carebase(ケアベース)コラム

2026.7.31

介護DXとは?メリット・課題・進め方をわかりやすく解説【2026年版】

タブレットの画面を利用者と一緒に確認する介護スタッフ(介護現場のデジタル化・DXのイメージ)

介護DXとは、ICTやデータを活用して介護の業務そのものと現場を変革し、ケアの質と生産性を高める取り組みです。背景にあるのは深刻な人材不足で、介護職員は2040年度に約272万人が必要と推計されています(厚生労働省、2026年6月時点)。この記事では、介護DXの定義とICT化との違いから、できること・メリット・課題・進め方の5ステップ、活用できる制度までを一気に整理します。

介護DXとは?ICT・デジタル化との違い

ICT化・デジタル化(手段)とDX(目的・変革)の違いを整理(出典: 厚生労働省「介護DXの推進」を基に作成)

介護DXとは、デジタル技術で介護業務と現場のあり方を変革し、質の高い効率的なサービス提供体制をつくる取り組みです。ツールを導入するICT化やデジタル化が「手段」であるのに対し、DXは業務やケアの質までを変える「目的」を指します(厚生労働省 介護DXの推進、2026年6月時点)。

介護DXの定義

厚生労働省は、限りある人材で質の高い効率的な介護サービス提供体制を確保するため、介護事業所や自治体におけるICT等を活用した業務効率化を喫緊の課題と位置づけています。介護DXは、記録や情報共有といった日々の業務をデジタルに置き換えるだけでなく、そこで得られたデータを多職種で活用し、ケアの質向上や連携強化まで結びつける流れを指します。単なる機械化ではなく、現場の働き方とサービスの質を同時に変えていく取り組みである点が核心です。

ICT化・デジタル化とDXの違い

ICT化・デジタル化とDXは、しばしば同じ意味で使われますが、役割が異なります。ICT化・デジタル化は、紙の記録をタブレット入力に変える、申し送りをチャットで共有するといった「手段の導入」です。一方でDXは、その手段によって空いた時間をケアに振り向ける、蓄積データで業務改善を回すといった「成果や仕組みの変革」まで含みます。ツールを入れた段階で止まると効果が出にくいため、導入を目的にせず、何を変えたいかを先に決めることが出発点になります。

介護DXが必要とされる背景(人材不足・2040年問題)

必要な介護職員数の推移(2022→2040年度で+約57万人)(出典: 厚生労働省 第9期介護保険事業計画の推計)

介護DXが求められる最大の背景は、人材不足の深刻化です。介護職員は2022年度の約215万人に対し、2026年度に約240万人、2040年度に約272万人が必要と推計されており、2040年度までに約57万人の増員が求められます(厚生労働省、2026年6月時点)。限られた人員で同じ業務量をこなす必要が高まるため、間接業務の効率化が現実的な打ち手になります。

介護職員の需給ギャップ

厚生労働省が2024年7月に公表した第9期介護保険事業計画の推計では、必要な介護職員数は2022年度の約215万人から、2026年度に約240万人(年6.3万人ペースで+約25万人)、2040年度に約272万人(年3.2万人ペースで+約57万人)へと増えていきます(厚生労働省 別紙1)。必要数が増える一方で生産年齢人口は減少に転じており、採用だけで不足を埋め続けるのは難しい構造です。そのため、まずは記録・申し送りなど人手をかけている間接業務を洗い出し、そこを効率化できるかどうかが、介護DXの必要性を見極める起点になります。

2040年問題と生産年齢人口の急減

厚生労働省は、2040年頃に向けて高齢者人口がピークを迎え、85歳以上人口の増加で介護需要が増大・多様化する一方、支え手である生産年齢人口が急減すると見込んでいます(厚生労働省 介護DXの推進、2026年6月時点)。需要が増え供給が減る局面では、一人あたりの生産性を高めるほかに選択肢が限られます。介護DXは、この構造的なギャップに現場が対応するための手段として位置づけられます。

介護DXでできること|主な領域とツール

介護DXの主な3領域と着手の優先度(出典: 厚生労働省「介護DXの推進」等を基に作成)

介護DXでできることは、記録・情報共有・見守り・教育といった現場業務のデジタル化と、その先の業務改善です。いきなり全体を変えるのではなく、アナログのデジタル化から段階的に進めるのが一般的な流れとされています。まずは自施設のどの領域から着手するかを整理すると、投資と効果の見通しが立てやすくなります。

