2026.8.21
介護施設の目標具体例|施設・ユニット・個人別の書き方と評価
介護施設の目標は、施設全体・ユニット・職員個人の3階層に分け、数値で測れる形にすると具体例として機能します。厚生労働省のガイドラインも、改善活動のゴールを定めるときに定量的に測定できる内容かを確認するよう示しています。3階層の目標例と、日々の記録から評価につなげる手順まで確認できます。
目標と日々の記録をひとつにつないで運用したい方は
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介護施設の目標を3階層に分けて考える
3階層で測る数字の取り所が変わるため、同じ言葉で書くと評価軸が決まらない(出所: 厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」に基づき編集部作成)
介護施設の目標は、施設全体・ユニット・職員個人の3階層に分けると役割が整理できます。施設全体は経営と安全の方針、ユニットは自分たちが動かせる範囲の実行計画、個人は担当業務と育成の到達点を担います。3階層が同じ言葉で書かれていると、どこで何を測るのかが決まりません。
施設全体・ユニット・職員個人で役割が違う
施設全体の目標は、経営層が1年間の方向を示すものです。安全管理や稼働率のように、法人や行政への説明にも使う内容が中心になります。ユニットやフロアの目標は、その方向を自分たちの担当利用者と勤務時間の範囲に落とし込んだ内容になります。個人の目標は、担当業務の質と本人の育成の両方を扱います。
前提として、人員を増やして目標を達成する設計は取りにくくなっています。厚生労働省の推計では、介護職員の必要数は2040年度に約272万人で、2022年度の約215万人から約57万人の増加が必要とされています(厚生労働省、2026年8月時点)。だから施設の目標は、増員を前提にせず、同じ人数での進め方を変えることで動かせる範囲に置くほうが現実的です。人手不足の背景は介護の人手不足の現状と原因で詳しく扱っています。
「測定できる目標」を国のガイドラインが求めている
厚生労働省の「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」は、改善活動のゴールを設定する際に、振り返りで進捗や成果を共有できるよう、あらかじめ定性的・定量的に測定できる内容であるかを考えることが大切だとしています(厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」(令和6年度改訂版)、2026年8月時点)。
比較軸で見ると、目標の良し悪しは文面の抽象度ではなく、振り返りのときにどの数字を見るかが決まっているかで判定できます。「利用者に寄り添ったケアを行う」という文は、抽象的だから弱いのではなく、見る数字がないから評価できません。まずは、書こうとしている目標に測定できる数字が付いているかを確認するところから始めます。
施設全体の年間目標の具体例
結果の指標だけを置くと報告をためらう動きが生まれるため、4テーマとも行動側の指標を対にする(出所: 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」の委員会検討事項に基づき編集部作成)
施設全体の年間目標は、安全管理・稼働率と経営・人材育成・利用者のQOLの4テーマに割ると重複なく整理できます。この4テーマは、令和6年度介護報酬改定で設置が規定された委員会の検討事項(利用者の安全とケアの質の確保、職員の負担軽減、介護機器の点検、職員に対する研修)とも重なるため、後で制度上の説明資料にも流用しやすくなります(厚生労働省、2026年8月時点)。
| テーマ | 年間目標の例(数値は自施設の実績値を入れる枠) |
|---|---|
| 安全管理・事故防止 | 転倒事故の報告件数を前年比◯件減/誤薬の発生件数を年間◯件以内/ヒヤリハット報告を全職員が年◯件以上提出 |
| 稼働率・経営 | 平均稼働率◯%以上を12か月維持/入居相談から入居までの平均日数を◯日短縮/緊急ショートステイの受け入れ件数を年◯件 |
| 人材育成・定着 | 義務化された研修の受講完了率100%/新人職員の独り立ちまでの期間を平均◯か月に短縮/年度内の離職者数を◯人以内 |
| 利用者のQOL・自立支援 | 個別ケアプランのモニタリング実施率100%/行事・レクリエーションの平均参加率◯%以上/おむつ使用者のうちトイレでの排泄へ移行した人数◯人 |
安全管理・事故防止の目標例
