carebase(ケアベース)コラム
2026.7.8
執筆者:川﨑翔太
介護ICTとは?導入メリット・進め方まで解説【2026年版】
監修者プロフィール
- 監修者名:川﨑翔太
- 現職:介護支援専門員
- 経験年数:介護業界17年(現場7年・介護支援専門員10年)
- 保有資格
- 介護福祉士
- 介護支援専門員
- 福祉住環境コーディネーター2級
- 福祉用具専門相談員
- 専門分野
現役のケアマネジャーとして在宅高齢者のケアマネジメント業務に従事。3年前より介護・健康ジャンルを中心にWEBライターとして活動開始。これまでに介護施設の選び方・介護ICT・介護職員の働き方など多数の記事の執筆を経験。 - 経歴概要
介護福祉士として医療機関・介護付き有料老人ホームでの介護現場に従事。ケアマネ資格取得後、地域密着型特養のケアマネジャーを経験し、現在は居宅介護支援事業所ケアマネジャーとして在宅で生活する要介護高齢者のケアマネジメントに携わる。
介護ICTは、記録・申し送り・教育といった業務をデジタルで一元化し、現場の負担軽減と情報共有・教育の標準化を図る仕組みです。人材不足が深刻化するなかで、限られた人員でケアの質を保つ手段として導入が広がっています。介護ICTの基本から導入メリット、失敗しない進め方、費用対効果、よくある質問までを、公的データと現場の実情をあわせて順に解説します。
記録・申し送り・教育の一元化で現場の負担軽減と標準化を図りたい介護法人の方は
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介護ICTとは?介護DXとの違いと基本を整理
ICTは道具・DXはその道具で実現する変化。記録系ICTはすでに事業所の75.4%が日常利用(出所: 令和6年度 介護労働実態調査〔介護労働安定センター〕を基に作成)
介護ICTは、介護記録・申し送り・利用者情報の共有などをデジタルツールで行う仕組みの総称で、介護DXはICTを活用して業務や組織のあり方そのものを変える取り組みを指します。
ICTとDXの違いは現場でも混同されやすいテーマです。両者は重なりますが、整理すると分けて考えられます。介護ICTは、紙やExcelで行っていた記録・申し送り・教育などを、タブレットやクラウドといった情報通信技術に置き換える「手段」です。一方の介護DXは、その手段を使って業務フローや働き方、ケアの質までを変革していく「目的・到達点」にあたります。つまりICTは道具、DXはその道具で実現する変化、と捉えると区別しやすくなります。
介護ICTが対象とする業務は幅広く、ツールの役割で分けると整理しやすくなります。
| 種類 | 主なツール | 解決する課題 |
|---|---|---|
| 業務効率化(記録) | 介護記録ソフト・勤怠管理システム | 記録・転記の時間/記録漏れ・誤記 |
| 情報共有 | クラウド型システム・タブレット・インカム | 申し送りの伝達漏れ/勤務帯をまたぐ情報格差 |
| 教育・マニュアル | 動画マニュアル・eラーニング | 教育の属人化/言語の壁・新人の早期戦力化 |
| 直接ケア・見守り | 見守りセンサー・介護ロボット | 夜間巡視の負担/転倒・離床の早期把握 |
介護ICTの主な種類と役割(出所: 厚生労働省「介護分野におけるICTの利用促進」の業務区分の整理に基づき編集部作成)
このうち最も導入が進んでいるのが記録系のツールです。令和6年度の介護労働実態調査では、「利用者情報(ケア記録・ケアプラン等)の入力・保存・転記の機能」を日常的に利用している事業所が75.4%にのぼり(介護労働安定センター、令和6年度調査・2026年6月時点)、記録系のICTはすでに多くの現場で使われています。介護DXを進めるうえでも、まずは記録・申し送り・教育という基幹業務のICT化から着手するのが現実的な出発点です。導入を検討する段階では、自施設のどの業務から手をつけるかを見極めることが、ムダのない導入計画づくりの第一歩になります。
なぜ今、介護ICTが急務なのか(人材不足の現状)
必要な介護職員数は2026年度に約240万人(+約25万人)へ。不足感は65.2%と前年より上昇(出所: 厚生労働省 第9期介護保険事業計画・令和6年度 介護労働実態調査を基に作成)
介護ICTが急務とされる背景には、深刻な人材不足があります。2026年度には介護職員が約25万人不足する見込みで、採用だけでは埋めきれない需給ギャップを生産性で補う必要が生じています。
