carebase(ケアベース)コラム

2026.7.8

介護の申し送りのコツと進め方|ミスを防ぐ5つの実践ステップ

シニア女性に寄り添う介護福祉士(申し送り・引き継ぎのイメージ)

介護の申し送りミスは、個人の注意不足よりも仕組みの問題から起こることが多く、伝える項目の統一・口頭と記録の二重確認・優先順位づけで再現性を高めると減らせます。申し送りの基本と目的、伝えるべき内容の優先順位、ミスが起きる原因、そして現場で再現できる5つの実践ステップまでを、公的データに沿って整理します。

介護の申し送りとは?引き継ぎ・記録との違いと目的

申し送り・介護記録・引き継ぎを目的とタイミングと伝える範囲の3観点で対比した比較図解

申し送りは「直近の状態変化を伝える」、記録は「事実を残す」、引き継ぎは「業務全体を移管する」と役割が分かれる

申し送りは、勤務交代時に利用者の状態・ケア内容・注意点を次の担当者へ共有する業務で、記録(情報を残す)や引き継ぎ(包括的な業務移管)とは目的が異なります。

申し送りの目的は、24時間体制の介護でケアを途切れさせないことにあります。介護は日勤・夜勤と担当者が入れ替わりながら同じ利用者を支えるため、前のシフトで起きた利用者の変化や対応を次の担当者が把握できなければ、状態の悪化や事故の見落としにつながりかねません。申し送りは「伝える」ためのリアルタイムな共有であり、後から参照するために残す介護記録とは役割が分かれています。

引き継ぎとの違いも整理しておくと混乱を避けられます。引き継ぎは担当者の交代や退職時に業務全体を引き渡す広い概念で、申し送りはその中でも「この勤務帯で次に伝えるべき情報」に絞った日常的なやり取りです。両者を区別すると、申し送りで何を話すべきかが明確になります。介護記録・引き継ぎ・申し送りの三つを混同したまま運用すると、「記録に書いたのに口頭で伝えていない」「口頭で伝えたのに記録に残っていない」といったすれ違いが生じます。それぞれの役割を表で押さえておきましょう。

用語 主な目的 タイミング 伝える範囲
申し送り 勤務帯ごとの情報共有 シフト交代時・朝礼/終礼 直近の状態変化・注意点
介護記録 記録を残し後から参照 ケアの都度 経過の事実を網羅
引き継ぎ 業務全体の移管 担当変更・退職時 担当業務の全体像

申し送りが行われる場面は、シフト交代時だけではありません。朝礼・終礼でその日の予定や全体連絡を共有する場面、夜勤から日勤への交代で夜間の様子を伝える場面、日勤から夜勤への交代で日中のケアと夜間の注意点を伝える場面など、勤務形態に応じて複数のタイミングがあります。とくに夜勤帯は少人数で長時間を担うため、日勤への申し送りで夜間の状態変化が抜けると、その後のケアに影響が及びやすいという特徴があります。場面ごとに「誰に・何を・どこまで」伝えるかを意識すると、申し送りの精度が安定します。

介護現場で申し送りが重要になっている背景

従業員不足65.2%・人手不足の悩み49.1%・ICT記録機能の利用75.4%・昼間負担軽減49.4%を示す介護労働実態の統計図解

人手不足のなか申し送りの質が安全と定着を左右する(出所: 介護労働安定センター 令和6年度 介護労働実態調査を基に作成)

介護現場は人員に余裕のない事業所が多く、限られたスタッフで正確に伝える申し送りの質が、安全と職員の定着の両方を左右しています。

介護労働安定センターの「令和6年度 介護労働実態調査」では、従業員が不足していると回答した事業所が65.2%にのぼり、前年度の64.7%より上昇しました(介護労働安定センター、2025年7月公表)。労働条件・仕事の負担についての悩みでも「人手が足りない」が49.1%で最も高くなっています。人手が限られるほど、ひとつの伝達ミスが現場全体の負担に跳ね返ります。少ない人数で多くの利用者を担う体制では、申し送りで状態変化が共有されなければ、次のシフトが状況を一から把握し直すことになり、限られた時間がさらに圧迫されます。だからこそ、属人的な努力に頼らず、誰が伝えても要点が揃う仕組みを整えることが現実的な打ち手になります。

