2026.9.18
身体拘束とは?介護施設で認められる3要件と経過記録の書き方
介護施設の身体拘束は原則禁止で、切迫性・非代替性・一時性の3要件をすべて満たす場合だけ認められます。厚生労働省の令和6年度の調査では、虐待と判断された事例の被虐待高齢者2,248人のうち495人・22.0%に身体拘束がありました(厚生労働省)。本記事では、身体拘束にあたる行為の種類、3要件の判断、経過記録の残し方までを、厚生労働省の手引きと運営基準に沿って整理します。
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身体拘束とは?介護施設で原則禁止されている行為の範囲
11の行為への当てはめではなく行動の自由の制限で判断し、手続きの有無で扱いが分かれる関係(出所: 厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)に基づき編集部作成)
介護施設の身体拘束とは、本人の行動の自由を制限することを指し、緊急やむを得ない場合を除いて運営基準で禁止されています。厚生労働省の手引きは対象となる11の行為を挙げたうえで、これを「あくまでも例示」と明記しています(厚生労働省)。該当するかどうかは、行為の名前ではなく、本人の行動の自由を制限しているかどうかで見ます。
身体拘束の定義は「本人の行動の自由を制限すること」
厚生労働省の「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)は、身体拘束を「本人の行動の自由を制限すること」と定義しています。介護保険法に基づく運営基準(基準省令。サービスごとに人員・設備・運営の基準を定めた省令)では、この行為を「身体的拘束等」と呼び、「身体的拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為」と規定しています。
なお、本記事の引用は厚生労働省のサイトに掲載されている令和6年3月版に基づきます。手引きは令和7年3月版も公表されているため、最新の記載は所管の保険者または厚生労働省のサイトで確認してください。
対象となる11の行為は例示で、これ以外にも該当する行為がある
手引きは11項目を挙げたあとに、「11項目は、あくまでも例示であり、他にも身体拘束に該当する行為があることに注意が必要です」と書き添え、判断のポイントを「本人の行動の自由を制限しているかどうか」だとしています。
たとえば11項目には「立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する」があります。いすという器具が禁じられているのではなく、立ち上がれる人の立ち上がりを妨げる目的で使えば身体拘束にあたる、という書き方です。
例示と明記されている以上、行為リストとの照合だけでは自施設の対応を判定しきれません。手順書が11項目との突き合わせだけで終わっていると、例示以外の行為を拾えません。
適正な手続きを欠いた身体拘束は高齢者虐待にあたる
手引きは、「緊急やむを得ない場合」の適正な手続きを経ていない身体的拘束等は原則として高齢者虐待に該当し、本人の居住地の自治体への相談・通報が必要だとしています。手続きを踏んでいるかどうかが、ケアと虐待を分ける線です。
高齢者虐待防止の措置も令和6年4月1日から全事業者に義務づけられ、講じられていない場合は基本報酬が減算されます(厚生労働省)。研修の進め方は、介護の虐待防止研修とは|義務化の内容・進め方と記録管理を解説にまとめました。
身体拘束の種類|3つのロックと対象になる11の行為
3つのロックを制限の手段と11の行為の番号で対応づけ、スピーチロックが11項目に含まれない点を整理(出所: 厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)に基づき編集部作成)
身体拘束は、体を直接押さえる拘束、薬で動きを抑える拘束、言葉で行動を止める拘束の3つに分けて考えます。手引きが挙げる11の行為は、ひも等で縛る・器具や用具をつける・薬・隔離という4つの手段に整理できます。手段が違っても、本人の行動の自由を制限した結果は変わりません。
| No | 防ごうとしている事態 | 行為の内容 | 制限の手段 |
|---|---|---|---|
| 1 | 一人歩き | 車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る | ひも等で縛る |
| 2 | ベッドからの転落 | ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る | ひも等で縛る |