人材不足の規模は、推計値で見ると明確です。厚生労働省の第9期介護保険事業計画によると、必要な介護職員数は2022年度の約215万人に対し、2026年度には約240万人(+約25万人、年6.3万人ペースの増員が必要)、さらに2040年度には約272万人(+約57万人)と見込まれています(厚生労働省、令和6年7月公表・2026年6月時点)。年間6万人規模の新規増員を採用だけで実現し続けるのは容易ではありません。データ上は、採用と並行して、いまいる職員一人ひとりの生産性を高める取り組みが避けられない状況です。導入の第一歩としては、自施設の業務のどこに無駄や重複があるのかを棚卸しすることが現実的な出発点になります。
現場の肌感覚も、この推計を裏づけています。令和6年度の介護労働実態調査では、従業員が不足していると感じる事業所(「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計)は65.2%で、前年度より0.5ポイント上昇しました(介護労働安定センター、令和6年度調査・2026年6月時点)。職種別では訪問介護員で83.4%、介護職員で69.1%が不足感を示しています。離職率自体は12.4%と2年連続で低下していますが、不足感がむしろ強まっている点に、採用の難しさが表れています。
離職理由の傾向も、ICT活用との関わりが見えてきます。同調査では、中途採用者が直前の介護関係の仕事を辞めた理由として「職場の人間関係に問題があったため」が24.7%で最も高く、その具体的な内容では「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」が49.1%を占めています。労働条件・仕事の負担についての悩みでも「人手が足りない」が49.1%で最多でした。人手不足と人間関係由来の離職は、情報共有や教育の属人化を通じてつながっています。記録や申し送りが特定の人に依存し、教える内容が指導者ごとにバラつく状態は、現場の摩擦と負担を増やしやすいためです。介護ICTによる情報共有の標準化は、業務効率化だけでなく、こうした定着面の課題にも関わる打ち手として位置づけられます。
制度の動きもICT活用を後押ししています。2026年度の介護報酬改定では、ICT・テクノロジー活用による業務効率化やLIFE(科学的介護)のデータ活用、人材確保・定着の取り組みを評価する方向が示されています。あわせて認知症介護基礎研修がすべての介護職員に義務化され、新人・未経験者への教育体制の整備が必須になりました。教育の標準化が求められるなかで、動画マニュアルやeラーニングといったICT教育基盤の重要性が高まっています(制度の細目・適用時期は変動するため、最新の内容は厚生労働省や所管自治体で確認することをおすすめします)。
介護ICT導入のメリット(現場・教育・経営の3面)
メリットは現場・教育・経営の3面に及ぶが、効果実感は昼49.4%・夜44.6%と約半数にとどまる(出所: 令和6年度 介護労働実態調査〔介護労働安定センター〕を基に作成)
介護ICTのメリットは、記録時間の短縮など現場改善にとどまらず、教育の標準化や経営の見える化まで及びます。効果は「現場・教育・経営」の3つの面で整理すると把握しやすくなります。
現場業務のメリット
現場で最も実感しやすいのが、記録と情報共有の効率化です。テンプレート入力や自動転記によって手書き・Excel管理に比べ記録時間を短縮でき、残業の削減につながります。未入力アラートや入力チェック機能はヒューマンエラーを防ぎ、事故リスクの低減にも寄与します。記録内容が即時に反映されることで職員間の情報共有がスムーズになり、申し送りも記録データを土台に標準化できます。結果として、特定の職員に依存せず、誰が対応しても一定水準のケアを提供しやすくなります。
教育・人材面のメリット
教育面では、動画マニュアルによる学習の標準化が大きな効果を生みます。視覚的に学べる教材はOJT(現場での実地指導)の負担を軽くし、教える人によって内容が変わる属人化を抑えます。標準化された教育と記録の連携により、新人でも迷わず業務を進めやすくなり、立ち上がりが早まります。多言語対応の教材を備えれば、外国人職員の学習支援にも応用できます。
経営面のメリット
