carebase(ケアベース)コラム

2026.7.8

執筆者:柴田崇晴

介護記録の書き方完全ガイド|5W1Hと文例で記録漏れを防ぐ

シニア女性に寄り添う介護福祉士(介護記録の書き方のイメージ)

監修者プロフィール

  • 監修者名:柴田崇晴
  • 経験年数:25年の相談支援業務
  • 保有資格
    • 社会福祉士
    • 主任介護支援専門員
  • 専門分野:介護施設運営・職員教育等
  • 経歴概要
    福祉大学を卒業後、高齢者福祉の分野で25年従事。高齢者施設の管理者をしながら都道府県・市町村の職能団体役員として活動中

介護記録は、利用者の状態やケア内容を正確に伝える公的な文書であり、保存も法令で義務づけられています。書き方が人によってばらつくと、申し送り漏れや認識のズレ、運営指導での指摘につながります。本ガイドでは、5W1Hを軸にした基本から場面別の文例、記録漏れの防ぎ方、保存期間や運営指導で確認される記録までを現場目線で整理します。

なぜ介護記録の書き方が重要なのか

職員間の情報共有・厚生省令による2年保存義務・ケアの安全確保・運営指導での確認という4つの観点から介護記録の重要性を整理した図解

記録が果たす役割を情報共有・法令・安全・評価の4点で整理(出所: 厚生省令第37号ほか公的資料を基に作成)

介護記録はケアの根拠であり、法令で保存が義務づけられた公的文書です。書き方ひとつでケアの質と事業所の評価が変わります。

介護記録は、利用者の状態やケアの内容を職員間で共有するための情報源です。同時に、サービス提供の記録は厚生労働省令で保存が義務づけられており(e-Govの厚生省令第37号、2026年6月時点)、後述するとおり運営指導でも確認の対象になります。つまり介護記録は「メモ」ではなく、ケアと制度対応の両面を支える正式な書類です。

書き方の差が現場に与える影響は、食事の記録ひとつを見ても分かります。「食事介助をおこなった」だけでは、利用者がどのように食べたのかが伝わりません。これを「最初の3口は自分で食べられた」「咀嚼から嚥下まで声かけしながら見守り、むせることなく全量摂取できた」と書けば、食事中の様子と介助の関わり方まで共有できます。家族から食事の様子を尋ねられたときも、この記録があれば正確に説明できます。

記録の質はケアの安全と職員の負担にも直結します。記録が具体的であれば、次の勤務者が状態変化を見逃しにくくなり、急変時の対応も速くなります。逆に記録が曖昧だと、夜勤帯の引き継ぎで重要な変化が伝わらず、対応の遅れにつながる恐れがあります。介護はシフト制で複数の職員が一人の利用者を担当するため、記録は「その場にいなかった職員」へ状況を正確に渡す唯一の手段でもあります。書き方の基本を一度押さえておくことが、日々の業務とケアの安全を守ることにつながります。

介護記録の基本原則:押さえるべき考え方

事実と解釈の分離・誰が読んでも分かる記述・記録の証拠性・基本5項目という介護記録の4つの基本原則を整理した図解

記録の姿勢3点と書く中身(基本5項目)を一覧化(出所: 厚生省令第37号の記録整備義務の整理に基づき編集部作成)

介護記録の土台は「事実を客観的に書く」ことです。解釈と事実を分け、誰が読んでも同じ状況が浮かぶ記述を目指します。

記録は、いつ・どこで・何が起こったかを客観的な視点で書くことが基本です。そこにスタッフの解釈や言い訳は必要ありません。とくにヒヤリハットや事故、苦情を報告するときは、事実だけを明確に残して施設内で共有します。原因の分析や再発防止の検討は、内容に応じて多職種や上司と進めます。