安全管理の目標は、事故の「件数」と、事故に至る前の「報告数」を分けて置くと運用しやすくなります。事故件数だけを目標にすると、報告をためらう動きが生まれるためです。ヒヤリハットの報告件数は増えるほうが望ましい指標として、事故件数とは逆方向で設定します。
服薬に関する目標であれば、「誤薬の発生件数を年間◯件以内」に加えて、「配薬時のダブルチェック実施率100%」のように行動側の指標を組み合わせます。原因と対策の整理は介護施設の誤薬対策が参考になります。
稼働率・経営の目標例
稼働率の目標は、年間の平均値だけでなく、下限を割らない月数で置くと現場の動きに結びつきます。「平均稼働率◯%以上」と「稼働率が◯%を下回る月をゼロにする」を並べると、繁忙期と閑散期で対応が変わります。
相談から入居までの日数、見学件数、退居後の空室日数なども、施設側の動きで短縮できる数字です。いずれも入居相談の記録と入退居の管理簿から取れるため、目標のために新しい集計を作らずに済みます。
人材育成・定着の目標例
人材育成の目標は、研修の「実施回数」ではなく「対象者の受講完了率」で置くと、進捗がそのまま記録として残ります。実施回数だけでは、誰が受講できていないかを別途集計する必要が生じるためです。
介護施設には、虐待防止や感染対策など実施が義務づけられた研修があります。年間計画に組み込む研修の種類と回数は介護施設の法定研修で整理しています。定着の目標は、離職者数のような結果指標と、面談の実施率のような行動指標を組み合わせると、期の途中でも手を打てます。
利用者のQOL・自立支援の目標例
利用者に関わる目標は、ケアの結果そのものより、ケアを見直す機会の確保で置くほうが測りやすくなります。「個別ケアプランのモニタリング実施率100%」「担当者会議を計画どおりに開催した割合◯%」は、記録から数えられます。
水分摂取量やトイレでの排泄回数のように、日々の記録に含まれる項目を目標にする方法もあります。この場合は、記録の書き方が職員によってばらつかないことが前提になります。安全・稼働率・育成・QOLの4テーマを1枚に並べ、それぞれに測る数字を置いておくと、年間目標がそのまま月次の確認項目として使える状態になります。
ユニット・フロア・委員会の目標具体例
施設目標の掲げ直しを避けるため、単位ごとに絞り込む対象が変わる(月末に数字を確認する係を1人置く運用が前提)(出所: 施設・ユニット・委員会別の目標の書き分けの整理に基づき編集部作成)
ユニットや委員会の目標は、施設の年間目標を自分たちが動かせる範囲まで分解したものになります。施設全体の目標をそのまま掲げ直すと担当が曖昧になるため、対象となる利用者・場面・行動を限定して書きます。委員会は活動テーマがすでに決まっているぶん、件数や実施率で測りやすい単位です。
ユニット・フロアの目標例
ユニットの目標は、「誰の」「どの場面で」を明示すると具体化します。「食事時の見守り体制を見直し、食事中の離席による転倒をゼロにする」「夜間帯の巡回記録を全員が当日中に入力する」のように、時間帯と行動をセットで書きます。
フロア単位では、申し送りにかかる時間や、記録の入力が翌日に持ち越される件数も指標になります。いずれも交代のたびに発生する業務のため、短縮の効果が毎日積み上がります。ユニットごとに担当を1人決め、月末に数字を確認する係を置くと、目標が掲示物のままで終わりにくくなります。
委員会(事故防止・感染対策・褥瘡)の目標例
| 委員会 | 目標の例 |
|---|---|
| 事故防止 | ヒヤリハット報告を月◯件以上収集し、うち◯件を対策の実施まで完了する |
| 感染対策 | 手指衛生の実施状況チェックを月1回実施し、指摘事項を翌月までに改善する |
| 褥瘡対策 | 褥瘡リスク評価を全利用者に月1回実施/新規発生者数を年◯人以内 |
| 身体拘束適正化 | 検討会を3か月に1回以上開催し、議事録を全職員が閲覧できる状態にする |
委員会の目標は、開催回数だけで終えず「収集した情報をどこまで処理したか」を含めると活動が動きます。報告の集め方と様式は介護のヒヤリハット事例集と報告書の書き方で扱っています。
月間テーマとスローガンの作り方
月間テーマは、年間目標の中から1か月で扱う範囲を切り出したものになります。年間目標が「転倒事故の削減」であれば、6月は「梅雨の床の滑り」、12月は「厚着による動きにくさ」のように、季節要因で切ると内容が重複しません。
スローガンは覚えやすさを優先してよい一方、掲示だけで終わらないよう、裏側に数字の目標を1つ紐づけておきます。標語と指標が対になっていれば、月末の会議で確認する材料が自動的に決まります。
職員個人の目標具体例
経験年数で変わるのは目標の難度ではなく、到達点を誰の側に置くかという書き方そのもの(出所: 経験段階別の到達点の置き方の整理に基づき編集部作成)