経営面では、業務効率化が人件費の適正化と生産性向上に直結します。記録時間の短縮で職員一人あたりの実働時間の使い方が変わり、利用者と向き合うケアの時間を確保しやすくなります。さらに、蓄積された記録データは、経験や勘に頼りがちだった経営判断を数値で支える材料になります。利用者の状態変化の傾向、職員ごとの業務負荷、サービス別・時間帯別のコスト構造などを可視化することで、人員配置の最適化や業務改善の優先順位づけが可能になります。経営層にとっては、ICT導入の意義を「現場が楽になる」だけでなく「データに基づいて事業を運営できる」という言葉で社内外に説明できる点も、無視できない価値です。
これらのメリットは、公的データでも一定の裏づけがあります。令和6年度の介護労働実態調査では、ICT機器・介護ロボットの導入効果として「効果がある」「やや効果がある」の合計が、昼間の業務負担の軽減で49.4%、夜間の業務負担の軽減で44.6%と、約半数の事業所が効果を実感しています(介護労働安定センター、令和6年度調査・2026年6月時点)。比較軸で見ると、約半数が負担軽減を実感する一方で、全事業所が効果を得ているわけではない点も読み取れます。効果を引き出せるかどうかは、導入目的の明確さと運用設計に左右されます。メリットは「導入すれば自動的に得られるもの」ではなく「目的と運用次第で得られるもの」です。自施設で何を改善したいのかを先に定めておくことが、失敗回避につながります。
要点: 介護ICTのメリットは現場(記録・情報共有)・教育(標準化)・経営(生産性・データ活用)の3面に及ぶが、公的データでは効果を実感する事業所は約半数にとどまります。効果が出るかどうかは、導入目的の明確さと運用設計で決まります。
介護ICTで変わる3つの基幹業務(記録・申し送り・教育)
介護ICTの効果が出やすいのは、記録・申し送り・教育の3つの基幹業務です。いずれも入力時間の短縮・伝達漏れの防止・教育の標準化という具体的な変化が見込め、導入の最初の対象として適しています。
それぞれの業務について、現状の課題・ICT導入後の変化・見直しの確認ポイントを整理しました。
| 基幹業務 | 現状の課題 | ICT導入後の変化 | 見直しの確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 記録 | 紙・Excelで時間がかかり転記ミスが起きやすい/記録が分散し探す手間がある | タブレットでその場入力し記録時間を短縮/クラウドで即時共有/アラートで未入力・ミスを自動チェック | 二重入力が発生/紙とデジタルが混在/1回の入力に5分以上/記録漏れが月に複数回 |
| 申し送り・情報共有 | 口頭・ノート回覧で伝え漏れが起きやすい/夜勤・日勤間の共有に手間 | クラウドで即時共有し端末からいつでも確認/利用者ごとのタイムラインで整理 | 申し送りに1日30分以上/口頭依存/記録と内容が重複/その場にいた人だけに共有が限定 |
| 教育・OJT | 先輩の経験に依存し属人化/教育内容にばらつき/外国人職員で言語の壁 | 動画マニュアルで同一教材を学習/進捗・理解度を可視化/多言語教材で学習支援 | 教育が個人の経験則に依存/教育に時間がかかる/OJT内容が職員ごとに異なる/定着度を数値で把握できない |
3つの基幹業務における現状課題とICT化後の変化(出所: carebase(ケアベース)の導入現場の知見の整理に基づき編集部作成)
記録業務は、ICT導入の効果が最も分かりやすく表れる領域です。タブレットやスマートフォンでその場入力ができれば、紙への記入や後からの転記が不要になり、1件あたりの記録時間を抑えられます。必須項目の未入力や入力ミスを知らせるアラート機能があれば、記録の質を一定水準に保ちやすくなります。記録を電子化することで得られるメリットや費用、対応すべき法的要件は、介護記録の電子化とは|メリット・費用・法的要件の解説もあわせて参考になります。carebase(ケアベース)の導入事例でも、特別養護老人ホームで記録時間が約40%削減され、申し送りミスが減少した例があります。
申し送り・情報共有は、現場の安全性とケア品質を支える業務です。口頭やノート回覧が中心だと「聞いた・聞いていない」の行き違いが生じやすく、特に多シフト体制では夜勤明けの情報を日勤者が把握するまでに時間がかかります。クラウド上で情報を一元管理すれば、勤務帯が異なっても同じ情報を同時に確認でき、確認のための声かけや探す時間を減らせます。利用者ごとに時系列で情報が整理されると、「何がいつ起きたのか」「どの対応が必要か」が把握しやすくなり、申し送りの抜け漏れも防ぎやすくなります。情報共有アプリの選び方や比較ポイントは、介護情報共有アプリの比較と一元化する選び方の解説もあわせて参考になります。
