熟が必要になります。

どれが正解というより、まずは記載項目の統一とチェックリストで運用の土台を作り、規模や課題に応じて段階的にデジタル化を検討するのが現実的です。紙やExcelで運用が固まっていれば、デジタルツールへ移行する際もスムーズに進みます。

記録と申し送りを連携させる仕組み

デジタル化で効果が出やすいのは、記録と申し送りが分断されていない仕組みです。たとえばcarebase(ケアベース)では、「ケア記録」タブに入力した内容が、隣の「申し送り」タブをタップするだけでそのまま申し送り情報として反映されます。記録を見返して情報を抜き出す、申し送り用にまとめ直す、口頭や別ツールで補う、といった作業を挟まずに申し送りが完成する設計です。あらかじめ設定したテンプレートに日々の記録が自動で反映されるため、健康状態・服薬・食事/排泄・特記事項などが整理された状態でチームに共有されます。申し送りにはコメント機能や既読・未読チェックもあり、伝えた内容を誰が確認済みかを把握できます。外国人スタッフが多い現場では、AIによる多言語翻訳で外国語と日本語を相互に変換できるため、言語の違いによる伝達ミスも抑えられます。

クラウドで記録を一元管理できるため、日勤・夜勤を問わず最新の申し送り内容を確認でき、新任のスタッフでも同じ情報を同じ形で把握できます。タブレットやスマートフォンから入力・確認ができれば、その場で記録した内容がすぐ共有され、シフト交代を待たずに急な体調変化を伝えることもできます。申し送りを紙や口頭から電子化する具体的な進め方を検討したい場合は、申し送りの電子化とは?メリット・費用・進め方を解説も参考になります。

比較の観点で整理すると、記録と申し送りが連携した仕組みは「転記の手間がない」「同じ情報をチーム全員が同じ形で確認できる」という点で、紙やExcelの運用が抱えやすい二度手間・情報の分散を避けやすくなります。記録のICT化がすでに事業所の75.4%まで広がっていること(介護労働安定センター、令和6年度調査・2026年6月時点)を踏まえると、申し送りも記録と切り離さずに設計するほうが、現場の実態に合いやすいといえます。読者の判断としては、まず記載項目とチェックリストで土台を固め、そのうえで「記録と申し送りがつながるか」を軸にツールを比べるのが、失敗の少ない進め方です。

よくある質問(FAQ)

介護の申し送りで必ず伝えるべき項目は?

利用者名・日時・担当者・バイタル/体調変化・食事/水分摂取・排泄・服薬・事故/ヒヤリハット・家族対応・特記事項・次シフトへの申し送り事項が基本です。これらを記載項目としてテンプレートに固定すると、職員ごとの抜けや粒度のばらつきを抑えられます。

申し送りの例文はどう書けばいい?

「結論 → 具体的な事実 → 次の対応・注意点」の順に書くと簡潔に整います。たとえば「本日37.8℃の発熱。食事は3割摂取。夜間も体温の経過観察をお願いします」のように、数値と次にしてほしいことをセットにすると、受け手がすぐ動けます。

申し送り漏れを防ぐには?

口頭依存・記録漏れ・フォーマット未統一・時間不足・ITスキル差という5つの原因に、記載項目の統一とチェックリスト、記録と申し送りの連携で対処します。個人の注意力ではなく、誰でも同じ形で記録・確認できる仕組みを先に用意することが効果的です。

夜勤の申し送りで気をつけることは?

夜間の睡眠状況、排泄回数・失禁の有無、急変・ナースコール対応の履歴、翌朝への注意事項を重点的に確認します。日中とは見るべき点が変わるため、夜勤帯専用のチェックポイントを用意しておくと、引き継ぎの抜けを防げます。

まとめ

介護の申し送りは、記載項目・例文・チェックリストをテンプレートとしてそろえることで、伝え漏れと職員ごとの質のばらつきを大きく減らせます。まずは統一フォーマットで「何を書くか」を固め、シーン別の例文で「どう書くか」をそろえ、チェックリストで「言い忘れ」を防ぐ。さらに、漏れの原因を仕組みで対処し、管理者が運用ルールを整えることで、現場全体の申し送り精度が安定します。記録と申し送りを連携できるデジタル化まで進めば、転記の手間や確認作業も減らせます。忙しい現場でも続けられる形から一つずつ取り入れ、迷わず・漏れなく・簡潔に伝えられる体制づくりにつなげていきましょう。

申し送りの記録・標準化を仕組み化するならcarebase(ケアベース)

carebase(ケアベース)は、ケア記録に入力した内容をそのまま申し送りに反映できる介護記録・情報共有ツールです。記載項目をテンプレートで統一し、記録と申し送りを連携させることで、転記の手間や伝え漏れを減らしながら、新任スタッフでも同じ形で情報を把握できる運用に近づけます。申し送りはコメント機能で双方向にやり取りでき、既読・未読チェックで伝達状況を確認できます。AIによる多言語翻訳(外国語⇔日本語)で外国人スタッフとの伝達ミスも抑えられ、クラウドでの一元管理やタブレット・スマートフォンからの入力にも対応しています。

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