2026.8.21
介護現場のタブレット活用|導入効果と選び方・定着の5ステップ
介護現場のタブレットは、記録・申し送り・写真・マニュアル確認をその場で終える端末です。効果を決めるのは端末の性能より、組み合わせる介護ソフトと運用設計で、補助を受けた事業所の53.6%がタブレットを選び、81.9%が文書作成時間の短縮を実感しています(厚生労働省、2026年8月時点)。端末の選び方と現場に定着させる進め方まで整理します。
記録と申し送りの負担をタブレットで減らしたい方は
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介護現場でタブレットは何に使えるのか
居室のメモを事務所で清書していた工程が、その場入力と共有・実績への反映に置き換わる(出所: 厚生労働省「ICT導入支援事業(令和3年度)導入効果報告取りまとめ」に基づき編集部作成)
介護現場のタブレットは、介護記録・申し送り・写真記録・動画マニュアル・請求への連動を1台に集約できます。紙とパソコンに分かれていた作業をベッドサイドやフロアで終えられるため、事務所へ戻って書き写す工程は不要です。移動と転記が消える分だけ、記録にかかる時間の構造が変わります。
| 業務 | タブレットで置き換わる作業 | 主に使う機能 |
|---|---|---|
| 介護記録・バイタル | メモ書き→事務所で清書 | テンプレート入力・数値入力 |
| 申し送り | 口頭伝達+申し送りノート | 一覧表示・既読管理 |
| 状態観察 | 文章だけで伝える | カメラ(写真・動画) |
| 新人教育・手順確認 | 紙マニュアルを探す | 動画マニュアル・QRコード |
| 実績・請求 | 記録から手作業で転記 | 記録と実績の連動 |
介護記録とバイタルをその場で入力する
もっとも使われている用途が、居室やフロアでの介護記録とバイタルの入力です。測ったその場で数値を入れると、メモから記録用紙へ書き写す工程が不要になります。令和3年度のICT導入支援事業では、入力済みの情報を他の文書でも使えるようになったと答えた事業所が84.8%にのぼりました(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。一度入れた数値が日誌にも計画書にも回るため、同じ情報を何度も書く場面が減ります。測定項目の考え方はバイタルチェックとはが参考になります。
申し送り・情報共有を1つの画面にまとめる
2つ目が申し送りです。紙のノートと口頭伝達を画面に集めると、遅番・夜勤・早番のあいだで情報が途切れにくくなります。同事業では、情報共有がしやすくなったと答えた事業所が90.3%と、調査項目のなかで最も高い数値でした(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。効果が「入力の速さ」より「伝わり方」に出やすいことを示す数字です。記録時間の短縮だけを導入目的に置かず、申し送り漏れの減少もあわせて評価対象にしておくと投資判断がぶれません。置き換え方は申し送りの電子化で整理しています。
写真と動画で状態の変化を残す
3つ目がカメラの活用です。皮膚の状態や食事の残り方など、文章だけでは伝わりにくい情報を画像で残せます。写真等の情報を効果的に使えるようになったと答えた事業所は68.6%でした(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。一方で、利用者の身体を撮影する運用は個人情報の取り扱いに直結します。撮影の同意、保存先、閲覧できる職員の範囲を先に決めてから始める必要があります。撮影・保存・閲覧範囲の決め方は介護施設における個人情報保護と記録管理もあわせて確認してください。
動画マニュアルの確認と請求業務への連動
4つ目が教育です。移乗や吸引、感染対策などの手順を動画にしておくと、迷った職員がその場で確認できます。ケア用品の置き場やユニットの入口にQRコードを貼り、該当する手順動画へ直接飛ばす運用も取られています。5つ目が請求業務との連動です。サービス提供記録がそのまま実績に反映されると、月末に実績を打ち直す作業がなくなります。ICT導入支援事業で補助対象になった介護ソフトも、記録業務・情報共有・請求業務を一気通貫で行えることが要件に挙げられています(厚生労働省 介護テクノロジー導入支援事業、2026年8月時点)。記録と請求が別システムのままでは転記が残るため、連動の有無は選定段階で確認する項目です。
タブレットとスマートフォンはどちらが向くのか
用途が決まったら、次に決めるのは端末の種類です。補助事業ではタブレット端末が53.6%、スマートフォンが9.1%、モバイルパソコンが10.9%で、タブレットがスマートフォンの約6倍選ばれています(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。比較軸を「画面の見やすさ」「携帯性」「複数人での確認」「入力方法」「持ち出し時の管理負担」に置くと、この差が生まれる理由を説明できます。
