2026.8.21
介護のモチベーション研修|テーマ例と効果を出す進め方
介護のモチベーション研修は、テーマを決める前に職員が何に不満を感じているかを自施設の調査データで特定すると成果が安定します。研修機会の充実は実施率が高い一方、職場定着に効果があったとした事業所は27.4%にとどまります。原因の切り分けから、テーマの選び方と設計の手順までを順にまとめます。
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介護職のモチベーションが下がる原因はどこにあるか
人間関係を理由に辞めた人の45.8%が上司・先輩の指導や言動を挙げている(出所: 介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査結果の概要」に基づき編集部作成)
介護職のモチベーション低下は、研修で動かせる要因と、人員配置や賃金など研修の外にある要因が混ざっています。労働条件や仕事の負担についての悩みで最も多いのは「人手が足りない」52.3%、次いで「仕事内容のわりに賃金が低い」38.1%です(介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査結果の概要」、2026年7月時点)。自施設の不満がどちら側にあるかを先に分けることが出発点になります。
悩みの上位は人手不足と賃金——研修の射程の外にある要因
同じ調査で職員が挙げた悩みを回答率の高い順に並べると、上位4項目は人手不足52.3%、賃金38.1%、昇給がない・少ない29.9%、身体的負担が大きい23.9%と続きます。一方で「資格取得やケアの専門性向上の支援がない」は5.8%、「リーダーや管理職への昇進の機会がない」は2.8%にとどまります。
回答の分布を見ると、回答率の高い悩みの多くが人員数と報酬という研修の外側にあり、学ぶ機会そのものの不足は不満の中心になっていません。研修を企画する前に、自施設の不満がどの経路で解ける種類のものかを仕分けしておくと、研修の目的がぶれずに済みます。
悩みを3つの解決経路に仕分ける
同じ悩みの一覧を、解決を担う経路別に並べ直すと、研修が受け持てる範囲が見えてきます。人員数と報酬に関わる項目は人員体制・業務改善・処遇制度の側、関わり方や役割の見え方に関わる項目は職場運用と研修の側という分け方になります。
| 職員が挙げた悩み | 回答率 | 主に解決を担う経路 |
|---|---|---|
| 人手が足りない | 52.3% | 人員体制・業務改善(研修の外) |
| 仕事内容のわりに賃金が低い | 38.1% | 処遇・制度(研修の外) |
| 昇給がない、少ない | 29.9% | 処遇・制度(研修の外) |
| 身体的負担が大きい | 23.9% | 業務改善・機器の導入(研修の外) |
| 精神的にきつい | 19.6% | 職場運用+研修(関わり方・相談体制) |
| 業務に対する社会的評価が低い | 19.5% | 職場運用+研修(承認・役割の明確化) |
| 有給休暇が取りにくい | 17.3% | 職場運用(シフト設計) |
| 休憩が取りにくい | 16.4% | 職場運用(業務配分) |
| 資格取得やケアの専門性向上の支援がない | 5.8% | 研修で解ける |
回答率は公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査結果の概要」図表5-6-1(労働者調査 n=20,675、調査実施 令和7年10月1〜31日、2026年7月時点)。解決経路の3分類は同資料には付されておらず、本記事で整理したものです。
辞めた理由の最上位は職場の人間関係——中身は指導する側の言動
同調査で、直前の介護の仕事を辞めた理由の最上位は「職場の人間関係に問題があったため」27.3%、次いで「勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため」21.0%でした(労働者調査 n=6,163、2026年7月時点)。注目したいのは人間関係の中身で、この理由を挙げた人のうち45.8%が「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」、37.4%が「上司の業務指示が不明確、リーダーシップがなかった」を選んでいます。
比較軸で見ると、離職の引き金は職員本人の意欲よりも、指導する側の言動と指示の明確さに集まっています。モチベーション研修の対象を「やる気が下がっている職員」に限定すると、実際に問題が起きている側に手が届きません。指導する立場の職員を優先対象に含める設計が現実的です。離職の原因データ全般は介護職の離職防止でも扱っています。
