2026.9.15
介護のアンガーマネジメントとは?現場で使える対処法と研修の進め方
アンガーマネジメントとは、怒りをなくすのではなく、怒った直後の数秒をやり過ごして伝え方を選び直す技術です。介護現場の研修では、怒りの引き金を自施設の場面で特定し、その場でできる対処と伝え方を演習で確かめるところまでを扱います。職員が現場で使える対処法と、施設として研修を進める手順を順に整理します。
アンガーマネジメント研修を施設として進める手順を整えたい方は
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介護現場のアンガーマネジメントとは?怒りをやり過ごして伝え方を選び直す技術
怒りをゼロにせず、数秒をやり過ごして伝わる言い方へ切り替える流れを整理(出所: 守山市「職場のコミュニケーション・スキル アンガーマネジメント」に基づき編集部作成)
アンガーマネジメントとは、怒りの感情とうまく付き合うために身につける心理トレーニングです。怒りをゼロにする訓練ではなく、怒りが立ち上がった直後の数秒をやり過ごし、そのうえで要望を相手に伝わる形へ言い換える手順を練習します。介護現場では、職員研修のテーマとして取り上げられています。
怒らないことではなく、怒り方を選べるようにすること
最初に置く線引きは、怒る必要のあることと、怒る必要のないことを分けることです。前者は感情のままぶつけず相手に伝わる言い方を選び、後者はその場で切り上げて引きずらないようにします。この線引きがあると、職員に求めるものが我慢から伝え方の選択に変わり、研修で扱う内容も精神論ではなく、その場でできる手順の練習になります。
怒りは大切にしているものが傷つけられたときに生じる
守山市が職場向けに公開している資料では、怒りは「自分の大切なものが傷つけられたときに生じる感情」と説明されています(守山市)。
CareBase(ケアベース)は、この定義に立てば、怒りを職員の性格ではなく場面と条件の問題として扱えると考えています。振り返りの最初の問いも、なぜ怒ったのかではなく、その場面で何が守られなかったのかです。
アンガーマネジメントが介護施設で求められる3つの背景
感情のコントロールは10件のうちおよそ6件で要因に挙がり、研修とハラスメント対策の制度要件が重なります(出所: 厚生労働省の令和6年度高齢者虐待防止法に基づく対応状況等の調査結果に基づき編集部作成)
介護施設でアンガーマネジメントが求められるのは、職員の感情のコントロールが虐待の主な発生要因の一つだからです。令和6年度の調査では、養介護施設従事者等による虐待の発生要因のうち「職員のストレス・感情コントロール」が763件(62.5%・複数回答)で3番目に多く挙がりました(厚生労働省)。個人の心がけではなく、施設の計画に載せる論点になっています。
| No | 虐待の発生要因(複数回答) | 件数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 職員の虐待や権利擁護、身体拘束に関する知識・意識の不足 | 926件 | 75.9% |
| 2 | 職員の倫理観・理念の欠如 | 785件 | 64.3% |
| 3 | 職員のストレス・感情コントロール | 763件 | 62.5% |
出所: 前掲の厚生労働省の令和6年度高齢者虐待防止法に基づく対応状況等の調査結果(複数回答のため割合の合計は100%になりません)
1. 感情のコントロールが虐待の主な発生要因に挙がっている
上の3つは、虐待の事実が認められた1,220件の施設・事業所を対象に集計された要因です。763件は、10件のうちおよそ6件でこの要因が挙がった計算になります。
CareBase(ケアベース)は、上位3つの要因のうち2つが教育で扱える範囲にあると見ています。そのため、虐待防止の取り組みを見直すときの単位は、知識を伝える研修と感情のコントロールを分けない1つの年間計画です。
2. 国が虐待防止研修の内容例にアンガーマネジメントを挙げている
令和6年4月1日から、すべての介護サービス事業者に高齢者虐待防止措置が義務づけられました。内容は、虐待防止委員会の定期的な開催・指針の整備・研修の実施・担当者の配置という4つの取り組みです。措置が講じられていない場合は基本報酬が減算されます(厚生労働省)。
同じ通知は、委員会で研修カリキュラムを検討する例として「高齢者虐待防止の基礎的な事項に加え、ストレスマネージメントやアンガーマネージメントについての内容を含めるなど」と示しています。単独の研修を新しく立てる前に確認したいのは、すでにある虐待防止研修へ組み込めないかどうかです。制度上の内容と記録の残し方は介護の虐待防止研修で詳しく解説しています。