| 評価軸 | タブレット | スマートフォン | ノートパソコン |
|---|---|---|---|
| 画面の見やすさ | 一覧表示に向く | 項目単位の表示になりやすい | 最も広い |
| 携帯性 | ポケットには入らない | 常時携帯できる | 移動しながらは使えない |
| 複数人での確認 | 画面を向けて共有しやすい | 1人向き | 場所を固定して共有 |
| 入力方法 | 画面タッチ・音声・手書き | 画面タッチ・音声 | キーボード入力が速い |
| 持ち出し時の管理負担 | 台数管理がしやすい | 私物と混ざりやすい | 持ち出す前提ではない |
データ出典: 端末区分ごとの選択割合は厚生労働省「ICT導入支援事業(令和3年度)導入効果報告取りまとめ」(2026年8月時点)。評価軸は本文で提示した5項目に基づく整理。
現場が実際に選んでいる端末
補助事業の内訳では介護ソフトが67.5%、タブレット端末が53.6%と続き、この2つがセットで導入されている状況が読み取れます。スマートフォンは9.1%にとどまり、記録の入力端末としては画面の広い端末が優先されてきた形です。複数の職員が同じ画面を見て申し送りを確認する場面が多い施設系では、画面サイズがそのまま実務上の差になります。
サービス種別で変わる使い分けの判断軸
訪問系サービスでは条件が変わります。移動中の携帯性が優先され、片手で操作できることが要件になる場面ではスマートフォンも候補です。ICT導入支援事業でも訪問介護は補助事業所の9.4%を占めており、施設系とは異なる使い方が想定されます。施設内で共有・確認する使い方が中心ならタブレット、単独で訪問し移動時間が長いならスマートフォンが検討の起点になります。
現場で使えるタブレットの選び方
端末条件は最後に決まる。ソフトの動作環境と費用に含まれる範囲を先に確定させる(出所: 厚生労働省「ICT導入支援事業(令和3年度)導入効果報告取りまとめ」「居宅サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き」に基づき編集部作成)
端末の種類をタブレットに絞ったあとも、機種から入る選び方は取りません。タブレットは端末スペックからではなく、先に介護ソフトの要件を固めてから逆算して選びます。厚生労働省の手引きは、機能の有無だけでなく操作のしやすさ、価格に含まれる範囲、解約のしやすさ、他製品へ乗り換える際のデータ引き継ぎまで比較するよう求めています(厚生労働省の手引き、2026年8月時点)。端末条件はその後に決まります。
| 確認する順番 | 確認項目 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 1. ソフト | 記録・申し送り・請求が連動するか | 記録だけ電子化して転記が残る |
| 2. ソフト | 動作環境(OS・ブラウザ)の指定 | 手持ち端末が対象外だった |
| 3. 費用 | 利用料に保守・サポートが含まれるか | 保守費が別請求で総額が上振れ |
| 4. 契約 | 解約条件と乗り換え時のデータ出力 | 移行時にデータを持ち出せない |
| 5. 端末 | 画面サイズ・重さ・耐久性・電池 | 片手で持てず入力が続かない |
| 6. 通信 | 居室・浴室・エレベーター付近の電波 | 一部の場所だけ同期できない |
| 7. 記録 | 印刷・保存期間・バックアップ | 運営指導で書類を出せない |
データ出典: 確認項目は厚生労働省「居宅サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き」の比較の観点を実務の確認順に並べ替えたもの(2026年8月時点)。
端末より先に介護ソフトの要件を決める
補助事業の内訳で介護ソフトが67.5%、タブレット端末が53.6%と並ぶことは、端末が単体ではなくソフトとセットで導入されていることを意味します。提供形態はクラウド型が70.3%で、オンプレミス型の27.0%を大きく上回りました(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。クラウド型が主流であれば、端末に求められるのは高い処理性能ではなく、指定されたブラウザやアプリが安定して動くことです。記録・申し送り・教育のどの工程を変えたいかを先に決め、その工程を担うソフトの動作環境から端末条件を逆算する順序になります。
公開されている機能調査結果で候補を絞る
介護ソフトの選定方法や導入方法の情報が課題だと答えた事業所は74.2%にのぼります(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。この点について、厚生労働省は補助金の参考資料として「介護記録ソフト機能調査結果」を公開しており、2026年8月時点の最新版(令和8年6月10日版)には39件のソフトが掲載されています(厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」)。掲載項目は、販売形態、ケアプランデータ連携システムへの対応、訪問・通所・居住・ケアマネ・施設のサービス別に対応している業務です。同じ様式で並んでいるため、各社サイトを個別に読み比べる前に候補を絞り込めます。