教育・OJTは、サービスの質を左右する一方で属人化しやすい業務です。動画マニュアルを活用すれば、新人・既存職員を問わず同一の教材で学習でき、教える人によって内容が変わる問題を抑えられます。教育の標準化は、令和6年度にすべての介護職員へ義務化された認知症介護基礎研修への対応とも親和性が高い取り組みです。
要点: 記録は入力時間の短縮、申し送りは伝達漏れの防止、教育は標準化と、3つの基幹業務はICT化の効果が具体的に見込める。導入の最初の対象としては、自施設で負担が大きい業務から着手するのが現実的です。
教育・マニュアルのICT化と人材定着
教育・マニュアルのICT化は、動画マニュアルやeラーニングによって指導のばらつきを抑え、新人や外国人職員の早期戦力化と定着を支える取り組みです。人材不足のなかで「いかに早く・安心して育てられるか」に応える手段として注目されています。
教育・マニュアルのICT化のなかでも、動画マニュアルの活用は効果が見えやすい領域です。手順書の文章では伝わりにくいケアの動作も、映像なら一目で共有でき、いつでも繰り返し確認できます。指導者ごとに教え方が変わる属人化を抑えられるため、新人教育の手戻りや時間ロスの削減につながります。動画を使ってマニュアルをICT化し、現場を変えていく具体的な進め方は、介護マニュアルのICT化とは|現場が変わる動画活用術で詳しく解説しています。
教育・研修のICT化は、人材定着の面でも意味を持ちます。標準化されたマニュアルや動画教材は、教えるスタッフの負担も軽くします。前述の離職理由で「職場の人間関係」が最多だった点を踏まえると、指導のばらつきや教える側の負担は、現場の摩擦を生みやすい要素です。教育を仕組み化すれば、指導する側・される側双方のストレスを抑えやすくなります。新人研修から継続教育までの体制づくりについては、介護スタッフ教育の完全ガイド|新人研修から継続教育までもあわせて確認すると、研修計画から定着までの全体像をつかみやすくなります。
外国人職員の受け入れが進むなかで、多言語・視覚的な教材の整備は実務的な課題でもあります。令和6年度の介護労働実態調査では、外国籍労働者の受け入れ課題として「利用者や他の従業員との意思疎通(日本語能力・コミュニケーション)が難しい」が36.5%で最も高くなっています(介護労働安定センター、令和6年度調査・2026年6月時点)。比較軸で見ると、意思疎通の課題は住宅・寮の確保(23.6%)やサポート役の負担(22.4%)を上回ります。言語に依存しない視覚的な動画マニュアルは、この意思疎通の壁を下げる手段の一つです。外国人職員の受け入れを進める施設では、採用と同時に視覚的な教材を整えておくと、教育負担と定着面の双方で備えになります。
介護ICT導入の進め方|失敗しない4ステップ
介護ICT導入は、いきなり全施設に広げるのではなく、1. 現状把握 2. ツール選定 3. 試験導入 4. 全施設展開の4ステップで段階的に進めるのが基本です。小さく始めて成功体験を積むことが、定着率を高める近道になります。
導入の効果は、時間軸でも段階的に表れます。短期・中期・長期で捉えると、期待できる成果を見通しやすくなります。
| 効果の段階 | 主な取り組み | 期待できる成果 |
|---|---|---|
| 短期(導入〜半年) | 記録の電子化・申し送りの効率化 | 記録時間の削減・情報共有のスピード向上 |
| 中期(半年〜1年) | 教育・マニュアルの標準化 | 新人教育の時間短縮・業務の属人化防止 |
| 長期(1〜2年以降) | 定着による生産性向上 | 管理コスト削減・離職率低下・ケアの質向上 |
介護ICT導入効果の3段階フレーム(出所: carebase(ケアベース)の導入支援知見の整理に基づき編集部作成)
ここからは、4ステップを具体的に見ていきます。
ステップ1:現状把握(困りごとの見える化)
最初に行うのは、システム導入ではなく現状の整理です。記録を紙とシステムの両方に入力している、申し送りに時間がかかりすぎている、新人教育の内容が属人化しているといった非効率は、現場では「忙しさの一部」として見過ごされがちです。24時間シートや業務工程表を使い、どの業務に時間と手間が集中しているのかを洗い出します。この段階で現場職員の声を丁寧に聞いておくことが、その後の定着を左右します。
