carebase(ケアベース)コラム

2026.7.31

【2026年版】介護の生産性向上とは?7つの取組と進め方を解説

屋外で利用者と同じ方向を見て歩む介護スタッフ(業務改善で生まれるケアの時間のイメージ)

介護の生産性向上とは、業務のムリ・ムダ・ムラ(3M)をなくし、ケアの質の向上と職員の負担軽減を両立させる取り組みです(厚生労働省、2026年7月時点)。単なるコスト削減ではなく、間接業務を減らして直接的なケアに充てる時間を確保する点が核心にあります。この記事では、定義と背景から厚生労働省ガイドラインの7つの取組、加算・委員会の制度、進め方の6ステップまでを公式資料をもとに整理します。

介護の生産性向上とは?(定義と考え方)

生産性向上の定義を「質向上×負担軽減の両立」と3つの考え方で整理(出典: 厚生労働省「介護分野における生産性向上について」を基に作成)

介護の生産性向上とは、業務のムリ・ムダ・ムラをなくし、ケアの質向上と職員の負担軽減を両立させる取り組みです。厚生労働省はこれを「介護の価値を高めること」と位置づけ、人員削減や単純なコスト圧縮とは区別しています(厚生労働省 介護分野における生産性向上について、2026年7月時点)。

「生産性」という言葉には、現場を切り詰めて働かせるという印象がつきまといがちです。ただ厚生労働省の定義は逆で、質を落とさずに職員の負担を軽くし、その結果として利用者に向き合う時間を増やすことを目指しています。この誤解を最初に解いておくことが、施設内で取り組みを進める際の合意形成の出発点になります。

「ムリ・ムダ・ムラ(3M)」をなくすという考え方

生産性向上の土台は、業務に潜む「ムリ・ムダ・ムラ」の3つの視点で現場を見直すことです。ムリは能力を超えた負荷、ムダは付加価値を生まない作業、ムラは人や時間による品質のばらつきを指します。介護現場では、同じ記録を複数の帳票に転記する二度手間や、担当者によって申し送りの精度が変わる状態などが典型例にあたります。これらを一つずつ洗い出すと、どこに時間が奪われているかが具体的に見えてきます。

直接的なケアと間接業務を分けて考える

介護業務は、利用者に直接向き合う「直接的なケア(中核業務)」と、記録・申し送り・会議・請求事務などの「間接業務(周辺業務)」に分けられます。生産性向上は、特に間接業務の効率化によって、直接的なケアに使える時間と余力を取り戻すことを狙います。すべての業務を一律に削るのではなく、まず間接業務のどこに手間がかかっているかを見極めることが、質を守りながら負担を減らす前提になります。

業務効率化との違い(目的と手段)

「生産性向上」と「業務効率化」は混同されがちですが、両者は目的と手段の関係にあります。業務効率化は作業を速く・少ない手間で終わらせる「手段」であり、生産性向上はそれによってケアの質と働きやすさという「価値」を高める「目的」です。効率化だけを追うと現場に「もっと働け」という圧力として受け取られやすく、反発を招くこともあります。データや制度の面から見ると、厚生労働省が「質の向上と負担軽減は両輪」と定義している点が、効率化を目的化しないための判断基準になります(厚生労働省、2026年7月時点)。だから施設としては、効率化の手段を導入する前に「何のために・どの負担を減らすのか」という目的を先に定めておくことが、取り組みを現場に根づかせる近道になります。

なぜ今、介護現場で生産性向上が求められるのか(背景)

必要な介護職員数は2040年度に約272万人(2022年度比+約57万人)へ(出典: 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」〈2024年〉を基に作成)

介護現場で生産性向上が急がれる最大の理由は、人材不足の深刻化です。厚生労働省の推計では、必要な介護職員数は2040年度に約272万人に達し、2022年度から約57万人の増員が求められます(厚生労働省 第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について、2026年7月時点)。