事実と解釈を分けて書く

記録には「見たこと・聞いたこと・測ったこと」を書きます。判断や推測は事実と切り離し、必要なら別途「対応」として残します。たとえば「Aさんが不安そうにしていたので声をかけた」では根拠が分かりません。「30分おきに職員を呼び止め『私はここにいていいの?』と尋ねる」と事実を記し、「スタッフが『大丈夫です』と伝えると笑顔で『ありがとう』と返答した」と続ければ、状況と対応が具体的に伝わります。事実と解釈の境目を意識するだけで、記録の信頼性は大きく変わります。

誰が読んでも同じ状況が分かる

介護記録は文字で残るからこそ、誰が読んでも同じ状況を思い描ける記述が求められます。鍵になるのは「あいまいな表現」を避けることです。たとえば「いつも通り」という言葉は、利用者ごとに「いつも」の中身が違ううえ、同じ人でも日によって過ごし方が変わります。午前を食堂の椅子で過ごす方でも、居眠りする日もあれば、ほかの利用者とおしゃべりする日もあります。その人の「いつも」が何を指すのかを具体的に書くことで、はじめて記録が共有の役に立ちます。専門用語や略語も、家族が読む場面を想定すると、初めて見る人に伝わる言葉へ置き換えておくと安全です。

記録は対応の証拠になる

介護記録はサービス提供の証拠でもあります。基本報酬や加算の取得、ケアプラン立案の根拠として日々の記録が機能します。緊急でやむを得ず身体拘束をおこなった場合も、その根拠と対応内容を記録として整えておくことが、利用者の権利を守ると同時に職員を守ることにつながります。身体拘束等の記録は法令で保存が義務づけられた記録のひとつでもあります(後述)。日常の何気ない記録の積み重ねが、いざというときに事業所と職員を支える資料になります。

迷わず書ける記録の基本5項目

考え方を実際の記述に落とし込むと、どの場面でも共通して押さえる項目は次の5つに整理できます。

# 基本項目 書くときのポイント
1 客観的事実 「だと思う」「かもしれない」を避け、見た・聞いた・測った事実を、時間や数値とともに具体的に書く
2 利用者の状態変化 体調・行動・食事量・睡眠・表情などの変化は異変のサイン。「いつもとどう違うか」を具体的に残す
3 対応した内容 誰が・何を・どのように行ったかを書き、再現性のあるケアにつなげる。記録する場面は施設内で決めておく
4 利用者の反応・言動 表情・言葉・行動を具体的に。主観を入れず、話した内容をそのまま残す逐語形式(「これ大好きなの」など)が有効
5 職員の判断・対応 その場の判断や行った対応を整理。ケア変更や受診提案の根拠になり、家族の誤解を防ぐ

3つの考え方(事実と解釈の分離・誰が読んでも分かる・証拠性)が「記録の姿勢」、この5項目が「記録に書く中身」にあたります。両方をそろえることで、迷いの少ない記録になります。なお記録のすべてを細かく書く必要はなく、状態変化があったときやヒヤリハット・事故があったときなど、記録すべき場面をあらかじめ施設内で決めておくと、書く側の負担と抜けの両方を抑えられます。

5W1Hで抜け漏れのない記録を書く

When・Where・Who・What・Why・Howの5W1H各要素に実際の記録文例を対応させ抜け漏れ防止の型を示した図解

5W1Hの6要素を実文例で整理し、時間・場所・主語の点検を促す(出所: 5W1Hの枠組みの整理に基づき編集部作成)

5W1Hを意識すると情報の抜けが減ります。いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように、を一文で押さえるのが基本です。

記載漏れや曖昧さを防ぐ最も実用的な型が5W1Hです。書き終えたあとに5W1Hを見直すだけでも、記録の精度は大きく上がります。次の表は、要素ごとに「不足している記録」を「適切な記録」へ書き換えた対照例です。