ステップ2:ツール選定(機能の多さより現場で使えるか)
次にツールを選びます。陥りやすいのが「多機能なシステムを選べば解決できる」という考え方です。実際に必要なのは、機能の多さではなく、現場職員が日常的に無理なく使えるかどうかです。「直感的に操作できるか」「必要な業務が一つで完結するか」「導入後のサポート体制があるか」を確認します。ICTに不慣れな職員でも迷わず使える設計かどうかが、定着の分かれ道になります。
ステップ3:試験導入(小さく始めて成功体験をつくる)
ツールを決めたら、まずは特定のフロアやユニットに限定して運用を始めます。現場の反応や課題を拾いながら改善することで、運用イメージが具体的になります。「記録が楽になった」「情報共有が早くなった」といった小さな成功体験が生まれると、他の職員にもポジティブな印象が広がり、全体展開への心理的なハードルが下がります。
ステップ4:全施設展開(使われる仕組みとして定着させる)
試験導入がうまくいったら全施設へ広げます。この段階で大切なのは、単に広げることではなく、運用ルールを統一して仕組みとして定着させることです。記録の入力ルールや申し送りの確認フローをそろえ、管理者が活用状況を定期的に確認します。導入した瞬間がゴールではなく、日常業務に溶け込んで初めて成果が生まれます。
導入を阻む課題としては、主にコストへの不安・職員の抵抗感・運用の定着が挙げられます。コストは補助金・助成金の活用で抑えられる場合があり、抵抗感は操作性の高い設計と導入時のサポート、現場リーダーを中心とした巻き込みで和らげられます。定着には、紙運用との併用期間を短く区切り、ICTを前提とした業務に切り替えることが有効です。
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導入でよくある4つの失敗と回避策
介護ICTの失敗は「操作が複雑」「コストが想定以上」「業務フローに合わない」「導入目的が曖昧」の4つに集約され、いずれも導入前の準備で回避できます。失敗パターンと回避策を1対1で押さえておくことが、定着への第一歩です。
失敗1:操作が複雑で現場に浸透しない
介護現場にはICTに不慣れな職員も多く、直感的に使えないシステムは定着しにくくなります。記録画面が多くて入力場所が分からない、ボタン配置が分かりづらい、といった状態では本来の効率化が実現できません。回避策は、現場目線での操作性の確認です。導入前にデモやトライアルを現場スタッフに試してもらい、初めて触れる職員でも迷わず操作できるか、入力負担を減らす仕組みがあるかを確認します。
失敗2:コストが想定以上に膨らむ
初期費用だけを見て導入を決めると、月額利用料・サポート費・アップデート費などのランニングコストが積み重なり、想定以上の負担になることがあります。特に補助金を前提に導入した場合、補助期間終了後のコストを見落とすと継続利用が難しくなります。回避策はコスト管理の徹底です。初期費用だけでなく月額・サポート費を洗い出し、補助金終了後のランニングコストや追加機能の費用まで含めてトータルで試算します。
失敗3:現場の業務フローに合わない
システム自体に問題がなくても、現場の業務フローと合っていないと二重作業が発生します。紙記録とICT入力が併存して業務量が増えたり、システムに合わせて無理に業務を変えて混乱が起きたりするケースです。回避策は業務フローとの整合です。現場の1日の流れをシステムに反映できるか、柔軟な設定が可能か、現場のフィードバックを反映できる仕組みがあるかを導入前に確認します。
失敗4:導入目的が曖昧
「便利そう」「補助金が出るから」という理由だけで導入すると、活用されずに終わりやすくなります。何を改善したいのかが職員に共有されず、効果を測る指標もないためです。回避策は導入目的の明確化です。改善したい業務や課題を具体的に洗い出し、記録入力時間の削減率や残業時間の短縮といったKPIを設定し、職員に「なぜ使うのか」を共有します。
失敗する施設には共通する傾向もあります。「導入だけで活用・研修が不十分」「上層部の意向が先走り現場の意見が反映されない」「業務全体を見直さずデジタル業務が上乗せされ仕事が増える」の3点です。裏を返せば、現場を巻き込み、業務全体を見直しながら進めれば、これらの失敗は事前に避けられます。
介護ICT導入の費用対効果(補助金の活用も)