数字を追うと構造がはっきりします。厚生労働省が2024年に公表した第9期介護保険事業計画の推計では、必要な介護職員は2022年度の約215万人から、2026年度に約240万人(年6.3万人ペースで+約25万人)、2040年度に約272万人(年3.2万人ペースで+約57万人)へと増えていきます(厚生労働省 別紙1)。データ上は、必要数が増える一方で支え手となる生産年齢人口は減少局面に入っており、採用だけで不足を埋め続けるのは難しい構造です。だからこそ、限られた人員で同じ業務量をこなすために、一人あたりの生産性を高める打ち手が現実的な選択肢になります。

国もこの状況に対し、総合的な人材確保対策を5本柱で示しています。1. 処遇改善、2. 多様な人材の確保・育成、3. 離職防止・定着促進・生産性向上、4. 介護職の魅力向上、5. 外国人材の受入環境整備の5つで、生産性向上はこの柱の一つに明確に位置づけられています(厚生労働省、2026年7月時点)。人手不足の背景をより広く整理したい場合は、介護の人手不足の解説も参考になります。採用と定着の両面で余力が限られる以上、業務そのものを軽くする生産性向上は、施設運営を続けるための土台と言えます。

厚生労働省ガイドラインが示す7つの取組

厚生労働省の「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」は、現場が着手すべき打ち手を7つの取組として整理しています。職場環境の整備から理念の徹底まで段階的に示されており、自施設の課題に合わせて着手先を選べる構成になっています(厚生労働省、2026年7月時点)。

「何をすればよいか分からない」という状態でも、この7項目を地図として使えば打ち手が具体化します。以下では各取組の要点を順に整理します。

1. 職場環境の整備

最初の取組は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を軸とした職場環境の整備です。物品の置き場所が定まっていない、動線に無駄があるといった状態は、探す時間や移動の手間という「ムダ」を日々積み上げます。まず物の配置やレイアウトを見直すことは、費用をかけずに始められ、職員全員が効果を実感しやすいため、取り組みの入口として選ばれやすい打ち手です。

2. 業務の明確化と役割分担

2つ目は、業務の全体像を洗い出して役割を再配分する取組です。ガイドラインでは、(1) 業務全体の流れの再構築と、(2) テクノロジーの活用の2軸で示されています。介護福祉士が担うべき専門的なケアと、周辺業務とを切り分け、後者を介護助手やテクノロジーに移すことで、専門職が直接的なケアに集中できる体制をつくります。誰が何を担うかを曖昧にしないことが、負担の偏りを防ぐ前提になります。

3. 手順書の作成

3つ目は、業務の手順書を整える取組です。手順が個人の記憶や経験に依存していると、新人教育に時間がかかり、品質にもムラが生まれます。標準的なやり方を手順書や動画マニュアルとして残せば、教える側の負担が減り、誰が対応しても一定の水準を保ちやすくなります。手順書は一度作って終わりではなく、現場の実態に合わせて更新し続けることで実効性が保たれます。

4. 記録・報告様式の工夫

4つ目は、記録や報告の様式を使いやすく整える取組です。同じ情報を複数の帳票に書き写す、項目が多すぎて記入に時間がかかるといった状態は、間接業務の負担を重くします。記入項目を必要なものに絞る、チェック方式を採り入れる、ICTで一度の入力を複数の帳票へ反映させるといった工夫が効果を生みます。記録の効率化の具体策は、介護記録の効率化でも詳しく解説しています。

5. 情報共有の工夫

5つ目は、職員間の情報共有を滞りなく回す取組です。申し送りや連絡が口頭やホワイトボード中心だと、勤務交代のタイミングで漏れが生じたり、非常勤職員に情報が届かなかったりします。記録システムでの共有やインカムの活用によって、必要な情報を必要な人へ確実に届ける仕組みを整えると、伝達漏れに起因するミスやヒヤリハットを減らしやすくなります。

