2026.8.21
外国人介護スタッフへの指導方法|伝わる教え方と育成マニュアルの作り方
外国人介護スタッフへの指導方法は、伝え方をそろえること、教える順番を決めること、その型を手順書に残すことの3つで組み立てます。同じ内容でも指導者ごとに言い方や順番が変わると、受け手は毎回別の手順として覚え直すことになるためです。教え方が文書に残っていれば、担当者が替わっても指導の中身はぶれません。在留資格ごとに教育の前提が変わる点は外国人介護士の教育の進め方で詳しく解説しています。
外国人スタッフへの教え方を職員間でそろえたい方は
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外国人スタッフへの指導が伝わらない原因はどこにあるか
紙に書くとわかるなら聞き取り、別の言い方でわかるなら語彙と、層ごとに打ち手が変わる(出所: 伝わらない原因の4層切り分けの整理に基づき編集部作成)
指導が伝わらない原因は、聞き取り・語彙・手順の粒度・確認方法の4つの層に分けて切り分けます。層が違えば打ち手も変わるため、聞き取りの問題に語彙の説明を重ねても改善しません。まずどの層で止まっているかを確かめてから、教え方を変えます。
| 層 | 起きていること | 見分け方 | 打ち手 |
|---|---|---|---|
| 1. 聞き取り | 音として拾えていない | 紙に書くと理解できる | 一文一動作で話し、文字を併記する |
| 2. 語彙 | 言葉の意味を知らない | 別の言い方だと理解できる | 用語リストで言葉をそろえる |
| 3. 手順の粒度 | 一度に複数の動作を渡している | どこで止まったか説明できない | 手順を1つずつに割って確認する |
| 4. 確認方法 | 分かったつもりで先へ進む | 返事はあるが再現できない | 口頭確認をやめ、実演してもらう |
聞き取れていないのか、言葉を知らないのかを分ける
返事があっても手順を再現できない場合、判別は2つの方法でできます。紙に書いて見せて理解できるなら、意味はわかっており音を拾えていない状態です。別の言い方に置き換えて理解できるなら、その言葉自体を知らない状態です。介護現場の言葉には略語や施設ごとの言い回しが混ざるため、日本語の試験の等級だけで「基礎はできているはず」と判断すると、語彙の詰まりを見落とします。
手順の粒度と確認方法を見直す
1回の指示に3つ以上の動作が入ると、受け手はどこで止まったのかを自分でも説明できません。「シーツを交換して、汚れ物を分けて、記録に残す」は3手順です。1手順ずつ区切って確認すると、詰まった箇所が特定できます。
確認の言葉も変えます。「分かりましたか」には「はい」以外を返しにくく、確認として機能しません。その場でやってみせてもらい、通してできた手順と止まった手順を分けて記録すると、次の指導をどこから始めるかが決まります。原因の層を特定しないまま「もっと丁寧に教える」を繰り返すと、打ち手が毎回同じになり、指導時間だけが増えます。
現場で伝わる教え方の4ステップ
各ステップで避ける行為まで対にすると、口頭説明だけで終わる指導を防げる(出所: 指導4ステップ(説明・実演・再現・記録)の整理に基づき編集部作成)
教え方は「説明する」「やってみせる」「やってもらう」「確認する」の4ステップにそろえます。言葉での説明だけで終えると、細かい動作が伝わらないまま作業に入ることになります。実演と再現を挟むと、理解できていない箇所がその場でわかります。
| ステップ | 指導者がやること | やらないこと |
|---|---|---|
| 1. 説明する | その日に覚える範囲と手順の目的を伝える | 例外や応用まで一度に話す |
| 2. やってみせる | 実際の順番どおりに動作を見せる | 口頭だけで手順を説明する |
| 3. やってもらう | 最初から通してやってもらう | 途中で口を挟んで正解を教える |
| 4. 確認する | できた手順と詰まった手順を分けて記録する | 「分かりましたか」で締める |
やさしい日本語で1手順ずつ伝える
伝え方の工夫は3つに絞れます。1つ目は一文一動作で、1つの文に1つの動作だけを入れます。2つ目は「これ」「そっち」の指示語を固有の名前に置き換えることです。3つ目は「早めに」ではなく「10時までに」と、時間と数を具体語にすることです。
やってみせる場面は動画にして残すと再利用できます。同じ説明を毎回繰り返さずに済み、本人も勤務の合間に見返せます。研修動画の作り方は介護の研修動画とはで扱っています。
用語・声かけ・記録の3方向で言葉を教える
