2026.9.15
スピーチロックとは?場面別の言い換え表と施設で定着させる手順
スピーチロックとは、「ちょっと待って」などの言葉で利用者の行動を止めてしまう、言葉による拘束のことです。厚生労働省の手引きが挙げる身体拘束の11項目に言葉による制限は並んでいませんが、同じ手引きは11項目を「あくまでも例示」と明記しています(厚生労働省)。本記事は、どこからがスピーチロックになるのかの線引きと、場面別の言い換え表、施設で定着させる手順までを扱います。
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スピーチロックとは?言葉で利用者の行動を止める「言葉の拘束」
手段が違っても行動の自由を制限する結果は同じで、判断は行動を止めていないかで行う(出所: 厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)に基づき編集部作成)
スピーチロックは、命令や禁止の言葉で利用者の行動を止め、行動の自由を制限してしまう関わり方を指します。厚生労働省が身体拘束を「本人の行動の自由を制限すること」と定義しているとおり、道具を使わない言葉でも結果は同じです。介護現場では、フィジカルロック・ドラッグロックと並ぶ「3つのロック」の1つとして扱われます。
現場で出やすい言い方と言い換えを3場面だけ先に示します。
| 場面 | 現場で出やすい言い方 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 呼び止め・順番待ち | 「ちょっと待って」 | 「あと5分で伺います」 |
| 立ち上がり・移動 | 「立たないで」 | 「どちらへ行かれますか」 |
| 排泄・トイレ | 「そこで待ってて」 | 「先にお席までご案内しますね」 |
6場面の全体と、背景で見直す点は後半の言い換え表にまとめました。
スピーチロックは言葉で行動の自由を制限すること
厚生労働省の「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)は、身体拘束を「本人の行動の自由を制限すること」と定義しています。この定義には、何を使って制限したかという条件が入っていません。ひもや車いすのベルトを使わなくても、言葉で相手が動けなくなれば、行動の自由は制限されたことになります。
スピーチロックが「言葉の拘束」と呼ばれるのは、道具も薬も使わずに同じ結果を生むからです。同じ言い方は看護の現場でも使われますが、本記事は介護施設の場面に絞ります。
フィジカルロック・ドラッグロックとの違い
3つのロックは、行動を制限する手段の違いによる整理です。
| ロックの種類 | 行動を制限する手段 | 現場での例 |
|---|---|---|
| フィジカルロック | 体を固定する物理的な方法 | ベッド柵で囲む、車いすにベルトで固定する |
| ドラッグロック | 薬で行動を抑える方法 | 行動を落ち着かせるために向精神薬を過剰に服用させる |
| スピーチロック | 言葉 | 「立たないで」「ちょっと待って」で行動を止める |
スピーチロックだけは道具も薬も使わないため、使った物が残らず、記録にも残りにくくなります。個人の気づきに任せず、言い方を施設としてそろえる手立てが要るのはこのためです。
身体拘束の11項目は例示であり、言葉による制限も対象になり得る
手引きが「身体拘束廃止・防止の対象となる具体的な行為(例)」として挙げる11項目は、ひも等で縛る、ベッド柵で囲む、向精神薬を過剰に服用させるといった行為です。すべて物理的または薬物的な行為で、言葉による制限は並んでいません。ただし手引きは、11項目について「あくまでも例示であり、他にも身体拘束に該当する行為があることに注意が必要です」と明記しています。さらに実践事例として、「組織として、スピーチロックも身体拘束とし、『ちょっと待ってね』等の言葉の言い換え等に取り組んでいる」施設の取り組みを紹介しています。
手引きにスピーチロックを身体拘束と定める規定はありません。それでも、11項目に載っているかで線を引くと、言葉による制限は毎回すり抜けます。職員に説明するときの基準は、言ってはいけない言葉の一覧ではなく、行動を止めていないかどうかです。
運営基準上の用語は「身体的拘束等」であり、緊急やむを得ない場合を除いて原則禁止です。手引きは、適正な手続きを経ていない身体的拘束等は原則として高齢者虐待に該当するとされている、と説明しています。
