2026.8.21
介護のコミュニケーション事例集|場面別・相手別の声かけとNG例
介護のコミュニケーションは、場面と相手の状態ごとに有効な伝え方の型が異なります。厚生労働省のガイドラインも、身振りや表情の変化まで意思表示として読み取るよう求めています。食事や入浴などの場面別、認知症など相手の状態別、さらに職員間の情報共有や家族対応まで、公的資料で確認できる事例をそろえました。
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介護のコミュニケーションを支える2つの要素と基本姿勢
言語・非言語の要素と、支援側の関わり方で意思決定能力が変わるという原則を整理(出所: 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)」に基づき編集部作成)
介護のコミュニケーションは、言葉で伝える部分と、表情・視線・距離など言葉以外で伝わる部分の2つで成り立ちます。厚生労働省の認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)は、認知症の人は言語による意思表示がうまくできないことが多いため、身振り手振りや表情の変化も意思表示として読み取るよう求めています(2026年8月時点)。
1. 言葉で伝える部分は「順序」と「長さ」で決まる
同じ内容でも、伝える順序と一文の長さで届き方が変わります。介助の場面では、これから何をするのかという結論を先に置き、理由や補足はそのあとに続けると、相手が身構える時間を短くできます。
一文は主語と動詞で切り、二つの用件を一度に伝えないことが基本です。「お風呂の前に血圧を測って、そのあとお着替えを持ってきますね」と続けると、相手には最後の情報だけが残りやすくなります。「これから血圧を測ります」で一度区切り、反応を確かめてから次に進みます。「トランス」「バイタル」といった職場内の言葉も、相手が普段使う言葉に置き換えてから使います。
2. 言葉以外で伝わる部分は「目線・距離・触れ方・声の高さ」
声をかける前の体勢づくりが、その後の会話の成否を左右します。立ったまま見下ろす姿勢で話しかけると、内容が同じでも指示のように受け取られやすくなります。腰を落として目線の高さをそろえ、正面よりやや斜めの位置に立つと、圧迫感を減らせます。
触れる順番も伝達の一部です。肩や背中など体幹に近い部分から手を添え、指先や手首をつかむ動作は避けます。声は普段よりゆっくり、少し低めに出すほうが届きます。
公的ガイドラインが示す関わりの原則
同ガイドラインは、意思決定支援を「支援する側の視点ではなく、本人の視点に立って行われるもの」と定義しています。そのうえで、本人の意思決定能力は本人の個別能力だけで決まるのではなく、支援する側の関わり方によって変化すると明記しています。もう一つの原則が、意思の確認を一度で終わらせないことです。本人が示した意思は時間の経過や置かれた状況によって変わるため、繰り返し確認することが必要だとされています。
この2点は、「伝わらなかった」ときに相手の理解力を疑う前に、説明の順序や周囲の音、話しかけた時間帯を先に点検するという判断基準になります。
場面別|介護現場でそのまま使える声かけの事例
場面ごとの言い換えを3つの操作から逆引きできる形に整理(出所: 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)」に基づき編集部作成)
場面別の声かけは、これから何をするかを先に伝え、相手が選べる形で聞くのが基本の型です。同ガイドラインは、食事・入浴・衣服の好み・外出・排せつ・整容といった基本的生活習慣を、日常生活の意思決定支援の対象として挙げています(厚生労働省、2026年8月時点)。日々の介助は、そのまま意思決定の場面でもあります。
| 場面 | 避けたい言い方 | 言い換えの例 | 言い換えの意図 |
|---|---|---|---|
| 食事 | あーんして/早く食べて | お食事お持ちしました。汁物からにしますか、ごはんからにしますか | 幼児語を避け、順番を本人が選べる形にする |
| 入浴 | お風呂の時間です/入らないと困ります | これから浴室が空きます。今と1時間後、どちらがよろしいですか | 施設の都合ではなく、時間の選択肢として提示する |