タブレットで使う記録アプリで確認する5項目
候補が絞れたら、その端末に載せる記録アプリ側の要件を確認します。ここで見るのは機能の多さではなく、タブレットで使う前提でしか表面化しない5項目です。
| No | 確認項目 | 確認の観点 |
|---|---|---|
| 1 | 入力方法 | タッチ・音声・手書きに対応しているか。キーボード入力を前提とした画面設計になっていないか |
| 2 | オフライン入力 | 電波が届かない場所でも入力を続けられるか。再接続したときにどう同期されるか |
| 3 | 1画面の入力項目数 | 片手で端末を保持したまま、何回のタップで1件の記録が終わるか |
| 4 | 写真・動画の添付 | 記録に直接添付できるか。画像の保存先が端末内かサーバー側か |
| 5 | データ連携 | ケアプランデータ連携システムに対応しているか。記録が実績・請求へ反映されるか |
1つ目から3つ目は入力そのものの条件です。厚生労働省の手引きは、機能の有無だけでなく、画面表示の分かりやすさやデータの登録・参照が直感的に理解できるかという操作のしやすさの観点からも比較するよう示しています(厚生労働省の手引き、2026年8月時点)。物理キーボードを使わない端末では、タッチ・音声・手書きのどれで1件を完了できるかがそのまま入力時間に表れます。1画面あたりの入力項目が多い設計は、机に置いて使う分には問題になりませんが、利用者のそばで片手保持のまま入力する場面ではタップ回数が負担として積み上がります。2つ目のオフライン入力は、居室の奥や浴室で電波が届かない場所が残ることを前提に、アプリ側の要件として確認する項目です。圏外で入力できるか、再接続時に自動で同期されるか、同期待ちの記録が画面上で分かるかまで見ておくと、運用開始後に「入力したはずの記録がない」という状態を避けられます。
4つ目と5つ目は記録の出口に関する条件です。写真をその場で記録に添付できるかは、状態観察の記録をどこまで画像で残せるかを左右します。あわせて確認するのが保存先です。厚生労働省の手引きは物理的安全管理措置として、個人データを取り扱う端末に付与する機能の限定や記録媒体の持出しの制限を挙げており、画像が端末内に残る構成かサーバー側で管理される構成かで、紛失時に持ち出される情報の範囲が変わります。5つ目は連携で、前述の機能調査結果でもケアプランデータ連携システムへの対応がサービス別の対応業務と並ぶ掲載項目になっています。記録が実績・請求へ反映されない構成では、端末を入れても月末の転記が残ります。この5項目で候補を絞ったあとの機能の詳細比較は、介護ソフトの選び方と介護記録アプリおすすめ比較で扱っています。
端末側の条件は画面・重さ・耐久性・電池・電波で見る
端末条件で効いてくるのは、片手で保持したまま入力を続けられるかどうかです。一覧性を優先して画面を大きくすると重量が増え、移乗介助の合間に片手で扱う場面では負担になります。手指消毒後に触れる機会が多いためアルコールでの清拭に耐える素材やカバーが求められ、電池は夜勤帯を含めた連続使用時間から逆算します。通信環境も同時に設計する項目です。ICT導入支援事業では補助対象機器のうちWi-Fi機器が20.8%を占めていました(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。居室の奥や浴室で電波が届かない場所が残ることもあるため、導入前に端末を持ち歩いて確認しておくと、運用開始後の停滞を避けられます。
保存・印刷・乗り換えまで確認する
厚生労働省の手引きは、電子文書を前提とした実地指導について、問題があった際には紙媒体の証拠書類が必要になるため印刷が可能な機器・ソフトウェアを導入すること、自治体職員が見慣れた様式で画面表示できるほうが確認がスムーズであることを挙げています。あわせて、指定基準上の保管期限が2年である一方で条例により5年と定めている自治体があることに触れ、サーバー障害やベンダーの事業廃止も想定して、定められた期間内にデータが確実に保管されることを確認するよう促しています(厚生労働省の手引き、2026年8月時点)。他製品へ乗り換える際にデータを持ち出せるかも契約前の確認項目です。準備の全体像は介護の実地指導(運営指導)チェックリストで確認できます。
端末の型番を比べる前に、ソフトの動作環境・費用に含まれる範囲・データの出口を確定させると、選定のやり直しが起きません。
操作が苦手な職員でも入力を続けられる介護記録の仕組みを探している方は
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導入にかかる費用と端末の揃え方