| 3 | 自分でベッドから降りること | ベッドを柵(サイドレール)で囲む | 器具・用具をつける |
| 4 | 点滴・経管栄養等のチューブを抜くこと | 四肢をひも等で縛る | ひも等で縛る |
| 5 | チューブを抜くこと、皮膚をかきむしること | 手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける | 器具・用具をつける |
| 6 | 車いすやいすからのずり落ち、立ち上がり | Y字型拘束帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける | 器具・用具をつける |
| 7 | 立ち上がる能力のある人の立ち上がり | 立ち上がりを妨げるようないすを使用する | 器具・用具をつける |
| 8 | 脱衣やオムツはずし | 介護衣(つなぎ服)を着せる | 器具・用具をつける |
| 9 | 他人への迷惑行為 | ベッド等に体幹や四肢をひも等で縛る | ひも等で縛る |
| 10 | 行動が落ち着かないこと | 向精神薬を過剰に服用させる | 薬 |
| 11 | 記載なし(隔離そのものが対象) | 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する | 隔離 |
11の行為を、防ごうとしている事態と制限の手段で並べ直した分類表(出所: 厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)に基づき編集部作成)
3つのロックに当てはめると、10番目の向精神薬の過剰な服用がドラッグロックで、それ以外はフィジカルロックです。言葉による制止(スピーチロック)は11項目に含まれていませんが、判断のポイントに照らせば同じ枠に入ります。
1. 体を直接押さえる拘束(フィジカルロック)
フィジカルロックは、ひもやベルト、柵、つなぎ服などで体の動きを直接止める拘束です。表の1から9までのほか、体に触れずに移動そのものを止める11の居室等への隔離もここに入ります。
判断が分かれやすいのは、転倒や転落を防ぐ目的で始めた対応です。ベッドを柵で囲む、腰ベルトをつける、車いすテーブルを外さないままにするといった対応も同じです。本人が自分の意思で降りたり立ったりできない状態が続いていれば、行動の自由を制限しています。安全の確保と行動の制限は、同時に起きている状態です。
2. 薬で動きを抑える拘束(ドラッグロック)
ドラッグロックは、薬で行動を落ち着かせて動きを抑える拘束です。11項目では「行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる」がこれにあたります。
見るのは処方の目的と量です。服薬後に本人の覚醒や活動量がどう変わったかを記録しておくと、次の受診で医師へ伝える材料になります。薬の内容や増減の判断そのものは、医師が担います。
3. 言葉で行動を止める拘束(スピーチロック)
スピーチロックは、「立たないで」「ちょっと待って」といった言葉で行動を止めてしまう拘束です。道具も薬も使わないぶん記録に残りにくく、拘束をしているという自覚も生まれにくい形の制限です。
11項目に言葉による制限は並んでいません。ただし手引きは11項目を例示だと明記しています。声かけの言い方も委員会の議題や研修の題材に含めておくと、リストにない対応を拾えます。場面ごとの言い換えと施設での定着のさせ方は、スピーチロックを主題にした別記事で扱っています。
判断のポイントは、11の行為に当てはまるかどうかではなく、その対応が本人の行動の自由を制限しているかどうかです。
身体拘束が原則禁止とされる理由|利用者・職員・施設への影響
拘束が次の拘束を呼ぶ5段階の循環と、影響が及ぶ3つの先の対応(出所: 厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)に基づき編集部作成)
身体拘束をすると、本人の関節や筋力が落ち、認知症が進み、その対応のためにさらに拘束が必要になります。手引きは弊害を身体的・精神的・社会的の3つに分けたうえで、「拘束が拘束を生む悪循環」が起きると説明しています。安全のために始めた対応が、本人の安全そのものを削る結果になりかねません。
身体拘束で本人の心身に起きること
手引きが挙げる身体的弊害は3つです。1つめは、関節拘縮、筋力低下、四肢の廃用症候群(動かさないことで体の機能が落ちていく状態)といった身体機能の低下や褥瘡です。2つめは、食欲の低下と、心肺機能や感染症への抵抗力の低下です。3つめは、拘束から逃れるための転倒・転落・窒息といった大事故の危険性です。