スピーチロックの線引き|該当しやすい言い方と、やむを得ない場合の扱い
分かれ目はその一言のあとも制限が続くかどうかで、続く場合が3要件の確認と記録の対象になる(出所: 厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)に基づき編集部作成)
スピーチロックかどうかは、言葉づかいの丁寧さではなく、相手の行動を止めているか、代わりの手を示しているかで分かれます。丁寧語で伝えても、相手がその場から動けなくなれば行動の制限です。反対に、危険を避けるためのとっさの一声は、そのあとにどう関わるかで意味が変わります。
法律上の心理的虐待は「高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと」を指します(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律 第2条)。日常の「ちょっと待って」が、そのまま法律上の虐待に当たるわけではありません。
スピーチロックになりやすい言い方の型
現場で出やすい言い方は、単語のリストではなく5つの型で押さえると気づきやすくなります。
- あいまいな制止(「ちょっと待って」「今は行けません」)
- 禁止・命令(「立たないで」「動かないで」)
- 否定(「ダメです」「できません」)
- 急かし(「早くして」「まだですか」)
- 叱責(「さっきも言いましたよね」)
いずれも共通するのは、相手の行動を止めたまま、次に何が起きるかを伝えていない点です。型で覚えると、自施設の言葉を書き出すときにも分類しやすくなります。
同じ「ちょっと待って」でも、見通しと代わりの手があるかで変わる
食事の準備中に、離れた席の利用者が立ち上がろうとする場面です。手が離せない職員が「待ってください」とだけ声をかけると、いつまで待つのかも、なぜ待つのかも伝わりません。座ったまま動けない時間だけが残ります。
「あと5分で伺います」と時間を添える、「先にこちらへご案内します」と代わりの手を示す、と続けば、利用者は見通しを持てます。分かれ目は丁寧さではなく、待つ理由と次の行動が伝わったかどうかです。
一言のあとに行動の制限が続くときは、切迫性・非代替性・一時性で確認する
手引きは、緊急やむを得ず身体拘束を行う場合の適正な手続きとして、切迫性・非代替性・一時性の3要件を満たすかどうかを組織等で話し合うことを求めています。切迫性は生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと、非代替性は他に代替する方法がないこと、一時性は行動制限が一時的なものであることを指します。
この手続きは、身体拘束を行う場合について定められたものです。手引きは「緊急やむを得ない場合」を「一時的に発生する緊急事態」のみに限定しており、転倒しかけた利用者への一度の制止そのものを禁じる規定は置いていません。制止の一言で終わらず、そのあとも待たせ続ける、動けない状態にするなど制限が続いたときに、3要件の確認の対象になります。
行動を制限し続けた場合は、態様と時間・心身の状況・理由を記録に残す
手引きが、緊急やむを得ず身体拘束を行う場合に記録すべき内容として挙げているのは次の3点です。記録は運営指導や監査の際に提示できるようにする必要があるとしています。
| No | 記録する項目 | 書き残す内容 |
|---|---|---|
| 1 | その態様および時間 | どの制限を、いつから、どれだけ行ったか |
| 2 | その際の本人の心身の状況 | そのときの様子、訴え、体調 |
| 3 | 緊急やむを得なかった理由 | 3要件の確認結果と、代替手段を取れなかった事情 |
あわせて手引きは、家族への説明の確認は同意ではなく、家族の同意は身体拘束を認める根拠にならないと示しています。運営指導で見られる記録の観点は、介護施設の運営指導・実地指導対策完全ガイド|指摘されやすい記録の問題点と事前準備のポイントで整理しています。自施設で身体拘束をなくす対応を話し合う会議体が、身体的拘束等適正化検討委員会です。個別の場面が対象になるかは、所管の自治体や自施設のこの委員会にご確認ください。
手引きが3要件の確認と記録を求めているのは、一度の声かけではなく、そのあとも行動の制限が続く場合です。
スピーチロックを続けると利用者と職員に起きること