費用は端末代・ソフト利用料・通信費の3つに分かれ、端末は購入・レンタル・リース・私物利用から選べます。ICT導入支援事業では保守費用が利用料金に含まれる契約が63.2%、別途支払っている契約が28.2%でした(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。総額を比べるには、この内訳を揃えてから並べる必要があります。
| 調達方法 | 初期費用 | 月々の負担 | 故障・更新時の扱い | セキュリティ管理の主体 |
|---|---|---|---|---|
| 購入 | 台数分がまとめて発生 | なし | 自費で修理・買い替え | 事業所 |
| レンタル | 抑えられる | 発生する | 交換対応を受けられる場合がある | 事業所(契約条件による) |
| リース | 抑えられる | 発生する | 契約期間で入れ替え | 事業所 |
| 私物利用 | ほぼ不要 | なし | 職員の私物に依存 | 事業所と職員に分散 |
データ出典: 調達方法の区分は一般的な契約形態の整理。保守費用の負担割合は厚生労働省「ICT導入支援事業(令和3年度)導入効果報告取りまとめ」(2026年8月時点)。
費用は端末・ソフト・通信の3つに分けて見る
比較でつまずきやすいのがソフトの価格体系です。ICT導入支援事業では、使用権購入方式が48.2%、一括契約方式(リースを含む)が23.6%、利用料支払方式が14.6%と支払い方が分かれており、初期費用だけ、月額だけを見比べても総額の順序は入れ替わります(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。
記録と教育を同一のサービスで扱えるかという軸で価格を見ると、CareBase(ケアベース)は記録システムが1施設あたり月額30,000円、動画マニュアルを扱うマニュアルシステムが同30,000円、両方を使えるプランが月額45,000円です。初期費用は300,000円(税抜)で、導入応援キャンペーン中は0円です。なお、介護テクノロジー導入支援事業では、ICTの補助対象に介護ソフトやタブレット端末が含まれます。要件を満たす場合の補助率は3/4が下限です(厚生労働省 介護テクノロジー導入支援事業、2026年8月時点)。制度の対象や申請の流れは介護ソフトの補助金まとめにまとめています。
購入・レンタル・リース・私物利用の違い
購入は初期にまとまった支出が生じますが、月々の負担がなく、台数を自由に増やせる方式です。レンタルとリースは初期費用を抑えられる一方、契約期間中の総支払額は購入を上回る場合があります。私物利用は最も早く始められますが、個人情報を扱う端末の管理主体が事業所と職員に分散します。厚生労働省の手引きが端末に付与する機能の限定や持出しの管理を物理的安全対策として挙げていることを踏まえると、私物での運用は退職時のデータ削除まで含めたルールを整えてから判断する対象です。
何台必要かを決める考え方
必要台数に公的な基準はありません。介護テクノロジー導入支援事業でも、ICTの補助台数は「必要台数」と示されるにとどまっています(厚生労働省の同事業資料、2026年8月時点)。実務上は、食事・排泄・バイタル測定が重なる時間帯に何人が同時に入力するかを数えると目安が出ます。フロアやユニット単位で共有するのか職員1人1台にするのかで金額が大きく変わるため、夜勤帯の最小人数と日中のピークを分けて数え、故障に備えた予備を1台程度加える形が一般的です。
タブレット導入で現場は何が変わるのか
削減時間は1日1時間以内に半数以上が収まり、投資回収の見積もりもこの水準に置く(出所: 厚生労働省「ICT導入支援事業(令和3年度)導入効果報告取りまとめ」に基づき編集部作成)
選定と費用の見通しが立ったら、投資判断のために効果の水準を確認します。ICT導入全体の効果や進め方は後述の介護ICT解説記事に譲り、ここでは端末と記録アプリを選ぶ判断材料になる範囲に絞ります。補助を受けて導入した事業所の81.9%が文書作成時間の短縮を、90.3%が情報共有のしやすさを実感しています(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。ただし全体の業務量が減ったと答えたのは68.5%にとどまり、効果の出方には幅があります。数字を平均ではなく分布で読むことが、導入計画の精度を上げる近道です。
| 感じている効果 | 割合 |
|---|---|
| 情報共有がしやすくなった | 90.3% |
| 入力済みの情報を他の文書でも利用できるようになった | 84.8% |
| 文書作成の時間が短くなった | 81.9% |
| 全体の業務量が減った | 68.5% |
| 職場以外でも情報を確認できるようになった | 47.7% |
データ出典: 厚生労働省「ICT導入支援事業(令和3年度)導入効果報告取りまとめ」(補助事業所5,371件・2026年8月時点)