同じ調査では、ICT機器・介護ロボットの導入効果として「昼間の業務負担の軽減」に効果があるとした事業所が49.4%、「夜間の業務負担の軽減」が44.6%でした。日常的に利用されているICT機能のうち最も多いのは「利用者情報(ケア記録・ケアプラン等)の入力・保存・転記の機能」で75.4%にのぼり、記録の電子化が現場に浸透し始めていることがうかがえます。一方で、業務負担の軽減効果については残り半数が明確な効果実感に至っておらず、システムを入れただけで負担が消えるわけではありません。道具を導入する前に、自施設の申し送りのどこに抜けが生まれているかを把握することが出発点になります。carebase(ケアベース)の運用支援でも、紙運用の弱点を洗い出したうえで効果が見込める範囲から段階的に切り替える進め方が、現場に定着しやすいと考えています。

申し送り・情報共有の効率化はcarebase(ケアベース)の機能で対応できます。

申し送りを「現場の作業」としてだけ見ると見落としがちですが、人材確保が厳しい状況では、情報共有の質はチーム運営そのものに直結します。次のシフトへ正確に橋渡しできる体制は、利用者の安全だけでなく、スタッフが安心して働ける環境づくりの一部でもあります。新人が早期に申し送りの型を身につけられれば、教える側の負担も軽くなり、限られた人員のなかで教育に割く時間も圧縮できます。

申し送りで伝えるべき内容の優先順位の付け方

申し送りで伝える情報を緊急性と次のケアへの影響の2軸で最優先・優先・補足・記録のみに分類した優先順位マトリクス図解

「緊急性」と「次のケアへの影響」の2軸で伝える順番を決めるフレーム(出所: 申し送りで伝える情報の優先順位の整理に基づき編集部作成)

申し送りで伝えるべき内容は「緊急性」と「次のケアへの影響」の2軸で優先順位をつけ、命や安全に関わる変化から先に伝えるのが基本です。

申し送りでつまずきやすいのは、すべてを伝えようとして要点が埋もれてしまうことです。情報量が多いほど、本当に重要な状態変化が後回しになりがちです。そこで役立つのが、伝える情報を2軸で仕分けする考え方です。緊急性が高く次のケアにも影響する情報を最優先にし、緊急性も影響も低い情報は記録に残して口頭では省く、と整理すると伝達が引き締まります。

優先度 緊急性 次のケアへの影響 伝え方の例
最優先 高い 大きい 最初に口頭で明確に伝える(発熱・転倒・服薬変更 など)
優先 低い 大きい 口頭で簡潔に伝える(食事量の減少・排泄状況の変化 など)
補足 高い 小さい 必要に応じて口頭、基本は記録(一時的な訴え など)
記録のみ 低い 小さい 記録に残し口頭では省く(いつも通りの経過 など)

独自整理:申し送りで伝える情報を「緊急性」と「次のケアへの影響」の2軸で優先順位づけしたマトリクス。

この2軸で考えると、「何を口頭で伝え、何を記録に委ねるか」の線引きがしやすくなります。たとえば、いつもより食事量が少なかった場合は、緊急性こそ高くないものの次の食事介助での観察に影響するため、口頭で簡潔に伝えて記録にも残すのが妥当です。一方、利用者がいつも通り過ごした内容まですべて口頭で読み上げると、本当に重要な変化が埋もれてしまいます。口頭の申し送りは「変化」と「次の対応に必要なこと」に絞り、それ以外は記録で共有するという役割分担を徹底すると、短い時間でも要点が伝わります。