職員個人の目標は、経験年数によって求められる役割が変わるため、新人・中堅・ベテランで軸を分けて書きます。新人は基本動作の習得、中堅は専門性と後輩指導、ベテランは仕組みづくりが中心です。職種が違えば担当業務も変わるため、看護職員や生活相談員は自分の業務範囲に置き換えます。
| 段階 | 中心になる軸 | 目標の例 |
|---|---|---|
| 新人(1〜3年目) | 基本動作の習得・記録 | 移乗介助を◯月までに単独で実施できる/夜勤明けまでに当日の記録入力を完了する |
| 中堅(4〜9年目) | 専門性・後輩指導 | 認知症ケアの研修を受講し、ユニット内で伝達研修を年◯回実施する |
| ベテラン・リーダー(10年目〜) | 仕組みづくり・改善 | 申し送りの手順書を作成し、所要時間を1回あたり◯分短縮する |
新人(1〜3年目)の目標例
新人の目標は、できるようになる時期を月で区切ると進み具合が見えます。「6月までに食事介助を1人で実施できる」「9月までに入浴介助の一連の流れを担当する」のように、業務ごとに到達月を置きます。
記録に関する目標は、量より提出のタイミングで置くほうが確認しやすくなります。「勤務終了までに担当利用者全員の記録入力を終える」は、入力時刻から判定できます。資格については、「介護職員初任者研修を◯月までに修了する」「介護福祉士実務者研修の受講を◯月に開始する」のように、申込と修了の両方を書くと途中経過が分かります。
中堅(4〜9年目)の目標例
中堅の目標は、自分の業務の質に加えて、他の職員への広がりを含めると役割に合います。「認知症介護実践者研修を受講し、学んだ内容をユニット会議で年3回共有する」のように、受講と共有を1組で書きます。
業務改善に関する目標も中堅の担当範囲です。「記録の重複入力を洗い出し、◯項目を削減する」「申し送り事項の様式を統一し、伝達漏れの報告件数を◯件以内にする」のように、対象と削減幅を先に決めます。後輩指導では、指導した回数ではなく「担当した新人が◯月までに夜勤に入れる状態になる」と、相手側の到達で置くと成果が明確になります。
ベテラン・リーダー(10年目〜)の目標例
ベテランの目標は、個人の技術より、他の職員が同じようにできる状態をつくる方向で書きます。「入浴介助の手順を動画で整備し、新人が説明なしで手順を確認できる状態にする」「事故報告の様式を見直し、記入時間を1件あたり◯分短縮する」などが該当します。
チーム全体の数字を担当することもあります。「ユニットの残業時間を月平均◯時間削減する」「年次有給休暇の取得日数を前年より増やす」は、勤怠データから確認できるため、期中でも進み具合が分かります。
看護職員・生活相談員など職種別の目標例
看護職員の目標は、医療的な観察と、介護職員への情報の橋渡しの2軸で置きます。「バイタルの異常値を検知した際の報告手順を整備し、対応開始までの時間を短縮する」「服薬管理の手順書を更新し、介護職員向けの説明会を年◯回実施する」といった形です。
生活相談員であれば、相談から入居までの日数、家族への連絡頻度、担当者会議の開催率が指標になります。ケアマネジャーは、ケアプランの更新期限の遵守率やモニタリングの実施率が該当します。職種が違っても、担当業務のなかで記録に残る動きを探す手順は同じです。
評価される目標の立て方
厚生労働省のガイドラインは、目標のゴールを定める段階で定量的に測定できる内容かを確認するよう示しています。同ガイドラインは改善活動を6つのステップに整理し、実行計画は長くとも3か月程度の期間で考えることを勧めています(厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」(令和6年度改訂版)、2026年8月時点)。文例を選ぶ前に、測る数字と期間を決める順番になります。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 改善活動の準備 | 取り組むチームと担当者を決め、目的を全体に共有する |
| 2. 現場の課題を見える化 | 現場の意見を集め、業務時間の調査などで課題を明らかにする |
| 3. 実行計画を立てる | ゴールと成果を測る指標を定め、3か月程度の計画に落とす |
| 4. 改善活動に取り組む | まずは実行し、試行錯誤を繰り返す |
| 5. 改善活動を振り返る | あらかじめ定めた成果指標を測定し、うまくいった点といかなかった点を整理する |
| 6. 実行計画を練り直す | 分析を加え、他の取組も含めて計画を修正する |