介護特定技能評価試験の日本語評価試験は、「介護のことば」5問、「介護の会話・声かけ」5問、「介護の文書」5問の全15問で構成されています(厚生労働省、2026年8月時点)。公的に測られている日本語の力は、語彙・会話・記録の3方向に分かれているということです。
現場の指導では、このうち会話の部分だけが対象になりがちです。話し方の工夫だけを指導範囲にすると、他職種へ引き継がれる記録の書き方が抜けたまま残ります。指導の言語面は3方向に分けて設計し、記録の指導を後回しにしない構成にします。
入職から3か月の指導順序をどう決めるか
左ほど間違えたときの影響が大きい手順、右ほど判断を要する業務という並びで順序を固定する(出所: 3か月の指導順序の組み立ての整理に基づき編集部作成)
教える順番は、事故につながりやすい手順を先に、判断を要する業務を後に置いて固定します。順番を担当者ごとの裁量に任せると、同じ時期に入った人でも覚えている範囲がそろいません。到達目標を時期で区切っておけば、引き継ぎのときに何を教え終えたかを伝えられます。
| 時期 | 到達目標 | 主に教える手順 | 確認方法 |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 施設内で安全に動ける | 移乗・移動の介助、緊急時の呼び出し | 手順を通して実演してもらう |
| 1か月目 | 決まった時間帯を一人で回せる | 食事・排泄・入浴の介助、申し送り | 実演と記録内容の確認 |
| 3か月目 | 変化に気づいて報告できる | バイタルの記録、夜勤の流れ | 報告内容の確認と振り返り面談 |
先に固定するのは、間違えたときの影響が大きい手順です。移乗の介助や緊急時の連絡は、判断の余地を残さず1つの型で覚えてもらいます。利用者の状態に応じて対応を変える業務は、基本の手順が身についてから広げます。
やってみせる手順を動画に残したい方は
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育成マニュアル(指導手順書)の作り方
用語リストは自作から始めず、14言語の専門用語集と15言語の学習用テキストで共通語彙をそろえる(出所: 厚生労働省の多言語教材に基づき編集部作成)
育成マニュアルは、公的に求められている指導行為を記載項目の骨格に置き、そこへ自施設の手順を足して作ります。厚生労働省は訪問系サービスへ従事させる場合の遵守事項として、業務の基本事項に関する研修や責任者等の同行訓練などを挙げています(厚生労働省、2026年8月時点)。この並びを目次として借りると、記載項目の抜けを点検できます。
公的に求められる指導行為を骨格にする
訪問系サービスへ従事させる場合、受入事業所は5点を遵守することとされています。業務の基本事項等に関する研修、一定期間にわたる責任者等の同行訓練、業務内容を説明し意向を確認したうえでのキャリアアップ計画の作成、ハラスメント防止のための相談窓口の設置等、不測の事態に対応するための情報通信技術の活用を含めた環境整備の5点です。従事には介護事業所等での実務経験が1年以上あることが原則とされています(厚生労働省の同通知、2026年8月時点。技能実習は2025年4月1日、特定技能は2025年4月21日に施行)。
これは訪問系サービスの要件であり、施設系サービスだけの事業所にそのまま適用されるものではありません。ただし比較軸を「公的に求められる指導行為を網羅しているか」に置くと、5点は教える内容・教える人・計画・相談先・環境という構成要素をひととおり押さえています。
5点を手順書の目次に置き換える
5点を手順書の目次に置き換えると、施設系の事業所でも記載項目の抜けを機械的に点検できます。置き換えると次の形になります。
| 公的に求められる指導行為 | 育成マニュアルに書く項目 | 残す記録 |
|---|---|---|
| 業務の基本事項に関する研修 | 手順ごとの目的と手順書本体 | 受講した日と範囲 |
| 責任者等による同行訓練 | 同行する期間と確認する手順の一覧 | 実演できた手順 |
| 業務内容の説明と意向確認、計画の作成 | 時期別の到達目標と面談の記録欄 | 面談の内容と次の目標 |
| 相談窓口の設置等 | 困ったときの連絡先と相談できる時間帯 | 周知した日 |
| 情報通信技術の活用を含む環境整備 | 手順書と動画の保管場所、閲覧の方法 | 閲覧できることの確認 |
データ出典: 厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」(2026年8月時点)
手順書の粒度は1手順1行と写真か動画でそろえる
手順書は文章量が増えるほど読み返されなくなります。1手順を1行で書き、判断が分かれる箇所だけ注記を足します。文字で説明しきれない動作は、写真か短い動画を1枚差し込むほうが早く伝わります。