要素 不足している記録 適切な記録
What(なにを) Aさんは、毎晩スタッフに話す。 Aさんは、毎晩スタッフに「帰りたい」と話す。
When(いつ) 背中にあざを発見。 本日午後、浴室で衣服の脱衣時に背中のあざを発見。
Where(どこで) 今朝、転倒しているのを確認した。 今朝、トイレの入り口で転倒しているのを確認した。
Who(だれ) Aさんの傷を報告。 スタッフBがAさんの傷を発見したので看護師Cに報告する。
Why/How(なぜ・どのように) 様子が悪かったので対応した。 昼食中に咳込み顔面紅潮。むせ込みが続いたため職員Bが水分を提供し状態を確認した。

5W1Hの不足→適切の書き換え対照表(データ出所: 介護記録の記載事例の整理に基づき編集部作成)

5W1Hは「いつ(When)・どこで(Where)・誰が(Who)・何を(What)・なぜ(Why)・どのように(How)」の6要素です。すべてを毎回網羅する必要はありませんが、書いたあとに「時間と場所は入っているか」「主語は明確か」を確認すると、抜けが減ります。とくに見落としやすいのが「誰が」の部分です。介助者と利用者のどちらの行動なのかが曖昧だと、後から読む職員が状況を取り違える原因になります。主語をはっきりさせるだけで、記録の正確さは一段上がります。

要点: 5W1Hは記録を書く前の発想法であると同時に、書いたあとの点検リストとしても使えます。時間・場所・主語の3点が入っているかを最後に見直すだけで、伝わる記録に近づきます。

客観的で伝わる表現にする

伝わる記録は、客観・具体・簡潔・適時の4点を満たします。評価語や曖昧表現を事実へ言い換えると、誤解とトラブルを防げます。

記録は監査やトラブルの際に根拠資料として扱われます。感情や推測を避けた客観的な表現が欠かせません。次の✖〇は、伝わる記録に共通する条件を具体例で示したものです。

  • 5W1Hの明確化 ✖「昼食時に様子が悪かったので対応した」 〇「1月1日12:30、食堂にて。Aさんが昼食中に咳込み、顔面紅潮。むせ込みが続いたため、職員Bが水分を提供して状態を確認した」
  • 客観的表現(主観を排除) ✖「Aさんが嬉しそうに笑った」 〇「Aさんが、今日の昼食がおいしかったと笑った」
  • 具体性(抽象表現の回避) ✖「水分をたくさん飲んだ」 〇「牛乳を200ml飲んだ」
  • 簡潔性(冗長表現の削除) ✖(経緯を長く書き連ねる) 〇「就寝前、Aさんからしんどいと訴えがあり検温すると37.8度の発熱あり」
  • 適時性(記録タイミング) あとで書こうとすると思い出せず事実が抜ける。携帯端末があればその場で入力できる

客観的表現と具体性は、似ているようで役割が異なります。客観性は「感想ではなく事実を書く」こと、具体性は「数値や状況を加えて状況を再現できるようにする」ことです。「水分をたくさん飲んだ」は感想ではありませんが、量が分からないため次の判断に使えません。「200ml」と書くことで、脱水のリスク管理や水分量の調整に活かせます。

避けたいNGワードと言い換え

何気なく使う言葉のなかには、記録として不適切な表現があります。利用者とスタッフの間に「介護してあげている」という上下関係はありません。利用者を一人の人として尊厳を守る視点で、評価ではなく事実を書きます。介護記録は家族に開示される場合もあるため、専門用語や内輪の表現も避けます。

ふさわしくない表現 理由 言い換え例
問題行動あり 「問題」と捉えているのは介護者側。行動を客観的に記録する 浴室に入ると大きな声でスタッフに抵抗する/食事が早く済むと隣の人の食事に手を伸ばす
わがままな言動 管理的な表現。具体的な事実を書く 声かけに対して「〜したい」「いやだ」と主張することが多い
認知の為分からない 曖昧で状態が伝わらない 認知機能が低下し、自分の部屋が分からない/認知症により短期記憶障害がある
元気がない/不機嫌だった 主観的で人により解釈が変わる 表情乏しく、声かけへの返答が少ない/眉間にしわを寄せ、問いかけに返答なし