3. 利用者・家族からの言動への対応も、施設が仕組みで整える対象になっている
令和3年度の介護報酬改定では、すべての介護サービス事業者にハラスメント対策として必要な措置を講じることが義務づけられました。カスタマーハラスメント、つまり利用者や家族から受ける著しい迷惑行為についても、防止のための措置が推奨されています(厚生労働省)。
職員の怒りを扱う研修と、職員を言動から守る仕組みは同じ年間計画で扱う対象です。研修を組むときは、利用者・家族からの言動を受けたときの相談窓口が決まっているかどうかも点検の対象です。感情のコントロールは、個人の資質ではなく委員会・研修・記録の仕組みで扱う論点として国の要請にも位置づけられています。
怒りが生まれる仕組みと介護の現場に多い引き金
怒りの前に立つ焦り・もどかしさと、引き金になる4つの場面を整理(出所: 守山市「職場のコミュニケーション・スキル アンガーマネジメント」に基づき編集部作成)
介護現場の怒りは、時間の逼迫と繰り返しの声かけ、そして「こうすべき」という自分の基準が重なった場面で起きます。引き金を絞り込む手がかりは、繰り返し腹を立てる場面をたどることです。絞り込めれば、その場面に合う対処と研修で使う題材を選べます。
時間に追われて同じ声かけを繰り返す場面で怒りが立ち上がる
たとえば、夕方の入浴介助が押しているのに、同じ声かけを3回繰り返しても動いていただけない場面です。このとき先にあるのは怒りではなく、次の予定に間に合わないという焦りと、伝わらないもどかしさです。
介護は利用者の状態に合わせて手順が変わるため、予定どおりに進まない時間帯が生まれます。焦りが積み重なった状態で同じ働きかけを繰り返すと、同じ言葉でも語気が強くなることがあります。いら立ちを振り返るときの起点は、性格ではなくその時間帯に何が重なっていたかです。
「こうすべき」という自分の基準が引き金を強める
前掲の守山市の資料では、大切にしている考え方や価値観は「〇〇すべき」という形で現れることが多いと説明されています。同じような場面で繰り返し怒りを感じる場合は、その「すべき思考」が引き金になっている可能性があります。「声をかけたら手を止めるべき」といった基準は、言葉にされないまま職場に持ち込まれるものです。
CareBase(ケアベース)は、引き金に「すべき思考」という名前が付くこと自体が、職員が振り返りを言葉にする助けになると見ています。研修で自分の「すべき」を書き出す時間を取るのは、このためです。
| No | 介護現場で多い引き金 | その場でできる対処 | 研修で扱う演習 |
|---|---|---|---|
| 1 | 時間の逼迫 | 数を数えて間を取る | 忙しい時間帯の場面を書き出す |
| 2 | 繰り返しの声かけ | 場を離れて交代を頼む | 声かけの言い換えを考える |
| 3 | 「こうすべき」の基準 | 職場の基準と照らす | 自分の「すべき」を書き換える |
| 4 | 利用者・家族の言動 | 一人で抱えず窓口へ | 対応手順と報告先を確認する |
出所: 厚生労働省の要請通知、守山市「職場のコミュニケーション・スキル アンガーマネジメント」、日本農村医学会雑誌のワークショップ報告の整理に基づき編集部作成
職員が現場で使える怒りへの対処法
その場でできる対処は、間を取る・場を離れる・自分の基準を緩める・記録して引き金を特定する、の4つに整理できます。どれも数分あればできる方法で、その場をしのぐ必要があるのか、同じ場面の繰り返しを減らしたいのかが使い分けの目安です。
最初の数秒をやり過ごす
守山市の資料では、どんなに激高しても怒りのピークは長くて6秒と言われているため、ゆっくり10秒ほど数える方法が紹介されています。数を数えるだけで抑えられないときは、手をグーパーしながら10セット数える方法も併記されています(守山市)。
同じ資料には呼吸法も載っており、息を吐ききってから鼻からゆっくり吸い、吸うときの倍ほどかけて口から吐きます。目安は1分間に6〜8回です。研修で6秒を教えるときは、収まらなかったときの次の手まで決めておきます。
その場をいったん離れる
強い言い方になりそうだと気づいた時点で、その場を離れて数分だけ間を置く方法です。一人で対応する時間帯もあるため、離れる前に近くの職員へ交代を頼む段取りを決めておきます。見守りが必要で離れられない場面の代わりの手が、前掲の守山市の資料にある呼吸法です。
「こうすべき」を職場の基準と照らし合わせる