6. OJTの仕組みづくり

6つ目は、現場での教育(OJT)を仕組みとして整える取組です。指導が担当者任せになると、教える内容や質が人によって変わり、新人の習熟度にもばらつきが出ます。動画マニュアルや研修の標準化によって、いつ・誰が・何を学ぶかを整理すれば、教育の負担を分散しながら定着率の改善につなげられます。義務化された研修との関係は、介護施設の法定研修もあわせて確認できます。

7. 理念・行動指針の徹底

7つ目は、施設の理念や行動指針を職員に浸透させる取組です。一見すると生産性から遠く見えますが、目指す方向が共有されていないと、業務改善の優先順位が定まらず、取り組みが続きにくくなります。研修や日々の声かけを通じて「何のために効率化するのか」を共有することが、現場の納得感を生み、他の6つの取組を支える土台になります。

以上の7取組は独立したものではなく、組み合わせて回すことで効果が高まります。まずは職場環境の整備や記録様式の工夫など負担の少ない項目から着手し、成果を確認しながら範囲を広げるのが定着しやすい進め方です。

生産性向上推進体制加算と委員会の義務化(制度)

加算はⅡ(10単位/月)で土台を整えⅠ(100単位/月)へ、委員会は令和9年度から本格義務化(出典: 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定 生産性向上推進体制加算について」を基に作成)

2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では、生産性向上に取り組む施設を評価する「生産性向上推進体制加算」が新設され、あわせて委員会の設置が義務化されました。加算は取組の成果を評価する仕組みであり、委員会は取組を継続的に回すための体制として位置づけられています(厚生労働省 令和6年度介護報酬改定 生産性向上推進体制加算について、2026年7月時点)。

制度は「加算(インセンティブ)」と「委員会(義務)」の2本立てで理解すると整理しやすくなります。加算は任意で取得を目指すものですが、委員会は対象サービスでは設置が求められる点が異なります。以下でそれぞれの要件を確認します。

生産性向上推進体制加算Ⅰ・Ⅱの単位数と要件

生産性向上推進体制加算は、短期入所系・居住系・多機能系・施設系サービスを対象に、ⅠとⅡの2区分で設けられています。ⅠとⅡは同時算定できず、Ⅱの体制を整えたうえで成果が確認されるとⅠへ進む段階設計になっています(厚生労働省、2026年7月時点)。

区分 単位数 主な算定要件
生産性向上推進体制加算(Ⅱ) 10単位/月 委員会の開催と必要な安全対策/見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入/ガイドラインに基づく業務改善を継続的に実施/1年以内ごとに1回、効果を示すデータを提出
生産性向上推進体制加算(Ⅰ) 100単位/月 (Ⅱの要件に上乗せ)提出データで業務改善の成果が確認されたこと/見守り機器等のテクノロジー3種類すべてを導入/職員の適切な役割分担(介護助手の活用等)/1年以内ごとに1回、効果を示すデータを提出

令和6年度介護報酬改定で新設された生産性向上推進体制加算の区分・単位数・主な要件(ⅠとⅡは同時算定不可)。出所: 厚生労働省 老健局高齢者支援課 介護業務効率化・生産性向上推進室「令和6年度介護報酬改定 生産性向上推進体制加算について」を基に作成(2026年7月時点)

データ上は、加算Ⅱ(10単位/月)が委員会・テクノロジー1つ以上・データ提出という基本体制を求めるのに対し、加算Ⅰ(100単位/月)は成果の確認・テクノロジー3種・役割分担が上乗せされる構造です。単位数の差から見ても、まずⅡで体制とデータの土台を整え、成果が出た段階でⅠを目指すという段階的な設計が現実的な進め方になります。ただし算定可否や具体的な取扱いは対象サービス区分によって異なるため、個別の要件は所管の指定権者(都道府県・市町村)に確認することが確実です。

生産性向上委員会の設置義務化と3年の経過措置

加算とは別に、入所・泊まり・居住系サービスでは「利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会」の設置が義務づけられました。制度上は3年間の経過措置が設けられ、令和8年度末(2027年3月31日)までは努力義務、令和9年度から本格的な義務となります(厚生労働省 令和6年度介護報酬改定 生産性向上推進体制加算について、2026年7月時点)。