言葉で行動を止め続けると、利用者は動く機会と自分で決める機会を失い、体力と意欲の低下から認知症の症状の悪化までつながります。手引きは身体拘束の弊害を、身体的弊害・精神的弊害・社会的障害の3つに分けて説明しています。
意欲の低下から廃用症候群やBPSDの悪化につながる
手引きが身体的弊害として挙げるのは、関節拘縮や筋力低下、四肢の廃用症候群といった身体機能の低下や褥瘡の発生です。廃用症候群は、動かない状態が続いて筋力や関節の働きが落ちる状態を指します。
精神的弊害として示されているのは、本人が理由もわからないまま尊厳を侵害されること、不安・怒り・屈辱・あきらめといった精神的苦痛、認知症の進行やせん妄の頻発です。訴えても通らない経験を重ねた利用者は、自分から動くことや伝えることをやめていきます。BPSD(認知症の行動・心理症状)の悪化が現れるのは、この積み重ねの先です。
拘束が拘束を生む悪循環に入りやすくなる
手引きは、「認知症があり体力も低下している高齢者を拘束すれば、ますます体力は衰え、認知症が進む。その結果、せん妄や転倒等の二次的・三次的な障害が生じ、その対応のために更に拘束を必要とする状況が生み出される」と説明しています。最初は「一時的」として始めた身体拘束が、時間の経過とともに「常時」の拘束になってしまうという指摘です。
言葉も同じ経路をたどります。仮に、同じ利用者への「待ってください」が一日に何度も繰り返される状態が続いたとしましょう。利用者は動く機会を失って体力と意欲が落ち、介助の手間はその分増え、忙しくなった職員はさらに短い言葉で止めることになります。一時的なつもりの一言が常時の関わり方に変わるまでに、はっきりした切れ目はありません。
職員の士気と施設への信頼にも影響が及ぶ
手引きが社会的障害として挙げるのは、看護・介護職員自身の士気の低下と、施設・事業所に対する社会的な不信や偏見です。止める言葉が日常になれば、職員は自分の関わり方に納得できないまま働くことになります。
令和6年度に養介護施設従事者等による虐待と判断された事例では、被虐待高齢者2,248人のうち心理的虐待が622人・27.7%でした。「身体拘束あり」は495人・22.0%と整理されています(厚生労働省「令和6年度の高齢者虐待防止法に基づく対応状況等調査」。虐待の種別は複数回答)。ここでいう心理的虐待は法律上の「著しい暴言又は著しく拒絶的な対応」を指し、スピーチロックがそのまま数えられた数値ではありません。この数値は職員個人を責めるためのものではなく、言葉で行動を止める場面が日常になっていないかを施設として点検する手がかりです。点検を施設として引き受けることが、職員が自分の関わり方に納得して働ける状態につながります。
厚生労働省の手引きは、拘束が体力の低下と認知症の進行を招き、その対応のためにさらに拘束を必要とする悪循環を示しています。
なぜ現場でスピーチロックが起きるのか
発生要因の1位は職員の知識・意識の不足で926件・75.9%、次いで倫理観・理念の欠如が785件・64.3%(出所: 厚生労働省「令和6年度の高齢者虐待防止法に基づく対応状況等調査」に基づき編集部作成)
スピーチロックは職員の性格ではなく、何が該当するかを教わっていないこと、待ってもらうしかない時間帯があること、転倒を防ぎたい気持ちが重なって起きます。原因を個人に求めるかぎり、対策は注意喚起どまりです。
知識と意識の不足が、虐待の発生要因の1位に挙がっている
前掲の令和6年度調査は、養介護施設従事者等による虐待の発生要因を集計しています。最も多いのは「職員の虐待や権利擁護、身体拘束に関する知識・意識の不足」で、926件・75.9%でした。次いで「職員の倫理観・理念の欠如」が785件・64.3%と続きます。
上位に並ぶのは、知らないことと、知っていても崩れる状態です。注意喚起を重ねる前に、何が該当するかを全員が同じ言葉で持てる状態をつくります。
人手と時間の不足が言葉の短さに出る
同じ時間帯に呼び出しが重なる、入浴と排泄の介助が並ぶ、夜勤帯で職員数が限られる。こうした場面では説明を足す余裕がなくなり、言葉が短くなります。要因が時間にあるなら、言葉だけを直しても元に戻ります。誰が今どの介助に入っているかが見える状態か、呼び出しが特定の時間帯に集中していないかを記録から確認してください。
転倒を防ぎたい気持ちが行動の制限に向かう