介護ICTの費用は「コスト」ではなく人材投資として捉えると、判断軸が定まります。導入時には介護テクノロジー導入支援事業などの補助金・助成金を活用できる場合があり、初期負担を抑えられることもあります。補助金の種類・補助率・申請手順といった詳細は、介護ソフトの補助金まとめ|種類・補助率・申請手順はこちらで確認できます。
費用対効果の考え方
費用対効果を考えるとき、介護ICTは単なる支出ではなく人材投資として捉えると判断しやすくなります。たとえば職員一人あたりの記録時間を1日30分削減できれば、月に約10時間、年間では約120時間の業務時間の削減につながります。施設全体では年間数百時間規模の人的リソースを生み出す計算です。この時間は、ケアの質向上や職員の負担軽減、教育や振り返りに再配分できます。
金額ベースの目安として、職員20名規模の施設を想定した試算例があります。記録時間の短縮・残業削減・研修コスト削減を合計すると、年間で約1,000万円前後の改善効果になるという試算です(あくまでモデルケースの試算例であり、実際の効果は施設の規模・運用・賃金水準によって変わります)。比較軸で見れば、システム費用が年間で数百万円規模でも、投資回収を中期で見込める可能性があります。一方で、効果は前述のとおり導入設計に左右されるため、補助金の有無だけで導入を決めず、改善したい業務と回収の見通しをあわせて判断することが合理的です。
費用対効果は、金額だけでなく人材の定着という観点でも評価できます。令和6年度の介護労働実態調査で、離職率は12.4%と2年連続で低下しているものの、不足感は65.2%と前年より強まっています。採用が難しいなかでは、いまいる職員に長く働いてもらうことが、採用・教育コストの抑制という形で経営に効いてきます。記録・申し送り・教育の負担を減らし、情報共有の質を上げる取り組みは、残業や属人化を和らげ、働きやすさの改善を通じて定着につながります。投資判断では、削減できる時間・金額に加えて、こうした定着面への波及効果もあわせて見込んでおくと、導入後の評価軸が立てやすくなります。
要点: 費用は人材投資として、削減できる時間・金額に加えて定着面への波及まで含めて判断します。導入時には補助金・助成金を活用できる場合もあり、補助金だけで導入を決めず、改善したい業務と回収の見通しをあわせて見極めることが合理的です。
介護ICT導入の判断ポイント(5つの評価軸)
介護ICTを選ぶときは、機能の多さだけでなく「現場で使い続けられるか」を軸に判断するのがポイントです。以下の5つの評価軸で自施設の状況に照らすと、導入後の定着を見通しやすくなります。
| 評価軸 | 確認すべきポイント |
|---|---|
| 操作性 | ITに不慣れな職員でも直感的に操作できるか/スマホ・タブレットで完結するか |
| 業務フロー適合 | 現場の1日の流れに無理なく組み込めるか/紙やExcelから移行しやすいか |
| トータルコスト | 初期+月額+サポート+補助金終了後まで含めて試算できているか |
| 導入目的の明確さ | 改善したい業務とKPIが設定され、職員に共有されているか |
| 定着支援 | 導入研修・運用開始後のサポート体制が整っているか |
介護ICT導入の判断5軸(出所: 厚生労働省「介護現場におけるICTの利用促進」等の公的資料と導入現場の課題の整理に基づき編集部作成)
これらの軸は、特定の製品を有利に見せるためのものではなく、どのツールを検討する場合でも共通して当てはまる判断材料です。料金・機能・サポートといった事実を同じ基準で並べ、自施設が優先したい軸はどれかを先に決めておくと、比較の精度が上がります。たとえばITに不慣れな職員が多い施設では操作性と定着支援の比重が高くなり、複数事業所を運営する法人ではクラウドでの一元管理や拡張性が重みを増します。「比較」と「最終的な推奨」を分けて考え、まずは評価軸に沿って事実を集めることが、納得した選定につながります。
記録・申し送り・教育を一元化できるツールを検討する場合、carebase(ケアベース)も選択肢の一つです。介護記録アプリでの簡単入力、クラウドでの申し送り共有、動画マニュアルによる教育標準化を1つのクラウドツールでまとめて扱える設計で、機能・料金・導入要件の詳細は資料で確認できます。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 介護ICTの導入費用はどのくらいかかりますか?