| 排泄 | トイレ大丈夫?(大きな声で) | (近づいて小声で)お手洗いにご案内しましょうか | 内容が周囲に伝わらない距離と声量にする |
| 移乗・移動 | 立って/動かないで | 今から車いすに移ります。私の腕につかまってください | 禁止の言葉ではなく、次の動作を具体的に伝える |
| 日常会話 | また同じ話ですね | その話、もう少し詳しく聞かせてください | 内容の正しさより、話したい気持ちに応じる |
出所: 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)」の基本原則を場面別に整理
食事の場面|幼児語をやめ、順番を選んでもらう
食事介助では、介助者のペースが先に立ちやすくなります。「あーんして」のような幼児語や、呼び捨て・ため口は、本人の視点に立つという原則から外れます。
拒まれたときは、理由を問い詰めず、選べる形に置き換えます。「食べたくないんですね」といったん受け止めたうえで、「汁物だけ先に召し上がりますか」と量と順番の選択肢を出します。意思は状況によって変わるため、10分後には答えが違うことがあります。
入浴の場面|羞恥心と体感温度に配慮した順序で伝える
入浴の声かけでは、「お風呂の時間です」という業務都合の言い回しが定着しがちです。時間を選べる形に言い換えると、施設側の都合ではなく本人が選ぶ場面として伝わります。
脱衣の前に室温を確かめ、「先に浴室を温めてあります」と伝えると、寒さへの不安を先回りできます。断られた場合は一度引き、次の提案までの時間を職員間で決めておくと、担当者が代わっても対応がぶれません。
排泄の場面|周囲に聞こえない言い方と、責めない確認
排泄に関する声かけは、内容よりも「誰に聞こえるか」が問題になります。フロアの中央から呼びかけるのではなく、近づいて小声で伝えるのが原則です。
失禁があった場面では、「また濡れていますね」といった責める言い回しを避けます。「お着替えをお持ちしました」と行動だけを伝えます。記録には時刻・量・性状といった事実を残し、評価の言葉は書きません。書き方は介護記録の書き方完全ガイドで整理しています。
移乗・移動の場面|動作の直前に何をするかを伝える
移乗では、何をするかを伝えないまま体に触れると、本人が身構える間もなく動作が始まります。予告、同意、実施の3段階に分けて声をかけます。「今から車いすに移ります」「腕につかまっていただけますか」と伝え、うなずきや視線の動きを確かめてから体を支えます。
「動かないで」「立たないで」といった禁止の言葉は避けるのが基本です。同じ意図でも「隣に座ってお待ちいただけますか」のように、次の動作を示す言い方に置き換えます。
日常会話の場面|話題は見える環境と本人の歴史から選ぶ
会話が続かないときは、話題を探すより、目の前にあるものから始めます。窓の外の天気、花、食事の献立といった見える環境は、記憶に頼らずに答えられます。そこから出身地や以前の仕事など本人の歴史に話題を移します。同ガイドラインも、本人のこれまでの生活史を家族関係も含めて理解することが必要だとしています。
場面別の声かけは、選択肢を出す、順番を伝える、聞こえる範囲を選ぶという3つの操作でほとんど設計できます。
相手の状態別|認知症・介護拒否・感覚の低下がある方への事例
相手の状態別の関わり方は、否定せずに事実を確認し、本人が経験してから決められる形をつくるのが共通の型です。厚生労働省の意思決定支援ガイドラインをより理解するための事例集(令和7年3月)にも、抵抗のあるサービスをお試し利用してもらい、経験したうえで改めて意向を確認した事例が収録されています。
| 相手の状態 | 起きやすいつまずき | 関わり方の工夫 | 公的資料が示す根拠 |
|---|---|---|---|
| 認知症がある方 | 事実の誤りを正そうとして関係が悪化する | 内容の訂正より先に感情に応じ、身振りや表情から意思を読み取る | 身振り手振り、表情の変化も意思表示として読み取る努力を最大限に行う(ガイドライン第2版 Ⅲ-2) |
| 介護を拒否される方 | 一度の拒否を最終的な意思として扱う | 時間をおいて繰り返し尋ね、お試しの形で経験してもらう | 本人の示した意思は時間の経過や状況で変化するため繰り返し確認する(同 Ⅲ-3) |