精神的弊害も3つあります。縛られる理由も分からず人間としての尊厳を侵害されること、不安・怒り・屈辱・あきらめといった精神的苦痛から認知症が進行しせん妄が頻発すること、拘束されている姿を見た家族に精神的苦痛と罪悪感を与えることが挙げられています。
身体拘束が家族・職員・施設に及ぼすこと
手引きが社会的障害として挙げているのは、看護・介護職員自身の士気の低下と、施設・事業所に対する社会的な不信や偏見です。もう1つは、本人の心身機能の低下がさらなる医療的処置を生じさせ、経済的にも影響を及ぼすことです。
弊害は入所者本人の中で完結しません。自分たちのケアが本人の尊厳を損なっていると感じながら業務を続ける状態は職員の士気に響き、医療的処置が増えれば本人と家族の負担も大きくなるという指摘です。
拘束が拘束を生む悪循環
手引きは、「認知症があり体力も低下している高齢者を拘束すれば、ますます体力は衰え、認知症が進む。その結果、せん妄や転倒等の二次的・三次的な障害が生じ、その対応のために更に拘束を必要とする状況が生み出される」と説明しています。
| No | 段階 | 起きること |
|---|---|---|
| 1 | 安易な検討のもとで身体拘束を行う | 縛られる理由が分からず、不安・怒り・屈辱・あきらめといった精神的苦痛が生じ、尊厳が侵害される |
| 2 | 体を動かす機会が減る | 関節拘縮、筋力低下、四肢の廃用症候群、褥瘡、食欲の低下、心肺機能や抵抗力の低下が進む |
| 3 | 心身の状態がさらに落ちる | 認知症が進行し、せん妄が頻発する |
| 4 | 二次的・三次的な障害が起きる | 拘束から逃れようとして転倒・転落・窒息などの大事故を起こす危険性が高まる |
| 5 | その対応のためにさらに拘束が必要になる | 一時的として始めた拘束が常時の拘束になり、身体機能の低下とともに死期を早める結果にもつながりかねない |
拘束が次の拘束を呼ぶ流れを、手引きの弊害と悪循環の記述から5段階に整理(出所: 厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)に基づき編集部作成)
安全確保という目的そのものにも、手引きは検証を加えています。事故防止の効果は必ずしも明らかではないとしたうえで、「仮に身体拘束によって転倒が減ったとしても、それは転倒を防止しているのではなく、本人を転倒すらできない状態にまで追い込んでいることになる」という指摘です。
令和6年度の調査では、施設従事者等による虐待の発生要因の1位は「職員の虐待や権利擁護、身体拘束に関する知識・意識の不足」で926件・75.9%でした。一方、虐待の事実が認められた施設・事業所のうち999件・81.9%は職員への虐待防止研修を実施していました(厚生労働省)。研修を実施していた施設でも虐待の事実は認められており、実施の有無だけでは知識・意識の不足が解消されたかを確かめられません。研修で問われるのは実施の有無だけでなく、決めた内容が現場で参照できるか、誰がどこまで受けたかが残っているかです。
身体拘束にあたるかの判断と、例外が認められる3要件
身体拘束が例外として認められるのは、切迫性・非代替性・一時性の3つをすべて満たし、施設として話し合って決めた場合だけです。手引きは、この判断を担当職員個人や数名では行わず事業所全体として行うようルールや手続きを定めておくことを求めています(厚生労働省)。判断の場は、事業所内に置く身体的拘束等適正化検討委員会(身体拘束をなくすための対策を話し合う施設内の委員会)とカンファレンスです。
手引きが「緊急やむを得ない場合」として想定しているのは、ケアの工夫のみでは十分に対処できない一時的な緊急事態に限られます。手引き自身が「介護現場において、『切迫性』『非代替性』『一時性』を満たすケースは極めて少ない」と書いています。
| No | 要件 | 手引きが示す内容 | 委員会の議事録に残す判断理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | 切迫性 | 本人または他の入所者(利用者)等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと | 切迫性の確認とその判断理由 |
| 2 | 非代替性 | 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないこと | 非代替性の確認とその判断理由(代替案の列挙) |