伝えるべき具体的な項目(バイタル・食事/水分/排泄・服薬・事故やヒヤリハット・家族対応など)と例文は、介護の申し送りテンプレート|記載項目・例文・チェックリスト集で詳しく整理しています。新人スタッフが「何を伝えればいいか分からない」段階であれば、記載項目とテンプレートから入ると迷いが減ります。項目を覚えたうえで「どう優先順位をつけ、ミスなく回すか」という仕組みづくりについては、このあと順に解説します。

優先順位をつけずにすべてを並列で伝えると、受け手は「どれが重要なのか」を自分で判断しなければならず、解釈のズレが生まれます。逆に、伝え手が緊急性と影響の高い情報を先頭に置く習慣を持てば、受け手は最初の数十秒で「今日いちばん注意すべきこと」を把握できます。優先順位の付け方は、伝え手のスキルというより、施設で共有できる判断の型として整備しておくべき要素です。

申し送りミスはなぜ起きる?事故防止の視点で原因を分解する

申し送りミスは個人の不注意よりも、口頭依存・記録の更新漏れ・交代時の伝達不足・記録のばらつきといった仕組みと環境に起因することが多くあります。

現場で起きる申し送りミスは、突き詰めると次の4つの構造に分けられます。口頭だけに頼って情報が抜ける、紙のノートやメモの更新が追いつかない、シフトの切れ目で伝達が分断される、経験差で記録の書き方がそろわない、という4類型です。いずれにも共通するのは「情報が一元化されていない」という構造的な弱点で、担当者個人の責任に帰せられる問題ではありません。口頭依存では、伝えた側は「言った」つもりでも受け手の記憶に残らなければ情報は消えます。紙の更新漏れでは、最新情報がどこにあるのか分からなくなります。交代の分断では、勤務時間の重ならないスタッフ同士で情報が途切れます。記録のばらつきでは、同じ出来事でも書き手によって伝わる内容が変わってしまいます。

この見方は、公的な事故報告制度とも整合します。厚生労働省が示す介護事故の報告様式(介護保険最新情報Vol.1332、2024年11月発出)には、「事故の原因分析(本人要因・職員要因・環境要因)」と「再発防止策」の欄が設けられています(厚生労働省、2026年6月時点)。事故の原因を本人・職員・環境の3要因に分けて分析することが、制度上も標準とされているわけです。申し送りミスは、この「職員要因(情報共有)」と「環境要因(記録の仕組み)」にまたがる課題として捉え直すと、対策の方向が見えてきます。

この報告様式は、転倒・転落・誤嚥や窒息・誤薬や与薬もれ・異食・医療処置関連といった事故種別をチェック項目として持ち、報告対象は死亡に至った事故や医師の治療が必要となった事故とされています。これらはまさに、申し送りで「状態変化」「服薬」「転倒リスク」が正しく共有されていれば防止につながる場面です。たとえば、前のシフトで「歩行時にふらつきがあった」という情報が伝わっていれば、次の担当者は移動介助でより注意を払えます。服薬の変更が共有されていれば、誤薬や与薬もれを防ぎやすくなります。申し送りの抜けは、そのまま事故の原因分析で問われる職員要因になりうるという事実は、申し送りを精神論ではなく安全管理の一部として位置づける根拠になります。

次の表は、4つのミス類型がどの要因に対応し、どの実践ステップで防げるかを横断的に整理したものです。

ミスの類型 主に対応する要因 防ぐ実践ステップ
口頭依存による情報抜け 職員要因・環境要因 ステップ1(項目統一)・ステップ2(二重確認)
記録・ノートの更新漏れ 環境要因 ステップ3(即時共有)・ステップ4(チェックリスト)
シフト間の伝達不足 環境要因 ステップ3(即時共有)
経験差による記録のばらつき 職員要因 ステップ1(項目統一)・ステップ5(振り返りと教育)