文書作成と情報共有にあらわれる効果
高い数値が並ぶのは情報共有と文書の再利用に関する項目で、「職場以外でも情報を確認できるようになった」は47.7%と半数を下回ります。施設内で完結する使い方が中心である実態がうかがえます。保管方法も、手入力・紙保管が導入前の30.6%から導入後15.4%へ下がった一方、印刷して保管する運用は36.9%残りました。紙がゼロになる前提で計画を立てず、印刷が残る書類を先に洗い出しておく必要があります。
削減できる時間はどれくらいか
削減できた間接業務時間は、1日あたり0〜30分が28.3%、30〜60分が24.4%で、この2区分に半数以上が入ります。180分以上という事業所も6.7%ありますが、「増えた」と答えた事業所も5.0%存在します(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。データ上は、多くの事業所で1日30分から1時間程度の短縮に収まっており、劇的な削減が標準ではありません。投資回収の見積もりは「1日1時間以内の削減」を基準に置くほうが実態に近くなります。
生まれた時間の使い道は利用者とのコミュニケーションが52.0%、直接ケアが45.0%で、人件費の圧縮より先にケアの時間が挙がります。残業時間の削減を活用先に挙げた割合は導入1年目の39.8%に対し2年目は45.9%で、効果は端末を配った時点ではなく運用がなじむ2年目にかけて積み上がります(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。ICT導入全体の効果や時間の使い道の変化は介護ICTとは?導入メリット・進め方まで解説で詳しく解説しています。
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導入前に押さえたい注意点とリスク
つまずきは機器ではなく人と運用に集中するため、研修回数と相談担当を配布前に決める(出所: 厚生労働省「ICT導入支援事業(令和3年度)導入効果報告取りまとめ」に基づき編集部作成)
効果の水準と裏返しで確認しておくのが、つまずく側の論点です。タブレット導入で最も多く挙がる課題は、職員の苦手意識の解消と研修で89.5%にのぼります(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。次いで選定方法・導入方法の情報が74.2%、使いやすい介護ソフトの導入が73.9%と続きます。機器そのものより、人と運用に関する課題が上位を占めます。
| つまずきやすい点 | 起きること | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 操作の習熟差 | 一部の職員だけが入力し負担が偏る | 研修の回数と相談先の担当者 |
| 紛失・盗難 | 個人情報が持ち出される | 持ち出し可否・保管場所・紛失時の手順 |
| 破損・電池切れ | 記録が止まる | 予備台数と充電の当番 |
| 電波の届かない場所 | 入力できない・同期されない | 居室や浴室の電波とオフライン時の挙動 |
| 紙が残る | 二重管理になる | 印刷保管が必要な書類の一覧 |
操作の習熟には個人差が出る
課題の上位が研修関連である背景には、職員の年齢層や情報機器の経験差があります。導入した事業所の58.4%はOJTの仕組みづくりに取り組み、71.1%は申し送りなどの手順書・マニュアルを作成していました(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。端末の配布と同時に教える手順を用意している事業所が多数派で、研修の回数と相談先を決めずに配ると入力できる職員に負担が偏ります。
紛失・情報漏えいへの備えは事業所側の仕事
持ち運べる端末には置き忘れや盗難のリスクがついてきます。厚生労働省の手引きは、個人情報の安全管理措置として、記録媒体の持込み・持出しの制限、端末に付与する機能の限定、盗難への予防対策、ID・パスワードによる認証とアクセス記録の保存などを挙げています。同手引きの実証では、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインで最低限遵守が求められる項目について、調査した6社のうちすべてに対応している製品はありませんでした(厚生労働省、2026年8月時点)。製品の機能だけで安全管理が完結しない以上、持ち出しの可否と紛失時の連絡手順を事業所のルールとして定めておく必要があります。
効果が出ない・かえって手間が増える場合もある
間接業務時間が「増えた」と答えた事業所が5.0%あったことは、端末を配れば自動的に楽になるわけではないことを示しています。厚生労働省の手引きも、多くの機能を備えた製品を入れても、事業所の業務の流れに合っていなかったり職員が使いこなせなかったりすると、思うような効果が得られない場合があると記しています。同手引きの実証では、機能が比較的少ない製品でも短期間で請求業務の記録時間が減った法人がありました(厚生労働省の手引き、2026年8月時点)。機能の多さと効果は比例しません。失敗の型は介護ソフト・システム導入で失敗する5つのパターンにまとめています。