| 聞こえにくさ・見えにくさがある方 | 大声で繰り返し、かえって伝わらなくなる | 環境を整えてから正面に回り、文字や実物を併用する | 本人が安心できるような姿勢で接することが必要(同 Ⅳ-1(1)) |
出所: 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)」「意思決定支援ガイドラインをより理解するための事例集」を基に作成
認知症のある方|訂正より、感情への応答を先に置く
「家に帰る」「仕事に行く」という言葉に事実を突きつけると、関係が切れます。同ガイドラインは、本人の示した意思は他者を害する場合などを除いて尊重されるとしています。まず「お家のことが気になるんですね」と気持ちに応じ、「バスが来るまでお茶をいかがですか」と現在の行動に橋を架けます。言葉が出にくい方には、うなずき、視線、手の動きを意思表示として扱います。
一方で、安全や財産に関わる場面では、尊重の原則がそのまま当てはまるとは限りません。判断に迷うときは施設内で抱え込まず、市区町村の窓口や主治医など専門職に相談してください。
介護を拒否される方|選択肢と時間をつくる
拒否は、内容そのものではなく、伝え方やタイミングに対して起きていることがあります。事例集の事例1では、他人を家にあげることに抵抗があった本人が、お試し利用を経てから「親切な人で安心した」と導入を承諾しています(厚生労働省「意思決定支援ガイドラインをより理解するための事例集」令和7年3月)。
現場で使える形にすると、一度引いたうえで「1回だけ試してみませんか」と範囲を小さくした提案に変える流れです。引いた事実と次の提案時期を記録に残し、職員間で共有することが要になります。担当者ごとにタイミングがばらつくと、本人には一貫性のない対応として伝わります。
聞こえにくさ・見えにくさがある方|環境を整えてから話す
聞こえにくい方に対しては、声量を上げる前に環境を変えます。テレビや厨房の音を減らし、正面に回り、口元が見える位置で話します。高い音から聞き取りにくくなるため、ゆっくり低めに話すほうが届きます。見えにくい方には、近づいたことを先に声で知らせてから名前を名乗り、触れる前にも一言添えます。文字を大きく書いたカードや実物を見せる方法は、言葉だけの説明より確実です。
拒否や不穏への対応手順を職員間でそろえたい方は
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公的な事例集に学ぶ、本人の意思をくみ取った関わりの実例
厚生労働省は令和7年3月に、意思決定支援の進め方を示す公式の事例集を公開しています。意思決定支援ガイドラインをより理解するための事例集には8つの事例が収録され、各場面のどの対応がガイドラインのどの項目に対応するかが注記されています。冒頭には、実際の事例をもとに必要な範囲で加工したものであり、唯一の対応を示すものではないという但し書きがあります。
事例1|どう感じているかをひらいて尋ね、経験してから決めてもらう
一人暮らしの80代女性について、家の中の散らかりや金銭管理を心配した友人が地域包括支援センターに相談した事例です。職員は訪問後、県外に住む長男から生活の状況を聞き取っています。
そのうえで本人に「今の生活をどのように感じているか」と尋ね、「犬や猫と一緒に自宅で暮らしたい」という言葉を引き出しました。事例集はこの部分に「オープンに尋ね、希望が言いやすいように配慮をする」と注記しています。閉じた聞き方より、暮らし全体をどう感じているかを尋ねる開いた聞き方のほうが、本人の言葉が出やすくなります。
事例2|関わりを拒む相手には、信頼関係づくりから始める
70代後半の男性が、家の中や周囲にごみや拾ってきた家具を積み上げ、近隣から苦情が寄せられた事例です。大家や市役所職員が訪問しても本人は関わりを拒み、片付けようとすると強く怒ることもあったと記録されています。
この事例のタイトルは「時間をかけながら信頼関係を構築し、整理できていない屋敷の片づけをともに進めた事例」です。課題の解決より先に、関係をつくる時間を工程として見込んでいる点が、現場で参考になります。
事例3|必要な情報は、工夫しながら繰り返し説明する