「元気がない」「機嫌が悪い」のような評価語は人によって受け取り方が変わります。利用者の行動や反応を具体的に書くことで、誰が読んでも同じ状況を理解できる記録になります。言い換えのコツは、評価の言葉が出てきたら「何を見てそう感じたのか」をそのまま書くことです。「不穏だった」ではなく「同じ質問を5分おきに繰り返した」と書けば、評価を挟まずに状態が伝わります。

記録漏れを防ぐ5つのポイント

記録されていないケアは「実施していない」と判断されることがあります。記録漏れは、直後のメモと仕組みづくりで防げます。

申し送りミスや事故の原因の多くは、記録漏れにあります。確実に残すための実践ポイントは次の5つです。

  1. ケア直後にメモを残す — 「あとで書こう」と思ったまま忘れるのが最大の原因です。忙しい時間帯でも、短いキーワードだけ残しておくと後から正確に書けます。一日の終わりにまとめて思い出そうとすると、記憶が曖昧になり記載漏れが生じます。
  2. 5W1Hをチェックしながら書く — 時間・場所・主語・対応が入っているかを確認すると、自然と抜けが減ります。書き終えた後の見直しにも使えます。
  3. ルーティン業務こそ簡潔に記録する — 毎日の食事や排泄は慣れで省略されがちです。変化がなくても「通常通り」「変化なく経過」と記すことで、状態が安定している証拠になります。記録がない状態を作らないことがポイントです。
  4. 施設内で記録の基準・用語を共有する — 何を記録するかを決めておくと、誰が書いても抜けが揃います。新人とベテランで記録する項目が違うと、引き継ぎのたびに情報の粒度がばらつきます。
  5. チェックの仕組みを設ける — 複数人で記録を確認する体制があれば、重要事項の見落としを減らせます。記録は個人の注意力だけに頼らず、仕組みで支えると安定します。

「記載のないケアは未実施とみなされ得る」という前提は、後述する運営指導や法的な保存義務とも直結します。記録漏れの防止は、現場の安全と制度対応の両面で意味を持ちます。

よくあるミスと改善(×◯例文)

日々書き慣れるほど、無意識に不適切な書き方になりがちです。典型的なミスは、事実を具体化することで改善できます。

書き方の型に起因するミスは、NGワード(語の選び方)とは別に整理しておくと直しやすくなります。代表的なパターンと改善例は次のとおりです。

  • 主観的な表現 ✖「元気がない様子だった」 ◯「表情乏しく、声かけに対する返答が少ない状態」
  • 情報が少なく状況が伝わらない ✖「食事介助を行った」 ◯「12時10分、食堂にてA様の昼食介助を実施。職員が右側より介助し、主食6割・副食8割摂取。食後むせ込みなし、水分200ml摂取確認」
  • まとめ書きで詳細が抜ける ✖「午前中の出来事をまとめて記録」 ◯「ケア実施後すぐ要点をメモし、勤務内に記録へ反映」
  • 評価語を使う ✖「わがままを言って拒否した」 ◯「入浴を勧めるも首を横に振り『入りたくない』と発言あり」
  • 「特になし」で済ませる ✖「特になし/記録省略」 ◯「食事・排泄・バイタルともに大きな変化なく安定して経過」「夜間覚醒なく入眠。定時巡視時も安静に過ごされている」

これらのミスは、書き方を少し意識するだけで防げます。とくに「特になし」は要注意です。変化がなかったこと自体が、状態が安定しているという重要な情報であり、後から経過を振り返るときの基準点になります。記録は評価を書く場ではなく、事実を共有するためのものだという原則に立ち返ると、改善の方向が見えてきます。職場内で記録の基準を共有し、誰が見ても分かる記録を目指すことが、質の高いケアにつながります。

場面別の書き方と文例(食事・排泄・入浴ほか)