制度上、タブレットでの記録は認められているのか
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準は第217条で、省令上書面で行うことが規定または想定されているもののうち作成・保存等については、書面に代えて電磁的記録により行うことができると定めています(厚生労働省、令和3年厚生労働省令第9号で追加、2026年8月時点)。判断すべきは「電子化してよいか」ではなく「保存期間・バックアップ・印刷への対応を満たせるか」という運用条件です。何を何年残すかは介護記録の保管期間で確認できます。
タブレットを定着させる5つのステップ
定着を左右するのは試行期間で、ICT導入支援事業では介護ソフトの試用期間が「なし」だった事業所が30.9%を占めました(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。厚生労働省の手引きは試行期間の設定を重要とし、導入計画の作成から本格導入までに少なくとも半年から1年程度を見込むことが望ましいとしています。推奨される進め方と実際の導入には開きがあります。
1. 記録業務の洗い出しと様式の見直しを先に終える
端末を配る前に、いま何にどれだけ時間がかかっているかを洗い出し、記録と情報共有の流れを組み直します。ICT導入支援事業では、課題を分析したうえで導入計画を作成した事業所が83.2%、情報共有の方法を見直した事業所が87.7%、記録・報告様式を見直した事業所が84.9%でした(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。紙の様式をそのまま画面へ移すと入力項目が増えることがあるため、様式の整理はこの段階で済ませます。この工程はタブレットに限らずICT化全般に共通するため、進め方の詳細は介護ICTとはで扱っています。
2. 1フロアに実機を置いて試す
次に、1つのフロアやユニットに台数を限定して実機を置きます。厚生労働省の手引きは、試行期間の設定が関係者の理解を促し、業務フローの変更を進めるうえで重要だとしています(厚生労働省の手引き、2026年8月時点)。実際の導入では、試用期間を1ヶ月から3ヶ月取った事業所が27.2%、2週間から1ヶ月が16.9%でした。限定して先に使い、出てきた課題を潰してから全体に広げれば、全職員が同時に混乱する事態を避けられます。試行中は入力にかかった時間に加えて、圏外になった場所、電池が切れた時間帯、置き忘れが起きた場面を記録しておくと、次の2ステップで決めるルールの根拠になります。
3. 充電・保管・持ち出しの当番を決める
タブレットは電池が切れた時点で記録が止まります。夜勤帯を含めた連続使用時間から逆算して充電の当番と充電器の設置場所を決め、充電中や故障中の端末を埋める予備を確保します。あわせて、勤務交代時にどこへ返却するか、誰が台数を確認するかという配布と回収のルールを文書にしておきます。手指消毒後に触れる機会が多いため、清拭に耐えるカバーと落下対策は配布前に揃える項目です。持ち出しを認めるかどうかも、この段階で可否と条件を決めます。
4. ロックと紛失時の手順、共有端末のログイン運用を決める
厚生労働省の手引きは、安全管理措置として端末に付与する機能の限定、盗難への予防対策、ID・パスワードによる認証とアクセス記録の保存を挙げ、物理的安全対策の多くは事業所側の運用ルールで担保する領域だと整理しています(厚生労働省の手引き、2026年8月時点)。画面ロックがかかるまでの時間、遠隔でロックや初期化ができる端末管理(MDM)の仕組みを使うかどうか、紛失に気づいた職員が誰へ連絡するかを、配布と同時に決めておきます。フロアで共有する端末では、職員ごとにログインを切り替える運用にしないと、記録が誰の入力か分からずアクセス記録も意味を持ちません。
5. 研修と相談先を置き、効果を測って見直す
課題の上位が職員の苦手意識と研修(89.5%)である以上、教える体制はステップとして組み込む項目です。ICT導入支援事業では、OJTの仕組みづくりに取り組んだ事業所が58.4%でした(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。操作を1度説明して終わりにせず、詰まったときに聞ける相手を各フロアに置き、操作手順そのものを動画マニュアルにしておけば教える側の負担も増えません。そのうえで、記録にかかる時間、申し送りの漏れ、残業時間のいずれかを導入前後で比較します。削減時間も活用先も導入2年目のほうが伸びているため、様式や入力項目、充電・回収のルールを調整しながら運用を続ける前提で計画を立てるのが現実的です。