加算を算定する場合、委員会は3か月に1回以上の開催が求められ、管理者だけでなくケアを担う職員やユニットリーダー等の参画が必要です。検討事項は、1. 利用者の安全及びケアの質の確保、2. 従業者の負担軽減及び勤務状況への配慮、3. 介護機器の定期的な点検、4. 職員に対する研修の4項目とされています。事故防止委員会など他の会議と一体的に運営することや、テレビ電話装置等の活用も認められています(厚生労働省 介護分野の生産性向上 お知らせ、2026年7月時点)。経過措置の期限を見据え、既存の会議体を活用しながら委員会を早めに立ち上げておくことが、制度対応と業務改善の両面で無理のない進め方になります。

なお、テクノロジー導入には介護テクノロジー導入支援事業(都道府県)などの補助・伴走支援も用意されています。補助率や申請手順、都道府県別の詳細は介護ソフトの補助金で個別に確認できます。

介護の生産性向上を進める6つのステップ

生産性向上は、思いつきで着手するより、可視化から振り返りまでを一つの流れとして進めるほうが定着します。厚生労働省ガイドラインと委員会で想定される議題を踏まえると、業務改善は6つのステップで体系的に回すのが標準的です(厚生労働省、2026年7月時点)。

「結局、何から手をつければよいか」という迷いは、進め方をステップに分けることで解消しやすくなります。以下の順で回すと、現場の負担を抑えながら改善を継続できます。

STEP1 業務の可視化と課題の洗い出し

最初のステップは、日々の業務を見える化して課題を洗い出すことです。誰が・いつ・どの業務に・どれだけ時間をかけているかを書き出すと、ムリ・ムダ・ムラが具体的に浮かび上がります。特に記録・申し送り・会議といった間接業務は、当たり前になっていて負担に気づきにくいため、時間の実測から始めると着手先を選びやすくなります。

STEP2 委員会を設置し推進体制を整える

2つ目は、取り組みを進める体制を整えることです。管理者だけで進めると現場感覚とずれやすいため、ケアを担う職員やユニットリーダーが参画する委員会を設けます。制度上の委員会と一体的に運営すれば、義務化への対応と業務改善を同じ場で回せます。現場の声を反映できる体制をつくることが、後の合意形成を円滑にします。

STEP3 目標と実行計画を立てる

3つ目は、目指す姿(目標)と、そこへ至る実行計画を立てることです。「残業を減らす」といった漠然とした目標ではなく、「申し送りにかかる時間を短縮する」のように測れる指標に落とし込むと、効果を検証しやすくなります。加算のデータ提出を見据える場合も、この段階で何を測るかを決めておくと、後の作業が滞りません。

STEP4 現場への説明と小さく始める

4つ目は、計画を現場に説明し、小さな範囲から始めることです。生産性向上は「もっと働け」という指示と受け取られると反発を招きます。目的が負担軽減にあることを丁寧に共有し、一つのフロアや一つの業務からスモールスタートすると、失敗のリスクを抑えつつ手応えを確かめられます。うまくいった事例を施設内で共有することが、次の取組への納得感につながります。

STEP5 取り組みを実行する

5つ目は、計画に沿って取り組みを実行する段階です。役割分担の見直し、記録様式の変更、テクノロジーの導入などを進めます。ここで重要なのは、ツールを入れて終わりにしないことです。運用ルールや手順書を整え、誰が使っても回る状態にしてはじめて効果が定着します。導入初期は現場の戸惑いも出るため、フォローの担当を決めておくと安定します。

STEP6 効果を振り返り改善を続ける

最後は、取り組みの効果を振り返り、改善を続けるステップです。STEP3で決めた指標をもとに、時間や負担がどう変わったかを測り、うまくいかなかった点は計画に戻して見直します。この可視化→実行→検証→改善のPDCAを回し続けることが、一度きりの改善で終わらせないための鍵になります。加算のデータ提出も、この振り返りの延長線上で行えます。