介護DXは「デジタル化の段階」と「業務領域」の掛け合わせで整理すると、着手先を選びやすくなります。

段階 内容 記録 申し送り 見守り 教育
デジタイゼーション 紙をデジタルに置換 タブレット入力 チャット共有 センサー記録 動画教材化
デジタライゼーション 業務プロセスをデジタル化 記録の自動集計 既読・引き継ぎ管理 異常の自動通知 受講状況の可視化
DX(変革) データ活用で質を変える ケアの質分析 情報共有の迅速化 予兆把握 教育の標準化

3段階(デジタイゼーション→デジタライゼーション→DX)と介護現場の業務領域を対応づけた整理(出典: 経済産業省のDX段階論・厚生労働省「介護DXの推進」等の公的資料を基に作成)

記録・申し送り・情報共有

記録・申し送り・情報共有は、介護DXで最初に効果が出やすい領域です。紙やホワイトボードでのやり取りは、転記の手間や伝達漏れが起きやすく、残業や記録漏れの一因になりやすい業務です。これをクラウドで共有すれば、複数拠点・多職種が同じ情報をリアルタイムで参照でき、転記の二度手間を減らせます。厚生労働省も、紙でアナログにやり取りしていた情報を電子で共有することで、職員の負担軽減と情報共有の迅速化につながるとしています(厚生労働省)。介護記録の電子化の進め方は、介護記録の電子化とはでも詳しく解説しています。複数拠点・多職種で使う情報共有ツールの比較軸は、別記事介護情報共有アプリの比較と選び方で整理しています。

見守り・介護ロボット

見守りセンサーや介護ロボットは、夜間の巡回負担や事故リスクへの対応を助ける領域です。ベッドセンサーが離床や体動を検知して通知する仕組みは、職員が常時付き添えない時間帯の安全確認を補います。導入には機器コストがかかりますが、見守り機器などのテクノロジーは生産性向上の取り組みとして制度上も評価対象になっています(後述の制度・支援策で解説します)。すべてを一度に揃えず、リスクの高い場面から導入する方が費用対効果を見極めやすくなります。

教育・多言語対応

教育・多言語対応は、人材の定着と育成に直結する領域です。動画マニュアルを使えば、教え方が指導者によって変わる状態を抑え、誰が見ても同じ内容で学べるようにそろえられます。外国人職員が増える現場では、視覚的なマニュアルや多言語対応が、言葉の壁による教育負担を下げる手段になります。動画マニュアルを新人教育に効かせるコツは、介護現場で効果的な動画マニュアルの作り方が参考になります。CareBase(ケアベース)は、動画マニュアルと多言語対応で外国人職員の教育を標準化する機能を備えています。

介護DXのメリット(経営・現場・利用者)

介護DXのメリットは、経営・現場・利用者の3つの視点で整理できます。経営面では生産性向上と人材定着、現場面では業務負担の軽減、利用者面ではケアの質と安心感の向上につながります。効果は導入して終わりではなく、空いた時間や蓄積データをどう使うかで大きく変わります。

経営視点(生産性と人材定着)

経営の視点では、限られた人員で運営を続けるための生産性向上が中心的なメリットです。間接業務を効率化して残業を抑えられれば、人件費や採用コストの負担を和らげられます。働きやすい環境は職員の定着にもつながり、慢性的な採用難のなかで人材をつなぎ止める効果が期待できます。推計上は必要職員数が増え続ける見通しのため、採用だけに頼らず一人あたりの生産性を高める経営判断の重みが増しています。

現場職員視点(負担軽減とケア時間)

現場職員にとってのメリットは、記録・申し送りといった間接業務の負担軽減です。手書きや転記に費やしていた時間が減れば、その分を利用者と向き合うケアの時間に振り向けられます。申し送りの伝達漏れが減ることは、ヒヤリハットの防止にもつながります。ツールに慣れるまでの負担はありますが、入力の手間そのものが軽くなる設計であれば、現場の受け入れも進みやすくなります。

利用者・家族視点(ケアの質と情報共有)

利用者と家族の視点では、ケアの質の向上と情報共有の安心感がメリットになります。記録がデータとして蓄積されれば、体調の変化を早めに把握し、状態に合ったケアにつなげやすくなります。厚生労働省も、介護情報基盤に蓄積された情報の活用により、多職種連携の強化や本人の状態に合った適切なケアの提供につながると期待を示しています(厚生労働省、2026年6月時点)。