端末を配ることではなく、充電・保管・ログインまで含めた運用を試行期間で作り込むことが定着の分岐点になります。
よくある質問
Q. 介護記録に使うタブレットは何インチが使いやすいですか?
A. 公的に定められた推奨サイズはありません。厚生労働省の手引きは、画面表示の分かりやすさや操作のしやすさから比較するよう示しています(厚生労働省の手引き、2026年8月時点)。片手で保持したまま入力を続けられるかという実際の使い方から判断してください。
Q. 介護用の専用タブレットは必要ですか。市販の製品では足りませんか?
A. 介護テクノロジー導入支援事業のICT補助対象は「タブレット端末」と示されており、介護専用機種に限る条件は置かれていません(厚生労働省の同事業資料、2026年8月時点)。導入する介護ソフトの動作環境を満たしていれば市販の製品でも運用できます。確認すべきは機種の呼び名ではなく、対応OSとブラウザの指定です。
Q. 職員がタブレット操作に慣れるまでどれくらいかかりますか?
A. 習熟期間そのものの公的データはありません。ICT導入支援事業では試用期間を1ヶ月から3ヶ月取った事業所が27.2%でした(厚生労働省の導入効果報告、2026年8月時点)。数日で全員が使える前提では計画を組まないほうが安全です。
Q. タブレットで作成した介護記録は、そのまま保存・提出できますか?
A. 指定居宅サービス等基準 第217条により、省令上書面で行うことが規定または想定されている作成・保存等は、書面に代えて電磁的記録により行うことができます(厚生労働省 法令データベース、2026年8月時点)。ただし保管期限を条例で5年としている自治体があり、実地指導では紙での提出を求められる場合もあります。個別の取り扱いは指定権者である自治体の窓口へご確認ください。
記録と教育をタブレットで一体化するならCareBase(ケアベース)
CareBase(ケアベース)は、介護記録と動画マニュアルをPC・タブレット・スマートフォンで扱えるクラウドサービスです。記録・申し送り・教育が別々のツールに分かれていると、端末を入れても画面の行き来が残ります。同じ画面で扱えるかという軸で見ると、機能が分散した構成より操作の切り替えが少ない構成です。
記録側は1画面のテーブル型デザインで、テンプレートと1ボタン入力に対応しています。未確認の項目はアラートで通知され、管理者向けのダッシュボードから状況を確認できます。教育側は動画・画像・テキストを組み合わせたマニュアルを作成でき、法定研修の実施記録は自動保存で、職員ごとの受講状況も追跡可能です。外国人スタッフ向けにはコンテンツのAI翻訳にも対応しています。導入実績は100社以上です。
まとめ
介護現場のタブレットは、記録・申し送り・写真・教育を1台にまとめる端末です。判断の要点は3つあります。1つ目は、機種から選ばず、介護ソフトと記録アプリの要件から端末条件を逆算すること。2つ目は、削減時間も残業の削減も導入2年目のほうが伸びており、初年度の数字だけで成否を判断しないこと。3つ目は、試行期間のあいだに充電・保管・ログインまでの運用を決めきることです。まずは記録・申し送り・教育のどの工程を変えたいかを決め、その工程を担うソフトの動作環境と入力方法から端末を絞り込んでください。
記録と動画マニュアルをタブレット1台にまとめたい方へ
CareBase(ケアベース)のサービス資料を見る
介護ソフトの導入や見直しをご検討中の方は、まずは情報収集から始めてみませんか。
carebase(ケアベース)では、現場に定着する介護記録システムとして、多くの事業所でご活用いただいています。
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