事例集には「必要な情報を工夫しながら繰り返し説明し、意思形成支援を行った事例」も収録されています。一度の説明で理解を得られなかったことを、本人の能力の問題として片付けていない点が共通しています。現場で取り入れられる説明の工夫としては、資料の文字を大きくする、図や写真を使う、家族に同席してもらう、体調のよい時間帯を選ぶといった調整が挙げられます。
職員間・多職種のコミュニケーション事例
定着では人間関係、採用では賃金と、効く方策が逆転する構造を可視化(出所: 厚生労働省「介護人材確保の現状について」(令和7年11月)に基づき編集部作成)
職員間の伝え漏れは、話し方の問題ではなく、誰に何をいつ渡すかのルールが決まっていないことで起きます。厚生労働省の資料では、介護関係の仕事をやめた理由の第1位が「職場の人間関係に問題があったため」で24.7%を占めています(介護人材確保の現状について、令和7年11月・労働者調査/複数回答)。
離職理由の1位は「職場の人間関係」
同じ資料では、事業所に早期離職防止・定着促進で効果があった方策を尋ねた結果も示されています。「人間関係が良好な職場づくり」が21.2%で2位に入り、「賃金水準の向上」の19.3%を上回りました。
ただし、採用に関する調査では「賃金水準の向上」が22.5%で1位となり、「人間関係が良好な職場づくり」は12.5%にとどまります。データ上は、人を集める場面では賃金、残ってもらう場面では人間関係という役割の違いが読み取れます。コミュニケーションの改善だけで人材の課題がすべて解決するわけではない、という前提で施策を組む必要があります。
申し送りの事例|起きたことと、次に必要な対応を分けて渡す
申し送りが長くなる施設では、記録に書いてある内容をそのまま読み上げていることが多くあります。口頭で渡すべきなのは、記録を読んだだけでは判断できない部分です。
具体的には、「昨夜2時に離床、居室内を歩行」という事実と、「日中の傾眠に注意し、水分量を確認してほしい」という依頼を分けて伝えます。事実は記録に、依頼は申し送りに、と役割を決めるだけで所要時間が変わります。厚生労働省の施設サービス向けガイドラインにも、記録システムの情報を申し送りに活用し、残業時間を削減した取組事例が掲載されています(令和6年度改訂版)。具体的な進め方は介護の申し送りのコツと進め方にまとめました。
多職種・外国人職員との意思疎通|共通の教材と視覚情報で差を埋める
看護職やリハビリ職との連携では、同じ言葉が別の意味で使われることがあります。「体調がよくない」ではなく、測定値と観察した事実を渡すと、判断のずれが減ります。
外国人職員との意思疎通には、公的な実証結果があります。厚生労働省の施設サービス向けガイドライン(令和6年度改訂版)のコラムでは、6施設12名のベトナム人職員が3か月間eラーニングを受講し、日本語のスコアが89点から113点、介護知識が57点から84点、介護技能が70点から93点へ向上したと報告されています。6施設中5施設で周囲とのコミュニケーションが円滑になり、6施設すべてでケア業務の理解が深まったとされ、動画で学んだ言葉を覚えて利用者への声がけが丁寧になった事例も紹介されています。ただし6施設12名という限られた規模の実証であり、教材だけで意思疎通が完結するわけではなく、業務のなかで実際に使う場面とあわせて設計する前提の結果です。多言語での運用を検討する場合は、介護現場の多言語コミュニケーション改善ガイドもあわせて確認してください。
職員間の伝え方は、教材と道具で埋められる差と、ルール設計でしか埋められない差に分けて考えると打ち手が決まります。
家族とのコミュニケーション事例
家族への説明は、日々の記録を根拠にして、事実と評価を分けて伝えるのが基本です。意思決定支援ガイドラインも、家族からの情報収集と家族に関わりを促すことを支援のプロセスに位置づけています(厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)」、2026年8月時点)。
状態の変化を伝えるとき|いつ・何が・どう変わったかを事実で示す
家族への報告でつまずくのは、事実と解釈が混ざったときです。「最近元気がありません」だけでは、家族は状況を判断できません。
「先週から昼食の摂取量が半分程度の日が3日ありました」「同じ時期に日中の傾眠が増えています」と、時期と観察した事実を並べます。そのうえで「食欲の変化として様子を見ています」と、施設側の見立てを別の文として伝えます。事実と見立てを分けておくと、後日状況が変わったときにも説明が矛盾しません。