介護DX導入の課題と進まない理由

介護DXが進まない主な理由は、コスト・ITリテラシー・紙文化の3つに集約されます。ツールを導入しても現場で使われず放置される、経営層と現場の温度差で定着しない、といった壁は多くの施設に共通します。課題を先に把握しておくことが、失敗を避ける近道になります。

導入コストと費用対効果

導入コストと費用対効果への不安は、着手をためらう代表的な理由です。初期費用に加え、月額利用料や保守などのランニングコストも発生します。ただしコストだけで判断すると、削減できる残業時間や後述の制度支援を見落としがちです。費用対効果は、絶対額だけでなく、どの業務で何時間削減できるか、加算や支援事業で回収できる範囲はどこまでかを含めて見積もることで、判断の精度を高められます。

職員のITリテラシー格差・心理的抵抗

職員のITリテラシーの差と心理的な抵抗も、定着を妨げる要因です。「今までこのやり方でやってきた」という慣れや、新しい操作への不安から、システムが使われないまま放置されることがあります。この壁は機能の多さでは解決しません。むしろ、操作が直感的で、動画マニュアルなどで学びながら使える設計かどうかが、現場に根づくかどうかを分けます。導入前に、実際に使う職員が試せる期間を設けることが有効です。

紙文化と経営層・現場の温度差

紙の運用が根強く残る現場と、経営層・現場の温度差も課題です。経営層が決めたシステムが現場の実情に合わず使われない、逆に現場が必要性を感じても投資判断が進まない、という双方向のずれが起こります。介護DXは技術の問題であると同時に、現場を巻き込む合意形成の問題でもあります。そのため次に述べる進め方では、職員の巻き込みを工程そのものに組み込むことが欠かせません。

介護DXの進め方|失敗しない5ステップ

失敗しない介護DX導入の5ステップ(出典: 経済産業省のデジタル化段階論を基に作成)

介護DXの進め方は、現状把握から始め、小さく試して広げる5ステップが基本です。いきなり全業務をデジタル化するのではなく、課題の大きい領域から段階的に進めることで、現場の負担と失敗リスクを抑えられます。以下の順序は、経済産業省が示すデジタル化の段階論とも整合します。

ステップ1 現状の課題を洗い出す

最初に、どの業務にどれだけ時間がかかっているかを洗い出します。記録・申し送り・見守り・教育のうち、残業や漏れが起きやすい工程を特定することで、着手すべき優先領域が見えてきます。現場職員へのヒアリングを含めると、経営層が把握していない実態の課題も拾えます。

ステップ2 目的とゴールを決める

次に、介護DXで達成したい目的とゴールを明確にします。「記録時間を減らす」「申し送りの漏れをなくす」など、測れる目標に落とし込むことがポイントです。目的が曖昧なまま導入すると、ツールを入れただけで効果検証ができなくなります。

ステップ3 小さく始める(スモールスタート)

いきなり全施設・全業務に広げず、一つの領域や一部の拠点から小さく始めます。スモールスタートなら、現場の反応を見ながら運用を調整でき、失敗しても影響を限定できます。効果が実証できた取り組みは、他の領域へ横展開する説得材料にもなります。

ステップ4 職員を巻き込み運用ルールを整える

導入と同時に、誰がいつ入力するかといった運用ルールを整えます。職員を巻き込み、メリットを実感してもらうことで、放置されるリスクを下げられます。動画マニュアルなどで学びながら使える環境があると、ITに不慣れな職員も定着しやすくなります。

ステップ5 効果を検証して広げる

最後に、削減できた時間や漏れの減少といった効果を検証し、改善しながら対象を広げます。データで成果を可視化することは、次の投資判断や制度上の要件を満たすうえでも役立ちます。介護DXは一度の導入で完結するものではなく、検証と改善を繰り返すことで現場に定着していきます。

介護DXを後押しする制度・支援策

介護DXは、報酬や補助の制度面からも後押しされています。2024年度の介護報酬改定では生産性向上推進体制加算が新設され、都道府県の介護テクノロジー導入支援事業や、情報連携の基盤づくりも進んでいます。コストだけで判断せず、これらの支援で回収できる範囲も併せて検討する価値があります。

生産性向上推進体制加算(2024年度改定)