| 3 | 一時性 | 身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること | 一時性の確認とその判断理由 |
3要件の定義と、委員会の議事録に記載が求められる判断理由の対応(出所: 厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)に基づき編集部作成)
1. 切迫性
問われるのは、危険があるかどうかではなく、その可能性が著しく高いかどうかです。転倒歴や既往、直近の心身の変化、その場面が起きた時間帯といった事実を並べ、危険の程度を委員会やカンファレンスで共有します。「危ないから」だけでは、記録に残せる理由になりません。
2. 非代替性
手引きは、施設で特に確認すべきポイントとして「代替方法をいくつか試し、その結果を十分に検討した記録があるか」を挙げています。非代替性は拘束を始める時点だけで決まりません。それまでに何を試し、どうなったかの記録があってはじめて、ほかに方法がないと言える状態です。
3. 一時性
手引きは、3要件に該当するかを常に観察・再検討し、該当しなくなった場合には直ちに解除することが重要だとしています。一時的かどうかは開始時の意図ではなく、解除に向けて何をしたかで決まります。解除の予定日を先に決め、その日に解除を試した結果を残すと、一時性を判断した理由が記録に残ります。
夜間に点滴のチューブを自分で抜こうとする場面を例に、順に当てはめてみます。まず、抜針による出血や治療の中断がどの程度の危険につながるかを確かめます(切迫性)。次に、ルートの固定位置を変える、衣服の袖で覆う、訪室の間隔を短くするなど試した方法とその結果を挙げます(非代替性)。最後に、点滴が終わる時刻を解除の予定として決めておくのが一時性の確認です。この3つを、それぞれ「なぜ満たしていると判断したのか」の形で書き残します。
なお、家族の同意は身体拘束を認める根拠にはなりません。手引きは「家族への説明の確認は、同意ではないことに留意する」と明記しています。要件の充足を判断するのは、施設の組織です。
3つのうち1つでも欠ければ、身体拘束は認められません。
身体拘束の経過記録の書き方|説明書と経過観察・再検討記録
記録は開始時の説明書と日々の追記で積み上げ、基準省令第37条第2項に基づき2年間保存する(出所: 厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)および越谷市介護保険課の通知に基づき編集部作成)
身体拘束を行ったときは、どのような方法で何時から何時まで行ったか、そのときの本人の様子、なぜ緊急やむを得ないと判断したのかを記録します。緊急やむを得ないと判断した理由は、切迫性・非代替性・一時性のそれぞれについて書き、記録は2年間保存します。手引きは記録を説明書と経過観察記録の2つで残すことを示し、行政の運営指導や監査の際に提示できるようにしておく必要があるとしています。記録は様式をそろえて終わりではなく、あとから取り出せる状態までが求められる作業です。
運営基準が求める記録項目と2年間の保存
運営基準は、身体的拘束等を行う場合に「その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由」を記録しなければならないと定めています。この3つが、身体拘束経過記録(身体拘束の実施内容と経過を残す記録の総称)に最低限必要な項目です。
緊急やむを得ない理由については、3要件を満たすことを組織として慎重に確認し、その具体的な内容を記録しておくことが必要だとされています。保存期間は基準省令第37条第2項に基づき2年間です。ただし、記録の保存期間は市町村の条例でこれより長く定められている場合があります。書類の種類ごとの保管期間と電子保存の考え方は、介護記録の保管期間は2年?5年?書類種別・起算日・電子保存を解説もあわせて確認してください。
説明書(参考様式1)に書く項目
説明書は、本人と家族へ緊急やむを得ない身体拘束の内容を説明するための書類です。越谷市が公開している参考様式1は、3要件にあたるA・B・Cの3項目に続けて、拘束の必要な理由から解除の予定までを書く欄で構成されています。
利用者・家族の記入欄は「上記の件について説明を受け、確認しました」という文言で、同意欄ではありません。説明書を渡したことは手続きを踏んだ証跡になりますが、要件を満たしたことの証明にはならない点に注意してください。
経過観察・再検討記録(参考様式2)に書く項目
参考様式2の記載欄は4つだけですが、日々の観察と再検討の履歴をこの1枚に積み上げていく構造です。