独自整理:既存の申し送りミス4類型と厚生労働省の事故報告様式(原因分析の3要因)を対応づけたもの。

このように原因を分解すると、対策が「誰かに気をつけてもらう」から「どの仕組みを足すか」へと変わります。たとえば口頭依存が問題なら、口頭と記録を併用する仕組み(ステップ2)を足す。交代時の分断が問題なら、記録した瞬間に全員へ届く即時共有の仕組み(ステップ3)を足す。原因と対策が1対1で対応していれば、現場の改善は計画的に進められます。漠然と「ミスを減らそう」と呼びかけるよりも、まず自施設のミスがどの類型に多いかを確かめてから対策を選ぶほうが、効果を出しやすくなります。

要点: 申し送りミスを「誰のせいか」で探すより、「どの仕組みが欠けているか」で分解したほうが、再発防止策につなげやすくなります。

ミスを防ぐ申し送りの5つの実践ステップ

ミスを防ぐ申し送りは、項目の統一・口頭と記録の二重確認・即時共有・チェックリスト・振り返りの5ステップで運用すると、誰が担当しても要点が揃いやすくなります。

ここからは、原因の分解で見えた「仕組みの欠け」を埋める5つのステップを順に解説します。どれか1つではなく、組み合わせて回すことで効果が積み上がります。5つは「統一して書く土台をつくる」「伝達の抜けを照合で塞ぐ」「時間差を消す」「確認を見える化する」「運用を改善し続ける」という流れで連なっており、上流のステップほど他のステップの効果を底上げします。

ステップ1:申し送りの項目を統一する

最初の一歩は、「誰が書いても同じ情報が揃う状態」をつくることです。記録する項目がスタッフごとにバラバラだと、重要な情報が抜けたり重複したりします。申し送りのフォーマットを統一すると、必須項目が明確になるため新人でも迷わず、表現の癖が減って誰が見ても同じ理解になります。状態変化や注意点を把握しやすく、抜けている項目も一目で分かります。フォーマットがあることで、伝え手は「何を書くべきか」を毎回考えずに済み、受け手は「どこに何が書いてあるか」を予測しながら読めます。

紙のフォーマットには構造的な限界があります。記録量が多いと欄が埋まりきらず、読みづらい字や書き忘れでミスが生じ、変更や追記がすぐ反映されません。ノートが現場に1冊しかなければ、複数のスタッフが同時に見ることもできません。誰かが記入している間は他の人が確認できず、確認待ちの時間が生まれます。統一の基準を決めるときは、「利用者の状態変化」を優先項目に置き、注意点やリスク情報は決まった位置に配置し、誰でも理解できる書き方にそろえるのが要点です。あいまいな表現を避け、観察した事実を具体的に書くルールを共有しておくと、書き手による解釈の差が縮まります。

carebase(ケアベース)の申し送り機能には統一された入力項目やテンプレートが用意されており、入力漏れを防ぐ構造で誰でも同じ流れで記録できます。重要項目があらかじめ整理され、修正や追記もすぐ反映され、過去の履歴をその場で参照できる設計です。紙から移行する場合は、現在使っているフォーマットの項目をそのまま反映するところから始めると、現場の混乱を抑えられます。

ステップ2:口頭と記録の二重確認を習慣にする

口頭だけに頼らず、口頭と記録を組み合わせて二重に確認する仕組みが、ミスを確実に減らします。口頭の申し送りはニュアンスや表情で伝えやすい一方、聞き漏れや解釈のズレ、伝言ゲームが起こりやすく、情報の再現性が低いという課題があります。とくに介護現場では、申し送りの最中に他のスタッフから声をかけられたり、利用者対応で中断されたりすることが珍しくなく、口頭だけで正確な伝達を完結させるのは難しい場面が多くあります。