生産性向上につながる主な手段(効率化アプローチ)

手段は「軽くしたい間接業務」から逆算して選ぶ(出典: 厚生労働省「介護分野における生産性向上について」を基に作成)

生産性向上の手段は、ガイドラインの7取組と対応させて考えると、自施設に合うものを選びやすくなります。ICTや介護ロボットは有力な選択肢ですが万能ではなく、間接業務のどこを軽くしたいかという目的から逆算して選ぶことが、投資を無駄にしないための前提です(厚生労働省、2026年7月時点)。

7つの取組が「何をするか」を示すのに対し、手段は「どうやるか」を担います。両者を対応づけて整理すると、着手先と道具の組み合わせが見えてきます。

ガイドラインの取組 対応する主な業務 効率化アプローチの例
職場環境の整備 動線・物品管理 5S・レイアウト改善
業務の明確化と役割分担 直接ケア以外の周辺業務 タスクシフト・介護助手活用・テクノロジー
手順書の作成 新人教育・標準化 手順書・動画マニュアル
記録・報告様式の工夫 介護記録・帳票 ICT記録・様式の簡素化
情報共有の工夫 申し送り・連絡 記録システムでの共有・インカム
OJTの仕組みづくり 教育・指導 動画マニュアル・研修の標準化
理念・行動指針の徹底 組織文化 研修・浸透施策

厚生労働省 生産性向上ガイドラインの7つの取組を、対応する業務と効率化アプローチに整理した対応表。出所: 厚生労働省「介護分野における生産性向上について」を基に作成(2026年7月時点)

業務フローの見直しと役割分担(タスクシフト)

まず土台になるのが、業務フローの見直しと役割分担です。専門職が担う必要のない周辺業務を洗い出し、介護助手やテクノロジーに移すことで、専門職が直接的なケアに集中できます。テクノロジーを入れる前に業務そのものを整理しておくと、ツール導入の効果が出やすくなります。順序としては「フロー整理が先、道具は後」が失敗を避ける基本です。

ICT・介護記録システムの活用

次に効果が出やすいのが、記録・帳票を扱うICT・介護記録システムの活用です。紙やホワイトボードでのやり取りは、転記の手間や伝達漏れが起きやすく、残業や記録漏れの一因になりやすい業務です。クラウドで記録を共有すれば、複数拠点・多職種が同じ情報をリアルタイムで参照でき、二度手間を減らせます。導入だけで満足せず、入力ルールを決めて運用に落とすことが定着の条件です。

見守り機器・介護ロボットの活用

見守りセンサーや介護ロボットは、夜間巡回の負担や事故リスクへの対応を助ける手段です。ベッドセンサーが離床や体動を検知して通知する仕組みは、常時付き添えない時間帯の安全確認を補います。加算Ⅱでは見守り機器等を1つ以上、加算Ⅰでは3種類すべての導入が要件とされており、制度上も評価対象です(厚生労働省、2026年7月時点)。機器コストがかかるため、リスクの高い場面から段階的に導入するほうが費用対効果を見極めやすくなります。

情報共有・申し送りの効率化

情報共有・申し送りの効率化は、間接業務のなかでも改善の余地が大きい領域です。口頭やホワイトボード中心の申し送りは、勤務交代時の漏れや非常勤職員への伝達不足を生みがちです。記録システムで申し送りを共有し、既読の状況を管理できるようにすると、伝達漏れに起因するミスを抑えやすくなります。

ここで手段の選び方を整理します。一般論では「ICTを導入すれば効率化できる」と語られがちですが、実際には導入しただけでは定着せず、運用設計を欠くと効果が出ない例もあります。対象業務(直接/間接)・導入の負荷・加算との関係という軸で並べると、記録・申し送り・情報共有といった間接業務の一元化は、加算Ⅱの委員会・データ提出のサイクルと接続しやすい領域だと評価できます。したがって施設としては、STEP1で棚卸しした間接業務の結果に対応する手段から着手し、導入後の運用ルールまで設計することが、投資を成果に変える判断基準になります。