データ出典: 厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン(令和6年度改訂・共通冊子)」を基に作成(2026年8月時点)
課題の見える化から始める
ガイドラインは、実行計画の前段に「現場の課題を見える化」の段階を置き、現場の意見を集めて業務時間調査や因果関係の整理により課題を明らかにするとしています(同ガイドライン、2026年8月時点)。
目標が思いつかない状態の背景には、この段階を飛ばしていることがあります。文例集から選ぼうとすると自施設の課題と結びつかず、翌年も同じ文面に戻ります。先に「今いちばん時間がかかっている業務」「直近3か月で報告が多かった場面」を洗い出すと、目標の候補は自動的に絞られます。改善の進め方は介護の業務改善事例と効率化の手法にまとめています。
成果を測る指標を先に決める
ガイドラインは、実行計画をつくる「進捗管理シート」の段階で成果を測定する指標を定め、測定できる指標を検討して可能な限り数値化した目標を設定するよう示しています(同ガイドライン、2026年8月時点)。
比較軸で見ると、指標を後回しにした目標は、振り返りの段階で「やった気はするが説明できない」状態になります。指標を先に決める順序は、文面を先に書いてから数字を足す順序より、期中の修正が効きます。目標文を書く前に「この目標は何の数字が動けば達成といえるか」を1行でメモしておくと、書き始めやすくなります。
期間は3か月単位で区切る
ガイドラインは、長期の計画は途中で気疲れするとして、実行計画を長くとも3か月程度の期間で考えることを意識するよう示しています(同ガイドライン、2026年8月時点)。
年間目標を掲げること自体は必要ですが、年度末まで確認の機会がない設計では修正が効きません。年間目標を4つの3か月に割り、それぞれに到達点を置くと、期の途中で軌道を戻せます。生産性向上の取組全体の進め方は介護の生産性向上とはで詳しく解説しています。
施設の目標を個人目標へ落とし込む
施設の年間目標を各ユニットの実行計画に分け、そこから職員個人の目標へ下ろすと、階層のつながりが保てます。「転倒事故の報告件数を前年比10件減」という施設目標であれば、ユニットは「夜間帯の巡回時に居室内の動線を毎日確認する」、個人は「担当利用者3名の履物を◯月までに見直す」といった形に分かれます。
落とし込みで確認したいのは、下の階層の目標をすべて達成したときに上の階層が達成できるかという点です。つながりが切れている場合は、途中のユニット目標が施設目標の言い換えになっていないかを確認します。ここまでの順序を守ると、目標は文例を選ぶ作業ではなく、測る数字と期間を先に決める設計作業になります。
施設の目標を各ユニットの実行計画まで分けて進めたい方は
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数値目標に使えるKPIの選び方
生産性向上推進体制加算では、業務改善の成果を確認する項目が3つに定義されています。利用者の満足度等の評価、介護職員の総業務時間と超過勤務時間、年次有給休暇の取得日数の3つです(厚生労働省、2026年8月時点)。施設のKPIをこの3つに合わせておくと、目標の振り返りと制度上の報告を同じ数字で説明できます。
国の加算が成果確認に使う3つの指標
| 項目 | 確認の内容 |
|---|---|
| 利用者の満足度等の評価 | WHO-5調査(利用者の満足度の変化)と認知機能の変化に関する調査で、悪化(数値の低下)がみられないこと |
| 業務時間及び超過勤務時間 | 介護職員の1月あたりの総業務時間と残業時間が、導入前の同月と比べて短縮していること |
| 年次有給休暇の取得状況 | 取得日数が、導入前の直近の同期間と比べて維持または増加していること |
データ出典: 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」資料(生産性向上推進体制加算について)を基に作成(2026年8月時点)
この3項目は、業務改善の成果を「利用者側の状態を落とさずに、職員側の負担を減らせたか」という形で定義しています。データ上は、片方だけが良くなった状態を成果として認めない構造です。施設のKPIを決めるときも、負担軽減の指標と利用者側の指標を対にしておくと、片側だけが進む目標を避けられます。
施設で無理なく取れるKPIの例
KPIは、測りたい数字ではなく、日々の運用ですでに残る数字から選ぶと集計の負担が増えません。勤怠システムから取れるもの(総労働時間、残業時間、年休取得日数)、介護記録から取れるもの(記録の入力完了率、モニタリング実施率、水分摂取量)、既存の帳票から取れるもの(事故報告件数、ヒヤリハット報告件数、稼働率)に分けて棚に並べると選びやすくなります。