同じ出来事でも、場面ごとに押さえる観点は変わります。場面別に記録項目と文例を持っておくと、迷わず短時間で書けます。

場面ごとに記録すべき項目を整理しておくと、書く内容に迷う時間が減り、職員間の表現のばらつきも抑えられます。代表的な5場面の観点と文例をまとめます。

場面 記録するポイント 記入例
食事 摂取量/介助の有無/咀嚼・嚥下/むせ・咳込み/本人の発言・嗜好 12時10分、食堂にて昼食介助を実施。全介助にて対応。主食6割、副食8割摂取。むせ込みなし、水分200ml摂取。「おいしい」と発言あり、表情安定
排泄 排便・排尿の有無と量/便性状/トイレ誘導の可否/失禁状況/痛みの訴え 10時30分、居室トイレにて排泄介助を実施。歩行不安定のため見守り介助。排尿あり、排便なし。排泄後「すっきりした」と発言あり
入浴 入浴形態/可否(拒否の理由)/洗身・洗髪の状況/皮膚状態 14時、個浴にて入浴介助を実施。更衣・洗身ともに全介助。湯温40℃、入浴時間10分。表情穏やかで拒否なし。発赤や皮膚トラブルなし
移動・歩行 歩行の安定性/ふらつき/車椅子の使用/介助量/転倒リスクの兆候 つかまる所があれば10m歩ける。最近は歩行時に足が上がっておらず、つまずくことが増えた
認知症のある方 表情・言動・睡眠/他者との関わり/拒否の理由 夕方になると子供を探すために歩き回る。目を見てゆっくり話しかけると興奮が治まる

場面別の記録項目と文例(データ出所: 場面別の記録項目の整理に基づき編集部作成)

体調変化や異常を伴う場面は、観察結果と対応を時系列で書きます。たとえば「15時頃、『頭が少し痛い』と訴えあり。体温37.5℃、血圧128/76mmHg。看護師へ報告し安静臥床とする。30分後再検温37.2℃、表情落ち着きあり」のように、訴え・測定値・対応・経過の順に残すと、状況が正確に伝わります。バイタルや薬に関わる記録は、数値と時刻をセットで残しておくことが、看護師や医師への報告の精度を高めます。

夜勤帯の記録は、日中と比べて確認できる人数が少ないため、巡視の時刻と利用者の様子を簡潔に残すことが欠かせません。「2時巡視、入眠中。呼吸落ち着いている」のように、定時の確認結果を積み重ねておくと、夜間の状態変化を後から追えます。利用者ごとの経過を継続して追う「ケース記録(経過記録)」の詳しい書き方は、介護ケース記録の書き方マニュアルで個別に解説しています。日々の記録から一歩踏み込みたい場合の参考になります。

トラブル・事故時の記録の書き方

転倒や体調急変などのトラブル時は、時系列で確認できた事実のみを書きます。推測語や曖昧表現は避けるのが基本です。

トラブル発生時の記録は、利用者の安全確保と職員・施設を守る証拠になります。慌ただしい状況でも、確認できた事実を時系列で、客観的かつ具体的に残すことが重要です。たとえば転倒時は「いつ・どこで・誰が発見し・どのような状態だったか・その後どう対応したか」を順に書きます。

  • 発見時の状況 姿勢・表情・出血や痛みの有無
  • 実施した対応 バイタル測定、看護師への報告、家族連絡など
  • 利用者の発言や様子 本人が話した内容をそのまま記録

「不注意で転倒したと思われる」のような推測や、「大丈夫そうだった」という曖昧な表現は避けます。代わりに「左側臥位で床上に座り込んでいるところを発見」「本人より『足が滑った』との発言あり」など、確認できた事実だけを書きます。発見時に出血や痛みがなくても、時間の経過で症状が出ることがあるため、その後の経過観察も記録に残します。トラブル時の記録は事故原因の分析や再発防止に直結し、後述する運営指導でも重点的に確認されます。