手引きは、身体拘束による事故防止の効果は必ずしも明らかでなく、逆に無理に立ち上がろうとして車いすごと転倒するなど事故の危険性が高まると報告されていると説明しています。さらに手引きは、仮に身体拘束によって転倒が減ったとしても、それは転倒を防止していることにはならないと指摘しています。転倒を防いでいるのではなく、本人を転倒すらできない状態にまで追い込んでいることになる、という説明です。
安全を守りたい気持ちは、現場の責任感から出るものです。手引きの説明を踏まえると、向かう先は「動かせない状態にする」ではなく「なぜ立ち上がるのかを把握し、動ける環境を整える」に置き換わります。立ち上がる理由が排泄なのか、痛みなのか、不安なのかを記録から追えるようにすると、止める言葉に頼る場面自体が減っていきます。
場面別スピーチロックの言い換え表
4つの型に当てはめると、表にない場面でも言い換えを組み立てられる(出所: 厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)の考え方に基づき編集部作成)
言い換えの近道は、あいまいな制止を「いつまで」「なぜ」「どちらにするか」が伝わる言い方に置き換えることです。4つの型として持っておくと、表にない場面でも応用できます。
言い換えの4つの型(見通し・依頼・理由・選択肢)
- 見通しを示す。「ちょっと待って」を、待つ時間と次に何が起きるかを数字と行動で伝える言い方に変えます。手引きは、不安や孤独を感じている状態を行動・心理症状の原因の1つに挙げています。
- 禁止を依頼・提案に変える。「立たないで」を、依頼形や提案形にして本人が選べる形にします。認知症基本法は、すべての認知症の人が自らの意思によって日常生活および社会生活を営めるようにすることを基本理念に掲げています(共生社会の実現を推進するための認知症基本法 第3条)。
- 否定の前に理由を尋ねる。「ダメです」の前に理由を聞き、必要なら別の方法を一緒に探します。手引きは、何らかの意思表示をしようとしている場合も原因に挙げています。
- 選択肢を出す。指示ではなく2つの選択肢を示して本人に選んでもらいます。自分の意志にそぐわないと感じている状態も、原因に挙げられています。
6つの場面でそのまま使える言い換え表
現場で出やすい言い方と言い換えに加えて、その言葉が出る背景で見直す点を並べます。言い換えだけを配ると同じ場面が繰り返されるため、4列目を確認の手がかりに使ってください。
| 場面 | 現場で出やすい言い方 | 言い換えの例 | その言葉が出る背景で見直す点 |
|---|---|---|---|
| 呼び止め・順番待ち | 「ちょっと待って」「今は行けません」 | 「あと5分で伺います」「この方の介助が終わったら参ります」 | 呼び出しが同じ時間帯に集中していないか。誰が対応中かが職員間で見えるか |
| 立ち上がり・移動 | 「立たないで」「危ないから座ってて」 | 「どちらへ行かれますか」「ご一緒しますので少しお待ちいただけますか」 | 立ち上がる理由(トイレ・痛み・不安)を記録から追えているか |
| 排泄・トイレ | 「まだ出ないの」「そこで待ってて」 | 「お手洗いに行かれますか」「先にお席までご案内しますね」 | 排泄記録からリズムを把握し、誘導の時間を先に決めているか |
| 食事・水分 | 「早く食べて」「こぼさないで」 | 「ご自分のペースで召し上がってください」「熱いのでゆっくりどうぞ」 | 食事時間の配分が一律になっていないか。食器や姿勢は合っているか |
| 帰宅願望・繰り返しの訴え | 「まだ帰れません」「さっきも言いましたよね」 | 「おうちのことが気がかりなのですね。少しお話を聞かせてください」 | 訴えが出る時間帯を記録で追えているか。その時間の過ごし方を用意しているか |
| レク・共有スペース | 「静かにして」「触らないで」 | 「どうされましたか」「気になりますか。一緒に見てみましょう」 | 音・人の多さ・場所が合っているか。別の過ごし方を選べる場所があるか |
出所: 厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)の考え方に基づき編集部作成
声かけ全般の組み立ては、介護のコミュニケーション事例集|場面別・相手別の声かけとNG例が参考になります。
言い換えても同じ場面が繰り返すときに見直すこと