働きがいはサービス種別で差がある——自施設の位置を確かめる
今の仕事や職場に「働きがいがある」と答えた割合は全体で63.2%ですが、職種・サービス種別で分けると差が出ます。訪問介護員は68.3%、介護職員は56.8%、そのうち施設系(入所型)で働く介護職員は48.4%でした(同資料、2026年7月時点)。同じ設問で「働きやすい」は全体67.5%に対し、施設系(入所型)は54.9%です。
同じ介護でもサービス種別によって最大で20ポイント近い開きがあります。全国平均だけを基準にすると自施設の状態を見誤るため、比較対象は自施設と同じサービス種別の数値に合わせてください。なお離職率は訪問介護員と介護職員の2職種計で12.4%、29歳以下では17.3%と若年層で高くなっています。なぜ人手が足りない状態が続くのかは、介護の人手不足の現状と原因で詳しく解説しています。
モチベーション研修で解決できること、できないこと
不満の中心は賃金と人員配置にあり、研修が担えるのは役割・承認・教え方の3領域(出所: 介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査結果の概要」に基づき編集部作成)
モチベーション研修が扱えるのは、役割の明確化・承認の仕方・教え方といった職場内の関わり方です。研修機会の充実を実施している事業所のうち、職場定着に効果があったとしたのは27.4%で、有給休暇等の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくりの57.9%を大きく下回ります(介護労働安定センター、2026年7月時点)。研修を単体の打ち手として置くと成果が出にくい構造です。
研修機会の充実は実施率が高い一方、定着への効果は限定的
この数値は事業所側の自己評価なので、職員側の回答と突き合わせて確かめます。労働者調査では、勤務先で行われている取り組みのうち「働き続けることに役立っている」と答えた割合が示されており、有給休暇等の取得しやすさは65.5%、人間関係が良好な職場づくりは65.4%、研修機会の充実は36.5%でした。事業所側と職員側で、順序がほぼ一致しています。
| 取り組み | 事業所側: 職場定着に効果があった | 職員側: 働き続けることに役立っている |
|---|---|---|
| 有給休暇等の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり | 57.9% | 65.5% |
| 人間関係が良好な職場づくり | 54.6% | 65.4% |
| 賃金水準の向上 | 51.6% | 56.8% |
| 本人の希望や人間関係に配慮した配置・異動 | 51.6% | 51.8% |
| 職場内での仕事上のコミュニケーションの円滑化 | 45.7% | 49.4% |
| 能力や仕事ぶりを処遇に反映 | 40.0% | 50.7% |
| 事業所内でのキャリアアップの道筋の明確化 | 31.0% | 38.9% |
| 介護の質の向上を図るための価値観や行動基準の共有 | 30.5% | 42.3% |
| 事業所内外での研修機会の充実 | 27.4% | 36.5% |
事業所側は図表2-3-1(n=8,899)、職員側は図表2-5-1(n=20,675)。いずれも原表の注記どおり、当該の方策を「行っている・行われている」を100%としたときの回答割合です。全回答を分母にした集計とは値が異なります(事業所側では研修機会の充実15.3%、有給休暇等の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり43.6%)。データ出典: 公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査結果の概要」(2026年7月時点)。2つの調査結果を同じ取り組み名で突き合わせた並びは本記事で作成したものです。
学ぶ機会そのものへの評価はほぼ中立にとどまる
もう一つ補助線になるのが満足度です。同調査の満足度D.I.(満足・やや満足の割合から不満足・やや不満足の割合を引いた値)で見ると、「教育訓練・能力開発の機会」はマイナス0.1とほぼ中立でした(満足6.7%+やや満足12.7%に対し、やや不満足13.5%+不満足6.0%から算出)。
賃金水準のマイナス12.3、人員配置体制のマイナス18.5と比べると、学ぶ機会そのものは不満の中心ではありません。研修の量を増やす方向に力を注ぐ前に、不満の中心にある賃金と人員配置へどう手を打つかを決めておくと、研修が「やらされるもの」になりにくくなります。