2024年度の介護報酬改定では、生産性向上推進体制加算が新設されました。見守り機器などのテクノロジーを導入し、生産性向上ガイドラインに基づいて継続的に業務改善を行い、効果データを提供することなどが要件とされています(厚生労働省 介護分野における生産性向上、2026年6月時点)。この改定で、テクノロジー導入が報酬にも接続した点は大きな変化で、DXがコスト負担だけでなく収益面の評価にもつながる制度になっています。

介護テクノロジー導入支援事業

介護テクノロジー導入支援事業は、都道府県が実施する介護ロボットやICT導入への補助制度です。厚生労働省は令和8年度に向けた実証提案の募集などを継続的に案内しています(厚生労働省、2026年6月時点)。補助金・助成金の補助率や申請手順の詳細は年度や自治体で変わるため、介護ソフト導入に使える補助金まとめで最新の内容を確認してください。個別の適用可否は所管の自治体窓口へ確認することをおすすめします。

介護情報基盤の整備

介護情報基盤は、利用者本人・市町村・介護事業所・医療機関が利用者情報を共有・活用できる仕組みとして整備が進められています。紙でやり取りしていた情報を電子で共有できるようになり、業務効率化と多職種連携の強化が期待されています。令和7年度には介護DX(被保険者証関係)の先行実施事業が始まっています(厚生労働省 介護DXの推進、2026年6月時点)。施設内の記録・申し送りのデジタル化は、こうした外部の情報連携基盤と将来つながる前提で進めておくと、後の移行がスムーズになります。

記録・申し送り・教育を一元化するならCareBase(ケアベース)

介護DXの着手先に迷ったら、時間のかかる記録・申し送り・教育の一元化から始めるのが一つの判断軸になります。記録・申し送り・教育を別々のツールで扱うと、転記の手間と操作の学習コストが二重にかかります。記録から申し送り・教育までを一つの画面で扱えるかという軸で比べると、機能が分散したツールより一元化型のほうが転記の手間を減らせます。CareBase(ケアベース)は、介護記録・申し送り・動画マニュアルによる教育をクラウドで一元化し、多言語対応で外国人職員の教育も標準化する機能を備えています。記録業務の負担を減らしたい施設は、まず「記録・申し送り・教育が一元化できるか」を選定軸に確認すると、導入後のギャップを避けやすくなります。

よくある質問(FAQ)

介護DXとICT化は何が違いますか?

ICT化は紙の記録をデジタルに置き換えるといった「手段の導入」を指し、介護DXはその手段で業務やケアの質そのものを変える「変革」まで含む点が違いです。ツールを入れる段階で止まると効果が出にくいため、何を変えたいかを先に決めることが介護DXの出発点になります。

小規模な施設でも介護DXは進められますか?

小規模施設でも進められます。全業務を一度に変えるのではなく、記録や申し送りなど負担の大きい一つの領域から小さく始める方法が現実的です。効果を確認しながら広げることで、限られた予算と人員でも無理なく定着させやすくなります。

介護DXは何から始めればよいですか?

まず現状の課題を洗い出し、どの業務に時間がかかっているかを特定することから始めます。そのうえで測れる目的を決め、優先度の高い領域からスモールスタートするのが失敗しにくい進め方です。導入後は効果を検証して段階的に広げます。

介護DXで使える制度や支援にはどんなものがありますか?

2024年度に新設された生産性向上推進体制加算や、都道府県による介護テクノロジー導入支援事業などがあります(厚生労働省、2026年6月時点)。補助金・助成金の詳細は介護ソフトの補助金まとめで確認でき、個別の適用可否は所管窓口へ相談するのが確実です。

まとめ

介護DXとは、ICTやデータで介護業務と現場を変革し、ケアの質と生産性を同時に高める取り組みです。背景には2040年度に約272万人の職員が必要とされる人材不足があり、記録・申し送り・見守り・教育の領域から小さく始めるのが基本です。判断のポイントは、ツール導入を目的にせず、どの業務のどれだけの時間を減らせるかを先に見極めること、そして生産性向上推進体制加算などの制度支援も併せて費用対効果を考えることの2点です。まずは自施設で時間のかかっている工程を洗い出し、一つの領域から着手してみてください。

介護ソフトの導入や見直しをご検討中の方は、まずは情報収集から始めてみませんか。
carebase(ケアベース)では、現場に定着する介護記録システムとして、多くの事業所でご活用いただいています。
費用や機能、導入事例について詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。

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