手順の名前は現場で実際に使っている呼び方に統一します。正式名称と現場の呼び名が違うと、本人が手順書から目的の項目を探せません。マニュアル全般の作り方は介護マニュアルの作り方と義務化対応にまとめました。
用語リストは公開されている教材を土台にする
厚生労働省の補助事業では、外国人のための介護福祉専門用語集が14言語、介護特定技能評価試験の学習用テキストが改訂2版(2025年3月)として15言語で無料公開されています(厚生労働省、2026年8月時点)。ゼロから作る場合は語彙の選定から始めることになりますが、公開教材を土台にすれば共通語彙はそろっており、固有の呼び名を足すだけで済みます。
用語リストは自作から始めず、公開教材で共通語彙をそろえてから施設固有語を追加する順番が合理的です。翻訳まで踏み込む場合は介護マニュアルの多言語化で扱っています。手順書は一度作って完成させる文書ではなく、教えた実績を書き足していく前提で設計すると、更新が止まりません。
指導を属人化させないための運用
属人化を防ぐには、担当者を決めることと、手順を1か所に集めて受講の記録を残すことを別々に用意します。担当を決めただけでは、教える内容そのものは指導者ごとにばらついたままです。手順の集約と記録の両方がそろって、担当が替わっても同じ指導を再現できます。
メンター制度のように担当者を決める取り組みは、誰が教えるかを明確にします。ただし、教える内容をそろえる働きは持ちません。厚生労働省の遵守事項でも研修・同行訓練・計画・相談窓口・環境整備が並列で挙げられており、指導は人の配置と、記録や環境の整備の両輪で組み立てられています。自施設の点検は「手順が1か所に集約されているか」「誰がいつ受講し、どこまで実施したかを追えるか」の2点で足ります。
仕組みを入れても、誰が更新するかを決めずに運用すると、内容が古いまま使われなくなります。更新の担当者と見直しの頻度は、手順書の先頭に書いておきます。OJT頼みからの切り替え方は介護施設の新人教育マニュアル作成ガイドが参考になります。担当者が替わっても同じ手順が再現されるかどうかが、仕組みになっているかどうかの判断基準になります。
よくある質問
指導用のマニュアルは多言語に翻訳したほうがよいですか?
全文の翻訳は必須ではありません。動作は映像のほうが誤解なく伝わるため、まず写真や動画で手順を示し、翻訳は用語リストに絞る方法があります。翻訳が必要になるのは、判断の理由や注意点など、映像だけでは補いにくい説明の部分です。
同じことを何度説明しても定着しない場合、何を見直せばよいですか?
1回の指示に含まれる手順の数と、教える順番の固定を見直します。3つ以上の動作を一度に渡していると、どこで止まったかを本人も説明できません。覚えた手順を記録に残しておくと、次にどこから教えるかが決まります。
指導担当者は誰を選べばよいですか?
経験年数よりも、手順書のとおりに教えられることと、教えた内容を記録に残せることを基準にします。自分のやり方で教える人が担当になると、手順書と現場の教え方が食い違い、受け手が混乱します。
外国人スタッフの指導を仕組み化するならCareBase(ケアベース)
CareBase(ケアベース)は、介護記録・申し送りと教育動画をクラウド上で一元化するシステムです。介護施設向けに提供しており、手順書と動画を同じ場所に置いて運用できます。外国人スタッフ向けの多言語対応も備えています。
本記事の点検軸のうち、手順が1か所に集約されているかという条件は、記録・申し送り・教育を同じ画面で扱える仕組みであれば満たせます。誰がいつ受講したかという受講状況も、紙の一覧を別に作らずに追えます。ただし手順書や動画の中身は自施設で用意するため、導入時には撮影と初期設定の時間を見込んでおきます。
指導手順書と研修の受講状況をまとめて管理したい方は
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まとめ
外国人スタッフへの指導は、伝え方の型をそろえること、教える順番を時期で固定すること、その両方を手順書に残して更新することの3点で組み立てられます。伝わらないときは、聞き取り・語彙・手順の粒度・確認方法のどの層で止まっているかを先に確かめます。手順書の記載項目は、公的に求められている指導行為を目次として借りると抜けを点検できます。次の一手としては、いま口頭で伝えている手順のうち、直近1週間で2回以上説明したものを書き出すところから始められます。
伝え方の型を手順書に残して更新し続けたい方へ
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