ヒヤリハットの段階での記入例や報告書の様式は、介護のヒヤリハット事例集と報告書の書き方で場面別に整理しています。事故に至る前の気づきを記録に残す習慣づくりに役立ちます。

介護記録の保存期間と法的な位置づけ

サービス提供記録は完結の日から2年間の保存が省令で義務づけられています。自治体条例で5年とする例もあります。

介護記録の保存は、現場の慣習ではなく法令上の義務です。「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)の第39条第2項では、利用者へのサービス提供に関する記録を整備し、その完結の日から2年間保存しなければならないと定められています(e-Govの厚生省令第37号、2026年6月時点)。

保存の対象は、サービス計画だけではありません。同項では次の記録が保存対象として挙げられています。

  • 訪問介護計画(サービス計画)
  • 提供した具体的なサービスの内容等の記録
  • 身体的拘束等の態様・時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由の記録
  • 市町村への通知に係る記録
  • 苦情の内容等の記録
  • 事故の状況および事故に際して採った処置についての記録

事故・苦情・身体拘束の記録が法令上の保存対象に含まれている点は、日々の書き方を考えるうえで見落とせません。これらは「特別なときだけの書類」ではなく、平時から正確に残しておくべき記録です。日々の記録を客観的かつ具体的に残しておく習慣が、そのまま法令で求められる保存記録の質を担保することにつながります。

なお、保存期間は全国一律ではない点に注意が必要です。省令の最低基準は2年ですが、自治体の条例でサービス提供日から5年の保存を求める例もあります。自施設の所在する自治体の条例を確認し、より長い期間が定められている場合はそれに従う必要があります。記録の保存方法を電子データに切り替える場合は、改ざん防止や検索性などの要件を満たす運用が前提になります。個別の保存期間や保存方法の判断に迷う場合は、所管の自治体や有資格者に確認するのが確実です。記録の法的要件と保管期間、実地指導への対応やデジタル保存の注意点は、介護記録の法的要件と保管期間でも整理しています。

運営指導で確認される記録と書類

運営指導では、事故対応記録や計画書・人員配置記録などが確認されます。不備は改善命令や減算の対象になり得ます。

書き方を運営指導(実地指導)の視点で見直すと、平時の記録の意味がより明確になります。厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」(令和4年3月策定・令和6年7月改訂)に沿って、運営指導では日々の記録が適切に残されているかが細かく確認されます(厚生労働省 運営指導マニュアル、2026年6月時点)。

なかでも事故発生時の対応は確認の重点です。記録によって対応が確認できないと、サービスの質と利用者の権利の両面で問題視されます。事故に関する記録には、次の項目をそろえておくと過不足が生じにくくなります。

  • 発生日時・場所
  • 状況(事実のみ)
  • 怪我の有無・部位
  • 対応(処置・連絡)
  • 再発防止策(可能な範囲)
  • 委員会での検討・共有事項

事故記録以外にも、運営指導では複数の書類が確認されます。サービス計画書・個別支援計画、契約書・重要事項説明書・個人情報提供同意書などの利用契約関連書類、勤務実績表や人員配置記録などの体制管理に関する記録、加算・減算の根拠となる書類です。これらに不備があれば改善命令や減算の対象になり得ます。日々のケア記録だけでなく、これらの書類が一貫して整っているかが確認の対象になる点を、平時から意識しておくと安心です。

要点: 「事故やヒヤリハットの記録項目をテンプレート化し、平時から同じ様式で残す」運用が、運営指導での指摘リスクを下げます。書き方の標準化は、ケアの質だけでなく制度対応にも効きます。

記録のデジタル化という選択肢

紙の記録には同時に書けない・過去記録を探しにくいという弱点があります。ICT化は記録漏れ防止と業務軽減の両面で効果が期待できます。

記録方法には、紙、表形式のテンプレート、ICT(介護ソフト・記録アプリ)の選択肢があります。それぞれの特性を同じ評価軸で整理すると、自施設に合う方法を判断しやすくなります。