手引きは「記録はアセスメントからはじまる」としています。まずアセスメントの内容を記録します。そのうえで、日々の観察と、拘束の必要性や方法にかかわる再検討を行うごとに逐次記録を加え、職員間・施設全体・家族等関係者で直近の情報を共有します。記録のポイントは4つです。1つ目は、3要件それぞれについてなぜ満たしていると判断したのかを具体的に書くこと。2つ目は、再検討のたびに追記すること。3つ目は、今後どのようなケアで改善するかを記入すること。4つ目は、本人の状態や家族の意見も残すことです。
| No | 確認する観点 | 説明書(参考様式1) | 経過観察・再検討記録(参考様式2) |
|---|---|---|---|
| 1 | 書く内容 | 3要件の該当、拘束の必要な理由、方法(場所・部位・内容)、時間帯及び時間、特記すべき心身の状況、開始及び解除の予定 | 月日時、日々の心身の状態等の観察・再検討結果、カンファレンス参加者名、記録者サイン |
| 2 | 書くタイミング | 緊急やむを得ず身体拘束を開始し、本人・家族へ説明するとき | 日々の観察を行うたび、および再検討を行うたびに追記する |
| 3 | 署名・確認 | 施設名・代表者と記録者が記名し、利用者・家族欄は「説明を受け、確認しました」の確認欄 | 記録者がサインし、カンファレンス参加者名を残す |
| 4 | 保存期間 | 2年間(基準省令 第37条第2項) | 2年間(基準省令 第37条第2項) |
| 5 | 提示の場面 | 運営指導や監査の際に提示できるようにしておく | 運営指導や監査の際に提示できるようにしておく |
2つの様式を、書く内容・タイミング・署名・保存・提示の5観点で対照した一覧(出所: 厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)および越谷市公開の参考様式1・2に基づき編集部作成)
見直しの間隔と、運営指導での提示
再検討の間隔について、国の基準に一律の定めはありません。保険者が独自に考え方を示している例はあります。越谷市は介護保険課の通知で、再検討の時期を「1か月を基本とし、最長でも3か月」とし、利用者の心身の状況に応じて個々に決定するとしています(越谷市)。同じ通知は、これが保険者である越谷市の考え方であり、他保険者の取扱いまでを拘束するものではないとも明記しています。
同通知によれば、現に使用している様式が参考様式に合致していなくても変更は不要です。ただし、参考様式に掲載されている内容が自施設の様式で欠落している場合は、見直しを図るよう求めています。
参考様式は最低限の項目を示すもので、様式をそろえること自体が目的ではありません。実務上の要件になるのは、運営指導のときに「その利用者の・その期間の」記録をそのまま取り出せる状態です。見直しの間隔を事前に決めて記録に明記し、関係する記録をひとまとまりで探せるようにしておくと、この状態に近づきます。運営指導で確認される書類の範囲は、介護の実地指導(運営指導)チェックリスト|確認項目と準備の進め方が参考になります。
3つの要件それぞれについて、なぜ満たしていると判断したのかを具体的に書き残した記録が必要です。
運営指導のときに身体拘束の経過記録をすぐ取り出せるようにしたい方は
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施設に義務づけられた適正化の措置と未実施減算
施設は、身体拘束の委員会を3か月に1回以上開き、指針を整えて、研修を定期的に行う必要があります。この3つが運営基準の定める身体的拘束等の適正化のための措置で、基準を満たさない場合は身体拘束廃止未実施減算として基本報酬が減算されます。義務の内容と適用の時期は、サービス種別で異なる点に注意が必要です。
委員会・指針・研修の3つの措置
運営基準(指定介護老人福祉施設の基準では第11条第6項)が定める措置は次の3つです。
- 身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3か月に1回以上開催し、その結果を介護職員その他の従業者へ周知徹底すること。委員会はテレビ電話装置等の情報通信機器を活用して開催できます。
- 身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること。
- 介護職員その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。
委員会の議事録には、開催日時・参加者・議題・議事概要を記載します。あわせて、3要件それぞれの確認とその判断理由(非代替性では代替案の列挙)、解除の是非、開始日・解除予定日も残します。