研修で扱う範囲を「役割・承認・教え方」に絞る
研修の効果が限定的に見えるのは、研修が無意味だからではなく、賃金や人員配置まで研修で解こうとして射程を超えるからです。同調査の志向性D.I.では「金銭的報酬よりも、仕事へのやりがいの方が重要である」はマイナス10.5でした(そう思う8.4%+ややそう思う14.4%に対し、あまりそう思わない16.6%+そう思わない16.7%から算出)。やりがいを報酬より優先する層は、否定する層より少ないという結果です。
つまり、やりがいを訴える研修で賃金への不満を埋めることはできません。研修が担えるのは、期待される役割を言葉にすること、日々の働きぶりを認める仕組みをつくること、そして教える側の伝え方をそろえることの3つです。この3つに範囲を絞ったうえで、賃金や人員配置は別の打ち手として並行させる設計が、限られた時間を無駄にしない進め方になります。
モチベーションに効く研修テーマを対象別に選ぶ
実感が薄い項目ほど研修テーマの候補になる(出所: 介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査結果の概要」に基づき編集部作成)
研修テーマは対象階層で分け、全職員・新人・指導者・中堅の4系統で組むと内容の重複が減ります。職員が「あてはまる」と答えた項目は「利用者や家族から感謝される」が60.7%と高い一方、「期待される役割が明確である」は17.6%、「法人や上司から働きぶりが評価される」は13.1%にとどまります(介護労働安定センター、2026年7月時点)。テーマは薄い側から選ぶのが基本です。
| 対象 | 扱うテーマ | 補いたい要素 |
|---|---|---|
| 全職員 | 理念・行動指針を日々の判断に結びつける | 判断の拠りどころ |
| 新人・若手 | できていることを言語化して振り返る | 成長の実感・役割の明確さ |
| 指導者・リーダー | 教え方をそろえる、伝え方そのものを扱う | 指導のばらつきと言動 |
| 中堅・ベテラン | 現場で専門性を発揮し続ける道筋を描く | 昇進以外のキャリア |
法定研修を含む研修テーマの全体像は介護スタッフ教育の完全ガイドで整理しています。以下ではモチベーションに効く4系統に絞って説明します。
全職員向け——理念・行動指針を日々の判断に結びつける
厚生労働省は、手順書やマニュアルに載っていないイレギュラーな事態への対応や優先順位は、法人の理念・行動指針に立ち戻って考えることが重要だとしています。理念が浸透していれば、不測の事態でも職員が焦らずに判断や行動をとれるという整理です(厚生労働省「介護分野における生産性向上ポータルサイト」)。
理念を扱う研修は「唱和して終わり」になりやすい一方、同ポータルは浸透度の点検、一人ひとりの仕事への落とし込み、再確認の3ステップを示しています。理念の読み上げではなく「先週のあの場面は理念のどこに当たるか」を職員に言葉にしてもらう時間を組み込むと、形式的な確認では終わりません。判断の拠りどころが共有されると、迷いから来る消耗が減ります。
新人・若手向け——できていることを言語化して承認する
同調査で「自分が成長している実感がある」と答えた割合は21.6%、「期待される役割が明確である」は17.6%でした。利用者からの感謝は60.7%が受け取っている一方、自分の成長や役割については実感が薄い状態です。
新人向けの研修では、新しい知識を足すより先に、すでにできるようになったことを一覧で確認する時間を取ると、この差を埋められます。入職からの数か月で身についた手順を本人に挙げてもらい、指導者が補足する形にすると、承認と役割の確認を同時に行えます。新人研修の冒頭15分を「できるようになったことの棚おろし」に充てる形が、最も取り入れやすい入り口です。
指導者・リーダー向け——教え方をそろえ、伝え方そのものを扱う
厚生労働省の同ポータルは、教育担当によって教え方にブレが生じると事業所全体で手順やケアの質を一定に保つことが難しくなるとし、教える側の職員を対象に指導技術を身につけさせる仕組みが重要だとしています(厚生労働省)。示されている手順は、育成の目標と内容の明確化、定期的な評価と結果の伝達、教える技術の習得の3つです。
先に見たとおり、離職理由の人間関係のうち45.8%が上司や先輩の指導・言動、37.4%が指示の不明確さでした。指導者向け研修は実際の離職要因に最も近い位置にあります。研修内容を毎回組み直す負担を抑えるには、標準的な手順を動画にして繰り返し見られる形にする方法もあります(介護の研修動画とは)。