二重確認には明確な利点があります。口頭で伝えた内容を後から記録で照合でき、口頭で触れられなかった内容が浮き彫りになり、聞き逃しや曖昧な表現を記録が補います。受け手も自分のタイミングで再確認できるため、申し送りの直後にうろ覚えになっても、記録を見れば正確な情報に戻れます。紙だけだと、他のスタッフが持っていると見られない、更新がすぐ共有されない、どれが最新か判断しづらいといった弱点が残ります。記録を電子的に併用すると最新情報を全スタッフが同時に閲覧でき、二重確認の精度が高まります。

特に夜勤から日勤への申し送りでは、口頭で伝えた内容が記録と一致しているかを照合するだけで、伝達の抜けに気づきやすくなります。夜勤帯の記録・申し送りで見落としを防ぐ確認事項は、介護夜勤の記録・申し送りを完璧にこなす方法|見落とし防止チェックリストと交代前の確認事項で整理しています。「口頭で伝えたから大丈夫」「メモに書いたから安心」という思い込みをなくし、口頭と記録を突き合わせる流れを習慣として定着させることが、二重確認を機能させるうえでの土台になります。carebase(ケアベース)では、口頭の内容をすぐに記録で確認でき、入力履歴が残るため「いつ誰が記録したか」が明確で、端末からいつでも再確認できます。重要情報を強調表示する機能もあり、見落としを防ぎやすくなります。

ステップ3:情報を即時に共有する仕組みをつくる

利用者の体調変化や突発的な出来事はいつ起こるか分かりません。記録のタイムラグがそのまま申し送りミスにつながります。紙のノートや口頭ベースの共有では「気づいた人だけが知っている状態」が生まれやすく、スタッフ間で情報が分断されます。たとえば、午前中に利用者の様子に気づいたスタッフがいても、申し送りの時間まで情報が共有されなければ、その間に対応した別のスタッフは状況を知らないまま動くことになります。

記録した瞬間に情報が全スタッフへ行き渡る即時共有の仕組みがあれば、紙では難しかった同時共有が可能になります。状態変化や緊急情報を通知で即座に伝え、日中・夜間を問わず手元の端末で確認でき、後からまとめて振り返ることもできます。重大な情報だけを強調して表示できれば、忙しい現場でも優先度をひと目で判断できます。申し送りを電子化するメリットや費用、紙からの進め方は、申し送りの電子化とは?メリット・費用・進め方で具体的に解説しています。紙運用の弱点が大きい施設ほど、この即時共有の効果は出やすくなります。

即時共有は、申し送りを「決まった時間にまとめて伝える行為」から「気づいた瞬間に全員へ届く流れ」へと変えます。これにより、「申し送りの時間に伝え忘れた」「メモを渡しそびれた」といった時間差由来のミスを減らせます。導入の際は、すべての情報を通知対象にするのではなく、緊急性の高い情報に絞って通知を設計すると、通知過多による見落としを避けられます。

申し送り・情報共有の効率化はcarebase(ケアベース)の機能で対応できます。

ステップ4:チェックリストで見える化する

申し送りミスの多くは、「見たつもり」「書いたつもり」「伝わったつもり」という思い込みから生まれます。これを断ち切るのが、記録の見える化とチェックリスト化です。情報を一覧で確認でき、抜け漏れに気づく機会を複数持てるため、確認の抜けに気づきやすくなります。チェックリストがあれば、伝え手は「この項目はもう伝えたか」を確認しながら進められ、受け手は「確認すべき項目が残っていないか」を最後に点検できます。

状況やタスクを可視化すると、チーム全体で同じ認識にそろえられます。チェックリストは「全部を覚えておく必要がない」状態をつくり、スタッフの心理的負担を軽くするため、結果としてミスそのものも減らせます。記憶だけに頼る運用では、忙しい日ほど確認が雑になりがちですが、リスト化されていれば多忙な状況でも一定の確認水準を保てます。紙のチェックリストは置き場所がばらつく、紛失する、複写できないといった弱点があり、電子的に見える化するとこの課題を補えます。未確認の項目が残る形で表示されれば、「何が済んで何が残っているか」が把握しやすくなります。