注意したいのは、委員会の開催サイクルと個別の拘束の再検討サイクルが別の要求だという点です。3か月に1回以上は委員会の開催頻度で、いま拘束を行っている利用者を何か月ごとに見直すかは施設が事前に決めるものです。年間計画と個別ケースの再検討予定は、別々に管理する必要があります。研修全体の種類や年間計画の立て方は、介護施設の法定研修とは?種類・回数・年間計画と記録の残し方で詳しく解説しています。
サービス種別ごとの適用時期
サービス種別ごとの義務の中身と開始時期は、次の表のとおりです。
| No | サービス種別 | 義務づけられている内容 | 適用時期 |
|---|---|---|---|
| 1 | 施設系・居住系 | 身体的拘束等の原則禁止と記録、適正化のための措置(委員会・指針・研修) | 措置の未実施による減算は既に適用されている |
| 2 | 短期入所系・多機能系 | 適正化のための措置(委員会の開催・指針の整備・研修の実施) | 令和7年4月1日から |
| 3 | 訪問・通所系 | 身体的拘束等の原則禁止と、身体的拘束等を行う場合の記録 | 令和6年4月1日から |
サービス種別ごとの義務の内容と適用時期(出所: 厚生労働省の要請通知(老高発1225第1号ほか)および同手引き巻末資料に基づき編集部作成)
身体拘束廃止未実施減算の扱い
減算率もサービス種別で異なります。施設系・居住系は所定単位数の100分の10、短期入所系・多機能系は所定単位数の100分の1が、所定単位数から減算されます。後者は令和6年度の介護報酬改定で新設されたものです。
たとえば施設系のサービスで委員会を3か月に1回のペースで開けていなかった場合、基準を満たさない状態にあたり、基本報酬の所定単位数から100分の10が減算されます。指針の整備と研修の実施も同じ措置の一部で、3つのうちどれか1つが欠けても基準を満たさない扱いです。自事業所の該当条文と算定の取扱いは、所管の保険者へ確認してください。
身体拘束をなくすために現場で進めること
身体拘束を減らす近道は、一人歩きや立ち上がりなど拘束のきっかけになる行動が起きる理由を探して取り除き、試した代替方法を記録に残すことです。手引きは事故防止の第一歩として転倒や転落を引き起こす原因を分析して未然に防ぐこと、第二に事故を防止する環境づくりを挙げています。ケアの改善と記録の整備は、別々の作業ではありません。
一人歩きや立ち上がりなど、拘束のきっかけになる行動の理由を探して取り除く
手引きは、認知症の行動・心理症状(BPSD。認知症に伴って現れる行動や心理の症状)の原因として想定されることを6つ挙げています。
- 職員の行為や言葉かけが不適当か、またはその意味が理解できない場合
- 自分の意志にそぐわないと感じている場合
- 不安や孤独を感じている場合
- 身体的な不快や苦痛を感じている場合
- 身の危険を感じている場合
- 何らかの意思表示をしようとしている場合
手引きが挙げる例では、夜間の一人歩きによる転倒の危険性がある場合に、適度な運動で昼夜逆転の生活リズムを改善することで夜間の一人歩きそのものが減少する場合も多いとされています。行動を止めるのではなく、行動が起きる条件を変えるという順序です。
5つの基本的ケアを徹底する
手引きは、身体拘束を必要としないための出発点として5つの基本的ケアを挙げています。起きる、食べる、排せつする、清潔にする、活動する(アクティビティ)の5つです。これらを十分に行って生活のリズムを整えることが重要だとしています。
日中の活動量が確保され、排せつのタイミングが把握できていれば、夜間に起き上がる回数そのものが変わります。その前提になるのは、日々の記録から生活リズムの乱れを拾えるかどうかです。
環境で防ぐ工夫と、試した結果を残す
環境づくりとして手引きが挙げているのは、入所者の動線に沿って手すりを設置する、足元に物を置かない、車椅子を体に合ったものに調整する、ベッドを低くするといった工夫です。いずれも行動を止めずに危険だけを減らす方向に働きます。
これらを試した記録は、そのまま非代替性の判断材料です。何を試し、その結果どうだったかが残っていれば、拘束を検討する場面で「ほかに方法がない」と言える根拠が揃います。記録がなければ、同じ工夫をしていても検討した事実を示せません。
身体拘束の記録と研修の管理を一本化するなら CareBase(ケアベース)
CareBase(ケアベース)は、介護記録・申し送り・動画マニュアルによる教育をクラウドで一元化するサービスです。日々の心身の状態は事業所ごとのテンプレートで記録し、身体拘束廃止・適正化の研修についても実施記録を職員別に残せます。