中堅・ベテラン向け——現場で専門性を発揮し続ける道筋を描く
志向性D.I.では「いつまでも現場で専門性を発揮したい」がプラス38.8(そう思う22.8%+ややそう思う31.2%に対し、あまりそう思わない8.1%+そう思わない7.1%から算出)と高い一方、「専門性が発揮できる」と実感している職員は34.7%にとどまります。希望と実感の間に開きがある層です。
中堅向けの研修では、認知症ケアや看取り、口腔ケアなど特定領域の担当役割を研修とセットで設けると、専門性を発揮する場が具体化します。役職に就かなくても職場内で頼られる位置が用意されている状態をつくることが、この層の動機づけにつながります。
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効果につながる研修の設計手順
研修の設計は、課題の特定・到達状態の定義・対象と形式の決定・宿題・振り返りの5手順で進めます。厚生労働省は業務改善の進め方として、業務の見える化からムリ・ムダ・ムラの抽出、役割の再配置へと順に進む手順を示しており、研修も同じ順で組み立てられます(厚生労働省)。当日の内容より、前後の設計が成果を左右します。
手順1 自施設のデータで課題を1つに絞る
最初に決めるのは「何を変えるか」であって「何を教えるか」ではありません。使える材料は、職員満足度調査の自由記述、退職面談の記録、ヒヤリハット報告の傾向、シフトの偏りなど、すでに施設内にあるものです。全国調査の数値は自施設の位置を測る物差しとして使い、優先順位は自施設のデータで決めます。
課題は1回の研修につき1つに絞ってください。複数の課題を1本に詰めると、受講後に何を変えればよいかが職員に残りません。
手順2 到達状態を「行動」で決める
到達状態は「理解する」「意識する」ではなく、観察できる行動で書きます。たとえば「新人指導の目的を理解する」ではなく「新人に手順を教えるとき、最初に到達目標を口頭で伝える」と書くと、実施できたかどうかを後から確認できます。
厚生労働省の同ポータルも、育成の目標・教えるべき内容・手順をあらかじめ明確にしておくことを最初のステップに置いています。行動で書いた到達状態は、そのまま手順4の宿題と手順5の振り返り項目になります。
手順3 対象者と実施形式を選ぶ
対象は手順1で絞った課題から自動的に決まります。指導のばらつきが課題なら対象は指導者、役割の不明確さが課題なら新人と指導者の両方です。全職員を毎回集める形式は、全員が同じ内容を必要としているとは限らないため、対象を絞るほうが結果的に届きます。
形式は集合研修、少人数のグループワーク、動画教材、日々のOJT(現場での実務を通じた指導)の組み合わせで選びます。夜勤や早番遅番で全員がそろわない施設では、動画で共通部分を各自視聴し、集合の時間は話し合いに充てる分け方が現実的です。ICT機器や動画教材の導入費用については補助制度が用意されている場合があります。対象となる制度や申請の要件は介護ソフトの補助金まとめもあわせて確認してください。
手順4 現場に持ち帰る宿題を1つだけ渡す
研修の終わりに、翌日から現場で試すことを1つだけ決めて持ち帰ってもらいます。厚生労働省は職場環境の整備でも、改善項目を洗い出したうえで責任者と期限を決める工程を手順に含めており(厚生労働省)、研修の宿題も同じ粒度で書くと実行率が上がります。
宿題は、手順2で決めた行動をそのまま使います。書式は付箋1枚で十分です。数を増やすと実行されにくくなるため、1人1つに固定してください。
手順5 数週間後に振り返りの場を置く
研修から4〜8週間後に、宿題がどうなったかを共有する短い時間を設けます。15分程度のミーティングで、実行できた場面とできなかった場面を出し合う形で足ります。厚生労働省の同ポータルも、定期的に職員を評価し結果を伝える仕組みを設けることをOJTの2番目のステップに置いています。
振り返りの場がないと、研修は当日の出来事で終わります。当日の内容を厚くするより、4〜8週間後の15分を確保するほうが、行動として残る確率は高くなります。
研修の効果を職場に残すための条件
昇進志向は多数派ではなく、承認と専門性の道筋を並べて用意する必要がある(出所: 介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査結果の概要」に基づき編集部作成)
研修の内容を職場に残すには、承認の経路・昇進以外の道筋・休暇の取りやすさの3条件が要ります。職場定着に効果があったとされた取り組みの上位は、有給休暇等の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり57.9%、人間関係が良好な職場づくり54.6%でした(介護労働安定センター、2026年7月時点)。研修はこの土台の上でだけ効きます。