新しく集計作業を増やす指標は、最初の3か月で止まります。どうしても必要な指標だけを1つに絞り、残りは既存の記録から取れるものに置き換えてください。指標の数は、施設全体で5つ前後、ユニットで2〜3つが確認を続けやすい範囲です。
なお、数値化した指標だけで人事評価の可否まで判定する運用にすると、達成しやすい水準へ目標が寄る側面もあります。指標は進捗の確認に使い、評価の場では取り組みの内容と合わせて見る形にすると、数字合わせに寄りにくくなります。
目標と日々の記録をつなげて振り返る
目標が評価できる形になるかどうかは、指標ごとに測定源が決まっているかで決まります。測定源とは、その数字をどの記録・帳票から取るかという対応づけです。ガイドラインの業務時間見える化ツールは、調査日に勤務する全職員(調理や事務の職員を含む)が1日24時間分を記録する設計になっており(同ガイドライン、2026年8月時点)、都度の調査だけに頼る方法は続けにくくなります。
KPIごとに測定源を決める
| KPI | 測定源(数字を取る場所) | 取得の手間 | 制度上の位置づけ |
|---|---|---|---|
| 総業務時間・残業時間 | 勤怠システムの月次集計 | 小(既存データ) | 生産性向上推進体制加算の成果確認項目 |
| 年次有給休暇の取得日数 | 年次有給休暇管理簿 | 小(既存データ) | 同上 |
| 利用者の満足度・認知機能の変化 | 定期の評価調査 | 中(調査の実施が必要) | 同上 |
| 記録の入力完了率 | 介護記録システムの入力時刻 | 小(既存データ) | 運営指導で確認される記録の整備 |
| モニタリング実施率 | ケアプランのモニタリング記録 | 小(既存データ) | 運営基準上の実施記録 |
| ヒヤリハット・事故報告件数 | 事故報告書・ヒヤリハット報告書 | 小(既存データ) | 事故発生の防止のための委員会の検討材料 |
| 研修の受講完了率 | 研修受講記録・受講管理表 | 中(受講状況の集約が必要) | 委員会の検討事項「職員に対する研修」 |
| 1回あたりの申し送り時間 | 申し送り記録の開始・終了時刻 | 中(記録方法の取り決めが必要) | 直接の制度要件なし |
データ出典: 厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」および「令和6年度介護報酬改定」資料(生産性向上推進体制加算について)を基に作成(2026年8月時点)
比較軸で見ると、取得の手間が「小」の指標は、目標のためだけの作業が発生しません。だから最初の期は「小」の行だけでKPIを組み、運用が回ってから「中」の行を足す進め方をとると、振り返りが途切れにくくなります。
振り返りの頻度と目標管理シート
ガイドラインは、業務改善活動を始めたら定期的に進捗管理シートを振り返り、月1回から2週間に1回程度の振り返りが理想だとしています(同ガイドライン、2026年8月時点)。振り返りでは、実行計画の段階で決めた成果の指標を測定します。
目標管理シートに書く項目は、目標文・指標・測定源・現在値・目標値・確認日・担当者の7つで足ります。このうち現在値だけが毎回変わるため、測定源が既存の記録であれば、更新作業は数分で終わります。年1回の面談だけで運用すると、期の途中で修正できません。制度側にも、提出したデータのフィードバックを活用してPDCAサイクルを実践する仕組みとして科学的介護情報システム(LIFE)が用意されています(厚生労働省、2026年8月時点)。
記録に残らない目標は評価できない
「利用者に丁寧に接する」「チームワークを高める」といった目標は、達成したかどうかを後から確認できません。同じ内容でも、「担当利用者の生活歴を◯月までに記録へ反映する」「申し送り事項の未読者をゼロにする」と書けば、記録から確認できます。
記録の書き方が職員によってばらつくと、指標として使える精度になりません。書き方の基準は介護記録の書き方完全ガイドにまとめています。運営指導では記録の整備状況が確認されるため、目標のために整えた記録はそのまま説明資料としても使えます。実際に確認される項目については、介護の実地指導(運営指導)チェックリストもあわせてご確認ください。指標と測定源を対にしておけば、振り返りは「数字を探す作業」ではなく「数字を見て次を決める作業」になります。
目標設定でつまずきやすい点と対処
目標が書けない原因は発想の不足ではなく、課題の見える化と測定源の決定を飛ばしていることにあります。詰まった箇所によって戻る先が変わります。文面が浮かばないなら課題の洗い出しへ、抽象的だと指摘されたなら指標の決定へ、去年と同じになるなら前期の振り返りへ戻します。