前掲の守山市の資料は、腹を立てた場面で頭に浮かんだ考えを書き出し、共通する「すべき思考」を見つける手順を示しています。書き出した考えを確かめる観点は、次の2点です。
- 職場の共通認識になっているか
- 職場がパフォーマンスを発揮するために役立つ考え方か
どちらにも当てはまらない場合は、自分は大切にしているがそう考えない人もいる、という受け止め方に切り替えます。CareBase(ケアベース)がこの2問を重く見るのは、「べき思考を緩める」という助言を、その場で判定できる形にしているからです。研修では、自分の基準をこの2問に当てはめる時間を取ります。
怒りを記録して引き金を特定する
記録に残す項目は、日時・場面・相手・そのとき頭に浮かんだ考えの4つです。同じ組み合わせが繰り返し出てくれば、それが自分の引き金だと判断できます。個人が特定できない形に整えて持ち寄れば、記録はそのまま研修の題材です。4つの対処は、その場をしのぐもの(間を取る・場を離れる)と、繰り返しを減らすもの(基準の見直し・記録)に分かれます。
自施設の場面を題材にした研修を仕組みとして整えたい方は
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施設として研修を進める4ステップ
4ステップを回しながら実施日・対象者・内容・受講者の4項目を残す進め方を整理(出所: 厚生労働省の通知・研修の手引きの整理に基づき編集部作成)
研修は、対象と目的を決め、自施設の場面を題材に演習を組み、受講状況と実施記録を残し、次回へ反映する順で進めます。令和6年度の調査では、虐待の事実が認められた1,220件の施設・事業所のうち、職員に対する虐待防止研修を実施していたのは999件(81.9%)でした(厚生労働省)。研修を実施していた施設でも虐待は起きています。CareBase(ケアベース)は、この結果から、研修は実施したかどうかだけでなく、題材の中身と誰がどこまで受けたかで見るのがよいと考えています。
1. 対象と目的を決める
決めるのは、全職員向けか新任者向けか、虐待防止研修の一部として組むか単独で組むかの2点です。虐待の防止のための研修は、指定居宅サービスや地域密着型サービスなどでは年1回以上、指定介護老人福祉施設などの施設系では年2回以上の実施が求められています(厚生労働省)。すでに虐待防止研修を実施している場合は、新しく研修を立てるより、その回の内容に組み込むところから始められます。年間計画への組み込み方は介護施設の法定研修にまとめました。他のテーマとの組み合わせは介護の研修テーマもあわせて確認してください。
2. 自施設の場面を題材に演習を組む
介護関係者を対象に開催されたアンガーマネジメントのワークショップは、4つのセッションで構成されました。扱われたのは、自由討論(怒りとは)、思考のゆがみ、10のよくある不合理な信念、怒りの分析のロールプレイです。参加者からは、怒りは些細なことから生じておりコントロールできること、怒りは分析できることといった学びが報告されています(日本農村医学会雑誌、2014年)。
説明を聞くだけで終えず、自分の例を書き出して実際にやってみる時間を含む構成です。1回の研修は説明・書き出し・やってみるの3つに時間を割り振り、題材は前のステップで集めた記録から選びます。
3. 受講状況と実施記録を残す
記録に残すのは、実施日・対象者・内容・受講者の4項目です。厚生労働省は、介護現場におけるハラスメント対策について管理者向けと職員向けの研修の手引きを公開しており、研修会で扱う内容や進め方の例が収載されています(厚生労働省)。当日に参加できなかった職員をどう補うかまで決めておくと、受講状況が空欄のまま残りません。記録様式の項目は研修報告書の書き方が参考になります。
4. 感想を集めて次回の内容へ反映する
研修後の感想は、集めて終わりにせず次回の題材選びに戻します。聞くのは、扱った場面が自分の担当する時間帯と近かったか、使えそうだと思った対処はどれか、の2点です。近くないという回答が多ければ、次回は別の時間帯の場面を題材にします。
| No | ステップ | 決めること | 残す記録 |
|---|---|---|---|
| 1 | 対象と目的を決める | 対象者と実施回数 | 年間計画への位置づけ |
| 2 | 場面を題材に演習を組む | 題材にする場面 | 使った教材と進行表 |
| 3 | 受講状況と記録を残す | 記録の項目と保管先 | 実施日・対象者・内容・受講者 |
| 4 | 感想を集めて反映する | 次回に変える点 | 感想と反映した内容 |