要望や苦情を受けたとき|最初に事実確認、次に対応の期限を伝える
強い口調で要望を受けた場面では、その場で結論を約束しないことが基本です。まず「いつのことか」「どなたが対応したか」を確認し、記録と突き合わせます。そのうえで「明日◯時までにご連絡します」と、次の連絡の時期を明示します。内容と経過は記録に残し、担当者以外も参照できる状態にします。対応が特定の職員だけで完結しないことが、二次的な苦情を防ぎます。
意思決定の場面|家族の意向と本人の意思を分けて扱う
住まいの変更やサービスの選択など、大きな決定の場面では家族の意向が前面に出やすくなります。意思決定支援ガイドラインは、日常生活・社会生活における意思決定支援のプロセスは、本人に代わって第三者が決める代理代行決定とは異なると明記しています。実務では、本人の言葉、家族の意向、専門職の見立てを分けて記録し、話し合いの場に本人が参加できる形を検討します。
うまくいかないときの改善の進め方|個人のスキルから仕組みへ
ルール設計の順序と、それを載せる道具ごとの効果を一続きで整理(出所: 厚生労働省「介護分野における生産性向上ポータルサイト」「介護サービス事業における生産性向上ガイドライン 令和6年度改訂版」に基づき編集部作成)
コミュニケーションの改善は、研修だけでなく、共有する情報のルールを決めることから始めます。厚生労働省の介護分野における生産性向上ポータルサイトは、情報共有の工夫を4つのステップで設計するよう示しています(2026年8月時点)。
| ステップ | 決めること | 現場での問い |
|---|---|---|
| 1 | 共有する情報を整理する | どの情報を、誰に、いつ渡すのか |
| 2 | 情報を使う目的を明確にする | それは報告か、連絡か、相談か |
| 3 | 情報の拾い方のルールを決める | いつ、誰が、どこで集めるのか |
| 4 | 情報の渡し方のルールを決める | 緊急度・重要度・個人情報の有無で手段を変えているか |
出所: 厚生労働省「介護分野における生産性向上ポータルサイト/5. 情報共有の工夫」を基に作成
共有する情報を整理し、目的・拾い方・渡し方をルールにする
このステップの効果として、同ポータルサイトは「ICTを用いて転記作業の削減、一斉同時配信による報告申し送りの効率化、情報共有のタイムラグを解消することができる」と記載しています。あわせて、介護記録・情報共有・請求事務が一気通貫となったソフトの導入が最も効率的だとしています。
一方で、同サイトには「記載されている事例をそのまま真似ることで、必ずしも皆さんの事業所で課題が解決するとは限りません」という注記もあります。4つのステップを自施設の言葉で決め直す作業が前提です。手順の詳細は介護施設の情報共有を効率化する方法で扱っています。
記録と共有を一体にして、口頭に依存しない状態をつくる
厚生労働省の施設サービス向けガイドライン(令和6年度改訂版)には、コミュニケーションに関わる取組事例が複数掲載されています。
| 取り組み | 公的資料が示す効果 | 自施設で確認すること |
|---|---|---|
| 記録システムの導入 | 記録時間の削減と、職員間のスムーズな利用者情報の共有を実現 | 記録した内容がそのまま申し送りに使えるか |
| タブレットの活用 | 記録時間が削減され、若手とベテラン職員のコミュニケーションが活性化 | ケアの現場で入力でき、二重入力が発生しないか |
| 記録情報の申し送りへの活用 | 残業時間を削減 | 口頭で読み上げている内容が記録と重複していないか |
| インカムの導入 | 職員間の情報共有が迅速化し、認知症の利用者に対する見守りが強化 | フロアや職種でチャンネルを分ける設計になっているか |
出所: 厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上(業務改善)に資するガイドライン 令和6年度改訂版 サービス別冊子(施設サービス)」の取組事例一覧を基に作成
タブレット導入が世代間の会話を増やしたという事例は、道具の導入が業務時間だけでなく職員同士の関わりにも影響することを示しています。
声かけの型を教育に載せて、職員によるばらつきをなくす