目標が思いつかないとき
先に目標文を考えず、直近3か月で時間がかかった業務と、報告が多かった場面を5つずつ書き出してください。そのうち自分の権限で動かせるものに印を付けると、候補は2〜3つに絞られます。
権限の外にある課題(人員配置や施設設備など)は、個人目標ではなくユニットや施設の目標として上げます。ここを分けずに個人目標へ入れると、達成できない状態が固定されます。書き出す作業自体は10分程度で終わるため、文例を探し続けるより早く候補が固まります。
抽象的な目標になってしまうとき
「積極的に」「丁寧に」「しっかり」といった副詞が入っている目標は、指標が決まっていないサインです。副詞を消して、代わりに「何を」「いつまでに」「どれだけ」を入れると具体化します。
たとえば「積極的にコミュニケーションを取る」は、「担当利用者5名それぞれと週1回以上、5分以上の会話の時間を持ち、内容を記録に残す」と書き換えられます。書き換えた後に、その数字がどの記録から取れるかを1行付け加えておくと、評価の段階で迷いません。
昨年と同じ目標を繰り返してしまうとき
同じ目標に戻る場合、前期の振り返りが行われていないか、達成の判定ができていないかのどちらかです。ガイドラインも、成果が得られなかった場合はどこが計画と違ったのかを分析し、他の取組も含めて実行計画を練り直すよう示しています(同ガイドライン、2026年8月時点)。
前期の目標をそのまま引き継ぐこと自体は問題ではありません。引き継ぐなら、指標か手段のどちらかを変えます。指標が達成できていたのに課題が残っているなら、指標の選び方を見直す番です。
よくある質問
介護施設の年間目標にはどのような例がありますか
安全管理・事故防止、稼働率と経営、人材育成と定着、利用者のQOLと自立支援の4テーマに分けて置く方法が扱いやすくなります。「転倒事故の報告件数を前年比◯件減」「平均稼働率◯%以上を12か月維持」「義務化された研修の受講完了率100%」のように、テーマごとに測れる数字を1つずつ設定します。
目標管理シートには何を書けばよいですか
目標文・指標・測定源・現在値・目標値・確認日・担当者の7項目で運用できます。このうち測定源(どの記録から数字を取るか)を書いておくと、更新のたびに集計方法を思い出す必要がなくなります。厚生労働省のガイドラインでも、実行計画の段階で成果を測定する指標を定めることが示されています(同ガイドライン、2026年8月時点)。
看護職員の目標は介護職員と分けて設定すべきですか
担当業務が異なるため、指標は分けて設定します。看護職員は医療的な観察と介護職員への情報の橋渡しが中心になるため、「異常値の検知から報告までの手順を整備する」「服薬管理の説明会を年◯回実施する」といった形になります。施設全体の年間目標は共有し、そこから下ろす指標だけを職種別に変える方法が扱いやすくなります。
期の途中で目標を変更してもよいですか
状況が変わった場合の修正は想定されています。厚生労働省のガイドラインは、振り返りの結果、計画どおりの成果が得られなかった場合に、どこが計画と違ったのかを分析して実行計画を練り直すよう示しています(同ガイドライン、2026年8月時点)。変更する際は、変更前の目標と指標、変更した理由を記録に残しておくと、期末の評価で説明できます。なお人事評価に連動する個人目標の扱いは施設の規程によるため、変更の可否は自施設の人事担当へ確認してください。
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目標を運用に乗せられるかどうかは、指標の数字が日々の業務でそのまま残るかという軸で決まります。この軸で見ると、記録・申し送り・教育が別々のシステムや紙に分かれている状態では、KPIの集計のたびに転記が発生します。
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まとめ
介護施設の目標は、施設全体・ユニット・職員個人の3階層に分け、それぞれに測れる数字を1つずつ置くと具体例として機能します。判断の軸は3つで、目標文の抽象度ではなく指標が決まっているか、指標の測定源が日々の記録にあるか、3か月単位で振り返る機会があるかです。まずは手元の目標を1つ選び、その数字をどの記録から取るかを1行書き足すところから始めてください。制度上の取り扱いや人事評価との連動は施設の規程や所管窓口によって異なるため、個別の判断は担当部署へご確認ください。
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