出所: 厚生労働省の介護現場におけるハラスメント対策の職員向け研修のための手引きと、介護保険最新情報Vol.1213の整理に基づき編集部作成
研修は、実施したかどうかよりも、題材が自施設の場面かどうかと、誰がどこまで受けたかを後から確認できるかで評価します。
研修の実施記録と受講状況まで残すなら CareBase(ケアベース)
研修の手段を選ぶときに見るのは、題材を自施設の場面へ差し替えられるかと、誰がいつどこまで受けたかを後から確認できるかの2点です。集合研修と紙の受講名簿という組み合わせは、シフト勤務で全員が同じ時間に集まれない場合と、複数拠点で実施状況を突き合わせる場合に手間が残ります。
CareBase(ケアベース)は、動画・画像・テキストを組み合わせた法人独自のマニュアルを施設側で作成でき、更新履歴も残ります。法定研修管理が備えているのは、研修の実施記録を自動で保存し、実施状況を職員別に確認できる仕組みです。学習コース作成と受講管理では、職員ごとの受講進捗を追えます。本部統制機能は、施設ごとの研修完了率と未受講者数をダッシュボードに表示する機能です。導入実績は100社以上で、料金は1施設あたりの月額です。研修・教育を担うマニュアルシステムは月額30,000円で、記録システムとあわせたプランもあります。
向いているのは、シフトの都合で全員を同じ時間に集めるのが難しく、研修をやったこと自体は覚えていても「誰が受けたか」を紙の名簿から探している施設です。職員数が少なく、その場で全員に声をかけられる規模であれば、まずは紙の記録様式を整えるところから始めても運用は回ります。
介護のアンガーマネジメント研修についてよくある質問
アンガーマネジメント研修に使う資料や教材はどこで手に入りますか
入手先は2つあります。1つは前掲の守山市の資料で、怒りの捉え方や6秒・呼吸法の手順がそのまま演習に使えます。もう1つは厚生労働省で、介護現場におけるハラスメント対策について管理者向けと職員向けの研修の手引きが公開されています。研修会で扱う内容や進め方の例も載っているので、進行の骨格づくりはこの資料が起点です。そこへ自施設の記録から題材を足すと、演習の場面が現場に近づきます。
アンガーマネジメント研修の題材にする場面は、どこから選べばよいですか
ヒヤリハット記録と申し送りの記述が探しやすい入口です。強い言い方になりかけた場面は事故報告の対象にならない場合もあるため、日々の記録から時間帯と状況がわかる記述を拾い、個人が特定できない形にしてから題材にします。
認知症の方の言動にいら立ってしまうときは、どうすればよいですか
まず、その言動の背景に体調や環境の変化がないかを確認し、対応方針を一人で決めずにチームで共有します。対応が難しい状態が続く場合や医療的な判断が関わる場合は、個別の事情を主治医や所管の自治体窓口、専門職へご確認ください。
動画を使ったアンガーマネジメント研修でも、集合研修と同じように扱えますか
実施日・対象者・内容・受講者が記録として残る形かどうかが分かれ目です。視聴後に自分の場面を書き出す課題を組み合わせると、演習の要素を残せます。動画教材の作り方は介護の研修動画が詳しいです。
CareBase(ケアベース)でアンガーマネジメント研修の実施記録や受講状況の管理はできますか
できます。法定研修管理で研修の実施記録を自動で保存し、職員ごとの受講進捗を確認できます。施設ごとの研修完了率と未受講者数は、本部統制機能のダッシュボードで確認できる項目です。対応できる範囲はサービス資料で確認できます。
まとめ
介護のアンガーマネジメントは、怒りをなくす訓練ではなく、引き金を特定して怒り方を選べるようにする取り組みです。その場の対処は数秒の間の取り方から始められますが、同じ場面の繰り返しを減らすには記録と研修の設計が要ります。まずは直近1か月の記録から、いら立ちが起きた場面を3つ書き出し、次の研修の題材にします。
複数の拠点で実施状況を突き合わせている法人にとっては、施設ごとの研修完了率と未受講者数を本部が確認できるCareBase(ケアベース)も選択肢の1つです。
複数拠点の研修の実施状況をまとめて確認したい方へ
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介護ソフトの導入や見直しをご検討中の方は、まずは情報収集から始めてみませんか。
carebase(ケアベース)では、現場に定着する介護記録システムとして、多くの事業所でご活用いただいています。
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