記録・申し送り・教育を一体化して生産性向上を進めるなら CareBase(ケアベース)

間接業務の一元化を検討する際の選択肢の一つが、記録・申し送り・教育を一つの仕組みにまとめるクラウドサービスです。CareBase(ケアベース)は、介護記録・申し送り・動画マニュアル(教育)・多言語対応をクラウドで一元化する機能を備えた、介護施設向けの業務支援SaaSです。

前のセクションで整理したとおり、生産性向上では間接業務のどこに時間がかかっているかを起点に手段を選ぶことが判断の核心になります。記録・申し送り・情報共有・教育が別々のツールに分散していると、転記や二重入力が発生しやすくなります。これらを一つの画面で扱えるかという軸で見ると、機能が分かれたツールを組み合わせるより、一元化された仕組みのほうが転記の手間や伝達漏れを減らしやすい構造です。CareBase(ケアベース)は、記録から申し送り・動画マニュアルによる教育までを一元化し、外国人職員向けの多言語対応・視覚的マニュアルにも対応しています。加えて、処遇改善加算や生産性向上推進体制加算への対応、法定研修の仕組み化といった制度面もカバーする設計です。運営は株式会社ウィルグループです。

導入にあたっては、自施設の間接業務の棚卸し結果と、こうした一元化の仕組みが対応できる範囲を突き合わせて判断することが、投資と効果の見通しを立てるうえで確実です。

よくある質問(FAQ)

介護の生産性向上と業務効率化の違いは?

業務効率化は作業を速く・少ない手間で終わらせる「手段」、生産性向上はそれによってケアの質と働きやすさという「価値」を高める「目的」です。厚生労働省は生産性向上を「質の向上と職員の負担軽減の両立」と定義しており、効率化はその目的を実現するための取り組みの一つに位置づけられます(厚生労働省、2026年7月時点)。

生産性向上委員会はいつから義務化ですか?

入所・泊まり・居住系サービスでは、令和6年度改定で委員会の設置が義務づけられ、3年間の経過措置が設けられています。制度上は令和8年度末(2027年3月31日)までは努力義務、令和9年度から本格的な義務となります(厚生労働省、2026年7月時点)。加算を算定する場合は、経過措置中でも3か月に1回以上の開催が必要です。

生産性向上推進体制加算はどのサービスが対象ですか?

短期入所系・居住系・多機能系・施設系サービスが対象です。加算はⅠ(100単位/月)とⅡ(10単位/月)の2区分で、同時には算定できません(厚生労働省、2026年7月時点)。対象区分ごとの細かな取扱いは、所管の指定権者(都道府県・市町村)に確認するのが確実です。

生産性向上は何から始めればよいですか?

まずは業務の可視化から始めるのが現実的です。誰が・どの業務に・どれだけ時間をかけているかを実測し、記録・申し送りなどの間接業務のムリ・ムダ・ムラを洗い出します。その結果をもとに、負担の少ない取組(職場環境の整備や記録様式の工夫)から着手すると、小さな成果を確認しながら範囲を広げられます。

まとめ

介護の生産性向上とは、ムリ・ムダ・ムラをなくし、ケアの質向上と職員の負担軽減を両立させる取り組みで、単なるコスト削減とは異なります。厚生労働省ガイドラインの7つの取組を地図に、間接業務の可視化から委員会・加算への対応まで6つのステップで体系的に回すことが、無理のない進め方になります。手段を選ぶ際は、ICTなどのツールを目的化せず、自施設のどの間接業務を軽くしたいかを起点に判断することが失敗を避ける鍵です。制度の個別要件は年度や対象区分で変わるため、所管の指定権者や専門職に確認しながら進めてください。まずは自施設の業務を棚卸しし、着手できる取組を一つ選ぶことから始めるのが次の一歩になります。

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