記録と研修の仕組みを選ぶときに見る点は、3つに整理できます。1つ目は、3要件ごとの判断理由を書く欄を自施設の様式のままテンプレートとして登録できるかどうか。2つ目は、運営指導のときに期間と利用者を指定して該当する記録を取り出せるかどうか。3つ目は、誰がいつ研修を受けたかを職員単位で出せるかどうかです。
紙の様式とExcelの併用でも記録は残せます。ただし記録が個人のファイルに分散すると、運営指導の前に該当分を集める作業が発生します。出席簿と実施報告が別々であれば、受講状況を職員単位で示す作業も後から必要です。
CareBase(ケアベース)は、バイタルや基礎介助、巡視といった日々の心身の状態を記録でき、入力内容は事業所ごとのフォーマット・テンプレートで標準化できます。管理者向けダッシュボードの役割は、期間・利用者・カテゴリ別のデータ出力と、必要な情報の検索・レポート化です。法定研修管理の対応研修例には「身体拘束廃止、適正化のための研修」が含まれ、実施記録を自動で保存して実施状況を職員別に追えます。施設ごとの研修完了率と未受講者数は、本部統制機能のダッシュボードで確認できます。料金は1施設あたりの月額制です。プランにより異なりますので、詳細はお問い合わせください。導入している法人は100社以上にのぼります。
様式をそろえることよりも、後から誰がいつ書いたか・誰がいつ受けたかをそのまま出せる状態を先に決めておくと、運営指導の前に記録を探す手間を減らせます。説明書と経過観察記録を紙で保管している施設にとっては、上の3つの点が自施設の現状を見直す手がかりになります。
身体拘束に関するよくある質問
身体拘束の経過記録は、どのくらいの間隔で見直せばよいですか
国の基準に一律の間隔の定めはないため、施設で事前に決めて記録に明記します。越谷市は再検討の時期を1か月を基本とし最長でも3か月としたうえで、心身の状況に応じて個々に決定するとしています。同市の通知は他保険者の取扱いを拘束するものではないと明記しているため、自施設の間隔は所管の保険者へ確認してください。
身体拘束の記録に、決まった様式はありますか
説明書(参考様式1)と経過観察・再検討記録(参考様式2)が参考様式として示されています。越谷市の通知では、現に使用している様式が参考様式に合致していなくても変更の必要はないとされています。ただし参考様式の内容は最低限記録しておくべき内容とされているため、自施設の様式に欠落があれば見直してください。
家族の同意があれば、身体拘束をしてもよいのですか
家族の同意は、身体拘束を認める根拠にはなりません。手引きは家族への説明の確認は同意ではないと明記しており、参考様式1の家族欄も「説明を受け、確認しました」という確認欄です。3要件をすべて満たすかどうかは、担当職員や家族ではなく、委員会やカンファレンスを通じて組織として判断します。
自事業所が身体拘束廃止未実施減算の対象かどうかは、どう確認すればよいですか
まず自事業所のサービスが施設系・居住系、短期入所系・多機能系、訪問・通所系のどれにあたるかを、指定基準(運営基準)の該当条文で確認します。そのうえで、義務づけられている内容と適用時期を本記事のサービス種別の一覧で照合してください。種別の判定や算定の取扱いに迷う場合は、所管の保険者への確認が確実です。
CareBase(ケアベース)で、身体拘束適正化のための研修の実施記録は管理できますか
管理できます。法定研修管理の対応研修例に「身体拘束廃止、適正化のための研修」を含み、研修実施記録を自動で保存して実施状況を職員別にトラッキングします。本部統制機能が備えているのは、施設ごとの研修完了率と未受講者数をダッシュボードに表示する仕組みです。対応する研修の範囲と管理画面の仕様は、サービス資料で確認できます。
まとめ
介護施設の身体拘束は、切迫性・非代替性・一時性の3要件をすべて満たし、組織として手続きを踏んだ場合にだけ認められる例外です。3要件がそろう場面は限られ、記録の取扱いや再検討の間隔は保険者で考え方が異なります。個別の取扱いは所管の保険者へ確認してください。まずは自施設の説明書と経過観察・再検討記録に参考様式の項目が欠けていないか確かめておくと、運営指導で記録を求められたときにその利用者の分をその場で示せます。
複数の施設を運営していて、研修の受講状況を施設ごとに集計している法人には、本部から全施設の受講状況を1つの画面で確認できる CareBase(ケアベース)が向いています。
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