チェックリストを作るときは、項目を細かくしすぎないことがコツです。確認項目が多すぎると形だけのものになり、チェックを入れること自体が目的化してしまいます。まずは「命・安全に関わる必須項目」に絞り、運用しながら現場の実態に合わせて調整していくと、形だけにならず機能するリストになります。

ステップ5:定期的に振り返って改善する

仕組みを導入しても、運用や習慣が定着しなければミスは再発します。日々の記録や共有方法を定期的に振り返り、改善していくことが、申し送りミスを根本から減らす土台になります。統一フォーマットも二重確認も、現場の運用ルールとして根づかなければ、忙しさの中で少しずつ崩れていきます。

週次・月次で申し送り内容やミスの傾向をチェックし、記録漏れや伝達の遅れ、情報の抜けを分析すると、どのシフトでミスが起きやすいかが見えてきます。振り返りの結果をチームで共有すれば、よくあるミスや注意点を新人・パートタイムスタッフの教育に活用でき、運用ルールも現場に合わせて微調整できます。「特定の時間帯に伝達ミスが多い」「ある項目の記録がよく抜ける」といった傾向が見えれば、その部分に対策を集中できます。

この振り返りは、前章で触れた事故報告様式の「再発防止策」と同じ発想です。起きたミスを個人の反省で終わらせず、原因を分析して仕組みを直すサイクルを回すことが、再発防止につながります。記録の履歴を残しておくと、過去の記録をすぐ参照でき、更新履歴や担当者も追えるため、個人の記憶に頼らず客観的に改善点を洗い出せます。ミスや抜けの傾向をデータとして蓄積できれば、改善策の立案にも活用できます。

要点: 5つのステップは独立した小技ではなく、「統一→二重確認→即時共有→見える化→振り返り」という一連の流れとして回すと、ミスの起点を順番に塞いでいけます。

申し送りをスムーズに伝える基本のコツ

申し送りのコツは、簡潔に・事実と意見を分け・優先順位順に・5W1Hで伝えることです。誰が話しても要点が揃う「型」をつくることが核心になります。

仕組みを整えても、伝え方の基本がそろわなければ口頭の場面でブレが出ます。次の4点は、介護現場の申し送りで共通して挙げられる基本のコツで、現場ですぐ取り入れられます。

  • 簡潔に伝える:結論や最も伝えたいことを最初に置き、補足は後から添える
  • 事実と意見・推測を分ける:「38.2度の発熱」と「体調が悪そう」を区別し、観察した事実を先に伝える
  • 優先順位順に話す:命・安全に関わる変化を最初に、いつも通りの経過は最後に
  • 5W1Hで整理する:いつ・誰が・どこで・何を・なぜ・どのように、を意識して抜けを防ぐ

これらのコツのなかでも、事実と意見を分けることは特に重要です。「機嫌が悪そうだった」という主観だけでは、受け手は何を観察すればよいか分かりません。「朝食を半分残し、声かけへの反応が普段より少なかった」という事実を伝えれば、受け手は同じ視点で経過を見られます。推測を伝える場合も、「〜かもしれない」と推測であることを明示し、根拠となった事実を添えると、受け手が判断を引き継ぎやすくなります。事実・意見・推測を区別せずに混ぜて伝えると、受け手が「どこまでが確認済みの情報か」を判断できず、対応の方向を誤るおそれがあります。観察した事実を土台にして、自分の解釈や推測はその上に重ねる、という順序を守ると、伝達の精度が安定します。