評価軸 表形式テンプレート ICT(介護ソフト・アプリ)
記録漏れ防止 個人の意識に依存 記入項目が決まり抜けにくい 必須項目の設定やアラートで補える
同時編集 1人ずつしか書けない 紙と同様に制約あり 複数人が同時に入力・閲覧できる
検索性 過去記録を探しにくい 紙よりは整理されるが限界あり 利用者・期間で素早く検索できる
共有速度 手渡し・回覧が必要 同上 リアルタイムで共有できる
導入コスト 追加コストが小さい 小さい 初期費用・月額や端末が必要

記録方法3方式の客観比較(評価軸を同粒度で比較。データ出所: 介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」および各方式の一般的特性の整理に基づき編集部作成)

紙には導入コストが小さいという利点があり、すべての施設がただちにICT化すべきというわけではありません。一方で、記録漏れや残業に課題を抱える施設では、ICT化の効果を費用と照らして検討する価値があります。テンプレートの活用は紙のままでも記録漏れを減らせる現実的な一歩ですが、過去記録の検索性や複数人での同時編集といった課題は、紙やテンプレートでは解決しにくい部分です。記録の電子化で得られるメリットや費用、満たすべき法的要件は、介護記録の電子化とは|メリット・費用・法的要件で詳しく整理しています。

その判断材料として、公的な調査データがあります。公益財団法人 介護労働安定センターの「令和6年度 介護労働実態調査」では、ケア記録・ケアプラン等の入力・保存・閲覧機能を備えたICT機器・介護ロボットの導入が全体の75.4%にのぼりました。導入効果については「効果がある」「やや効果がある」を合わせて、昼間の業務負担の軽減を49.4%、夜間の業務負担の軽減を44.6%の事業所が実感しています。導入した事業所に限ると、昼間73.1%・夜間72.6%とさらに高い割合になります(介護労働実態調査 令和6年度、2026年6月時点)。

この数値は、ICT化が「効率化できる」という抽象的な期待にとどまらず、実際に半数前後の事業所で負担軽減として現れていることを示しています。同調査では介護労働者の1週間あたりの平均残業時間が約17時間という実態も示されており、記録業務の効率化は働き方の改善にも関わります。記録漏れ・残業・申し送りミスのいずれかに課題がある施設にとって、ICT化は現実的な選択肢になります。

carebase(ケアベース)は、スマートフォンやタブレットで介護記録を入力・整理・共有できるクラウドシステムです。記録漏れ防止や申し送りミスの削減に加え、動画・画像を使ったマニュアル機能で新人教育や業務の標準化も進められます。

要点: 記録方法は「紙かICTか」の二択で決めるより、記録漏れ防止・同時編集・検索性・共有速度・コストの各軸で自施設の課題に当てはめて選ぶのが現実的です。ICTの負担軽減効果は調査で約半数の事業所が実感しています。

チームで記録品質を揃える(研修・標準化)

記録の質は、研修と施設内の基準づくりで揃います。目的の共有から良否の比較、OJTへとつなぐ流れが定着に有効です。

複数のスタッフが関わる以上、記録の書き方にはどうしてもばらつきが生まれます。これを抑えるには、個人の努力に任せるのではなく、チームとしての基準と研修を整えることが現実的です。

記録研修は、新人の基礎指導からOJTでの実践サポートまで、経験やスキルに応じて内容を調整します。土台となる流れは共通しており、まず1. 記録の目的と意義を伝えて理解を深め、2. 良い記録と悪い記録を理由とともに比較して基準を共有し、3. OJTで実際の記録を見ながら修正していく、という3段階で進めると無理なく定着します。「なぜ記録が重要なのか」という目的を最初に共有すると、記録への取り組む姿勢そのものが変わります。

ばらつきを抑えるには、チェック体制の整備も欠かせません。報告書や会議録を「練習の場」として活用し、書いた記録に周囲が意見を返して修正する。この積み重ねが、最も確実に記録スキルを伸ばします。施設内で記録の様式や用語を統一しておくと、新人も迷わず記入でき、指導の手間も減ります。記録は経験を重ねて身につく技術であり、個人の素質に任せるより、組織として育てる対象と捉えるほうが定着しやすくなります。

carebase(ケアベース)の動画マニュアル機能は、記録の良否例や施設ごとのルールを動画で共有でき、研修の標準化に活用できます。教育と記録運用を同じツールでまとめたい施設に向いています。

よくある質問(FAQ)

介護記録は何年保存する必要がありますか?