手引きは、認知症の行動・心理症状の原因として想定されることを6つ挙げています。挙げられているのは、言葉かけが不適当か意味が理解できない場合と、意志にそぐわないと感じている場合です。あわせて、不安や孤独、身体的な不快や苦痛、身の危険を感じている場合や、何らかの意思表示をしようとしている場合も含まれます。そのうえで、原因を除去する等の状況改善に努めることが重要であるとしています。
言い換えが手当てするのは、このうち「言葉かけが不適当」の1つです。残りの5つが手つかずなら、同じ訴えは同じ時間帯に繰り返されるままです。表を配ったあとは、同じ場面が週に何回起きているかを記録から数え、時間帯と場所を委員会で確認してください。
言い換えは入口であり、同じ場面が繰り返し起きる背景を残したままでは元の言い方に戻ります。
言い換え表を配ったあとも同じ場面が繰り返していないか記録で確かめたい方は
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施設で言い換えを定着させる4ステップ
言い換えを続けられるかどうかは、委員会で議題にし、自施設の言葉で表を作り、現場で見える場所に置き、実施記録を残せるかで決まります。個人の心がけに任せたままでは、異動や採用のたびに元へ戻りがちです。
| No | ステップ | 決めること |
|---|---|---|
| 1 | 委員会で議題に上げる | 議題として扱う回と、議事録に残す内容 |
| 2 | 自施設の言葉を集めて表を作る | 集める期間と、書き出す場所 |
| 3 | 現場で見える場所に置き、研修で届ける | 置き場所と、夜勤帯・パート・派遣の職員への届け方 |
| 4 | 実施記録を残す | 記録の保管先と、次に見直す時期 |
1. 委員会でスピーチロックを議題に上げる
身体的拘束等適正化検討委員会は、身体的拘束等をなくしていく対応を組織として検討する会議体です。手引きは、議事録に開催日時・参加者・議題・議事概要等を記載するよう示しています。身体拘束を行っている入居者がいる場合は、その人数や3要件の確認と判断理由、解除の是非等も併せて残すよう求めています。スピーチロックは11項目に載っていないため議題から漏れやすく、最初に扱う回を先に決めておいてください。
適用範囲は事業所の種別で異なります。令和6年4月1日からすべての介護サービス事業者に高齢者虐待防止措置が、訪問・通所系には身体的拘束等の原則禁止と記録が義務づけられました。令和7年4月1日からは、短期入所・多機能系に適正化のための措置が義務となっています(厚生労働省の要請通知(令和7年12月25日))。自事業所がどこに当たるかは、所管の自治体が示す運営基準でご確認ください。虐待防止研修そのものの進め方と記録管理は、介護の虐待防止研修とは|義務化の内容・進め方と記録管理を解説で詳しく解説しています。
2. 自施設で実際に出ている言葉を集めて言い換え表を作る
ひな形をそのまま掲示しても、自施設で実際に出ている言葉が載っていなければ使われません。ユニットごとに担当を決め、1〜2週間、気づいた言葉をその場で書き出す期間を設けてください。誰が言ったかは記録せず、言葉と場面と時間帯だけを集めると、報告の負担が下がります。
集まった言葉は5つの型で分類し、場面ごとに言い換えを当てはめます。案を出すのは、その場面を担当している職員が優先です。
3. 現場で見える場所に置き、研修で全員に届ける
紙の掲示は始めやすい方法ですが、改訂時の貼り替えが施設ごとに止まりやすく、夜勤帯やパート・派遣の職員に届いたかを後から確かめられません。置く場所は休憩室ではなく、声かけが実際に起きる場所の近くです。届け方は掲示と研修の両方と決めておきます。
CareBase(ケアベース)は、動画・画像・テキストで法人独自のマニュアルを作成でき、更新履歴を管理して改訂版を即時に全施設へ反映します。現場の導線上にQRコードを置けば、その場で最新版を呼び出せる点も特徴です。貼り替えを人手で追いかける工程がなくなるため、更新が止まる原因を1つ減らせます。
4. 実施記録を残し、次の見直しにつなげる
前掲の令和6年度調査では、虐待の事実が認められた1,220件の施設・事業所のうち、999件・81.9%が職員に対する虐待防止研修を実施していました(厚生労働省「令和6年度の高齢者虐待防止法に基づく対応状況等調査」)。研修を実施していないから起きた、という単純な図式にはなっていません。分かれ目は、実施の有無ではなく、決めた言い方が現場で参照でき、誰がどこまで受けたかが残っているかどうかにあります。