介護ICTの費用は、初期費用と月額費用に分かれているのが一般的です。初期費用には設定作業や環境構築の費用が含まれ、月額費用は利用人数や機能によって変わります。近年は初期費用を抑えたプランや、必要な機能だけを選べる料金体系も増えています。導入コストだけでなく、記録時間の短縮や残業の削減といった業務負担の軽減効果まで含めて判断するのが現実的です。
Q2. ITが苦手な職員でも使いこなせますか?
最近の介護ICTは入力項目が整理され、画面も見やすく作られているものが多くあります。最初から完璧に使いこなす必要はなく、基本的な入力ができれば業務は進められます。分からない点をすぐに確認できる環境があれば、徐々に慣れていきます。導入前に、操作に不安を感じやすい部分を重点的に確認しておくと定着しやすくなります。
Q3. 補助金は2026年度も使えますか?どの制度が対象ですか?
介護テクノロジー導入支援事業などの制度を活用できる場合がありますが、対象機器・補助率・公募時期は地域や年度によって異なります。対象制度の詳細や申請手順は、補助金を詳しく解説した記事で確認してください。
Q4. 個人情報やセキュリティは大丈夫ですか?
介護ICTでは利用者の個人情報を扱うため、多くのサービスで通信の暗号化・アクセス制限・操作履歴の管理などが行われています。紙での管理と比べ、閲覧できる人を限定でき、紛失リスクを減らせる点も特徴です。どのような対策が取られているかを確認し、自施設の運用に合っているかを見極めましょう。
Q5. 介護ICTと介護DXの違いは何ですか?
介護ICTは記録・申し送り・教育などをデジタルツールで行う「手段」を指し、介護DXはそのICTを活用して業務や組織のあり方を変革する「取り組み」を指します。記録の電子化はICT、それによって働き方やケアの質まで変えていくのがDX、という関係です。まずは記録・申し送り・教育のICT化から着手し、段階的にDXへつなげるのが現実的です。
まとめ:介護ICTは「現場を守る」投資
介護人材の不足が続くなか、介護ICTは記録・申し送り・教育の効率化を通じて職員の負担を軽減し、ケアの質を維持・向上させるための手段です。2026年度には介護職員が約25万人不足する見込みで、限られた人員で質を保つには、採用と並行した生産性向上が欠かせません。導入を成功させる鍵は、現状の課題を見える化し、操作性と定着支援を軸にツールを選び、4ステップで段階的に進めること、そして補助金を活用しながら導入目的を明確にすることです。ICTは人の代わりに働く仕組みではなく、人がより良く働くための土台として位置づけることが、持続可能な施設運営につながります。
記録・申し送り・教育のICT化を一気通貫で進めるならcarebase(ケアベース)
carebase(ケアベース)は、介護記録アプリでの簡単入力、クラウドでの申し送り共有、動画マニュアルによる教育標準化を1つのクラウドツールでまとめて扱えるサービスです。記録・申し送り・教育という3つの基幹業務をバラバラのツールでなく一気通貫で扱える設計のため、現場の入力負担や情報共有の手間を抑えながら、教育の標準化まで一緒に進めやすくなります。補助金の活用や導入後のサポートにも対応しています。
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