簡潔さも、ただ短くすればよいわけではありません。重要な情報を削ってしまえば本末転倒です。「結論を先に、詳細を後に」という順序を守りながら、優先度の低い情報は記録に委ねる、という線引きが簡潔さの実体です。これらのコツは個人のセンスではなく、繰り返し使える型です。型を施設内で共有すれば、経験年数に関わらず申し送りの質を一定の水準にそろえられます。新人には、まずこの4つの型をチェックポイントとして渡し、慣れてきたら状況に応じた応用を加えていく順番が無理のない育成になります。慣れてきたスタッフ同士でも、申し送りを聞いた側が要点を一言で復唱するひと手間を加えると、解釈のズレをその場で修正できます。

申し送りの質を保ち情報共有を効率化するならcarebase(ケアベース)

carebase(ケアベース)は、介護記録・申し送り・動画マニュアルによる教育を一元化できる介護施設向けのクラウド型業務支援システムです。申し送りの項目統一・即時共有・履歴の振り返りを同じ基盤でまとめて回せるため、属人化しがちな情報共有を仕組みとして整えやすくなります。

ここまで見てきた5つのステップは、紙とExcelの運用でも一部は実践できますが、項目の統一・即時共有・履歴の振り返りをまとめて回そうとすると、システムの活用が現実的な選択肢になります。carebase(ケアベース)は、統一された入力項目やテンプレートで記録のばらつきを抑え、記録した内容を全スタッフへ即時に共有し、過去の履歴を検索・参照できる設計です。記録と教育を同じ基盤に乗せられるため、申し送りで見えた「よくあるミス」を動画マニュアルでの教育につなげることもできます。外国人スタッフが在籍する施設では、視覚的なマニュアルや多言語対応によって、言葉の壁による伝達の不安を補いやすくなります。

5つのステップとシステム機能の対応を整理すると、自施設に必要な機能を見極めやすくなります。

実践ステップ 対応する機能の例
ステップ1(項目統一) 統一された入力項目・テンプレート
ステップ2(二重確認) 入力履歴・記録の照合・強調表示
ステップ3(即時共有) 記録と同時の共有・通知機能
ステップ4(見える化) 一覧表示・未確認項目の可視化
ステップ5(振り返り) 履歴の検索・参照・傾向の蓄積

自施設の申し送りの課題と照らし合わせて、必要な機能が揃っているかを判断材料にできます。なお、システムは万能ではなく、導入後の運用ルールづくりや教育とセットで初めて効果が出ます。先に自施設の課題を洗い出してから、それを補う機能があるかを確認する順番が、導入の失敗を避けるうえで有効です。

記録・申し送り・教育の一元化を検討する場合は、以下から確認できます。

申し送り改善は「個人のスキル」か「仕組み」か

申し送りの改善を「伝える人のスキル」の問題と捉えるか、「チームの仕組み」の問題と捉えるかで、打ち手は大きく変わります。データ上は、仕組みとして整えるアプローチに分があります。

介護労働実態調査では、中途採用者が直前の介護関係の仕事を辞めた理由として「職場の人間関係に問題があったため」が24.7%で最も高くなっています(介護労働安定センター、2025年7月公表)。情報共有のすれ違いは、人間関係の摩擦や定着の問題とも無関係ではありません。「伝えたはずなのに伝わっていない」「自分だけ知らされていなかった」という状況が積み重なれば、チーム内の信頼に影響します。同調査の訪問介護に関する分析では、仕事上の課題に関する相談や指導を実施している場合に、担当する職員の離職率が「10%未満」の割合が63.0%となり、実施していない場合の50.5%を上回りました。日々の情報共有や指導の質が、職員の定着に結びついている可能性を示すデータです。

ここから読み取れるのは、申し送りを個人の話術の上達だけに委ねるより、項目の統一や二重確認といった仕組みでチーム全体の底上げを図るほうが、ミス削減でも定着でも合理的だということです。個人のスキルに依存した運用は、その人が異動・退職した途端に質が落ちます。仕組みとして整えておけば、メンバーが入れ替わっても一定の水準を保てます。評価語を裏付ける一次データがそろっている以上、まず仕組みを整え、そのうえで個々のコツを磨く順番が、再現性のある改善につながります。読者の施設では、現在の申し送りが「人に依存しているか、仕組みに支えられているか」を一度洗い出してみることが、改善の起点になります。具体的には、「ベテランが休んだ日に申し送りの質が落ちないか」を点検すると、特定の人に頼った状態になっていないかが分かります。

よくある質問(FAQ)

申し送りと引き継ぎ・介護記録の違いは何ですか?