サービス提供に関する記録は、厚生省令第37号 第39条第2項により、その完結の日から2年間の保存が義務づけられています(e-Govの厚生省令第37号、2026年6月時点)。ただし自治体の条例でサービス提供日から5年の保存を求める例もあるため、所在する自治体の基準を確認してください。

介護記録で使ってはいけない言葉(NGワード)はありますか?

「問題行動」「わがまま」「元気がない」のような評価語や主観的な表現は避けます。利用者の行動や反応を客観的な事実に言い換えることがポイントです。たとえば「不機嫌だった」は「眉間にしわを寄せ、問いかけに返答なし」と書き換えます。

介護記録の文末は「です・ます」と「だ・である」のどちらが正しいですか?

法令上どちらかに統一する決まりはありません。公的文書として簡潔・客観であれば、常体(だ・である調)で書かれることもあります。実務上は文末の正解を探すより、施設内で文体や用語を統一することが、読みやすさと品質のばらつき防止に効きます。

事故やヒヤリハットの記録はどう書けばよいですか?

発生日時・場所、状況(事実のみ)、怪我の有無、対応、再発防止策、委員会での検討事項を時系列で書きます。推測や曖昧な表現を避け、確認できた事実のみを残すことが基本です。事故記録は法令上の保存対象であり、運営指導でも確認されます。

介護記録をデジタル化すると本当に業務は減りますか?

令和6年度の介護労働実態調査では、ICT機器・介護ロボットを導入した事業所の49.4%が昼間、44.6%が夜間の業務負担軽減を実感しています(介護労働実態調査 令和6年度、2026年6月時点)。導入した事業所に限ると効果実感はさらに高く、記録漏れや残業の課題がある施設では効果が期待できます。

新人職員の介護記録はどう指導すればよいですか?

最初に「なぜ記録が必要か」という目的を共有し、良い記録と悪い記録を理由とともに比較してから、OJTで実際の記録を見ながら修正していく流れが効果的です。施設内で記録の様式や用語を統一しておくと、新人が迷わず記入でき、指導する側の負担も減ります。報告書や会議録を練習の場として活用し、書いた記録に周囲が意見を返す仕組みをつくると、記録スキルが定着しやすくなります。

まとめ

介護記録は、利用者の状態を残すだけでなく、ケアの根拠であり、法令で保存が義務づけられた公的文書です。5W1Hで事実を客観的に書き、解釈と分け、誰が読んでも同じ状況が分かる記述を心がけることが基本になります。場面別の文例や記録漏れ防止の工夫を取り入れ、事故やトラブル時は時系列で事実だけを残す。さらに保存期間(完結の日から2年・自治体によっては5年)や運営指導で確認される記録を押さえておけば、現場の安全と制度対応の両面に備えられます。記録漏れや残業に課題がある場合は、研修による標準化やICT化を、費用と効果を見ながら検討するとよいでしょう。

記録の質を保ちながら記録業務を効率化するならcarebase(ケアベース)

carebase(ケアベース)は、スマートフォンやタブレットで介護記録を入力・整理・共有できるクラウドシステムです。5W1Hに沿った記録の標準化や必須項目の設定で記録漏れを防ぎつつ、申し送り連携や動画マニュアルによる教育まで一つのツールでまとめられます。記録の質を保ちながら記録業務の負担を軽くしたい施設に向いています。

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