実施記録には、実施日・対象者・内容・未受講者への対応を残し、次の委員会で集めた言葉と突き合わせて、次のテーマを選びます。年間計画に落とし込む手順は、介護施設の法定研修とは?種類・回数・年間計画と記録の残し方にまとめました。
言い換え表と研修の実施記録を一つに残すなら CareBase(ケアベース)
言い換えの取り組みを続けられるかどうかは、3つの基準で判断できます。1つ目は、決めた言い方を職員が現場の動線上で見られるか。2つ目は、表を改訂したときに全施設へ同時に届くか。3つ目は、研修を誰がどこまで受けたかが記録として残るか、です。
紙の掲示・配布資料・口頭の申し送りは、このうち1つ目までは満たせます。一方で、改訂版が全施設に行き渡ったかと、誰が受けていないかを後から確かめられません。
CareBase(ケアベース)は、法人独自マニュアルの更新履歴を管理し、改訂版を即時に全施設へ反映します。法定研修管理では研修の実施記録を自動で保存します。実施状況は職員別に追える形です。本部統制機能では、施設ごとの研修完了率と未受講者数をダッシュボードに表示し、誰がいつ何をどこまで受けたかを本部で把握できます。導入している法人は100社以上です。料金は、マニュアルシステムが1施設あたり月額30,000円、記録システムが同じく月額30,000円となっています。両方をまとめたプランは、1施設あたり月額45,000円です。
言い換え表を作ったものの夜勤帯や新しく入った職員に届いたかを確かめられていない施設、研修は実施したが誰が未受講かをすぐに答えられない施設に向いています。まずは、今ある掲示物と研修の実施記録を1か所に集めることから始められます。
スピーチロックに関するよくある質問
本当に危ない場面で「動かないで」と言うのも、スピーチロックになりますか
危険を避けるためにとっさに制止すること自体を禁じる規定は、厚生労働省の手引きにはありません。手引きが切迫性・非代替性・一時性の確認と記録を求めているのは、緊急やむを得ず身体拘束を行う場合です。一度の制止を記録する規定はなく、そのあとも行動の制限が続いたときに、3要件の確認と記録の対象になります。
スピーチロックの言い換え表は、そのまま印刷して掲示してよいのですか
掲示は入口として有効です。ただし、ひな形のまま貼ると自施設で実際に出ている言葉が載らず、貼り替えも施設ごとに止まります。1〜2週間かけて自施設の言葉を集めて作り直し、夜勤帯やパート・派遣の職員まで届く経路を先に決めておいてください。
スピーチロックをしている同僚を見かけたら、どうすればよいですか
その場では、交代を申し出る、手伝いに入るなど、場面そのものを落ち着かせる関わり方が先になります。個人を名指しして注意しても、呼び出しの重なりという原因は残ります。集めた言葉として記録に残し、委員会やミーティングで施設全体の課題として扱ってください。
研修を実施していれば、身体的拘束等の適正化の要件は満たしたことになりますか
身体的拘束等の適正化のための措置は、委員会の開催・指針の整備・研修の実施の3つで構成されます(前掲の要請通知)。高齢者虐待防止措置についての調査ですが、令和6年度に虐待と判断された1,220件のうち999件・81.9%は研修を実施していました。研修の事実に加え、委員会での確認と実施記録が残っている状態で要件を満たしたと言えます。実施回数の下限は、所管の自治体が示す運営基準でご確認ください。
CareBase(ケアベース)では、スピーチロックの言い換え表を現場で見られる形にして、研修の実施記録まで残せますか
可能です。動画・画像・テキストで法人独自のマニュアルを作成でき、更新履歴を管理して改訂版を即時に全施設へ反映します。現場の導線上にQRコードを置けば、その場で呼び出せる形です。法定研修管理では実施記録を自動で保存し、実施状況を職員別に追えます。機能の範囲と料金は、サービス資料でご確認ください。
まとめ
スピーチロックは、言葉で利用者の行動を止めてしまう関わり方であり、言い換えと施設の仕組みの両方で減らせます。その場の一言で終わる声かけは言い換えで対応し、そのあとも制限が続く場合は、切迫性・非代替性・一時性の確認と記録の対象です。まずは自施設で実際に出ている言葉を1〜2週間集め、次の委員会で議題に上げてください。
言い換え表の更新と研修の実施記録を1か所にまとめたい施設には、CareBase(ケアベース)が向いています。
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