申し送りは勤務交代時に直近の状態変化や注意点を次の担当者へ共有する日常的なやり取りです。介護記録は後から参照するために事実を残す業務、引き継ぎは担当変更や退職時に業務全体を引き渡す広い概念で、それぞれ目的とタイミングが異なります。三つを区別すると、「口頭で伝えるべきこと」と「記録に残すべきこと」の線引きがしやすくなります。

申し送りの時間が取れないときはどうすればいいですか?

すべてを口頭で伝えようとせず、優先順位の高い情報(命・安全に関わる変化)だけ口頭で伝え、それ以外は記録に残して各自が確認する形に切り替えると時間を圧縮できます。統一フォーマットやチェックリストがあると、短時間でも要点が抜けにくくなります。記録を即時に共有できる仕組みがあれば、まとまった申し送り時間を取れなくても、必要な情報を随時届けられます。

口頭での申し送りが苦手です。うまく伝えるコツは?

結論を最初に置き、事実と意見を分けて、優先順位順に話すのが基本です。話す内容を事前にメモや記録で整理しておくと、その場で頭が真っ白になっても要点をたどれます。型に沿って話すことで、経験が浅くても一定の質を保てます。慣れるまでは、伝える前に「最優先で伝えるべきことは何か」を一つだけ決めてから話し始めると、要点がぶれにくくなります。

申し送りで判断に迷う情報はどう扱えばいいですか?

「次の担当者の対応に影響するか」を基準に判断します。影響する可能性があれば、推測であることを明示したうえで伝え、記録にも残します。自分だけで判断できない場合は、リーダーや管理者に確認してから共有すると、抜けと過剰共有の両方を避けられます。迷ったときは「伝えなかったことで起こりうるリスク」を基準にすると、過小報告を防ぎやすくなります。

申し送りミスが事故につながったら、どう対応すべきですか?

介護保険施設等では、死亡に至った事故や医師の治療が必要となった事故は、市町村への報告が原則とされ、第1報は発生後速やかに(遅くとも5日以内が目安)提出することが求められます(厚生労働省、2026年6月時点)。報告様式には原因分析(本人・職員・環境要因)と再発防止策の欄があり、申し送りの仕組みの見直しもここに含めて整理します。個別の対応は所管自治体の取扱いに従い、判断に迷う場合は自治体の介護保険担当課に確認してください。

まとめ

介護の申し送りミスは、口頭や紙だけに頼る従来の方法では避けきれませんが、伝える項目の統一・口頭と記録の二重確認・即時共有・チェックリスト・振り返りという5つのステップを組み合わせれば、情報の抜け漏れや誤解を減らし、チーム全体で正確な共有ができるようになります。ミスを個人の不注意ではなく仕組みの課題として捉え、優先順位の付け方や事故防止の視点とあわせて運用することが、再現性のある改善につながります。申し送りの土台となる記録の書き方を見直したい場合は、介護記録の書き方完全ガイド|5W1Hと文例で記録漏れを防ぐもあわせて参考にできます。

記録・申し送り・教育の一元化を検討する場合は、以下から確認できます。

介護ソフトの導入や見直しをご検討中の方は、まずは情報収集から始めてみませんか。
carebase(ケアベース)では、現場に定着する介護記録システムとして、多くの事業所でご活用いただいています。
費用や機能、導入事例について詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。

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