場面別の声かけを職場に定着させるには、口頭で伝えるだけでは足りません。同ガイドラインは業務改善の取組の一つに「OJTの仕組みづくり」を挙げ、後輩が先輩に質問する仕組みを整えた事例や、気づく力を養う様式を用いた事例を掲載しています。
実務では、避けたい言い回しと言い換えの例を一覧にして掲示するところから始められます。実際の声かけを短い動画にしておくと、勤務時間の違う職員も同じ内容を確認できます。義務づけられた研修と合わせて年間計画に組み込むときは、介護施設の法定研修とはが判断の参考になります。
声かけの型は、掲示・動画・記録の3つに載せて初めて、担当者が代わっても残ります。
一般には「コミュニケーションは個人の資質」と語られがちです。しかし離職理由の1位が職場の人間関係(24.7%)である一方、定着に効果があった方策の上位に「人間関係が良好な職場づくり」(21.2%)が入り(厚生労働省、令和7年11月)、業務改善の側では情報共有をルールとして設計する4ステップが示されています(厚生労働省)。データ上は、資質ではなく設計の問題として扱えます。だから研修の回数を増やす前に、「何を・誰に・いつ渡すか」が文書で決まっているかを先に点検するのが合理的です。
声かけの型を教育と記録に載せて職員間でそろえたい方は
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介護のコミュニケーションについてよくある質問
介護で避けたほうがよい言葉には、どんな型がありますか
避けたい言葉には型があります。禁止(〜しないで)、命令(〜しなさい)、詰問(どうして〜したの)、幼児語(あーん、〜でちゅね)の4つです。いずれも本人の視点に立つという意思決定支援の原則から外れます。同じ意図は「〜していただけますか」という依頼の形や、次の動作を示す言い方に置き換えられます。
認知症のある方が事実と違うことを話すとき、否定してもよいのですか
日常会話の範囲では、訂正より感情への応答を先に置くのが基本です。厚生労働省のガイドラインは、本人の示した意思は他者を害する場合などを除いて尊重されるとしています。服薬や金銭、外出の安全に関わる場面は例外で、事実の確認が必要です。迷うときは主治医や市区町村の窓口に相談してください。
会話が続かないとき、どんな話題を選べばよいですか
記憶に頼らず答えられる話題から始めます。窓の外の天気、季節の花、その日の献立といった見えているものは、認知機能の状態にかかわらず反応が返りやすい話題です。そこから出身地や以前の仕事など本人の歴史へ移すと、話が広がります。途切れても無理に埋めず、うなずきや相づちで間を持たせて構いません。
家族から強い口調で要望を受けたとき、最初に何をすればよいですか
その場で結論を約束せず、事実確認から始めます。いつのことか、どの職員が対応したかを聞き取り、記録と突き合わせます。そのうえで「明日◯時までにご連絡します」と次の連絡時期を伝えます。内容と経過を記録に残し、担当者以外も参照できる状態にしておくと、対応が一人に偏りません。
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CareBase(ケアベース)は、株式会社ウィルグループが提供する介護施設向けのクラウド型業務支援サービスです。介護記録・申し送り・動画マニュアルによる教育・多言語対応を一つの仕組みにまとめて扱えます。
場面別の声かけを職場に残すには、記録の書式、申し送りの渡し方、教材の3つがそろっている必要があります。記録と教育が別々の仕組みに分かれている施設では、この観点で現状を見直す余地があります。
まとめ
介護のコミュニケーションは、場面と相手の状態で有効な型が変わります。食事や入浴では選択肢と順序、認知症のある方には訂正より感情への応答、職員間では話し方より情報を渡すルールが要になります。
避けたい言い回しと言い換えを一覧にし、記録と教材に載せておけば、担当者が代わっても同じ声かけを引き継げます。夜勤明けの職員も、入職したばかりの職員も、同じ言葉で利用者に向き合える状態が、申し送りの短縮と家族への説明の一貫性を同時に生みます。まずは自施設の申し送りで、記録に書いてある内容を読み上げていないかを確かめてみてください。
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