承認の経路を上司側にもつくる
同調査で職員が「あてはまる」と答えた項目を並べると、「利用者や家族から感謝される」が60.7%である一方、「法人や上司から働きぶりが評価される」は13.1%、「目標にしたい先輩・同僚がいる」は14.0%でした。承認の供給元が利用者側に偏り、職場の内側からはほとんど届いていない状態です。
同じ調査の満足度D.I.では「職場の人間関係」がプラス38.2と高い水準にあり、関係そのものが悪いわけではありません。関係は良好でも、働きぶりを言葉にして返す場が設計されていないという読み方になります。月1回の面談や申し送りの終わりに「今週よかった対応」を名指しで共有する枠を設けるなど、承認を偶発ではなく手順に組み込む設計が要ります。研修で承認の伝え方を扱っても、返す場がなければ現場に残りません。
昇進以外の道筋を同時に用意する
キャリアパスを示せば動機づけになるという前提は、データで確かめておく必要があります。同調査の志向性D.I.では、「上司や同僚がサポートしてくれる職場で働きたい」がプラス81.0、「利用者の役に立つ仕事がしたい」がプラス78.6と高い一方、「管理職・リーダーになって部下に指示や指導をする仕事をしたい」はマイナス41.7、「管理職・リーダーになって大きな判断や責任をとる仕事をしたい」はマイナス37.5でした。
比較軸では、昇進志向は現場の多数派ではありません。事業所内でのキャリアアップの道筋の明確化は、職場定着に効果があったとした割合が31.0%と、他の取り組みより低い位置にあります。昇進を唯一の動機づけ軸に置いた研修は、多くの職員にとって自分の話にならないということです。役職ルートと並べて、現場で専門性を深めるルートを同じ資料に載せてください。定着に向けた組織づくり全般は職員定着率を高める取り組みが参考になります。
休暇とシフトの柔軟性を先に整える
定着効果の上位2つが休暇の取りやすさと人間関係である以上、この2つが崩れている状態で研修を重ねても、効果は打ち消されます。研修時間の確保自体がシフトを圧迫すれば、研修そのものが不満の原因になりかねません。
自施設の状態を点検する順番としては、有給休暇の取得率と希望シフトの反映率を先に確認し、そのうえで研修の枠を決めるのが妥当です。業務時間の見直しやICTによる間接業務の削減は、この枠を生み出す手段になります(介護の生産性向上とは)。休暇と人間関係の土台を整えてから研修を載せるという順番が、同じ調査で事業所側と職員側の双方が示した優先順位です。
研修の効果測定と続け方
効果測定は受講人数ではなく、決めた行動が続いているかと、職員の評価がどう動いたかで見ます。労働者調査は「今の仕事や職場は働きがいがあると思うか」を単一の設問で測っており、全体の値は63.2%です(介護労働安定センター、2026年7月時点)。同じ設問を自施設で継続して測れば、外部の基準と並べて確認できます。
受講人数ではなく、行動と職場の評価で測る
測る指標は3層に分けると整理しやすくなります。1層目は実施の記録で、受講率と欠席者へのフォロー状況です。2層目は行動で、手順2で決めた行動が実際に何割の場面で行われているかを、振り返りの場や現場観察で確認します。3層目は職員の評価で、働きがいの設問や「期待される役割が明確である」「法人や上司から働きぶりが評価される」といった項目を定期的に測ります。
| 層 | 見るもの | 確認の方法 |
|---|---|---|
| 実施 | 受講率・欠席者のフォロー | 受講記録 |
| 行動 | 決めた行動の実施状況 | 振り返りミーティング・現場観察 |
| 評価 | 働きがい・役割の明確さ・承認の実感 | 全国調査と同じ設問での定期アンケート |
1層目だけで報告すると、実施したことは示せても変化は示せません。3層目は年1〜2回で十分なので、研修のたびに測るのは2層目に絞ります。
受講状況と振り返りを記録として残し、年間計画に位置づける
モチベーション研修は任意の取り組みですが、法定研修と同じ年間研修計画の中に置いておくと、実施のたびに枠を探す手間がなくなります。法定研修の種類や回数、記録の残し方は介護施設の法定研修とはにまとめました。
記録として残しておきたいのは、実施日と対象者、決めた行動、振り返りで出た実施状況の4点です。受講状況が紙の名簿だけに残っていると、誰が未受講かを把握するのに手間がかかり、フォローが後回しになります。受講状況と現場の記録が同じ場所に集まっていれば、研修で決めた行動が申し送りや介護記録にどう表れているかも追いやすくなります。
介護のモチベーション研修に関するよくある質問
Q. モチベーション研修はどのくらいの時間・頻度で実施するのが現実的ですか?
A. 年間研修計画の中に組み込み、1回30〜60分を年2〜3回から始める形が現実的です。夜勤や早番遅番で全員がそろわない場合は、共通部分を動画で各自視聴し、集合の時間は話し合いに充てると参加率を保てます。回数を増やすより、実施後4〜8週間の振り返りを入れるほうが行動として残ります。
Q. 法定研修とは別に、モチベーション研修を実施する必要がありますか?
A. 法定研修は運営基準で義務づけられた研修で、モチベーション研修は任意の取り組みです。別々に企画する必要はなく、年間研修計画の中で義務のテーマを先に月へ固定し、残りの枠に配置する方法が扱いやすくなります。法定研修の種類・回数・記録要件は介護施設の法定研修とはを参照してください。
Q. 外国人職員も参加できる研修にするには何を変えればよいですか?
A. 変えるのは言語・視覚化・視聴のタイミングの3点です。資料を母語で用意する、手順を写真や動画で見せる、当日に集合できなくても後から視聴できるようにする、という組み合わせで参加のハードルが下がります。外国人職員の教育と定着については、外国人介護スタッフの定着率を上げる5つの方法に具体策を挙げています。
Q. 研修の直後は変わるのに、しばらくすると元に戻るのはなぜですか?
A. 研修で決めた行動が、現場の手順や記録の様式に組み込まれていないためです。厚生労働省も業務改善では手順と役割の整理を明示的な工程として置いています(厚生労働省)。研修で決めた行動をチェック項目や記録の欄として残し、数週間後に振り返る場をセットにすると戻りにくくなります。
研修と現場の記録をまとめて運用するならCareBase(ケアベース)
研修を単発で終わらせないためには、受講状況と、研修で決めた行動が現場にどう表れたかを同じ場所で追える状態が要ります。ここまで見たとおり、効果測定で本当に必要なのは受講人数ではなく行動の定着であり、その手がかりは日々の介護記録と申し送りの中にあります。
CareBase(ケアベース)は、動画マニュアルによる教育、介護記録、申し送りの共有をクラウド上で一元化する介護施設向けの業務支援サービスです。動画マニュアルは繰り返し視聴できるため、夜勤帯の職員や外国人職員が同じ内容を各自のタイミングで学べます。多言語対応と視覚的なマニュアルにも対応しており、集合研修に参加しづらい職員への実施形式として使えます。
「研修の実施・受講状況・現場の記録を同じ仕組みで扱えるか」という比較軸で見ると、機能が分かれたツールを併用する場合より、一元化型のほうが受講の記録と現場の情報共有を同じ画面で追えます。研修を継続運用に載せたい施設は、この軸を選定の観点に加えてください。
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まとめ
介護のモチベーション研修は、テーマ選びの前に自施設の不満がどの経路で解けるものかを切り分けると、限られた時間が無駄になりません。研修が担えるのは役割の明確化・承認・教え方の3領域で、賃金や人員配置は別の打ち手として並行させます。対象は「やる気が下がっている職員」ではなく指導する立場の職員を優先し、実施後4〜8週間の振り返りまでを1セットで設計してください。まずは自施設の有給休暇の取得率と希望シフトの反映率を確認し、そのうえで最初の1本の対象と課題を決めるところから始めましょう。
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